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結城酒造の嫁さん杜氏は天才かもしれません?

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8月の末に鴨居の鳥みき結城酒造の蔵元をお呼びして蔵元を囲む会があることを聞いて、原則日曜日の試飲会には出ないことにしていましたが、それを破ってでも参加することにしました。それは、あるところで結城酒造の杜氏はまだなりたての新米の女性杜氏ですが、そこの雄町の酒は素晴らしいというを聞いていたので、その秘密を探るために万難を排して参加することにしたのです。 

当日は蔵元の浦里昌明さんとお嫁さんで杜氏の浦里美智子さんがおいでになりました。お二人に美智子さんが杜氏になられた経緯など色々とお聞きすることができましたので、後程ご紹介したいと思います。 

この方がご主人の昌明さんです。とてもまじめな感じの方で、色々なことを正直にお話しいただきました。現在39歳で美智子さんとは同級生だそうです。 

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この方が奥様で杜氏の美智子さんです。とても明るい方で、パワーあふれるイメージで、失礼ですが繊細な杜氏のお仕事ができるのかなとちょっと思ってしまったのですが、実は全く違う一面があったのです。後で紹介しますね。
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お二人のお話をする前に蔵のことも少し紹介しておきます。この蔵は関東地方の中央に位置する茨城県の結城市にあります。栃木県とは隣り合わせの場所になります。結城家がこの地に来たのは鎌倉時代で守護としてこの地を納めてた時のようです。その後徳川家康の次男であった徳川秀康が秀吉が天下を取っていたとき、結城家に養子に行くことになり結城秀康としてこの地を納めることになったようです。 

秀康はお酒が好きで、京都から関東に来てもおいしいお酒を飲みたいと近江商人の近江屋久右衛門を呼び寄せ、造り酒屋を創業したそうですから、創業は1594年となるようです。ものすごく歴史のある蔵なのですね。創業当時の屋号は「近江屋」で富久福という酒名は江戸時代から明治時代のようです。 

現在の社長は昌明さんの父の浦里和明さんで37代目だそうです。この蔵は地域の冠婚葬祭で大量に消費するためのお酒を専門に作っていたようで、ほとんど普通酒だたそうですが、大手蔵の価格攻勢を受けで徐々に生産量が減ってきていたそうです。昔は越後杜氏が来ていたのですが、高齢のため辞めることになって、しばらく社員だけでつくりをしていたのですがその人も辞めたので、父と昌明さんの二人でだけでなにか新しいお酒を造ろうと始めたのが「結」だったそうです。これが7年前のことだそうです。 

「結」は地元に人にデザインをしてもらうなど、新しいお酒にはしたのですが、中身は本醸造レベルでこれではダメだと何とかしなければという状態だったそうです。美智子さんは9年前にこの蔵にお嫁に来て以来、酒造りを手伝っていたのですが、そんな時に茨城県の工業技術センターで、酒造研修があるという話が舞い込んできました。 

美智子さんは常々良いお酒を造ってみたいと思っていたし、子供も保育園に預けられる環境になったので、軽い気持ちでやってみたいと昌明さんに言ったそうです。昌明さんはお酒造りのお手伝いの仕方を見ていて、仕事が非常に丁寧できちっとしたやり方をしているので、自分より美智子の方が酒造りに向いていると思って許可したそうです。昌明さんは見る目があったのですね。 

研修所での勉強は5年前のことですが、とても勉強になっただけでなく、楽しかったそうです。蔵に戻って4年前に初めて酒造をしたそうですが、研修所では茨城県産の美山錦で酒を造っていたにも関わらず雄町でやることになったので、研修所の先生にこの秋から雄町50%の純米吟醸仕込みでやると言ったら、えー本当!と驚いていたそうです。それから、先生の指導を受けながら始めたそうです。 

雄町を決めたのにもいろいろな偶然があったそうです。その当時良いお米を手に入れようとしても売ってくれるところはなかったそうですが、たまたま八王子にある無農薬のお米を専門に扱っているお米屋に声をかけたら、無農薬の雄町ならあるといわれて購入することになったそうです。 

雄町は酒造りにとっては初心者がフェラーリーに乗るようなもので、本当は大変難しいお米ですが、初めから雄町だったので、米は溶けやすいものという感覚が身についてしまったそうで、逆に五百万石は難しかったそうです。初めて造った雄町の純米吟醸の評判がよく取引先から高い評価を得たそうです。 

2年目の作りから生産量も増やして、雄町サミットに初めて出品したら優秀賞を得て、その後2年連続して賞を得て、今年は吟醸酒の部門と純米酒の部門の両方で優秀賞を取りました。吟醸酒の部門と純米酒の部門で両方優秀賞をとったのは他には磯自慢酒造と宮下酒造の2蔵しかないのですからすごいことです。おめでとうございます。 

杜氏になったのは3年目からだそうで、全国には最近女性杜氏が増えてきていますが、お嫁さんが杜氏になっているのは非常に少ない思います。確か長野県の尾澤酒造しかないかもと思います。 

杜氏になるのはそんなに簡単なことでしょうか。新人の杜氏で凄いと思っている人に廣戸川の松崎祐行さんを思い浮かべます。彼も福島の研修所で研修を受けたあと最初に作ったお酒で、しかも福島県産の「夢の香」の純米酒で全国新酒鑑評会で金賞をとっています。それ以来今年も含めて5年連続金賞をとっています。去年彼にお会いした時にどうしてそんなことができるのとお聞きしたら、福島県の先生の言う通りしているからですと謙遜して言われていました。その点は美智子さんとの共通点があるのかもしれません。 

杜氏になるための条件について、僕の日本酒の先生の菅田ゆうさんの言葉によると、「センスと性」だそうで、センスは感覚の部分でお酒の香り、味わい、麹の出来具合、醪の状態など勉強すれば身につけられるかもしれないけど、性格は生まれつきのものなので身につけるのは難しいそうです。どんな性格が必要なのでしょうか。それは細かいことでもきちっと考える計画性とそれをやりとおす努力だそうです。美智子さんはもともと専業農家の生まれで、小さいときからご両親が畑仕事をきちっとやることを見ていたので、その感覚が身についたそうです。それを見抜いた昌明さんが素晴らしかったのかもしれませんね。

美智子さんを見ていると自分が天才などとはこれぽっちも思っていないと思いますが、今まで雄町を使いこなそうと努力して上手くいかなかった人はたくさんいる中で、これほど簡単に雄町のお酒を造れるようになったことを考えると天才と考えてもいいのかもしれません。でも今までは怖いもの知らずで突き進んだのが良かったけど、お酒造りの奥の深さが判ってくるこれからが正念場なのかもしれません。でも、美智子さんの明るさをもってすれば、気楽に通り超えていくかもしれませんね。 頑張ってください。

以上が美智子さんが杜氏になった経緯ですが、これ以降は飲んだお酒の紹介を簡単にしたいと思います。

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写真には13本が並んでいますが、最初の左端は8番と一緒のものかもしれません。具体的なリストを下記に示します。すべて生酒です。 

① 結 純米大吟醸 備前雄町38%精米 おりがらみ 

② 結 純米吟醸 山田錦50%精米 うす濁り 

③ 結 純米吟醸 まっしぐら45% 亀口直汲み 

④ 結 純米吟醸 備前雄町50% 雫酒 

⑤ 結 特別純米 赤磐雄町60% 袋吊り 

⑥ 結 特別純米 赤磐雄町60% おりがらみ 

⑦ 結 特別純米 きたしずく60% 雫酒 

⑧ 結 特別純米 きたしずく60% 雫酒60% 27BY 

⑨ 富久福 特別純米 山田錦60% 25BY 

⑩ 富久福 特別純米 五百万石60% 

⑪ 富久福 純米 山田錦90% おりがらみ 27BY 

⑫ 富久福 純米 山田錦90% おりがらみ 26BY 

1本1本を説明する前に結と富久福の違いを説明します。 

結 はお酒だけを飲んでも楽しいお酒で、香りは高めですが、そんなには強くしたくないので原則酵母は明利酵母のM310です。Mは明利のMで310は水戸の意味だそうです。知らなかったな。 

富久福は食に寄り添うお酒で穏やかで香りは控えめだそうで、酵母は7号酵母だそうです。

それでは一つ一つのお酒の紹介を簡単にします

① 結 純米大吟醸 備前雄町

  雄町らしい余韻が伸びるお酒でした。このお酒は今年初めて造った純米大吟醸で、生酒を-1度の冷蔵庫で半年寝かせて秋に出すのだそうです。全国新酒鑑評会を狙うのなら火入れをしないとね。それも飲んでみたかったですね。

② 結 純米吟醸 山田錦 うすにごり

 うす濁りなので滓が混ざっているし、炭酸ガスが残っているのでシュワシュワ感のあるお酒でした。生の青々しさを感じるジューシーなお酒でした

③ 結 純米吟醸 まっしぐら 亀口直汲み

 まっしぐらは青森県産の一般米です。精米度は45%ですが、飲んでみると味がしっかりしていてどっしり感のあるお酒でした。きっと一般米で心白がないので、みがいても蛋白質が残っていてアミノ酸や高級アルコールが増えてコクのある味になったものではないかな。

亀口直搾りとは藪田の搾り機から亀口に出たお酒を直接瓶に詰めるやり方だそうです。

④ 結 純米吟醸 備前雄町 雫酒

 今日飲んだ中では一番雄町らしさが出たお酒のように思えました。口の中でうまみがスッと伸びてくれます。美智子さんが初めて造ったお酒ですから、味も安定しているのだと思います

⑤ 結 特別純米 赤磐雄町 袋搾り

 岡山県産でも赤磐雄町にこだわったお酒で、袋搾りのお酒です。この蔵では袋搾りを雫酒と呼ぶこともあり、今後は雫酒に統一するそうです。袋搾りなので口当たりが柔らかいお酒でした。香りも味も少し強めの感じがしましたが、お米より精米の差かもしれませんね。

⑥ 結 特別純米 赤磐雄町 おりがらみ

 おりがらみは薮田から出たお酒に滓が入ったものです。口当たりは⑤とはあたりが全く違うお酒でした。味は少し抑え気味に感じました

⑦ 結 特別純米 きたしずく 雫酒

 きたしずくは北海道で開発され、平成26年に採用された酒造好適米で、雄町とほしのゆめと空育156号(吟風)を掛け合わせてできたお米です。心白がでやすく、雑味が少なく柔らかい味わいのお米と言われています。今年初めて使用したお米で、飲んでみると口に含んだ時のインパクトは少ないけど、素直な感じで後ろの方に広がり嫌みのないお酒でした。意外に良いかも。

⑧ 富久福 特別純米 山田錦 27BY
⑨ 富久福 特別純米 山田錦 25BY

 ⑧のお酒は今年の酒コンペティションでゴールドをとったお酒です。それを2年蔵で寝かせたのが⑨です。どちらも7号酵母を使っているので⑧はイソアミル系の香りがしますが、⑨は熟成の香りが強くて、元の香りが良くわかりませんでした。やはり生酒の熟成は難しいと思います。今度はぜひ火入れでお願いしたいな

⑩ 富久福 特別純米 五百万石

 新潟県産の五百万石を使ったお酒で、静岡県の酵母を使ったそうです。イソアミル系の香りがしました。でもなんとなく頼りなかったかな

⑪ 富久福 純米 山田錦90% 27BY
⑫ 富久福 純米 山田錦90% 26BY

 山田錦といえども90%精米なので、玄米由来の独特のの香りと蛋白質からくる高級アルコールの香りが強く出ていました。そのためか熟成の香りが抑えられてしまい、良くわかりませんでした。最後に飲んだお酒だったので、こちらもだいぶ酔っていたので正しい評価ができない状態でした。

鳥みきさんがこの会のために素晴らしいものを出していただけました。それは伊勢海老の生き造りです

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最後に昌明さんこれから夢をお聞きしました。

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現在は蔵の生産高は200石なので、いいお酒を造ってもなかなか相手にされないことが多いので何とか500石くらいにしたいそうです。そのためには貯蔵設備などのいろいろな設備投資や人材の確保など大きな問題がありますが、5年後くらいに達成したいそうです。つくりを一緒に手伝っていただいている弟さんが銀行出身なので、その力も利用していきたいとのことでした。

最後に僕と美智子さんのツーショットをお見せしましょう。

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最後に美智子さんにお願いがあります。今は設備も人もないので火入れをする余裕がなく、ほとんどが生酒だそうですが、ぜひ火入れのお酒造りがメインになるようにチャレンジしてください。生酒は酒の管理が難しく、消費者にとっても火入れの酒が安心できます。でも火入れは簡単なようで難しい技術なようですが、味は生に近い1回火入れができるようにしてもらいたいと思います。それで全国新酒鑑評会で金賞を取れたらいいですね。

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