このたびWE LOVE SAKEの東北蔵めぐりツアーに参加して、八戸市にある八戸酒造を訪問してきました。このツアーは京都在住の石踊さんが毎年今ごろ企画しているツアーで、鶴岡市にあるバスに現地まで来ていただき、東北の各地の蔵を見学した後、鶴岡に戻り、竹の露酒造を最後に訪問して終了するツアーです。
今回は青森県八戸市にある八戸酒造と岩手県二戸市にある南部美人の蔵を見学するツアーの部分だけ参加させていただきました。幹事側の提案もあり八戸駅から陸奥八仙に行く途中にある八食センターで食事をしてから、蔵に行くバスに乗りこむことになっていました。
八食センターは水揚げされたばかりの新鮮魚介類、乾物や珍味、お土産、八戸名物が勢揃いしている全長170mのビッグなストリートに約60店舗が軒を連ねるという大きな市場でした。
食べるところも色々あったのですが、八食市場寿司という名の回転すしで寿司をいただきました。何を食べてもおいしかったのですが、ホタテの生殖巣を初めていただきました。新鮮でないと食べられないので、東京ではまずお目にかからないけど、一皿100円と安い割にはとてもおいしかったです。(写真を取るのを忘れました)
その後迎えのバスに乗って、陸奥八仙の八戸酒造に向かいました。八戸酒造は八戸線のむつみなと駅の近くにありますが、八戸港に注ぐ新井田川に面しています。海の近くだったので東日本大震災の時はどうだったのですかとお聞きしたら、水は川をあふれて、蔵の塀まで来たそうですが、蔵の内部までは来なかったそうです。八戸市は海に面したところはひどい被害を受けたようですが、海に直接面していなかったので、一部建物が地震の被害を受けただけだったそうです。不幸中の幸いでしたね。
蔵見学の内容紹介の前に、この蔵の歴史を紹介します。創業は今から240年も前の1775年に駒井庄三郎が剣吉という場所で立ち上げたそうで、八戸に移ったのは明治21年だそうです。その時のブランドが陸奥男山で、大正時代に入って駒井酒造店となったようです。
その後昭和19年に企業整備令に基づき、地元に合った16蔵を統合して5蔵になったのですが、ここの蔵は八戸酒類㈱の男山工場となったそうです。駒井酒造店の7代目は独立して新しい酒造りをしたかったようですが、八戸酒類㈱は組合のような組織でしたので、ここからの独立は自社蔵と住宅である場所をでることになり出来なかったそうです。
そんな時、駒井酒造店と古くから縁のあった近所の蔵が造りを休業することになり、1998年(17年前)にその蔵の設備を譲り受けて、八戸酒造を創業し、陸奥八仙というブランドを立ち上げたのです。
陸奥八仙は中国にある古事から取ったもので、酔仙という仙人が8人集まって酒を飲みながら宴をしている様の八仙という名前と陸奥から取ったもので、8代目が名付けたそうですが、なかなかしゃれた名前ですね。
その後2009年に裁判で勝って、八戸酒類は男山工場の蔵と自宅を明け渡すことが決まり、元の蔵に戻ることが出来たのを機会に、駒井酒造店を八戸酒造としたそうです。
ここが八戸酒造の玄関口の母屋です。写真をアップすればわかるでしょうが、駒井酒造店と書いてあるのがわかるでしょう。2001年に国の有形文化財に指定された大変趣のある建物でした。
現在この蔵は9代目にあたる兄の駒井秀介(ひでゆき)さんと弟の伸介(のぶゆき)さんのお二人が中心になって運営しています。秀介さんは大学を出た後東京の酒販店や問屋で営業活動をしていましたが、2003年に蔵に戻り、現在36歳で、専務取締役として活躍しています。営業時代に14代の酒のうまさに感激して、それを酒造りの原点としているそうです。今は色々なところで活躍をしている若手のリーダーと言えるでしょう。
伸介さんは現在32歳ですが、中央大学を卒業後6年前に蔵に戻り、酒造りを勉強し、去年より製造責任者として2造り目になるそうです。今回は蔵見学の案内をしていただきました。なかなかイケメンですよね。
この蔵は新旧の建物をうまく生かした造りになっています。仕込み造りをしているところは大正時代に造られた赤レンガ造りの蔵を利用しています。八戸酒造株式会社の看板がみえます。
この蔵の裏に廻ってみます。男山と書いてある建物がレンガ造りの蔵です。その隣の4階建ての鉄筋コンクリートの建物は昭和42年に建てられたのもで、主に原料処理関係の設備が入っているそうです。
その隣を見てみましょう。男山と書いてある建物が見えますが、今は貯蔵庫として使われているようです。先ほど川を見下ろす写真をお見せしましたが、その時バスの屋根が見えましたね。それはバスの上方にある2階のシャッター部分から見ていたのです。これで大体レイアウトがわかりましたね。
それでは早速蔵の内部を紹介します。鉄筋コンクリートの4階にある精米機のあるところですが、今回は見学しませんでしたが、ちょっとお見せします。(佐野屋のブログからお借りしました)
お米は全量青森県産米を使っているそうで、酒造好適米は吟醸酒以上で使う「華想い」と、純米酒以上で使う「華吹雪」で、普通酒には「むつほまれ」や「まっしぐら」といった飯米も使っているそうです。どうして山田錦を使わないのかな?
ここが鉄筋コンクリート建屋の1階にある洗米、浸漬、甑、放冷機のある部屋です。左から洗米機、青いパケットが浸漬用箱、奥の左側の左が甑、その右が放冷機です。綺麗整頓されて物の流れに従って綺麗にレイアウトされています。
これは通常の造りの時の様子で、大吟醸クラスは10kg用の小型の洗米機と籠による浸漬をするようですが、通常の浸漬は袋の中に洗米を入れて青いパケットの中で浸漬し、時間がきたら袋を釣り上げて甑の方へクレーンで移動させるようです。
甑のあるところはビニールで囲われており、蒸気を廃棄できるようになっています。この部屋なら導線が良いのでコンパクトに作業できそうです。
2階には麹室と酒母室がありました。
この麹室はこの蔵に戻ってきた2009年に新築したもので、すべて杉材でできている素晴らしいものでした。中央左に中を見るのぞき窓があります。
大きな床が2列あり、作業中でした。ガラス越しなのでちょっとピンぼけになってしまいましたね。
おなじ階に酒母室もありました。杉材で囲われた部屋になっていますが、特に空調設備はないそうです。それでも造りのシーズンでは5℃~10℃で使えるそうです。
そこから階段を下りるとレンガ造りの仕込み蔵に直接行ける構造になっていました。仕込み蔵には開放タンクが24基並んでいます。通常のタンクは5トンタンクで1,5トン仕込みですが、吟醸用の2-3トンタンクもあるようです。
丁度頭の高さに蔵を支える鉄骨のH鋼の梁がありますが、これも大正時代に造られたもので、スコットランド製の特殊な梁のようです。
開放タンクには格子状の蓋がついていますが、これは落下防止の安全対策だそうですこの蓋は蔵の特注品で、近くの大工さんに造ってもらったそうです。フロアとタンクのトップとの差が少ないので、作業はしやすいけど落ちやすいので、造ったそうです。折りたたみができる優れものですね。
最後に搾り室に行きました。赤レンガ建屋の1階にありますが、空調ができる部屋の中に設置されています。その隣には直汲み用の瓶詰め機がありました。
これが直汲み用の瓶詰め機で1升瓶から小型の瓶まで使えるそうです。
これで説明を受けた蔵の紹介は終わりますが、瓶詰めと火入れは別の場所があるようで、火入れはプレートフィンヒーターで加熱し、シャワーで冷却しているそうです。また仕込み水は蔵の井戸の具合が悪いので、市の上水をろ過して使っているとの事でした。
全体を見て凄く合理的に配列され、掛けるべきところにはしっかり投資をしていることが良くわかりました。今は1500石の生産量ですが、昔は8000石も生産していたことがあったようです。これからも生産量をもっと大きくすることは出来そうでした。
最後に赤レンガで囲われたすてきなホールで試飲をしました。ここでは駒井専務のご説明になり、まるでカラオケをやっているような雰囲気で、駒井さんの独壇場でした。
陸奥八仙 純米吟醸 陸奥八仙 特別純米
黒ラベル 1回火入れ 赤ラベル 無ろ過生原酒
男山 銀選 普通酒 男山 純米酒 超辛口
以上で八戸酒造の蔵訪問の紹介を終わります。最後に駒井さんが取っていただいたツアー仲間の写真を付けておきます。僕がどこにいるかわかりますか
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