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新政の2015領布会のお酒の飲み比べ

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佐藤祐輔さんが蔵に戻ってから、新政のお酒の領布会はリニューアルして、毎年色々なテーマを決めて造ったお酒を配布して来ました。今年は素晴らしき酒米の世界Ⅱと称して秋田県産の酒米の違いをに飲み比べるためのお酒が領布されました。具体的には以下の通りです。いずれも精米歩合は60%、アルコール度数15%、6号酵母使用、1回火入れの条件のお酒です。 

4月:第一回 ①改良信交 ②美山錦
5月:第二回 ③亀の尾   ④美郷錦
6月:第三回 ⑤吟の精   ⑥酒こまち
 

今回どうして素晴らしき酒米の世界Ⅱと称しているのでしょうか。実は、2010年に素晴らしき酒米の世界と称して秋田県の酒米のお酒を領布しているからです。これについては祐輔さんはなんのコメントも出していないようですが、僕は2番煎じだとは思っていません。ここ数年酒造りの色々な技術アップのための試験を重ねて、2010年の時より安定した造りができるようになったので、本当の米の味の差がどのくらいあるのかを調べるために企画したものと想像しています。 

さて、領布会のお酒もすべて手に入り、いよいよ試飲しようと思ったのですが、一人では客観的評価ができないので、8月のお盆の時に日本酒の仲間5人を呼んで試飲をすることにしました。とは言っても、お酒の利き酒については全員素人なので、どうしようと思っていた時に、良いセミナーを見つけました。 

それは新政の米違いのお酒を比較テイスティングするセミナーです。それはインフィニット酒スクールの代表で講師の菅田ゆうさんが企画するセミナーでした。この酒スクールは酒類専門知識を提供するお酒の学校です。特にワイン、日本酒、焼酎、チーズを専門分野としており、小規模人数のマンツーマンの教育をするのが特徴のようで、それでも今回のような企画は珍しいそうです。 

僕は菅田ゆうさんが開催したセミナーに1回参加して、菅田さん実力は知っていましたので、すぐ参加を申し込みました。菅田さんのことを知りたい人はその時のことをブログに書きましたので見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/cat22308740/index.html

セミナーが行われたのは7月29日の水曜日の14時にインフィニット酒スクールの事務所で行われました。場所は日本橋横山町3-4-303にあります。ここは衣料問屋街で有名な馬喰横山駅から歩いて1分のところにありました。普通のビルの中にある事務所でしたので、最初は見つけるのにちょっと戸惑いました。 

Dsc_0073

このコンクリート造りのビルの3階でした。事務所は冷蔵庫を気にしなければ普通の小さな事務所で、最大詰めても10人が限度の部屋ですが、この日は平日の昼間なので、2人だけの参加でした。 

初めにセミナーの時の菅田ゆうさんの写真をお見せします。カメラはニコンの1眼レフのD5200ですが、カメラのの設定がおかしく、カラースケッチモードの写真となってしまいました。でもなんとなくわかるかな。かわいく映っていますね。 

Dsc_0070

では早速セミナーの内容を紹介しますが、まずは日本酒の香りや味の基となっている基礎知識を教わりました。それを示した図を下記に示します 

Dsc_0125

<酵母が造る成分について> 

お米はの成分は主にデンプンであり、そのほか たんぱく質脂質があり、これが酵母の力でアルコールや香り成分や旨味成分や雑味成分になるので、お酒にする前のお米の状態や特徴を知っておくことが重要だそうです。 

まず、デンプンは麹の酵素の力で糖分となりこれが酵母によりエチルアルコールとなると同時にアセトアルデヒドや各種の酸(乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸など)を造るようであるが酵母によってできるものが違うようである。特にカプロン酸生産性酵母を使うと熟したリンゴやメロンの香りのあるカプロン酸エチルが多くできるようです。 

たんぱく質はアミノ酸の集合体なので、酵母によってアミノ酸から高級アルコールをつくり、特にイソアミルアルコールからバナナ香のある酢酸イソアミルセメダイン臭のある酢酸エチルができるようです。タンパク質は精米すると少しずつなくなるようであるが、零にはならないそうです。だからイソアミル系の香りを造る成分は精米すればするほど減って来るはずです。 

脂質は脂肪酸となって油臭のある各種脂肪酸エステルを造るので雑味の成分となるが、精米するとどんどん減少し、50%精米でほとんどゼロになるようです。だから吟醸酒では雑味がなくなり、綺麗になるのですね。 

<主な酵母と香りの関係> 

現在の全国新酒管評会で評価されているカプロン酸エチルを多く出す酵母は9号酵母、18号酵母、CEL酵母などであるが、18号酵母は特にその性質が強い。逆に出しにくい酵母は14号酵母や6号酵や静岡酵母があるようです。どの酵母も酢酸イソアミルとカプロン酸エチルは造るようなので、酢酸イソアミルの香りを生かすお酒を造りたいときはカプロン酸エチルを抑える酵母を使わないといけないようです。 

最近は香りの高い10号酵母も人気があるようですが、この酵母はカプロン酸エチルを多く出す酵母のようですが、酢酸イソアミルのバランスが良いのかも知れません。 

<今回のお米の特徴> 

・ 改良信交

  改良信交と美山錦はどちらもたかね錦(信交190号)を親とするもので、改良信交は2次選抜によって秋田県で品質改良されて昭和34年に生まれたお米です。その後秋田県の高級酒用としてもてはやされたけど、後年栽培特性の良い美山錦が登場したため、一時消滅したようです。幸い茎が太いことからわらじ原料として山形県で栽培されていたのです。お酒の味わいとしてはまろやかで味わいがあることから、酒米として見直され、秋田県では新政だけが使用しているそうです。心白が小さく硬めのお米です。 

・ 美山錦

 美山錦は改良信交と同じく たかね錦を親としているが、長野県の農業試験所で放射線照射を行い突然異変を誘発して得られた品種です。寒さに強く栽培特性が良かったので、関東、北陸、東北に瞬く間に広がったようです。なめらかでシャープな切れ味のある味わいがあり、渋みを感じさせる成分が多いのでフレッシュ感も出るようです 

・ 亀の尾

 亀の尾は昔、日本の優良三大品種と言われた米で、食べてもお酒を造っても美味しいお米で、当時は飯米、酒米の区別なく扱われたいました。でも背が高く倒伏しやすく収量も少ないので、使われなくなってきましたが、酒米としての魅力のあるお米のようです。米は硬く溶けにくいけど、うまく作るとボディがあってふくらみの出る米と言われています。 

・ 美郷錦

 美郷錦は山田錦と美山錦を親にした酒米で、秋田県で開発したものです。美山錦よりは倒伏性が悪く、収量も少ないが、心白発現率は高くたんぱく質が少ないので、吟醸向きといわれています。造り手により大きく変わるコメのようですが、味わいは上品でバランスの良いお酒ができるようです 

・ 吟の精

 吟の精は美山錦に代わる酒造好適米として秋田県が開発したお米で、美山錦より大粒で心白発現率が低く、硬いので高精米が可能な米です。秋田酒こまちの出現で栽培が減少したが、近年、麹米に向いていることで再評価されつつあります。米が溶けにくいので酵素力を強くして溶かさなくてはいけないので、どうしても雑味の多い酒になるようです。 

・ 秋田酒こまち

 秋田酒こまちは吟の精に代わるお米として平成14にデビューした米ですが、タンパク含有量が少ないのでアミノ酸が少なく、雑味となる成分も少ないので、綺麗なお酒ができるようです。やや味が単調になるきらいがあるので、麹米を吟の精や山田錦を使う蔵も多くなっていますが、将来性のある米です 

<初心者向けの試飲の仕方> 

・ 香りを比較するためには12℃以上でやること。それ以下では差がわかりにくい  

・ 20℃以上になると乳酸香とアルコール臭が強くなるので、試飲は12℃~20℃が最適 

・ 口に含んだ2-3秒で感じるアタックとのど越しや飲み終わって感じるアフターに気を配ってやると特徴がつかみやすい 

以上を勉強してから試飲をしましたが、なかなか難しかったです。その時のお酒の写真ですが、同じくカラースケッチモードになってしまいました。 

Dsc_0069_2

これではわかりにくいので、我が家で行った時の写真を載せておきます 

Dsc_0108

色を見ていただければ、同じ順番に並んでいるのがわかるでしょう。僕の酒の印象を述べておきます 

1.改良信交 それほど旨味は出ていないけど、アフターに余韻がある 

2.美山錦  シャープでドライな気がするけどバランスはいい 

3.亀の尾  改良信交と同じようなバランスだけどちょっと力があるかな 

  全体に上品な味わいで、バランスが良い

5.吟の精  旨味はあるけど後味の雑味がきになる 

6.秋田酒こまち 綺麗だけど、少し物足りない

なにかわりとまともなコメントをしているようですが、事前にお米の特徴を聞いていたのでそれに引っ張られたコメントになったようです。でもお米の差による味の差はとても微妙で、ブラインドで飲んでお米を当てることはほとんどできませんでした。

でも全体として僕が個人的に好きだったのは美郷錦、嫌いだったのが吟の精でしたので、これだけなら当たるかもしれません。

最後にお盆ときに我が家で集まったメンバーです。皆僕より30歳以上若いメンバーです。

Dsc_0122

でもだれも6種類のお米違いを言葉で表現できる人はいませんでした。確かに飲んでみると差は感覚ではわかるのですが、違いを的確に表現するのは難しいです。それくらいお米の差は微妙な差だということがわかりました。

菅田先生のコメントを纏めたのをご披露しますので参考にしてください。

1.改良信交 アタックはふくらみがあって酸味も感じるけど、亀の尾より軽い味わいである。そしてアフターに残り感がある

2.美山錦  すっきりとしていて、シャープさがあり、アフターに渋みを感じる

3.亀の  アタックが膨らみ、全体にもふくらみはあるが飛び出すところがない

4.美郷錦 すごく優しく、ふわっと膨らんで上品な柔らかいうまみがある 

5.吟の精  アタックは強め、アフターに残り感が強く、特徴のあるお酒である

6.秋田酒こまち フィニッシュが軽く透明感がある

以上で新政今年の領布会のお酒の飲み比べの感想は終わりますが、米の差だけでどのように変わるかを舌で確認することは大変難しいことがわかりました。酵母を変えた場合は香りに差が出るので、酵母の差を確認するのはわかりやすいけど、その中でお米の差をみるのはもっと難しいのではと思いました。

僕は雄町が好きなので良く飲みますが、造り手によって大幅に味が変わることはしばしば経験しました。お米の特徴を生かした造りをしてその味を楽しむのもいいと思いました。

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