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インフィニット日本酒中級コース第6回 (酵母)

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この講座もすでに第6回目を迎えることになりました。この講座は似たような内容を繰り返すことにより、体で理解していくやり方なので、毎回内容が重複することがあります。それは講座としては意味のあることですが、このブログのように講座の内容をまとめるときには、できるだけ整理したいと思っています。今回の講義は酵母によるお酒の違をまとめてみました。 

酵母の種類によってお酒の味や香りが変わること、最近の吟醸酒ではカプロン酸エチルの香りが好まれて、その香りを一番出しやすい酵母が協会18号酵母であることはよく耳にしますが、それでは清酒酵母がどのくらい種類があって、どんな働きをするかを知っている人は少ないと思います。 

インターネットで清酒酵母と検索してみると、一番詳しく出ているのがフリー百科事典「ウイキペディア」の清酒酵母のようですが、それを読んでもどんなお酒ができるのかを理解するのはなかなか難しいようです。また、素人の僕などが手に入れやすい日本酒の教科書である、日本酒サービス研究会が出している「日本酒の基」では簡単にわかりやすく記述されているものの、協会14号以降の新しい酵母の紹介がされていないなど、なかなか酵母の情報を集めるのが難しい状況にあります。 

今回菅田先生が日本醸造協会から配布している協会酵母と地方自治体の試験研究機関で開発された各県の酵母をまとめて整理した表を作っていただきました。こんなにきちっと纏まった表は他にないと思います。この表は菅田先生が時間をかけて作った表ですから、この表を皆さんにお見せするわけにはいきませんが、どんな性質の酵母であるかを理解するために、母にどんな働きがあるかという点だけ抜粋して紹介します。この内容は酵母の配布元で発表しているものですので、菅田先生が研究されてまとめたものではありませんので、そのつもりで見てください。 

協会6号:「K6号酵母」、「新政酵母」
 ① 発酵力が強く、香りはやや低く穏やか
 ② 端麗にしてソフトな酒質に適し味は深みが出る
 

協会7号:「K7号酵母」、「真澄酵母」
 ① 発酵力が強く、オレンジのような華やかな香りを出す
 ② 呼吸能が比較的弱く発酵能が強い
 

協会9号:「K9号酵母」、「熊本酵母」、「香露酵母」
 ① 酸は少なく吟醸香が高い
 ② 低温で良く発酵し吟醸酒向き
 

協会10号:「K10号酵母」、「小川酵母」、「明利小川酵母」
 ① 酸が少ない(特にリンゴ酸)
 ② 高い吟醸香をだすこことが特徴
 

協会12号:「K12号酵母」、「浦霞酵母」、「初代宮城酵母」
 ① 山廃にも適し芳香の高い吟醸酒向き
 ② 特有の吟醸香をだすが、極度に水と造りを選ぶ

協会14号:「K14号酵母」、「金沢酵母」
 ① 生産される酸が少ないため綺麗な味の仕上がりとなる
 ② 吟醸酒本来の香りを生むのに適する

協会16号:「K16号酵母」、「小酸性酵母」、「旧No86酵母」
 ① 7号酵母より酸が少ない。
 ② カプロン酸エチル高生産性である

協会18号:「K18号酵母」
 ① 酸が少ない(16号並み)
 ② カプロン酸エチル高生産性(16号の40-50%増)

以上が代表的な協会酵母です。各県の酵母は非常にたくさん出ていますので、代表的なものの一部だけ紹介します

秋田酵母:「AK-1酵母」、「協会15号酵母」 
 ①アルプス応募などと同様に上立香の華やかな酒になる
 ②カプロン酸エチル高生産性で酸の生成が少ない

山形酵母:「山形YK-0107」「山形YK-2911」
 ①YK-0107は高い吟醸香を有する
 ②
YK-2911は酸味が多く香りが高い

福島酵母:「F'7-01酵母」、「うつくしま夢酵母」 
 ①カプロン酸エチル高生産性(協会7号の4倍)
 ②酸の生成が少なく、柔らかな味わい

福井酵母:「FK-501酵母」 
 ①バナナ香など熟したフルーツの香りが特徴
 ②香りは控えめだが味わいは繊細

静岡酵母:「HD-1酵母」
 ①酢酸イソアミル優勢の柔らかな果実香
 ②優しい味と香りで食中酒として最適

高知酵母:「CEL-19」、「CEL-24}
 ①CEL-19はカプロン酸エチルが多く9号酵母の約2倍
 ②CEL-24はカプロン酸エチルが多くCEL-19号酵母の約2倍

以上で代表的な酵母の特徴を示しましたが、これを読んでも、各酵母がどんな香をどのくらい出すかはよくわかりません。この表現は酵母が開発された時点での評価であり、時とともに香りの評価自身が相対的に変わってきているので、比較できるような表現ができていません。また、協会14号酵母は生産される酸が少ないと書いてありますが、実際に作られているお酒には酸度が1.8以上のお酒もあります。それは同じ酵母でも造りによって違ってくるということのようです。

そこで菅田先生は酵母が作り出す香をカプロン酸エチルと酢酸イソアミルだけに注目して、どちらの成分をどのくらい出しているかをイメージ的にまとめると下記のようになると説明されました。これはあくまでもイメージであって、実際には異なることも多くあることを頭においておけば、大変参考になる図だと思います。 これは先生が黒板に書いたものを僕がエクセルで作ったもので、先生のチェックを受けているものではないので、間違っている可能性があるかもしれないことをご承知おきください。

酵母が作り出す香の強さのイメージ図(この図をクリックすると大きくなります)

Photo

この図からわかることはカプロン酸エチルを一番作りやすい酵母は高知酵母のCEL酵母で、次が協会18号酵母、次に協会19号酵母、協会12号酵母、協会10号酵母となり、その下に協会9号酵母が来るようです。一方酢酸イソアミル系の香りを一番出すのが静岡酵母、次に福井酵母、協会14号酵母、協会6号酵母、福島酵母の順になるようです。 

ちょっと注目したいのは協会10号酵母で、造りによってはカプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方を同じくらい出せる能力があるようです。また協会12号酵母や山形酵母もカプロン酸エチルをベースにしながら酢酸イソアミルもある程度出すようです。

こんな表は今まで見たことがありません。これはあくまでも菅田先生の経験からくるイメージであることを頭においてください。 

問題はこれを実際に試飲してみてわかるかどうかです。カプロン酸エチルの香りはリンゴやメロンの香りと言われますが、これは濃度によって変わってきます。濃度が高くなると、パイナップルやミルクの香りのようになるそうです。一方酢酸イソアミルはバナナや洋ナシの香りと言われていますが、濃度が高かくなると桃の香りのようになるそうで、同時に発生する可能性の高い酢酸エチルはセメダインのような香りがします。 

問題は両方の香りが出ている場合で、注意深く嗅がないとよくわかりません。この場合、上記にのべた香りのほかに、もう一つのチェックポイントがあります。それは酢酸イソアミルを作る酵母はコハク酸を作る傾向があります。このコハク酸があるとお酒を飲んだ後の終わり方で貝の出汁のような苦みを感じるそうです。これは僕にとってまだ難しいチェックポイントですが、勉強中で、少し判りかけています。 

最後にお酒に苦みを感じるのは通常アルコール、フラノン、コハク酸の3種類で、飲んだ時に最初に感じる苦みはアルコール、中盤から後半にフラノン、最後のアフターでコハク酸の苦みを感じるようです。それ以外で感じるときによくある苦みは、脂質やアミノ酸が変質した場合に感じるそうです。これは変な苦みなので、わかるそうです。この苦みは精米度が悪い(60%以上)お酒に出る可能性が高いそうですが、高級アルコール等の他の味にマスキングされて見つけるのが難しいそうです。逆に精米度の高い(40%以下)お酒の場合は目立つので見つけ易いそうです。 

それから酵母は増量するためには培養する必要がありますが、酵母が増殖するときに少しずつ変化するようなので、同じ酵母でも全く同じということはないそうです。ですから、大きい蔵では自分で培養した性格のわかった酵母をいくつか持っていて使い分けているそうです。例えば、黒龍酒造では30種類以上の酵母を使い分けているそうです。

それでは早速酵母の違うお酒を試飲してみました。飲んだお酒は以下の4酒類です

Imgp0553

1.福祝 純米吟醸 山田錦50%精米 生原酒
  Alc度17-18、日本酒度-、酸度-、AA度:- 酵母 9号
 

2.スーパーくどき上手 純米大吟醸 改良信交35%精米
  Alc度17-18、日本酒度+1、酸度1.2、酵母 M310
 

3.十九 Trifoglio 五百万石50%精米 無濾過生原酒 
  Alc度16.3、日本酒度+7.5、酸度2.4、酵母 14号
 

4.朝日鷹  特別本醸造 美山錦、たつのおとしご60%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+2、酸度1.4、酵母 山形酵母
 

まず例によって外観を見ます 

Imgp0552

どれも透明度は同じくらいで、フランンがあるようには思えないそうです。ただ3番のグラスには気泡がついていますので、炭酸ガスがあることがわかります。 

それでは飲んだ印象を先生が語ってくれたことを紹介します

1.福祝 純米吟醸 山田錦50%精米 生原酒

口に含むとすぐにカプの香りがぱっと広がります。そして後味に苦みがなく切れていきます。ツンとした香りはありません。このバランスが9号酵母の典型だそうです。その香りの強さで18号かどうかが判断できるそうです。最初の感じる苦みはアルコールの苦みだそうです。このお酒は滑らかさがあって全体のふくらみもあり、アルコール度数の割にはアルコールの辛みが少なく、うまく仕上がっているとのことでした。

2.スーパーくどき上手 純米大吟醸 改良信交30%精米

口に含むとぱっとカプの香りが膨らむけど、奥にツンとするイソアミル系の香りがあり、アフターにじわっと苦みを感じます。このバランスがM310や10号酵母の特徴だそうです。このお酒は適度の甘みもあり綺麗さがあり、余韻が軽やかです。30%磨いてもインパクトが強くあり、なおかつ綺麗さがあるのは酒つくりの技術が高い証拠だそうです。

3.十九 Trifoglio 五百万石50%精米 無濾過生原酒

口に含むと最初にツンとしたイソアミル系の香がきたあと、アフターにじわっと貝の出汁のような苦みを感じます。コップを良く振るとセメダインの香りも少し感じます。これが14号酵母の特徴です。このお酒はフレッシュ感満載ですが、炭酸ガスが残ってアルコールも16.3あるので、ピリピリ感が残ります。これくらいぴりぴり感があり、後味の苦みがある場合は、合わせるお料理が難しいそうです。

4.朝日鷹  特別本醸造 美山錦、たつのおとしご60%精米 

飲んでみると穏やかで薄い感じがするけど厚みを感じながらさらっと飲めます。アルコール添加しているので、エタノールの香りは少しするけど、アルコールの苦みはあまり感じません。このお酒は地元だけしか出していないお酒で食中酒としてうまくバランスさせてるそうです、東京に出ている本丸はうまみが多いけれどももっとアルコールのピリピリ感があるそうです。香りはカプ香りも、ツンとしたイソ系の香りもあるけど、乳酸香も感じます。これは加水したために起きるそうです。鼻にぬける香にモサットとした油ぽい香りがするのは高級アルコールが多いことからくるそうです。でも僕にはわかりませんでした。

以上で飲んだ印象の紹介を終わりますが、飲んだだけで精米度、アルコール度数、加水量、酵母の種類などがわかるようになるそうですが、これは訓練で身につけるしかないそうです。僕にはとてもできるようになるとは思えませんが、とりあえず勉強していくつもりです。

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