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月の井酒造は奇跡を起こす蔵かもしれません

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八芳園の日本料理店の槐樹で恒例の蔵元さんと一緒に楽しむ会が9月16日に開かれました。今回で15回目になりますが、毎回槐樹のお酒に合わせた特別料理をいただきながら、比較的少人数で蔵元さんと直接お話ができる貴重な会なので、今回も参加いたしました。今回の蔵元は茨城県の大洗町にある月の井酒造の社長の坂本敬子がおいでになりました。月の井酒造はここ2年間連続して全国新酒鑑評会で金賞を受賞している蔵なので、その理由を知りたくて参加したものです。 

2か月以上前の会の話を、どうして今頃ブログに書くのかといいますと、実は10月12日に東京で起きた大停電で、僕の写真データーや録音を保管していたハードディスクが壊れて修理不能となり、その時の写真がなくなってしまったので、ブログアップをあきらめていました。その会の様子をとっていた録音データだけは何とかほかの方法で復旧できましたので、この会を主催している八芳園の窪田さんにお願いして、その時の写真を送っていただいたので、ブログが書ける状態になって、今日に至ったというわけです。 

僕がブログアップを目的とした写真とは異なりますので、うまくはめられるかわかりませんが使わしてもらいます。お酒の個別の写真はインターネットからの写真を使わせていただくことにします。 

まずは蔵の紹介から始めます。蔵は茨城県大洗町にありますが、この地は那珂川のきれいな伏流水があり、潮風が吹き抜ける磯浜で、漁業で栄えたところで、約150年前に創業した老舗の蔵です。代表銘柄の「月の井」は漁船の出船や入船の時の祝い酒として地元に愛飲されており、一時は1500石の生産高があったようです。「月の井」の名前は民謡の「磯節」の歌詞の中にある中秋の名月から名づけられたとも、初代当主の彦市さんが川崎大師に参拝したとき境内にある「月の井」とういう井戸の名前にあやかってつけたといわれているそうです。 

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現在の当主は7代目の坂本敬子さんですが、敬子さんは6代目の当主の坂本和彦さんと1985年に結婚され、蔵の女将として活躍され、3人のお子様にも恵まれました。ところが、2003年に和彦さんに食道がんが見つかり、余命1年と言いわたされたのです。その後、あらゆる最新の治療をしたにもかかわらず、2004年に帰らぬ人となるのです。その年から敬子さんは7代目の党首として、蔵を引き継ぐことになります。 

敬子さんはそれまで酒造りにはほとんど関わってはいませんでしたが、和彦さんと一緒になってオーガニックの酒造りを目指して、それに合った米つくりや蔵の再生などを準備していました。闘病生活の中で、和彦さんが「俺の代で残せるものが何もない」という言葉を聞き、夫の生きた証拠に有機の酒を造ろうと決意して、夫の前でそれを約束したのです。2人で考えて始めた有機のお酒造りをなんとか遂げさせようと思ったそうです。 

そして死の80時間まえに夫が書き残したのが「和の月」という新しいラベルの文字だったそうです。それは感動の物語ですね・・・・・ 

このいきさつについて取り上げた朝日新聞の記事の「80時間」が話題となり、2005年5月にに文芸春秋より死を前にした夫婦、家族の愛の物語として、「さいごの約束 夫に捧げた有機米の酒”和の月”」という単行本がが発行されたのです。その後、2006年の5月にフジテレビで、舘ひろしと安田成美が夫婦役でさいごの約束」の再現ドラマが放映されたそうです。 

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有機米の日本酒を作ることは簡単なことではありません。まずは有機JASの認定を受けたお米を使う必要がありますが、この認定を受けるためには3年以上無農薬である田圃で作る必要があるそうです。たまたま茨城県では長年無農薬のお米を作り続けていた農家の山崎正志さんにお願いして、無農薬の酒造好適米の美山錦を作ってもらえることになったそうです。JASの認定を受けた日本酒を作るためには、製造工程においても有害な化学物質を含んだものは使えません。たとえば、蔵の壁に合板を使うこともできませんし、消毒も化学薬品は使えないので、すべて熱湯消毒をするそうです。大変ですね・・・・・ 

敬子さんのお話では、古くからある蔵なのでJAS認定が取りやすかったのですよとおっしゃっていましたが、麹室だけは思い切って、和彦さんがやりたがっていた杉板つくりにしたそうです。 

念願の有機米「和の月」(なのつき)のお酒ができたのは2004年だったそうですから、和彦さんが闘病中に仕込んだお酒だったのでしょうね。夫にそのお酒を飲んでもらいたかったのではないでしょうか(飲まれたかどうかは聞いていません)。最初のお酒は美山錦60%精米の特別純米酒で、その翌年は玄米に近いお米でお酒を造りたいということで、80%精米の純米酒を造っています。このお酒は試飲できませんでしたが、酸味が強いワインのようなお酒になったそうです。その後はこの2種類を「和の月」として販売してきましたが、2年前に息子の直彦さんが蔵に戻ってきたのをきっかけに、精米度39%の純米大吟醸を今年初めて試験醸造したそうです。 

東京農大に行った息子さんが蔵に戻ってくるまでは蔵元として頑張りたいと酒造りをしてきましたが、何も知らない状態でもここまでこれたのは蔵人が一丸となってサポートしてくれたからと感謝しているそうです。後で知ったことだそうですが、和彦さんが死ぬ前の「和の月」の仕込みに入る前に杜氏の菊池さんに敬子がやりたい酒なのですから、親方何とかお願いしますと頼んでくれたそうで、それだから蔵人が一丸となったのでしょうね。人は心を一つにすると思いがけないパワーがでることを知ったそうです。 

以上「和の月」のメインに蔵の状態をご紹介しましたが、2年前に長男の直彦さんが戻ってきて造りを始めたのがきっかけで、今新しい風は吹き始めたそうで、全国新種鑑評会で2年連続金賞が取れたのもその現れかもしれません。今回その直彦さんが初めて作った新しいお酒の試飲もできましたので後で紹介します。 

試飲をしたお酒は下記の5種類で、それを紹介しましょう。 

1.発泡酒 アクア 純米酒  

2.全国新酒鑑評会金賞受賞酒 大吟醸  

3.和の月 有機純米大吟醸  

4.彦市 純米酒  

5.鯛より 吟醸酒 

いつものように氷が入った桶にきれいに並んでいました。右側に大吟醸と和の月が見えます 

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彦市の酒と鯛よりの酒が見えます。 

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では早速飲んだお酒を紹介しましょう 

1.発泡酒 アクア 純米酒 

Img_9269このお酒は地元のチヨニシキを使った純米発泡酒で、日本酒度-48、酸度3.7、アミノ酸度1.1、アルコール度数8-9%の瓶内発酵させた発泡酒です。 

このスパークリング清酒で、アルコール度数が少ないので、とても飲みやすい女性向きのお酒を狙ったものです。 

名前のアクアは水という意味ですが、大洗町にはアクアワールドという大洗水族館があるので、そこから名前をとったそうです。 

酒質的には甘酢ぱいはずですが、炭酸のさわやかさが前面に出ているので、口当たりの良いお酒になっているので、乾杯酒や睡寝前のドリンクにもいいかもしれませんね。 

2.全国新酒鑑評会金賞受賞酒 大吟醸 

07151041_57883f67d76e8このお酒は平成26年度、平成27年度と連続で全国新酒鑑評会の金賞をとったお酒です。兵庫県特Aの山田錦40%精米で、酒質は日本酒度4.5、酸度1.3、アミノ酸度1.1、アルコール15.8です。 

袋吊りの斗瓶どりを10本とった中から選び抜いた2-3本の斗瓶からとった1升瓶で2-30本という貴重なお酒です。酵母は明利のM310を使ったそうです。 

香りはカプロン酸のかおりですが、それほど強くなく、旨みもほどほどに抑えているけど、中盤からの膨らみがきれいで、酸とのバランスが良く後味の切れ方が素晴らしく、辛みを全く感じさせないお酒で、これなら金賞間違いないというお酒でした。 

温度が上がってくると滑らかになりテクスチャーが素晴らしい。この蔵の杜氏は南部杜氏の菊池さんですが、しばらく金賞をとっていなかったのに、息子さんが蔵に戻って一緒につくりをやるようになってからの連続受賞です。 

3.和の月 有機純米大吟醸 

このお酒は今年初めてオーガニックのお酒として初めて取り組んだ試験醸造のお酒なので、インターネットには写真がありませんでしたので、桶の中の写真で想像してみてください。 

今まで和の月(オーガニックの酒)は美山錦で60%と80%だけを作ってきたのですが、店頭にでると純米大吟醸のお酒と比べられるので、少し悔しい思いをしていたのですが、今までやってきたことに感謝するつもりで39%精米(サンキュー)の純米大吟醸を作ることにしたそうです。有機米を提供している山崎さんと相談したら、茨木では山田錦の栽培は難しいということで美山錦39%でやろうとしてたところに、兵庫県のある農家から有機米の山田錦を使ってくれないかとの申し入れが来てそれを使うことになったそうです。 

酒質についてはよくわかりませんが、飲んでみると上述の山田錦には少し及ばないお酒でしたが、有機米らしい優しさはありました。今年2度目のチャレンジをするので、期待してくださいとのことでした。 

有機のお酒を造るにはお米や設備に制約があるだけでなく、データーをきちっと取っておいく必要があるし、酵母も有機の証明書がなくてはいけないので、酵母は秋田今野の7号系の酵母を使っているとのことでした。そこまでしなくてはいけないとは大変なことね。・・・ 

4.彦市 純米酒 

20150907204536彦市は息子さんが蔵に帰ってきて初めて仕込んだお酒です。彦市という名前は歴代の蔵元が襲名していた名前で、その名前を復活させたもので、地元のお米を使い大洗らしいお酒を造ってみたいということでできたお酒です 

原料米は大洗産の一般米であるチヨニシキ100%使用で、精米度60%、アルコール度数は15-16度で、酵母は協会酵母7号を使っているそうです。 

ラベルは地元の海をイメージしていて、大洗らしさを出していました。 

飲んでみるとお米の香りと高級アルコールの香りがするけど、いやな香りではなく、味は甘みと酸とのバランスが良いなかなか面白いおさけで、後でまた飲んでみたいなという思いをさせるお酒でした。4合瓶で1200円だそうですから、コストパフォーマンスはすごくいいですね。 

5.鯛より 吟醸酒 

02282025_56d2d924645deこのお酒は月の井の定番のお酒として昔から作っていたお酒で、漁師が漁から帰ってきて「今日はよくやたね」と晩酌するお酒としてく造ったものだそうです。ラベルには鯛の絵が描かれていますが、これは落語家の鶴太郎さんが書いたものだそうです。 

お米は美山錦55%、酒質は日本酒度3.5、酸度1.3、アミノ酸度1.1、アルコール度数15.5と標準的なお酒です。 

飲んでみるとさわやかなさらりと飲めるけど、お酒の輪郭がきちっとしていて、食中酒としてとてもいいお酒だと思いました。これは適切なアルコール添加の技だと感じました。 

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、飲んだお酒はどれも個性があり違い味わいを持っているのに感心しました。これは杜氏の菊池さんの腕が言いことを表しています。 

最後に敬子さんが言った言葉が気になりました。 

今では生産高は500石と小さくなりましたが、10年ぶりに息子が帰ってきて作りを始めたら、また昔の活気が出て蔵人が一つになり始めましたので、これからまた奇跡が起こるような気がします・・・と 

それを大いに期待しましょう。 

最後にお料理をお見せしたいのですが、写真がないので一つだけお見せします。それは「はなみえ」のてまり寿司です。 かわいいでしょう!

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