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東大蔵元会を知っていますか。凄いメンバーですよ

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東京大学ホームカミングデイというイベントがあるのをご存知ですか。この会は東京大学全体の卒業生の会が10月の第3土曜日に開催するもので、講演会やシンポジュウム、同窓会、各種エンターテイメントなど、幅広いイベントが東大の構内のいろいろなところで行われます。参加者は卒業生だけでなく誰でも参加できるので、講演会の内容も専門家でなくても気楽に聞けるようなものが多いようです。 

特にエンターテイメントには結構面白い掘り出し物のイベントがあります。例えば安田講堂を使った音楽祭とか、2015年に国の名勝に指定された懐徳館庭園の一般公開とか東大落語研究会OBによる寄席など十数種類のイベントが企画されています。その中で日本酒が好きな人には見逃せないのが東大蔵元会が行う利き酒会です。利き酒会といっても大層なものではなく、出店している蔵元のお酒を有料で飲むというだけのものですが、参加している蔵元のレベルが凄いのです。この人たちとゆっくりとフランクに話せる会など他にはありません。 

東大蔵元会という会が正式にあるのかどうかは知りませんが、東大出身者である蔵元や、現在東大で教えている蔵元が集まっている会の名前ようです。その蔵元には結構有名な蔵が多いのに驚かされますが、その蔵を紹介しましょう。 

順序は北から紹介しましょう。卒業年数は推定もあります。 

1.㈱わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒) 

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)
                   (代理:仲野娘さん) 

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒) 

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒) 

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)
                   (代理:河野純子 工学部卒)
 

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.㈱喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒)
                    (代理:田中利忠)
 

ホームカミングデイの蔵元会のテントは安田講堂の前にありました。入り口にはお世話役の高橋さとみさんがおられて、さわやかに迎えてくれました。 

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ここで10枚綴りのチケットを1000円で購入します。大吟醸は2枚、純米吟醸以下は1枚で約40ml1杯を飲むことができます。2000円で十分酔っ払います。お伺いしたのは10時半ぼろでしたが、人はほとんどいませんでした。 

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これが前景の写真です。奥から北の蔵元から並んでいて、最後が喜多屋でした。では一人ひとりお話したことを紹介します。 

1.㈱わしの尾 代表取締役 工藤 朋 

Dsc_0003_2わし尾は岩手県に八幡平市にある比較的大きな蔵です。 

工藤さんは工学部精密工学科で医療用のロボットの研究をしていたそうで、10年前の27歳の時に蔵に戻って何も知らないところから勉強して杜氏と一緒に酒造りをして現在に至ったそうです。 

あれから10年、お酒つくりはロボットの研究と共通のイメージがあるそうで、研究熱心な工藤さんはしっかり勉強されていました。 

この蔵の陸羽132号というお酒を飲んだ時、イソアミルアルコールのような高級アルコールの香りがするねと言ったら、精米度が60%なら仕方がないですよ。でも最近の酵母の中にはイソアミルアルコールを出さない酵母もあり、高級アルコールの香りが抑えられるだけでなく、イソアミル系の酵母でも酢酸イソアミルの生成が抑えられるそうです。 

また、香りの話になり、金賞受賞酒はカプロン酸エチルの香りが好まれていて、確かにカプの香りはパット立ちあがるのが良いのかもしれないけど、そこに酢酸イソアミルがあるとふわっと広がるので、うまくバランスさせるとなかなか良いと思うし、最近の金賞受賞の香りも徐々に変化していると思うと言われました。その通りだと思いました。 

わし尾の酒が今後どのように変わっていくか楽しみですね。 

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔 

僕とのツーショットの写真しかないので、お許しください。 

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新政酒造のお話はあえて紹介しません。それを知りたい人は下記のURLを見てください。http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-1586.html 

今回は祐輔さんと雑談して面白かったお話だけ紹介します。 

<火入れについて> 

最近火入れの研究をしているのですねとお聞きすると、火入れは奥が深いのです。蔵によってお酒の搾り方も違うので、火入れ前のお酒の状態によってベストな方法があり、どのお酒にもあう火入れの方法はないそうです。例えば炭酸ガスが多く含まれるお酒はガスが抜けないように栓をして火入れをすべきだし、ガスが抜けたお酒を火入れする場合は栓を開けて火入れをし、温度が上がってきて液面が瓶のトップに来た時に栓をすれば、冷えたときにその部分が真空になり酸化が防げるそうです。要は火入れの前の状態の溶存酸素の量やガスの量などを調べて、最適な方法を決めるべきだそうです。 

<生酛つくりについて> 

最近新政の酒造りでは酒母は全量生酛つくりをしているのを知っている方は多いと思います。新政の生酛つくりは従来の櫂で擦りつぶす方法ではなく、古式生酛法を現代技術で再構築して実現した新方法です。これについては下記のURLで紹介しましたのでご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-d8e7.html
 

この方法を簡単に言えば、ポリエチレンの袋に米と麹と水を入れて時間をかけて米を溶かす方法です。この方法を使って酒母を作っているのですが、新政ではすべて40%精米のお米を使って酒母を作っていることを知っている人は少ないのではないでしょうか。これにはちゃんとした理由があることを教えていただきました。

昔の酒造りはお米の精米度が低かったので、米が溶けるのに時間がかかったようです。この状態では、櫂で酛摺しても溶けが悪くてグルコース濃度が低いので、硝酸還元菌によって亜硝酸反応を起こすので良いそうですが、精米度が40%くらいになると擦りを入れるとすぐ溶けてグルコース濃度が上がって、硝酸還元菌が働かなくそうです。それで、色々研究をした結果、精米度が40%の時は3日間ぐらいじっとして、ゆっくり溶かすことによって、初期のグルコース濃度14%以下に抑える方法を見つけたそうです。亜硝酸反応が起きた後は櫂をいれてもよく、グルコース濃度を26%以上にするそうで、いろいろ失敗を重ねて、この方法を見つけたそうです。 

ですから、精米度の違うお米を使うと、精米違いにによって櫂の入れ方を変えなければいけないことになり、管理が非常に大変になるので、新政ではすべてのお酒の酒母は40%精米で行うことにしたと思われます。僕は今までは酒母だけは精米した米を使った方が、良いお酒ができるのかなと思っていましたが、違う理由があったのですね。 

<グルコース濃度について> 

当日はNO6 R-typeとコスモスラベルの純米酒の改良信交40%を飲んだのですが、同じ6号酵母でも全く味わいの違うお酒でしたので、その理由をお聞きしました。NO6は家庭で飲んでもらうお酒なので、グルコース濃度を0.5ぐらいに抑えて飲みやすくしているのですが、コスモスは高級酒なので、グルコース濃度を1.3にして甘さを出してまろやかにしているそうです。最近の金賞受賞酒はグルコース濃度を3から3.5にしないと賞が取れないとのことでした。グルコース濃度はどうやって制御するのかとお聞きしたら、麹を作る時に酵素の力価を制御するつくりをしているそうです。 

<日本の農業について> 

ここのブースの裏ではのんびりお弁当を食べたりする場所があったので、そこで祐輔さんにこれからやりたいことを聞いてみました。 

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今祐輔さんが気になっているのは、日本の農業だそうです。今のお米の値段は国民の税金を使って値段をさげているが、そんな補助金がなくても農業が成り立つようにしなければ、その上に載っている日本酒業界は危ういと思っているようです。 

それならば、酒造好適米を高く買って上げれば、酒米を作っている農家はハピーになるのではと申し上げたら、今の酒米の価格は1表1.6万円から2万円ですが、それでは農業は成り立たないので 、価格はその倍くらいにしてあげる必要があるそうです。それを全国でやるのは簡単なことではなく、国の農業政策に深くかかわるところなので、急には変わらない難しい問題ですね。 

それでは、その中で新政はどうしていくのですかとお聞きしたら、自分の王国を作りたいそうです。具体的には新政に酒米を供給する農家には高いお米代を支払えるように、付加価値の高い、高くても売れるお酒を造る努力をして、農業と酒造りが一体となった夢の王国を作りたいそうです。そのためには酒の生産量を落としても他と差別化したお酒造りを目指すという考えのようです。この一つが全量生酛つくりということなのでしょう。この考え方で日本酒の将来が発展していくと良いけど、すぐにはできないのでその夢を目指して頑張るしかないですよね・・・・・

3.出羽桜酒造 代表取締役 代理:仲野社長の娘さん 

Dsc_0007出羽桜の代表取締役の仲野益美さんは東京農大の出身で母校の客員教授を務めるほか東京大学大学院農学生命科学研究科の非常勤講師をされております。 

社長が用事で来れないの、代わりに娘さんが来られたのですが、学習院大学卒で、現在は営業のお手伝いをしているそうです。 

ここで飲んだお酒はML発酵の特別純米でした。ML発酵とはマロラティック発酵でワインの世界で使われています。リンゴ酸を乳酸に変えてまろやかな酸にする発酵で、山形県の試験所が日本酒向けに開発したもので、リンゴ酸のよく出る酵母を使って、そのリンゴ酸を乳酸に変えて飲みやすい酸にしたようです。飲んでみると甘酸っぱいけど飲みやすいお酒でした。 

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤美幸

Dsc_0016金水晶酒造は福島市に唯一ある蔵で生産高270石くらいの小さな蔵です。斎藤美幸さんはその蔵の娘さんで、東京大学に文化2類で入学されて教養学部を卒業されましたが、今までは蔵の仕事はせず、東京でお住まいだったそうです。昨年急に蔵の後を継ぐことになり、蔵に戻ったそうです。ですから家族を東京に残したまま逆単身赴任の生活だそうです。 

蔵には福島県の技能功労者にも選ばれた凄腕の杜氏の佐藤政一さんがおられて、最近まで8年連続で金賞をとっている実績があります。美幸さんは杜氏見習いとして現在酒造りを猛勉強しているところだそうです。 

 

108006486金水晶の名前は近くにある金山と清水の水晶沢からとった名前だそうですが、美幸さんが蔵に戻ってやった仕事に新しいラベルの作製があります。 

金水晶の純米吟醸しずく絞りは福島県のオリジナルな酒米と酵母で造った袋搾りという新酒ですが、金水晶の漢字のイメージを形にしたデザインにしたそうです。これは女性ならではの感覚のユニークなものだと思いました。佐藤祐輔さんにも見てもらいましたが、とてもいいと感心していました。 

飲んでみるとキレイ系のお酒で、ちょっと甘めですが、味はしっかりして面白いお酒でした。

 

 

5.大七酒造 代表取締役 太田 英晴 

Dsc_0008大七酒造は二本松にある生産高5000石の老舗の蔵で、太田さんはその10代目の当主です。初めてお会いしたのですが、穏やかな口調と上品な物腰はエリート教授のような方でした。 

若いころはロシア文学を好む青年でしたが、大学は法曹界や国家公務員になる道の法学部を選びましたが、最後には蔵に戻ることを決意したようです。 

蔵に戻って一番力を入れたのは生酛の酒質を上げることに取り組むことだったそうです。この日は純米生酛を飲みましたが、とてもあたりが柔らかくしかも味わいのあるお酒でした。 

生酛作りであって、どのお酒も熟成して出しているにもかかわらず、色がついていないし、熟成の香りがあまりしないのは、うまく活性炭を使っているからだと思いますが、そのことをお聞きしたら否定も肯定もされませんでしたので、間違いないと思います。活性炭を使ってもお酒の良さを引き出せる技術は素晴らしいと思います 

6.下越酒造 代表取締役 佐藤 俊一

Dsc_0009下越酒造といってもどんな蔵だか知らない人も多いと思いますが、新潟県の麒麟ですと言えば知っている人も多いと思います。その麒麟の社長兼杜氏をされているのが佐藤俊一さんです 。 

俊一さんの父上は国税局鑑定官でしたが、俊一さんも東大を卒業後国税局鑑定官になられて、親子2代国税局鑑定官というだけでなく、農学博士でもあります。 

佐藤さんが最初に興味を持ったのは出品酒クラスの大吟醸酒を低温で熟成させる淡熟タイプの熟成酒の研究でしたが、その後長期熟成研究会で研鑽され、最近では山廃つくりの純米原酒を常温で熟成させる濃塾タイプの熟成酒も製造しています。 

酒類総合研究所および東京農業大学との共同プロジェクトとして日本酒100年貯蔵プロジェクトがあり、それに蔵のお酒を出品してるそうですが、自分は飲めないけど、100年後には自分のお酒はすごくよくなっているのではとほくそ笑んでいるそうです。

.惣誉酒造 代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)
                   (代理:河野純子)
 

Dsc_0015惣誉酒造は生産高3000石もある栃木県では大きな蔵です。 河野遵さんは経済学部を出て松下政経塾に行ったほどの方です。今回は用事があって、奥様の河野純子さんがおいでになりました。とてもかわいい感じの方ですね。後で聞いたのですが奥様も東京大学卒で工学部建築工学科だそうです。

お酒の造りのことはあまり詳しくないようですが(これは僕も思い違いかもしれません)、純米70生原酒をいただきました。兵庫県の特A地区の山田錦を70%しか磨かないというのはある意味では大変贅沢なお酒といえます。 

飲んでみてびっくり。70%磨きとは思えない奇麗さで、高級アルコールの香りが殆どありません。特Aの山田錦は蛋白質が少ないのか、発酵の仕方が違うのか どうしてなのか聞いてみたいものです。 

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正

Dsc_0010武重本家酒造は佐久市にある生産高3000石の老舗の蔵です。武重さんは工学部精密工学科を卒業してソフト関係のベンチャー企業を立ち上げている根っからの技術屋さんですが、蔵元になる人がベンチャー会社を立ち上げ、その社長をされたということはあまり聞いたことがありませんね。それだけの力量のある方なのでしょう。 

その会社を閉じたのかどうかは知りませんが、蔵に戻られてからは蔵で培われていた生酛つくりの伝承に力を入れたそうです。 

今回は大吟醸おり酒「白珠」を飲ませていただきました。これは生酛つくりではなく、山田錦39%精米の出品酒レベルの大吟醸のおり絡みの部分のお酒だそうです。香りが高く、カプやイソの香りがしたので、酵母をお聞きしたら、M310と1801のブレンドだそうです。まろやかでなおかつ味の広がりもありいいお酒でした。 

この会には息子さんが来られていました。息子さんは応用物理工学科の4年生だそうです。親子そろって東大出身の蔵はここだけではないでしょうか。良いDNAがあるのでしょう。

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 9.長龍酒造 代表取締役 飯田豊彦

Dsc_0013現在は奈良県にある蔵ですが、もともと奈良県にあった小さな蔵(本家)の息子が分家の形で大阪に酒問屋を作ったのが始まりだそうです。その後現在に至るまでの経緯はとても複雑で簡単には説明できないぐらいですが簡単にまとめてみます。

大阪で独立して店を構えたのが1923年、1963年に大阪に八尾市にお酒のビン詰めを行う長龍酒造を作り、その後1979年に奈良県の広陵町にお酒を醸造する広陵酒造を作ります。その後1993年に長龍酒造と広陵酒造を合併し長龍酒造(ちょうりょう)ができ、今日に至っていますが、その間酒造会社だけでなく十数の関連会社を作り飯田グループができていて、飯田豊彦さんはその主な会社の代表取締役をしているようです。

飯田さんは経済学部出身ですが、蔵本会の参加は今回が初めてだそうです。

飲んだお酒は愛知県で作られ奈良県だけで登録された酒造好適米の露葉風で「山乃かみ酵母」で作ったお酒です。日本酒ー7、酸度2.9のお酒ですが、ワイン的な酸味ですが、あまり棘がないけど、ゆっくり後味が残る面白いお酒でした。

この蔵がどんなお酒を造っている蔵かは今回の試飲だけではわかりませんでしたが、ホームページはしっかりしているし、造りは手つくりの部分と最新のコーンピューター制御の部分がうまく使われているようなので、一度見学してみたいと思いました。飯田さんお願いいたします

10.㈱喜多屋 代表取締役 木下浩太郎
                  (代理:田中利忠)

今回は従業員の結婚式があり社長が参加されずに、営業の田中さんが見えましたが写真を撮りそこないましたので、ここでの紹介は致しません。喜多屋さんの紹介はまたの機会にいたします。

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