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インフィニット日本酒中級コース第12回(酒の表現)

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インフィニット日本酒中級コースも最終回の12回となりました。中級コースには卒業試験はありませんで、自分の判断で上級に進むことはできますが、今回は中級クラスのまとめとして、飲んだお酒の印象をどのように表現するかについて、実際に試飲したお酒で具体的に勉強しました。 

その例をお示しする前に、原則としてどのような手順で表現するかの原則論についてまとめておきます。香りについては日本酒の酒質を見ることにより、ある程度予想されるので、それを頭において嗅ぐことが大切だそうです。 

<香りについて> 

お酒の香りには香りのもととなる化合物を鼻で嗅ぎながら特定ししていき、その強弱、濃淡、状態、印象を言葉で表現していきます。まず香りの種類によって大きく8種類に分けて考えます。 

1.原料系の香り: 表現の一例(穀物のような) 

  ・ 原料のお米や酒粕から穀物系の香り
  ・ 蒸米、酒粕、ごはん、玄米、麹、餅の香りです
 

2.清涼系①の香り: 表現の一例(清涼感のある) 

  ・ エタノール、酢酸エチル、乳酸の香り
  ・ アルコールの香りはメンソール、すっとしたアルコール臭、
    酢酸エチルは溶剤とかセメダインの香り、乳酸はヨーグルト
    サワークリームの香りです。
 

3.清涼系②の香り: 表現の一例(青々しい)  

  ・ 新酒生酒に必ず存在するアセトアルデヒドや
    木桶や樽からくる木の香
  ・ アセトアルデヒドの香りは青草、ハーブ、青りんごの香りで
    木からくる香りは松の葉、杉の木の香りです。
 

4.果実系の香り: 表現の一例(フルーティな) 

  ・ カプロン酸エチルや酢酸イソアミルのエステル系の香り
  ・ カプロン酸エチルはリンゴ、メロン、グレープフルーツの香り
    
酢酸イソアミルはバナナ、パイナップル、洋ナシの香り、
    カプロン酸エチルのもとになるカプロン酸はミルクの香り
 

5.重厚系のの香り: 表現の一例(厚みのある) 

  ・ 高級アルコールからくる香り
  ・ 高級アルコールはその炭素数で香りは違ってきます。
  ・ 油性マジック、ろう、油脂、樹脂、穀物、木の実の香り
 

6.熟成系①の香り: 表現の一例(熟成の深みのある) 

  ・ 熟成によって生まれるソトロンの香り
  ・ 熟成の程度は温度や熟成期間で変わりますが、色である
    程度分かります。
  ・ 飴・シロップ、ナッツ、玄米、カラメル、紹興酒、ドライフル
    ーツなどの香りです。
 

7.熟成系②の香り: 表現の一例(漬物のような) 

  ・ Pスルフィド(硫黄化合物)の香りで、熟成の過程で出る
    ことがあるようです。
  ・ 硫黄、酵母、DMS,たくあん、温泉卵、ガス臭などの香り
 

8.不快臭系の香り: 表現の一例(鼻を刺すような、独特な) 

  ・ 製造工程のプロセスの中で生まれる化合物からくる香り
    で、色々なものがありますので、臭いから原因が推定
    できます。
    詳しいことは下記URLを見てください。

 http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/5-27fd.html                                                                         
  ・ ムレ臭(イソバレル)、糠(酸化)、老香(酸化や劣化)、紙臭
    (ろ紙)、カビ臭(TCA),つわり臭(ジアセチル)、丁子臭
    (4VG)などの香りがありますが、いい香りでないので、
    表現が難しいところです。
 

このように香りを特定したとしても、それを香りのもとになる化合物名のような専門的な言葉で説明するのではなく、表現の一例に示したように8つに分類した香りが分かるような表現をするのが基本のようです。そのほか、香りのの強弱、濃淡などの状態・印象を表現するのが良いようです。そのパターンもある程度決まっていますのでその例を示します。 

1.香りが強い場 :
  
しっかりとした、濃厚な、凝縮感のある、複雑な 

2.香りがやや強い場合:
  はっきりとした、ふくよかな、深みのある、
 

3、香りが中程度の場合:
  適度な、程よい 心地よい
 

4.香りがやや弱い場合:
  ほんのりとした、落ち着いた、優しい、やさしい
 

5.香りが弱い場合:
  控えめな、淡い、軽やかな、穏やかな、シンプルな
 

それでは香りの表現をまとめてみますと
①香りの具体例を出す
②香りの強弱を出す
③香の状態や印象を示す

と良いようです。

ではカプロン酸エチルの香りがあって、1回火入れで、まだアセトアルデヒドの香りがするお酒の場合の表現の例を下に示します。

リンゴののようなフルーティな香りに加え、メンソールのようなさわやかな香りが混在する」といった表現になります。もっといろいろな香りがあったとしても、印象の強い2点ぐらいを取り上げるのがポイントだそうです。 

<味について> 

味わいを書く場合は、口に含んですぐ感じるアッタク(1stステップ)、中程で感じる味(中域2ndステップ)、最後に感じるアフター(3rdステップ)に分けて考えます。例えば下記の表のように甘みは最初に強く感じたけど後は少なくなり、うま味はあるけど全体に薄い、酸は後半にしっかり感じるけど苦みは少ないが、滑らかさは抜群なお酒の場合を例にとると、下記の表のように示すことができます。  
 

Photo

このような時の表現は「しっかりとした甘みのボリューム感があり、舌触りがなめらかで上品な印象がある。そして徐々に酸味がしっかり広がり後口に苦みがほんのりと残る」といった表現になります。 

ポイントはこの表のようにはっきりと3つのステップに分けてチェックできるかどうかですが、これは簡単なようで難しいです。線の太さで表すことが難しい場合は、どんな味わいがどのステップで感じたかを認識できれば同じような表現ができることになります。 

以上のようなお酒の表現の仕方は、一般のお客様にお酒の特徴をわかり易く説明するときに使うので、蔵の専門家とお話しする場合は専門的な化学名を使ったほうが的確に情報交換ができるかもしれません。でもここでの表現の仕方は単なる印象ではなく、あくまでも科学的根拠に基づいての表現であることは忘れてはいけないところだと思います。

<試飲したお酒での例の紹介> 

それでは実際に2種類のお酒を試飲しましたのでそれについて、表現仕方を紹介します。

Dsc_0116_2

1.八海山大吟醸 山田錦40%精米 

  Alc度15.5、日本酒度+5、酸度1.0、AA度0.9、酵母協会1001、

2.あざくら 純米吟醸中取り 美山錦50%精米 
  Alc度15-17、日本酒度+2、酸度1.4、AA度1.1、酵母秋田15号

色を見てみましょう。あざくらは明らかに色がついています

Dsc_0115

それでは順番にテースティングしていきます。 

1.八海山 大吟醸

香はあまり強くなく、カプかイソかもなかなか判定しにくい程度である。そのために本当ならあまり感じない乳酸の香りも少し感じるので、これを表現すると、下記のようになりました。
「わずかにフルーツの香りがあるが、全体的にはシンプルで軽やかな印象です」

味については下記の表のようにまとめました

Photo
前述の例にちょっと似たバランスになってしまいましたが、表現としては下記のようにまとめました。
優しい甘みが広がり、滑らかな舌触りが心地いい。徐々に軽やかな酸味が爽快感をもたらし、後味に少しを苦みが残る
前述の例とはかなり印象が違うことが分かりますね。

2,あざくら 純米吟醸中取り

香りについては熟成によりできたフラノンの香りが少し出て、酵母が出すフルーティな香りが抑えられています。アセトアルデヒドが残っているので、さわやかな清涼感を少し感じさせる印象があるが、これはなかなか表現が難しい。

味を見ていくと最初に感じるのが酸であり、甘さは感じるけどシンプルなイメージで、うま味は多少支えているが弱い。滑らかさは酸が強いのであまり感じない。細かいコメントが難しいお酒ですが、次のような表現となります。
優しい甘みと酸味がしっかりとささえているのですっきりとした印象です

以上で紹介は終わりますが、コメントには正解はありませんが、まとめるのがいかに難しいかがよくわかりました。奥が深いですね・・・・・・ 

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