去年のことですが、フルネットの中野繁さんが企画した蒸し燗で愉しむ燗酒ベスト10に参加してきました。これは2015年に日本経済新聞に発表した「お燗にしたい日本酒ベスト10」に選ばれたお酒と主催者が推薦した2種類の銘柄を蒸し燗にして、お燗を楽しむ会です。まず最初に試飲したお酒のリストを紹介します。
1.龍力 特別純米 生酛仕込み 3240円
2.船中八策 純米辛口酒 3024円
3.大七 純米生酛 2749円
4.神亀 手造り純米酒 辛口 3188円
5.常山 純米超辛口 2750円
6.飛良泉 山廃純米 2646円
7.一ノ蔵 山廃特別純米酒 円融 2489円
8.澤乃井 純米本地酒酒 2286円
9.真澄 純米酒 奥伝寒造り 2592円
10.男山 生酛純米 2490円
11.梵 ときしらず 2916円
12.菊姫 山廃仕込み 純米酒 3024円
上から10本は日本経済新聞が発表した順位で並べてあります。
今回は28人の参加で各テーブル7人が着席し、各テーブルに上記に示した順番で同一銘柄の蒸し燗したチロりが各テーブル1本が配られて、各人が50mlほど試飲をする方法で行われました。各銘柄でどれが良かったかを5点満点で採点してどれが人気だったかを投票しました。
このブログはその評価結果を公表するのが目的ではないので、お酒の評価についてはコメントしませんが、1位は龍力で、2位は大七でした。この二つは僕も高く評価したので異論はありませんが、点数をつけるのは少し悩みました。それはどのお酒が旨いかという採点なので蒸し燗をしてどのくらいうまくなったかを調べるものではないので、もともとの酒質に左右されてしまうなと思うからです。龍力は何といっても兵庫県の特A地区の山田錦を使っていますので酒質が高いと思われますので、1位になるのは当然かもしれません。
この会の初めに「庭の鶯」の特別純米「だるまラベル」で湯燗と蒸し燗との比較しましたが、確かに湯燗より蒸し燗の方が柔らかい気がしましたが、それだけでは手のかかる蒸し燗をする価値があるかどうかはわかりませんでしたが、中野さんが毎日蒸し燗を楽しんでおられるのですから、蒸し燗がおいしいことは間違いないと思います。しかも中野さんが、この方法を全国に広めようとこのような会を開かれたことはその熱意に頭が下がる思いです。ありがとうございました。
このブログを書くにあたって、蒸し燗が本当に湯燗よりおいしいのか、おいしい場合はどうしてなのか、もっと簡単に蒸し燗をやる方法はないのかを実験で確かめることにしました。僕の努力の結果を示す前に、中野さんの蒸し燗の方法をご紹介します。
これが蒸し燗用の杉の木製のせいろです。せいろの下には蒸気を出すためのお鍋、その下にはIHヒーターがあります。どう見ても一式そろえるためには約1万円はかかりそうですし、準備が大変な気がします。僕には蒸し燗をするのにそこまでするのかという感じで、なかなかその気にはなれませんでした。
このせいろはこの大きさのチロリを4本置くことができるそうです。ですから28人の会が開催できたのですね。蒸し燗をしている写真をお見せします。
蒸し燗をするにはどのくらい時間がかかるのですかとお聞きしたら、水からやると20分くらいで、蒸気が出てからだと7-8分かなと言われました。ムーン、これは大変だ。こんなものを我が家に置くことはできない。もっと簡単にしかも短時間にできる方法はないかいろいろ調べましたが、内部を加工すれば可能な蒸し器を見つけました。それはツインバード製のSP-4137Wです。
それを見てください。大きさはW260mm×D280mm×H320mmでそんな大きなものではありません。一番下がスチーム発生器でその上に2段のプラスティック製の容器が載っています。容器の高さは1段が80mmなので、その上のふたの高さを考えると、約17mmの高さのチロリは入るなと思いました。
しかしこのようにには大きな問題がありました。2段目の容器の底は下記の写真のように網目状のプラスチックになっていて上下通しで使えないことが分かりました。
でもこの蒸し器は定価が5400円で通販では3200円から3800円で販売されています。これ以上安価で使いやすいものはないと考え、購入してから底板を切り抜くことを考えました。
でもそれは簡単なことではありませんでした。そのプラスティックは熱に強くしっかりした強度のあるものでしたので、カッターでは切れませんでした。そこで半田ごての熱で溶かしながらカットしてできたものが下の写真です。
使ってみて驚いたのは底部のヒーター部分に水を入れて電気を入れたとたんにスチームが発生したことです。それを調べてみると、とても優れた工夫がされていたのです。写真をお見せします。
中央部にらせん状の壁があり、その中央にネズミ色の物体が見えるでしょう。それがヒーターでその周りの水だけが加熱されて蒸発する構造で、蒸発して減量した分だけ螺旋の壁の外から水が補給される仕掛けでした。ですからスチームが直ちに発生するのです。
このようにに蓋をして蓋の中央から均一に蒸気が出る構造になっています。
以上が今回使用した新しい蒸し器の紹介です。この蒸し器のほかに湯燗の代表としてサンシンのミニ勘助を使いました。
蒸し燗のセットは蓋についている蒸気抜きの穴からデジタル温度計を刺し、チロリ内部のお酒の温度を測れるようにしました。この場合はしっかりお酒の中まで温度計が入っていいるかどうかを確認するのが重要です。
この二つのお燗の味を確認する前にお燗を初めて。何分で何度になるかを水で調べましたので、お見せします。
湯燗の場合は沸騰したお湯を勘助に入れて、3分たったら外に出して図ったものです。3分で約46℃になるのが分かります。蒸し燗の場合はスイッチをいてた時からの時間で35℃になったときに電源を切ったときの温度です。約8分で45℃になることが分かりました。
このデータをもとにお酒をお燗をして飲んでみました。飲んだお酒は中野さんの会で1位になった龍力の特別純米 生酛仕込みです。
その結果をお知らせする前に、冷でこのお酒を飲んだ印象を記します。生酛らしい香りとともに旨みが立ち上がり、優しい酸味がを少し感じながら、後味にゆっくりとした余韻を残しながら消えていくお酒で、冷でも結構うまいお酒でした。
ミニ勘助で42度にお燗をして飲みましたが、口に含んだとたん冷と同じ旨みと香りがハット立ち上がり、さっと消えていくようになりましたが、何か荒々しさを感じてしまいました。
蒸し燗で42度にしたお酒は、口に含んだ感じは湯燗と同じように立ち上がるのですが、テクスチャーが全く違い、ソフトに当たってきます。後味は酸味はほとんど感じないでスウッと消えていきました。確かに蒸し燗の方が優しい味わいになりました。これはいけます。
次に考えたのがどうしてこの差が出たのかということですが、実験する前は蒸気がお酒の中に入ったのではと思いまして、お燗が終わったときにチロリをよく観察しましたが、チロリの蓋の上には水滴がついていましたが、中に入っている様子はありませんでした。次に温度上昇時間ではないかという仮説のもとに、ゆっくりお燗ができるお燗器を探してみました。
これは僕がたまたま持っていたお燗器で、ツインバード製のTW-D814Bです。今はこの型は販売中止でTW-4418Bで販売されています。定価は5400円ですが、通販では3200円程度で販売されています。写真をお見せします。
左はヒーター部分でその上に酒器をおきます。ヒーター部分はアルミの金属になっておりこれで酒器を下から温めて温度を上げますが、メーカーの説明書では13分で所定の温度になるとのことでした。温度制御は4点できて、人肌燗37℃、上燗44℃、熱燗51℃、飛切燗60℃となるそうです。
これについても実際のどんな温度になるか測定してみました。その時の写真が下の写真です。
デジタル温度計の頭が重くて、うまくお酒の温度が図れないので、ミニ勘助に支えてもらっています、測定した結果を下記に示します。設定は上燗にセットしました。
13分で44度になると思ったのですが、8分で45度になりましたので、熱燗にセットされていたのかもしれません。セットがスイッチの位置なので本当に何にセットされているかがよくわからないのです。
このお燗器で42度にお酒を飲んでみましたら、蒸し燗とほぼ同じような感じがしましたが、蒸し燗の方が少し良かったかもしれません。まだ1回の試験なので正確なことはわかりませんが、湯燗との違いは温度上昇の違いなのかもしれません。
<僕の結論>
蒸し燗もお燗器でも約8分でお燗ができ、その味わいは湯燗より優しいテクスチャーが得られることが分かりました。でも現状では僕の選んだ蒸し燗器は自分で改造が必要で、メーカーに2段目の蓋の底がないものを作ってくれれば、すぐにでも蒸し燗器として使えますし、とても使いやすいです。
一方お燗器の方は温度計のセットが難しいこと、どのモードにセットされているかの表示がないので、温度計を内蔵していただければ、とても使いやすくなると思います。
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