先日神田の醇さんのところで高千代酒造さんを囲む会に参加してきました。僕は高千代酒造のお酒はあまり飲んだことがないのですが、今年の冬に鶴齢の青木酒造を訪問した時に、地元の酒屋さんの金沢屋を紹介されて、行ってみたら鶴齢のほかに、高千代酒造のお酒がズラリの並んでいて、飲んでみたら美味しかったので気に入ってしまいました。ですからこの会があるのを知り、いの一番で申し込んだものです。
高千代酒造は新潟県の南魚沼市にある蔵で、魚沼産のコシヒカリの産地として有名な場所にあります。この辺りには八海山、白瀧、鶴齢などの有名な蔵があるところですが、高千代酒造は塩沢駅から東に3-4km行った場所にあり、山と川に挟まれた田園地帯にあります。近くには巻機山があり、そこからの伏流水が深井戸からくみ上げられて、仕込み水として使われています。この水は透明感のある超軟水で、仕込み水だけではなく色々なところで使われています。この水は一般販売はされていませんが、東京の特別なお店(六本木のグランドハイアットや丸の内のAWキッチンなど)に行くと飲めるそうです。
この蔵を紹介する時には必ず酒造好適米の一本〆のことを説明する必要があります。一本〆は五百万石の改良品種として新潟県で開発されたもので、五百万石と豊盃の掛け合わせて生まれたお米です。平成5年に新潟県の奨励品種として多くの酒造で使われましたが、五百万石よりも米の旨みがでる利点があります。
しかし、洗米の時に適切な限定吸水をしないと米が粘ってくっつきやすくなるので、エアーシューターで搬送するときに詰まってしまうなど、扱いにくいということと、最近生産量を伸ばす栽培をして米の品質が下がったことから次第に使われなくなったそうです。
高千代酒造は平成5年からづっと使い続けていますが、現在は高千代酒造以外には使っている蔵はなくなったようで、平成17年には県から原種の管理を依頼され、今では高千代酒造から種もみをもらわないと他の蔵は栽培できない状態になっています。
新潟県固有のお米ですが、新潟県以外では使われていないので、酒米のハンドブックにものらなくなっているようです。高千代酒造では平成21年と22年は全国新酒鑑評会で金賞受賞をしており、このお米を使いこなしている蔵です。でも最近はまた山田錦で出品しているようで、今年はそれで金賞を受賞したようです。
平成21年からは精米機を導入して、全量自社精米をするようにしたそうです。今まではコスト面の問題で精米を他社の精米所に委託しましたが、扁平精米などお酒の質を高める新技術の導入と、精米の品質にこだわる高千代酒造は、敢えて手間とコストのかかる自社精米に踏み切りったそうです。金賞受賞をするようになったのはこのことと、関連があるのかもしれませんね。
高千代酒造の社長は高橋マサエさんという76歳のおばさまだそうですが、当主としての力をおもちで、お酒造りについては杜氏にお任せであまり口を出さないそうですが、この方がこの酒は良いねと言うとさっと進んでいくそうです。
本日会のお見えになったのは営業統括の山田修一さんです。
山田さんは変わった経歴の持ち主ですが、今のたかちよの味を出すにあたっては、陰の仕掛け人(僕が勝手に言っているだけ)のようです。彼は元々東京でアパレルの仕事をしていて、趣味がスノーボードだったので、そろそろ新潟に腰を落ち着けてスノーボードに打ち込むつもりで、ある居酒屋でアルバイトをしていたそうです。
そのお店は地元の魚沼地区のお酒を取り扱っていたので、お酒のことも少しわかるようになった時に、高千代酒造の社長と仲の良かった知合いのおばさんの紹介で高千代酒造の蔵見学に行ったら、社長にいつから来るの?と言われて、高千代酒造に就職することになったそうです。きっと社長のお目に適ったのでしょうね。これが5年前のことそうです。
蔵の大きさは1000石程度なので、従業員はそれほど多くなく、酒造りの手伝いをするなど、営業以外のことも色々やっているそうです。その中で、今最も力を入れているのがお酒のプロデュースだそうです。それは日本中のいろいろなお酒を買ってきて、皆で試飲をして自分の蔵のお酒の立つ位置を確認することから始めるそうです。
その時の基準のお酒として選んだのが、陸奥八仙と而今だったそうです。面白いですね。新潟のお酒なので而今はわかるけど、陸奥八仙とはね?それだけ味わいのあるお酒を狙っているというjことでしょう。今では皆で議論をして、どんなお酒にしたいかを決めているそうです。これこそ、アパレル流のやり方ですね。なるほどね・・・・・
高千代酒造のお酒は今までは、高千代、巻機、天地人、円水の銘柄でしたが、7年前から「たかちよ」を製造販売しています。たかちよのラインアップを見てください。山田さんが作ったものです。
ちょっと字が小さいので読みにくいと思いますが、クリックすると大きくなるだけでなく、拡大してもらえれば、かなり見えると思います。
この表で面白いのは一番上段のお酒の瓶の写真のところです。瓶の写真の右上に果物の写真がついています。それはそのお酒の味わいを果物であらわしています。赤りんご、グレープフルーツ、ピーチ、パイン、デラウエアなど色々な味が書かれていますが、本当にこんなに色々な味を作り出せるものなのでしょうか。これはお酒を飲みながら考えてみたいと思います。
お酒の味は何で決まるのでしょうか。まずは水やお米があると思いますが、麹の造り方、酒母の造り方、酵母の種類、醪の造り方、加水の仕方、アル添の仕方、搾り方、火入れの仕方、生酒の管理方法など色々考えられますが、この蔵はオリの利用の仕方で味を変えているような気がします。
この蔵ではオリの量によって呼び名を変えています。こんなに細かく呼び名を変えているのを聞くのは初めてのことです。
1.0.5%以下 かすみ
2.1~2% オリがらみ
3.2-3% うすにごり
4.3%以上 にごり
なんでこんなに細かく管理しているのでしょうか。これはこれによって味のバランスが変わり、色々な味わいが生まれると気がついたからではないでしょうか。実際にはどうんな感じになってるのか、チェックして見たいと思います。
それからラベルの色を見るとひとめでお酒のイメージを読み取ることができるのも、まさにアパレルの発想ではないかなと思いました。従来の高千代はちょっと辛口で、和食に合うお酒で、たかちよは和食の中でも味の濃いものやイタリアンなどの洋食にも合わせられるように造っているそうです。これを醇ちゃんがどのように合わせたかも興味ありますね。
では早速飲んだお酒をご紹介しましょう。
0.高千代 大吟醸 一本〆 23BY 火入れ
一本〆100%使用の精米40%の大吟醸で、全国新酒鑑評会の23BYの出品酒です。この年は残念ながら入賞していないようです。
平成24年と25年の新酒鑑評会のお酒は山田錦で出品したそうですが、平成23年は一本〆でしたので、今残っている一本〆の出品酒としては最後のお酒になるそうです。
出品したお酒以外を袋取りで1升瓶30本の限定酒で、蔵にももう2本しか残っていない貴重なお酒で、たしかにのど越しが滑らかで、余韻がきれいですうと消えるお酒でした。柔らかい旨みの中にちょっと辛みを感じました。
ラベルの裏にその年の最大積雪量が書いてあるとのことでしたが、気が付きませんでした。
1A. 豊醇無盡 たかちよ 桃 生原酒 かすみ
たかちよはお米の表示はしていませんから、一本〆をどのくらい使っているかはわかりませんが、扁平精米であることは確かなので、それjから判断してくださいとのことでした。
桃の味がするとのことでしたが、なかなか桃の味のお酒は飲んだことがありません。とろっとした甘みがちょっと桃らしかったかもしれません。なかなか難しいところです。
桃の味は意外にわかりにくいので、山梨県の桃を食べながら桃の味が出るように工夫したそうです。オリがすこしはいっているのが、その効果を出したのかもしれません。
1B. 高千代 純米大吟醸 一本〆 生原酒 何時注がれたのかわからないうちに終わってしまったので、0番との比較ができないために、感想が書けませんでした。 一本〆は精米の耐久力が強いお米なので、扁平精米には適したお米のようですこれは一本〆100%、精米度48%の純米大吟醸です。このお酒は0番の乾杯酒に続けて出されたので、あまりお酒の印象がないのです。
2.高千代 純米酒 夏生原酒
このお酒は一本〆65%精米の辛口の純米酒です、日本酒度が12もあり、アルコール度数は17-18度もある生原酒ですが、夏酒としてこれから出荷するお酒です。
ドンとした旨みではないけど、甘みと酸味をを同時に感じるラムネのような感じのお酒です。かねゑ越前屋の藤井社長のお話では杏を食べながらサイダーを飲んでいる感じという表現されていました。
温度が上がってくると、日本酒らしい味わいが出てくるので、このお酒は冷たくしてぐいと飲みたいお酒ですね。
3.豊醇無盡 たかちよ 青 火入れ
このお酒はオリがらみの火入れのお酒です。お米の種類とか精米度はわかりませんが、純米吟醸レベルでしょう。先ほどの表の1番のお酒で、「たかちよ」ブランドの第1号だそうです。このお酒を開発するためにオリ絡みのお酒を30種類くらい飲んで味を決めたそうです。苦労しているのですね
オリの甘さが火入れで抑えられているので、口に含んだ感じが黄色のグレープフルーツのようなイメージのお酒でした。程よい旨みと酸味がマッチして、のど越しも柔らかく綺麗に消えていきます。オリがらみを火入れするとこんな味わいになるとは知りませんでした。
このお酒はお燗にも向いているし、開栓してから2-3日置くと、もっと良くなるとのことでした。
4.豊醇無盡 たかちよ 黒 生原酒
このお酒もお米の種類、精米度はわかりませんが、純米大吟醸の厳選中取り生原酒です。
お酒の説明文では完熟したパインの味と書いてありましたが、藤井社長のお話では缶詰のパインの味だねとおっしゃっていました。
他のお酒とは香りが違っているけど、言われてみると、最初に感じる甘みの味わいがちょっとパイナップル的かなという感じでした。結構旨みのしっかりしたお酒を狙ったものらしいので、旨みがある幅を持って入ってくるけど、スッと抜けていく感じが新潟らしいお酒になっているように思えました。
5.豊醇無盡 たかちよ 紫 SS生原酒
このお酒はうすにごり活性生のお酒です。SSと書いてあるのは春に出すお酒の意味だそうです。秋に出すお酒にはAWと書いてあります。
説明では葡萄のデラウエアの味と書いてありました。藤井社長の説明では小粒のデラウエアを2-3個の口に含んで、皮だけを吐き出した時の後味という説明をしていました。
僕には葡萄の感じはしませんでしたが、丸い塊のような粒の甘みを感じるのがデラウエアなのかな。僕にはオリの量とシワシワ感のバランスで生まれるのかもしれないと思いました。
6.豊醇無盡 たかちよ 空 生原酒
これもお米と精米度はわからないけど、オリがらみの夏酒の生原酒です。多分純米吟醸レベルです。
アルコール度数は16℃ですが、さっぱりした飲み口で今までのお酒のような丸い感じの旨みはなく、軽い甘みと酸味があるので、ラムネのような味と表現されていました。
オリがなかかったら少しさみしい感じがするお酒でしたが、夏に冷やしてグイっと飲むにはいいお酒かな。
7.豊醇無盡 たかちよ 赤爆濁 生原酒
これは最後のお酒でした。赤爆濁りとは名前が凄いよね。このお酒は非公開のお酒で試験的に6本のみ造ったお酒だそうです。30歳から40歳の独身の男性が女性を口説く時に飲むお酒をイメージしたそうです。
このお酒はいわゆる活性にごりで、左の写真のように最初に太い針で栓に穴をかけてガスを抜いている状態で、ガスが抜けきるまで待ってからのみました。飲んだ印象はシワシワ感のある甘酒と言った感じで、シャープさも感じる不思議なお酒でした。
以上で飲んだお酒の感想はおわりますが、この蔵の生酒はオリの量を変えることで、味なバランスを変えているのは確かです。その他生酒の貯蔵方法でも味を変えることを狙っているようです。生酒の管理温度は‐2度から0度で、わずか熟成をする温度であることと、同じ温度でもタンク貯蔵か瓶貯蔵かで味が変わるそうです。具体的にはタンク貯蔵ですとガスが滑やすいのに対して、瓶貯蔵ではガスは向けにくい差がでるそうで、またそれに貯蔵期間を制御することでまた変わるようです。
こうやって色々な味のお酒を造っていることはわかりましたが、これだけ微妙な味をお客様に届けるには、酒屋さんの管理がしっかりしていないと出来ないことです。だから「たかちよ」は特定の酒販店にしか卸していないのでしょうね。
最後に周りの人と写真を取りました。あれ!武内良さんがいますね。最近淳さんのところでよく一緒になります。相変わらず藤井社長の頭は光っていますね。
皆さんいい笑顔ですね
それから会の最後に高千代の前掛けをジャンケンで争ったのですが、カメラマニアの大井さんが仕留めました。おめでとう。
武内さんがおられるところには必ず飾られている、例の酔っ払いパンダのイラストがありますね。飲んだ蔵のお酒の分だけあるのでしょうね。
お料理編
南蛮海老タルタル 旬の鮮魚のお刺身
切り昆布煮、越後もち豚冷シャブ
のっぺい汁 米粉饅頭
これが3番のおさけにピッタリ かぼちゃとひき肉の合わせ
海ますの焼き漬け お揚げと山菜のみぞれ煮
きりざい丼
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