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本金酒造の恒太朗さんは頑張っています

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11月20日に神田の醇で本金酒造の9代目の蔵元である宮坂恒太朗さんと奥様のちとせさんをお呼びして、本金のお酒を飲む会が開かれました。醇の日本酒の会は蔵元をお呼びして、蔵の日本酒と淳さんのお料理のコラボレーションを楽しむ会で、醇のお店ができてずっとやってきていましたが、11月21日をもって神田のお店を閉じることになったので、醇で行う最後の日本酒の会として行われたものです。 

僕が醇の日本酒の会に初めて参加したのが2011年の2月の天明の会だったと思うので、今年で約4年間弱の付き合いになります。その時以来この会が大好きで、出来るだけ参加するよう頑張ってきたのですが、今回がその最後の会となるのということで、万難を排しての参加でした。 

一方会を主催する醇さんは今回は最後の締めとなる会となるので、恒太朗さんを熱く応援している地酒屋こだまの武也さんと一緒に本金酒造の会にしたいと思っておられたようで、これが実現して大変うれしいとのことでした。 

恒太朗さんは前の杜氏である北原太一さんから引き継いで、平成20年から杜氏になられて新しいお酒造りにチャレンジしていますが、約2年前にALS(筋委縮性側索硬化症)という難病を発症し、今では車いす生活の状態で、立つことが難しいし、声を出すのもままならないほどになっていますので、なかなか良いショットが撮れませんでしたが、3人が写っている写真をお示しいたします。

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後ろ左から店長の猪狩淳さん、地酒屋の児玉武也さん、そして手前に宮坂恒太朗さんです。恒太朗さんは声を出すことがつらい状態なので、小さなマイクを付けてお話になりましたが、その内容は大変しっかりしたものでしたので、それと彼をサポートしてくれた児玉さんのお話を紹介しながら、本金のお酒や恒太朗さんのことについて紹介したいと思います。 

本金酒造は正式の名前は酒ぬのや本金酒造と言いますが、創業は宝暦6年で250年を超える歴史を持つ蔵です。創業当時は志茂布屋(しもぬのや)の屋号を持ち、昭和の初めに酒布屋(さけぬのや)の屋号に変えてから現在の名前になったようです。蔵は長野県の上諏訪ありますが、当時は13軒の造り酒屋があったそうです。今でも5軒が営業そうしていますが同じ通りに並んでいるので、年に2回行われる上諏訪街道呑み歩の時は大変なにぎわいになるそうです。 

その本金酒造のお酒の生産量は100石強と非常に小さな蔵なので、酒造りは家族ぐるみで行っている蔵ですが、この蔵には本金一筋で50年以上杜氏をしていただいた北原太一さんがおられたそうです。その時代に全国新酒鑑評会に金賞に輝くこともあるほどで(100石レベルの蔵では非常に難しいことです)、その杜氏の名前を取った「辛口太一」は本金の看板商品になっているそうです。 

恒太朗さんが蔵に戻ったのは8年前くらい(正確には知りません)で、蔵に戻った時は生産量はもっと少なく、売れ行きは良くない悲惨な状態だったそうです。でも北原杜氏がしっかりしたお酒造りをしていたので、売り方が悪いのではないかといろいろ努力したそうで、丁度そのころ児玉武也さんにお会いしているのだと思います。武さんのお話では初めて出会って酒を酌み交わしたことは今でも忘れないと言われています。 

僕の想像ですが、恒太朗さんが思い描いているお酒の味は「すっと飲みやすい」「程よく味と香りが膨らむ」「主張しすぎない」ことだそうで、一番大切にしているのは「お酒を通して人を幸せにすること」という言葉に武さんは感激したに違いないのです。その後恒太朗さんのことを見守っているそうですが、杜氏として毎年新しいことにチャレンジしていて、酒質の進化に驚いているそうです。 

その秘密を知る前にもう一人大切な方を紹介します。その方が奥さまのちとせさんです

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左の方がちとせさんです。いつも笑顔一杯の方です。お二人は恒太朗さんが杜氏になった年の平成20年に結婚されて、今では2児の母親です。ブログで見ますと同じ諏訪の方で、ちょっと姉さんのようですが、恒太朗さんが発病してからは、身の回りのお世話だけでなく、心の支えとなっているようで、ちとせさんなしでの恒太朗さんの酒造りは考えられないようです。ちとせさんが大切にしていることは「等身大のお酒」、ここでしか造れない心のこもったお酒だそうで、まさに恒太朗さんと一心同体と言えますね。 

本金のお酒の紹介は後にしますが、酒造りについて恒太朗さんから直接お聞きしたことを御紹介します。 

 蔵に戻る前にどこかで修業をする方が良かったのですが、蔵が小さいのでそんな余裕はなく、蔵に戻って蔵の杜氏に色々教わった。 

・ 酒造りの環境に恵まれていたので、単に売れるためだけのお酒造りでなく、自己流ですが、自分の味を求めながら勉強することができた  

・ 最近は長野県以外の蔵も見学させていただき、良いところは真似をして、自分なりに取り入れながら酒造りをしている。  

・ お酒は飲んでみないとわからないので、他の蔵のお酒を飲んで勉強することは努めてやるようにしている。 

・ 最終的にはどんなお酒を作りたいかを頭の中で想像をくり返しながら繰り返している。  

・ 最後に自分の身の回りに良い人に恵まれていたことに感謝している。(先輩の杜氏、蔵人の今村さん、地酒屋児玉さん、親兄弟、ちとせさんと子供たち等を挙げていました) 

これを通じてわかることは、この蔵の基本となるお酒の太一を大切にしながら、きちっと自分の造りたいお酒のコンセプトをイメージしながら、それに合った酒造りにチャレンジしていることで、毎年進化し続ける努力をしていることと思います。 

武さんのお話によれば、ですから恒太朗さんのお酒は絶えず進化し続けているので、いつ完成するかもわからないけど、長い目で見続けて、その現在のお酒を切り取って楽しでくださいといった言葉が、すべてを表している気がします。 

それでは飲んだお酒を紹介します。全部で10種類のお酒を飲みました。

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この写真は会の最後に並べられた時に撮ったもので、飲んだ順ではありません。お話しやすい順んで説明したいと思います。 

1.本金 大吟醸 美山錦

Photoこのお酒は全国新酒鑑評会用に仕込んだ大吟醸で、長野県産に美山錦39%精米で、1801系の酵母を使って、香りが華やかだけど味の合うお酒に仕上げたそうです。 

本金のように小さな蔵では鑑評会用といっても1本しか仕込めないので、完全に鑑評会用に仕上げると、本金らしさがなくなって、売れなくなるのは困るので、どうしても味のあるお酒にするそうです。ですから最近はなかなか賞が取れないそうですが、諦めているわけではないそうです。 

飲んでみると、美山錦でこんなにしっかりした味が出せるの?というくらい味がしっかり出ていて、適度な酸味もあるので、ちょっと贅沢ですが、食中酒としても良いと思いました。 

いつか美山錦で金賞を取ってもらいたいですね。 

2.純米吟醸 ひとごこち 無ろ過生原酒 3.純米吟醸 美山錦

Dsc_0586_3<純米吟醸 ひとごこち 生原酒> 

写真の左側のお酒です。ひとごこちは長野県で開発されたお米で、美山錦に代わるお米として開発されたもので、高精米が難しいのですが、今年初めて仕込んだ純米吟醸だそうです。 

精米度は55%で、酵母は1801系と7号酵母のブレンドだそうです。18号系で香りを出して、7号酵母による米の旨みを出す狙いだそうです。飲んでみると、ちょっと熟成の感じがして、口に含むと、口の後ろの方に味が広がるので、しっかり酸があるにもかかわらず、あまり酸味を感じませんでした。このお酒は25BYですが、こだま酒店で寝ていた間に熟成したものと思われます。 

<純米吟醸 美山錦 火入れ> 

右側のお酒で、このお酒は恒太朗さんが毎年造りを変えながらチェレンジしているお酒です。精米は美山錦55%精米ですが、去年は7号酵母で造ったそうですが、今年は1801酵母と14号酵母をブレンドして作ったそうです。狙いは適度な香りと旨みを出すことだそうです。 

飲んだ感じでは大吟醸と比べると同じ美山錦なのに、旨みの部分が減ったように思えて、その分だけ酸味をより感じるようです。 

4.純米酒生原酒 5.純米酒 6.純米酒 ひやおろし

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<純米酒 無ろ過生原酒> 

このお酒は長野県産のあきたこまち60%精米、長野D酵母を使った純米酒です。あきたこまちは秋田県で生まれた食糧米ですが、食味が良く日本全国で作らているそうです。 

このお酒は今までの本金の味とは少し違って、日本酒の初心者にも合おうお酒を目指したお酒だそうです。長野酵母は発酵力が弱いので、途中で発酵が止る危険性はあるけど、味わい的には良い酵母なので、数年前からチャレンジして来て、やっと使えるようになって造った第1号のお酒だそうです。 

飲んでみるとすうっと後ろに味が広がって、糸を引くような余韻を感じるお酒で、確かに今までの本金のお酒とは違うようです。今年は少量しか造らなかったけど、あっという間に完売したそうです。来年が楽しみですね・・・・・ 

<純米酒 ひとごこち 火入れ> 

このお酒は本金の中のベーシックなお酒で、長野県産ひとごこち59%精米で、7号酵母で造ってお酒です。僕にとっては7号酵母のせいか?少し違ったちょっと枯れた香りでしたが、口に含むとすぐに上あごの方に旨みと香りが広がっていき、本金ならではの酸を感じながらすっきり消えていくお酒でした。飲み飽きしない食中酒と言えます。

<純米酒 ひやおろし> 

純米酒と同じお米と酵母を使っているお酒ですが、4月に火入れをして瓶に詰めてから、7月初めまで蔵の中で常温で熟成したものを暑くなる前に蔵の冷蔵庫に入れていたお酒です。常温でどのくらい熟成するかを絶えずチェックする気配りが、恒太朗君の心と言えます。 

確かに熟成により少し熟成の香りがしますが、純米酒が口に含むと直ぐに味が広がるのに対して、こちの奥へと広がるお酒になっていました。米の旨みと適度な酸があるので、味のしっかりした食べ物にも合わせることができそうです。 

7.本醸造 辛口太一  8.純米 生原酒 24BY

Dsc_0584<本醸造 辛口太一> 

このお酒は前の杜氏の名前を付けたお酒で、本金の出荷量の80%を占めている蔵を代表するお酒です。お米は地元の飯米60%精米で、酵母は7号酵母です。 

酒のコンセプトとしては飲みやすいだけでなく旨みのある辛口に仕上げています。しかも本金の代表的お酒として毎年味がぶれないように整えていているそうです。 

確かの飲んでみると旨みがしっかり幅広く広がり、あまり辛さを感じないで すっきり後味が消えるお酒でした。上諏訪の駅前の居酒屋の「泉屋」さんで辛口5種類の飲み比べができるそうですが、一度試して見てください。太一だけはわかるそうです。 

<純米 生原酒 24BY> 

このお酒は5番のお酒とスペックは同じで、地酒やこだまで1年半以上熟成したお酒です。これだけ熟成させても生の味がまだ生きていました。でも僕としては9番の純米吟醸の方が好きだな。熟成でどう変わるかはやってみないとわからないのが難しいところです。 

9.純米吟醸 無ろ過生原酒

Photo_2この写真と3の純米吟醸を比べるとラベルに新と書いてあるので、25BYかなと思って良く見ると2012年醸造と書いてあるのでこれが24BYだと思います。何しろ最後にザット並べた状態で写真をとおているので、間違いやすいのです。こだまさん間違えていたら教えてくださいね。 

25BYの純米吟醸とは違って7号酵母で醸したお酒です。24BYはすべて7号酵母を使ったのに対して、25BYでは1801系や14号酵母を使って進化しています。 

このお酒は地酒やこだまで熟成させたお酒で、もう店にはないそうです。たしかに塾生香が鼻に抜けますが、明らかに柔らかく変化しています。僕はこの柔らかさが好きだな・・・・

0.本醸造 すっぴん太一

Photo_3このお酒は本醸造太一の生原酒でなので、辛口太一がアルコール度数が15度に対して、18度もあるお酒です。普通は無ろ過生原酒というのですが、すっぴんと呼ぶネーミングが凄いですね。 

飲んでみると旨みが丸い塊のように口の中に広がり、丸いまま奥に行ったと思うとさっと消えていく感じで切れ味が素晴らしいです。これだけ旨みのパワーがあるとややもすると後味に切れが悪くなるはずなのに、綺麗に消えるのは本金ならではの酸味とアルコール添加の技なのかもしれませんね。 

24BYの純米吟醸も好きだったけど、それはもう店に無いお酒なので、どれか1本と言えば、僕は迷わず「すっぴん太一」を選びますね。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介は終わります。 

会の最後にハプニングがありました。この日は何と恒太朗さんの35歳の誕生日だったのです。最初は11月27日に次回を開く予定だったのが、色々な事情で1週間前倒しにしたのですが、その時は20日が恒太朗さんの誕生日とは知らなかったそうです 

そこで児玉武也さんから花束と猪狩淳さんから誕生日ケーキが渡され、皆でハピバースデいを唄いました。そのときの写真です。

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周りを囲む皆さんがとても嬉しそうでしょう。本人は感激してちょっとぼーっとした感じですが、大変盛り上がった瞬間でした。 

恒太朗さんはこれからALSと闘いながら、これからもお酒造りに邁進されると思いますので、これからは頑張って応援したいと思いました。そのためにできるjことは彼のお酒を買って上げることしかできないけどね。 

ALSは難病ですが、イギリスの物理学者のホーキングさんは今72歳ですが、まだお元気に活躍されております。ホーキングさんが「ALS患って体験したこと」というエッセイを書いていますが、とても心を打たれましたのでそのURLを載せておきます
http://www2u.biglobe.ne.jp/~tahara/Hawking.htm

この会の最後に淳さんがお店を閉じる御挨拶をされ、最後に占めの会で本金酒造ができたのは大変うれしい。さらに今度また日本酒の会を開くことになったら、最初の会は恒太朗さんを囲んだ本金の会にしたいと言われたのが印象的でした。 

最後に僕と恒太朗さんのツーショットをお見せします。この写真は写真家の大井さんに撮っていただきました。さすがプロは違いますね。

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僕の大切な写真になりそうです。

恒太朗さん  

ASLに打ち勝って、皆に倖を与えるお酒造りを続けてください

  フレーフレー恒太朗!!

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