用賀のなかむらやで黒松仙醸と三千櫻の蔵元と美味しいお酒を楽しむ会が開かれましたので参加しました。用賀のなかむらやは中村直人さんが取り仕切る居酒屋ですが、料理もお酒もこだわりのあるお店で、酒通の人が集まる店(もしかしたら酒の変人が集まる店かも)として今では名が知られています。
この方が店長の中村直人さんです。鼻眼鏡の奥から人の良さそうな、でもチョットとぼけた感じのお顔が見えます。どう見てもシェフの格好をしていますが、もともとあるホテルのシェフをしていたそうで、その名残です。それから自力でこのお店を開いたとのことですから、その努力は大変なものです。
声はどすの利いた低音でチョット枯れた声ですが、声の雰囲気とは違ってとてもユー、モアがあって誰からも好かれる方ですね。
今回の会は三千櫻の山田社長が今日は東京にいるので、お酒の会をやりませんかと申し入れがあったのですが、三千櫻さんだけではとチョット渋っていたら、黒松仙醸に新しく杜氏としてやってこられた安藤宏幸さんを連れてくるからということで、急遽まとまった会のようです。
どうも山田社長と安藤杜氏とは何か特別な関係がありそうなので、これについては後でじっくりとその謎をご紹介します。
というわけで、この日集まった蔵元さんはとても豪華な取り合わせとなりました。
まず、三千櫻酒造からは山田耕司社長兼杜氏と奥様の山田和江さんが出席されました。
山田社長のトレードマークのスキンヘッドが光りますね。お隣におられるのは奥様の和江さんですが、沖縄生まれの大変活発なお方で、この日は山田さんとは別々にお客様のところをまわってお酒の説明をされておられました。可愛い人です。
お二人の関係のことなら僕のブログをご覧ください。http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-87ee.html
黒松仙醸からは社長の黒河内貴さんと杜氏の安藤宏幸さんが参加されました。
右の方が黒河内社長で、左の方が安藤杜氏です。皆さんご存じでしょうが、黒松仙醸では今まで丸山杜氏がおられましたが、湯川酒造の湯川尚子さんと結婚されることになり、去年の22BYの造りで杜氏をやめられることになり、その代りの方を探していて、去年の秋から安藤さんが杜氏になったというわけです。ここに至るまでは色々と大変なことがあったので、今回のブログはその経緯と安藤さんの人となりを主に紹介したいと思います。
でもいつもの通り最初にお酒の紹介をしますが、いつもとは違って簡単にしたいと思います。会の流れで1本1本の写真が取れなかったこともありますね。
まずは三千櫻のお酒をご紹介します
写真の左から順番にご紹介します。紫のラベルが袋吊で、ベージュのラベルは生酒か火入れですが、ラベルではわかりません。今回は生酒のようです。酒質の酒度と酸度はラベルには書いてないので、店長の中村さんが変人のお客のために書いてくれたものです。・・・・間違いがあったよ。渡船の23BYの精米度は50%ですから間違えないでね。
① 五百万石 純米酒 袋吊 60%精米、酒度+2 酸度1.9
三千櫻の定番の酒ですっきりしたお酒ですうっと入ってきて余韻が楽しめます。今回は飲めなかったけど、家呑みなら僕は火入れがお勧めです。
② 渡船 純米酒 50%精米 酒度-2 酸度2.6
渡船は滋賀県のお米ですが、硬い米なので味を出しにくいので優しく扱わないと味を引き出せないそうです。去年は55%精米でチャレンジしたのですが、滋賀県の松の司の味に負けないよう今年は松の司と同じ50%精米にしたそうです。軽いきれいな旨みが広がり全体的にはややシャープなイメージで柔らかく広がるお酒です
③ 愛山 純米酒 60%精米 酒度-1 酸度2.4
愛山らしいドンとした甘みが特徴で、味わい深いお酒です。愛山の旨みがよく出ています。さすが山田杜氏の腕ですね。
④ 愛山 純米酒 袋吊 60%精米 酒度-1 酸度2.4
袋吊にすると愛山の甘みがきれいになり、優しさが出てきます。口当たりがよく、シルキーな感じになります。愛山買うならお勧めは袋吊ですね。
⑤ R改 純米酒 五百万石・あさひの夢 60~70%精米 酒度+5 酸度2.0
もともとRichTasteのつもりで名付けたR改ですが、今ではReasonableとかRegularと言われるほど、価格も安いし、普通に飲める味のしっかりしたお酒でした。
三千櫻のお酒はすべて同じ作りをしてるそうで、お米に合わせた麹造りをしているだけで、後はお米が酒の味を自然と造りだしてくれるので、特に何もしていないと山田杜氏は言われますが、お米の特徴をうまく出している蔵としては日本でもトップクラスではないでしょうか。一番不思議なのは酸度がこんなにも高いのに口の中であまりさんを感じないことです。日本酒度も+0くらいと甘めですが甘さは感じません。
あくまでも食中酒を狙った造りをしているので、出品酒は造らないそうです。造りの秘密は下記のブログを見てください。少しはわかるかもしれません。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-87ee.html
次に黒松仙醸のお酒に行く前に、この二つのお酒を見てください。
右が渡船6号の純米酒うす濁り活性です。ピンクのラベルは季節商品を意味します。今回の乾杯酒でした。ピチピチの舌触りと鼻に抜けるあじわいが特徴でしたね。
左のお酒は山田錦40%精米の大吟醸斗瓶囲いスーパームーンの金賞受賞酒です。(22BY)もちろん丸山杜氏のお酒です。酵母は1801系でこんな夜にとは造りが違います。ラベルはこんな夜にの純米大吟醸のデザインに似ていますが、下地の紙が白ではなく、銀色なので違いがわかります。
さすがに1年熟成していので、口に含むと柔らかい舌触りとともに後からひゅうっと香りがたち、とろっとした旨みを感じる美味しいお酒でした。
この日飲んだこんな夜にシリーズのお酒を紹介します。こんな夜にはすべて美山錦かひとごとちの純米酒で精米度合いによってラベルの絵が違っています。
・ 満月 ひとごこち40%精米 純米大吟醸
・ 山椒魚 ひとごこち 50%精米 純米吟醸
・ 山女 美山錦 55%精米 純米吟醸
・ 鹿 ひとごこち 60%精米 純米
・ 雷鳥 美山錦 70%精米 純米
こんな夜にのお酒は下の写真を見てください。
右から満月、山女、鹿、山椒魚、雷鳥です。わかりやすいですね。
・ 満月 これは23BYで安藤さんの造ったお酒です。きれいで素直な旨みがフラットに広がり、すごくおいしいお酒です。でもちょっと後味が気になりました。寝かせてみたいですね。
・ 山椒魚 こんな夜にシリーズの最初に出したお酒です。以前は長野県のお酒といえば美山錦とリンゴ酵母とのイメージがあったので、ひとごこちと1701酵母で長野県らしくないさわやかな酸と上品な味を目指したものです。今回は22BYのお酒で、口に含むと酸味と旨みを同時に感じる絶妙なバランスのお酒でした。酸度は1.7ですが三千櫻より酸味を感じるけど、これが普通だと思います。
・ 山女 山椒魚の次に出したお酒で、美山錦と長野D酵母を使ったお酒で、山椒魚よりしっかりした味を狙ったものです。今回飲んだのは23BYのおりがらみのお酒です。安藤さんのお酒で、今年は少し味が出過ぎたとのことでしたが、オリとの絡みで飲みやすいお酒だったと思います。
・ 雷鳥 美山錦70%のベーシックなお酒を狙ったもので、今回のお酒は丸山さんと安藤さんが一緒に造った酒だそうで、70%にしては雑味がなく、味もしっかり出ていて酸味もあり辛さも感じないので、これはお買い得ですね。1升2400円です。
・ 鹿 21BYの熟成酒で、熟成のフラットでふんわりとした旨みが広がり、ボデーがしっかりしてお燗に合いそうなお酒でした。もともと熟成して美味しくなるように造った丸山さんらしいお酒のようです。
これでお酒の紹介は終わりますが、こんな夜にのお酒と前の杜氏の丸山さんのことについては下のブログをご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-16ce.html
最後にこのたび黒松仙醸の杜氏になった安藤さんがどんな人で、これからどんなお酒造りをしていきたいかをご紹介します。ひげが濃い人ですが、和やかな笑い顔が素敵ですね。この日に安藤さんと会話した内容をインタビュー形式で紹介したいと思います。
・ 酒造りをする前は何をしていたのですか
スーパーマーケットの食品売り場の売り子をしていたそうで、その関係で味とか料理には関心があったそうです。でもある時親友が突然事故で亡くなってショックを受けて、好きなことをして今を生きなければと思いなおして、スーパーをやめて北海道に旅に行ったけど何も見つからず、戻ってきてアルバイトで地元の蔵で酒造りの手伝いをしたそうです。最初は南部杜氏の方言がわからず苦労したけど、やっているうちに次第に酒造りが好きになったそうです。
・ どこの蔵でどのくらい酒造りをしたのですか。
中津川駅の近くの「はざま酒造」(五味饗宴、恵那山)で17年間働き、後半の12-3年間は杜氏として酒造りをしていたそうです。最初は酒造りを何も知らなかったので、蔵の南部杜氏に教わって、その後は能登杜氏の勉強会や越後杜氏の勉強会に参加して、色々な酒造りを学んだので、特に独自の流儀があるわけではないそうですが、全国新酒鑑評会では4回も金賞を取るほどの腕前があるようです。でも2008年に長い間同じ蔵で酒造りをしていたので新しい体験を求めて蔵をやめたそうです。
・ はざま酒造をやめで何をしていたのですか。
20BYの造りのときに1シーズンだけ、三千櫻の山田さんのところでお世話になったそうです。その時の経験が非常に印象深かったそうです。三千櫻に始めて蔵に入った時、直ぐに昔からいた仲間内のような雰囲気で酒造りができたのは山田さんの不思議な魅力だし、付き合えば付き合うほど発見がある人だったとのことでした。その後飛騨高山の久寿玉の蔵から声を掛けられて、平瀬酒造に2009年10月に入ったのですが、蔵に入って3日めに専務が交通事故で亡くなったため、そのシーズンでやめることになったそうです。その後は夫婦で山登りが好きだったので、松本に引っ越して生活していたそうです。
・ どんなきっかけで黒松仙醸に入ることになったのですか
直接のきっかけは地酒屋こだまのたけちゃんが直接のお仲人になったようですが、たけちゃんに聞いたら山田社長から松本に住んでいる安藤さんをどこかの蔵の杜氏として紹介したいから、どこか知っているかと電話が入ったそうです。たけちゃんは黒松仙醸の丸山さんがやめるのを知っていたので、さっそく丸山さんに連絡をしたそうです。それで直接丸山さんと会うことになって決めたそうです。やっぱり裏に山田社長がいたのですね。
・ 黒松仙醸で杜氏をやろうと決めたのはどうしてですか。
黒松仙醸ははざま酒造に比較すると比べ物にならないほど機械化されて蔵なので、手作りしか知らない自分では無理だと最初はお断りしたのですが、丸山さんから手作りでおいしいお酒を作るのは当たり前で、機械化された蔵で最高の酒を作るのが面白いのではないかといわれて、納得して引き受けることになったそうです。丸山さんが黒松仙醸で苦労した心を安藤さんに伝えたかったのですね。
・ これからどんな酒造りを目指しますか。
去年の秋から23BYの造りを担当しましたが、黒松仙醸は力量を持った蔵人がいて、社長をしっかり支えている会社で、トップがいなくても仕事が進む人的にバランスの良い蔵なのがわかったそうです。だから酒を作るだけでしたらそんなに心配はないけど、蔵人をまとめるためには、目標をを明確にして酒造りをする必要があると思ったそうです。黒松仙醸の会社の方針のお酒は従来通り造るけど、丸山さんが造ったこんな夜にのお酒は自分流の味にしていくつもりだそうです。また、丸山さんのように自分流のブランドのお酒も探しながら新しい酒造りをやっていくそうですが、それがいつになるかはわからないけど、あわてず高い目標を定めて努力するそうです。楽しみですね。
・ 酒造りのほかに趣味はありますか
自転車のロードレース(ヒルクライムレース)に出るのが趣味で、そのために週に1-2回トレーニングをしているそうです。だから体脂肪率10%以下とスリムな体をしています。冬場は酒造りで練習ができないので、造りが終わればめいっぱい練習をして、年に4回ほどレースに出るとのこと。実力は6000名参加した乗鞍のロードレースで200位位の実力があるそうです。このように高い目標を定めて努力するのが好きな性格なので、達成できなくても絶えず努力するのが好きだそうです。これは酒造りにも通じているのかもしれませんね。
・ まとめ
基本的には興味あることには何でも取り組むチャレンジ精神が旺盛で、ちょっと個性的で好き嫌いははっきりしているけど、何事にも素直にチャレンジできる柔軟性があると思います。きっと黒松仙醸でも丸山さんとは違った方向性の新しい酒造りをしていける人だと思います。
山田社長も安藤さんに教えることはないというほどの腕があるので、これからを期待していますよ。頑張ってください。
最後にこの会のお料理をチョットお見せします。ここはお酒だけではなくお料理もおいしいのです。
お刺身盛り合わせ サーモンの南蛮付け
和牛ステーキ おろしうどん
黒糖仕立ての甘味
写真を撮りそこなっただけでそのほかにも、天婦羅や串焼きが出ていたことを付け加えておきます。時々店長がお料理の説明をしましたが、すべてのお料理についてそのたびに説明してもらいたいな。
そのためにはマイクとスピーカーがある方がいいですね。
今回の会の進め方でよかったのは、杜氏が席に来たときに杜氏のお酒を飲めたことで、こんな進め方ができると楽しいですね。中村さん色々と工夫をしていきましょう。
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