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ジャズと日本酒蔵元のコラボの会はとても良かった

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僕の日本酒友達の高橋さとみさんから日本酒でジャズを楽しむ会へのお誘いがありました。僕はジャスを好んで聞くことはしませんが、ニューヨークに行った時にブルーノートに顔を出したくなるくらいジャズの雰囲気が好きな人間でしたので、喜んで参加することにしました。 

開催された場所は目白駅から池袋の方に数分歩いたところにあるMAC’s CARRORT というお店でした。僕は初めて訪れたので、全くどんなお店か知らなかったのですが、下の写真のようにイタリアンレストランの雰囲気を持っ店構えでした。 

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中に入ると店の右側に大きなグランドピアノがあって、そのわきに洋酒用のカウンターがあり、40人くらい座れるテーブルがあるちょっとクラシックな大人の雰囲気のお店でした。 

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たまたま僕(黄色い帽子をかぶっているおじさん)が写っている写真がさとみさんのFACEBOOKに載っていましたので、使わせていただきました。お店の人に聞いたらここはイタリアンレストランで、夜にはジャスの生演奏をして、お客様に楽しんでもらっているそうです。ここは学習院の人が良く来るそうで、たまには皇族の方が来られるみたいです。 

食事をしないでジャズだけを聞きに来るのはだめだそうです。残念・・・・

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この会には正雪(神沢川酒造)の社長の望月正隆さんと麓井(麓井酒造)の専務取締役の佐藤市郎さんが、参加されて、蔵から持ってこられたお酒の紹介をされました。各蔵から、とっておきの日本酒が3種類ずつ計6本が提供されましたが、その紹介は後で行います。 

まずはジャズバンドの皆様を紹介します。僕は素人なので、インターネットで調べた情報です。 

・ ピアノ 福田重男 

福田さんは群馬県出身で、小さい時からクラシックピアノをやり、明治大学に入ってジャスに目覚め、辛島文雄に師事されて、1980年にプロデビューをしたからだそうです。現在60歳のベテランジャズピアニストです。 

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・ ギター 高内春彦 

高内さんは栃木県出身で東京造形大学の美術科に進みましたが、主にジャズ研で活躍し、1980年にニューヨークに渡りジャズギターリストとしてデビューをしたそうです。何といっても1990年に女優の松坂慶子さんと結婚され一躍有名になったことは良く知られている話で、現在63歳のベテランジャズキターリストです。 

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・ ボーカル Mamiko Bird 

まみこさんのプロフィルはよくわかりませんが、アメリカでジャズを勉強し、プロとなり、ジャズボーカルだけでなく作曲も行い、2014年には第7回澤村美司子音楽賞をとるなど活躍されていて、最近は福田さんとデユオを組んでいるようです。 

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 以上で3人の紹介を終わりますが、、せっかくですから会の最後のアンコールに応えたルート66の唄をお聞きください。僕のを声や手拍子が少しうるさいですが、雰囲気はわかると思います。下のファイルをクリックするとちょっと時間がかかりますが、始まります。

 「170909_003.mp3」をダウンロード 

ジャズの紹介はこのぐらいにして蔵とお酒の紹介をします。

1.神沢川酒造 

この蔵は静岡県の静岡市と富士市の間にある由比町にありますが、北は山が迫り南は府駿河湾に接する比較的狭い場所なので、昔から東海道の交通の要所の宿場町としてだけでなく、、桜エビとシラスで有名な港町として栄えた地です。この地に蔵を創業したのは望月金蔵さんで大正元年のことですから、比較的新しい蔵と言えます。 

この蔵を造るにあたって、水のいい場所を探して見つけたのが今の場所で、そばに川が流れていますが、それが神沢川(かんざわがわ)ということから神沢川酒造となずけたものと思われます。この水はミネラルをほとんど含まない軟水ですから、軽やかできれいなお酒造りにお適しているようです。 

代表銘柄の正雪の名を付けたのは2代目の望月由松さんで静岡が生んだ反骨精神の高い由比正雪にちなんでつけたそうです。蔵を支えてきたのは岩手県花巻出身の南部杜氏の山影純悦さんで、昭和57年からずっと杜氏をされています。静岡のお酒と言えば、沼津工業技術センターの河村傳兵衛さんの指導による吟醸造りが有名ですが、それは甘、辛、苦、渋、酸の5味のバランスと上品でさわやかな香りを調和させて、何杯飲んでも飽きないお酒といえますが、まさにそれを目指している蔵と言えます。 

河村傳兵衛さんや静岡酵母のことなら下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html

今回は社長の望月正隆さんに来ていただきました。 

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望月さんはどんな方なのでしょうか。この蔵の長男として1962年にお生まれになりましたので、蔵の後を継ぐことは決まっていましたが、若い頃は蔵が苦手で、大学も玉川大学の文学部に行ったそうです。でも先代の社長が大きなけがをしたために、卒業と同時に蔵に戻ったのですが、はじめは酒造りはほとんどしなかったそうです。その時には山影杜氏はすでに蔵におられていました。 

でも、酒造りを勉強したい気持ちはあったそうで、醸造技術者養成の通信講座を受けて、念願かなって沼津工業技術センターの河村先生について研修生として1年間勉強をしたそうです。そんな時に蔵人の一人が怪我で欠けたので、生まれて初めて酒造りを経験したそうで、それで、だんだん酒造りがおもしろくなったそうです 

その後、2006年せいか5代目のに社長に就任し、弟さんの正明さんと力を合わせて順調に成長しており、現在の生産高は1300石位だと思います。 

飲んだ正雪のお酒の紹介をします 

・ 雪 純米大吟醸 山田錦斗瓶どり 

Dsc_0113_2このお酒は兵庫県の山田錦35%精米の純米大吟醸の斗瓶どりで、中取りの部分を生のまま瓶詰めして、瓶燗火入れをしたものを低温で熟成したものです。 

酵母は静岡酵母のHD-1で、酒質はアルコール度数は見落としましたが、日本酒度が+3、酸度は1.1といかにも静岡吟醸を代表するスペックでした。 

飲んでみると酢酸イソアミルと酢酸エチルのさわやかな香りがたち、ちょっとシャープで少し後口に辛みを感じるバランスです。最近の静岡の吟醸酒は香りの低いものが多くなってきている感じがしていますが、このお酒はいかにもHD-1の香りが良く出ていると思いました。これも杜氏さんの実力なのでしょう。 

・ 正雪 純米大吟醸 備前雄町 

11181229271x361このお酒は岡山県の備前雄町45%精米の純米大吟醸です。このお酒の写真を撮りそこないましたので、インターネットから探してきましたが、たぶん同じものと思います。 

酵母は雄町の味を引き出すために、M310を使いましたが、M310だけでは発酵力が弱いので、静岡県酵母のNO-1をブレンドして使ったそうです 

残念ながら酒質は分かりませんが、日本酒度は±0くらいだそうです。飲んでみると香りは抑え気味ですが、カプロン酸エチルの香も、酢酸イソアミルの香もするお酒でした。 

口に含むと雄町らしい柔らかい甘いが広がり、後味でゆっくりと消えていく雄町らしい余韻を感じました。一言でいえばどっしりとした雄町ではなく奇麗な雄町の部類に入ると思います。僕はこのお酒はお気に入りです。

・ 正雪 純米吟醸山田錦 

Dsc_0130_2このお酒は山田穂50%精米の純米大吟醸です。山田穂は山田錦の母親にあたるお米で、全国で栽培しているところは少なく、兵庫県の山田錦を栽培している近くで取れるそうです。 

山田錦よりはやや小粒で心白発生率も低いが酒造特性は良いけど、やや溶けにくいので味を出すのが難しいそうです。 

飲んでみると山田錦に比べるとふくらみが少なく、少しシャープで辛みを感じました。 

この瓶はラベルをよく見ると縞が入って売る特殊なもので、山田穂と愛山があるそうです。色は山田穂の純米吟醸はみどり、純米大吟醸は青緑のようです。 

2.麓井酒造 

この蔵は山形県の酒田市から北東に10KMほど行った八幡地区にある蔵で、鳥海山の麓にあるので良質で豊富な湧水に恵まれていますので、庄内藩主の酒井家の人から酒つくりをやらない手はないと言われて始まったようです。創業は明治27年で、麓と酒井家の井を取って麓井酒造としたそうです。 

当主の佐藤家では長男の久吉が回船問屋をしているときに、酒井家から醸造技術を学んで、明治26年に酒田市の南に酒蔵を立ち上げたのが、現在の初孫を譲する東北銘醸株式会社です。麓井酒造は久吉の姉が養子を迎えてその1年後に創業したそうです。ですから麓井と東北銘譲は今でも兄弟会社で、社長の佐藤淳司さんはは両方の蔵の社長を兼務しています。 

東北銘譲の生産高は約7000石と言われるほど大きな蔵ですが、麓井酒造は約500石とこじんまりとした蔵です。

蔵から専務取締役の佐藤市郎さんに来ていただきました。

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佐藤さんは夏は営業、冬場は酒つくりを担当しています。麓井酒造には杜氏の高橋幸夫さんがおられるので、市郎さんは酒つくり全体を管理しておられるようです 

市郎さんは蔵に戻る前はアサヒビールに勤務していて東京に住んでおられたので、吉祥寺にあるライブバー・イタリアンレストランの吉祥寺ストリングスに行くことがよくあって、ジャズが好きになったとのことでした。こんなところでジャズとの接点があるのですね。 

・ フモト井 純米大吟醸 

Dsc_0120このお酒は山田錦40%精米の純米大吟醸で、酵母は山形酵母のKAだそうです。山形酵母KAは熊本酵母系の流れを持つ酵母で、香りは抑えめですが、味をしっかり出す酵母だそうです。 

酒質はよくわかりませんが、インターネットでの情報ではアルコール度17、日本酒度+1、酸度1.6でした。 

飲んでみると香りは軽いですが、さわやかな酢酸イソアミル系の香りを感じました。口に含むと奇麗な甘みが広がり、後味にも少し甘みが残る感じでした。佐藤さんは日本酒度は+4ですと言われたので、どうして甘く感じるのかと聞いたら、今回はグルコース濃度を増やすようにしているからではないかといわれました。だから軽くても甘く感じて、しかも後味にも甘さを感じたのかもしれません。 

酒造りは奥が深いですね。

・ フモト井 純米大吟醸雪女神 

Dsc_0128このお酒は山形県が最近開発した大吟醸酒向けの酒造好適米の雪女神を35%精米した純米大吟醸です。雪女神は山形県の工業技術センターが開発したもので、山形県の出羽の里と宮城県の蔵の華をかけ合わせた品種です。 

雑味につながる蛋白質が少ない特性があるので、透明感がありすっきりしたお酒になると言われています。 

雪女神という名がついたのは去年のことで、それまでは山形104号と言われてもので、酒造好適米に女性的な名前が付くのは珍しいそうです。今年から山形県の各蔵で雪女神の醸造が始まりました。 

この蔵でも初めての造りでしたが、米の溶けが悪く、造ったばかりの今年の冬では味が薄くどうしようかと思っていましたが、秋まで熟成をしてやっと飲めるようになったそうです 

実際に飲んでみると、香りは山田錦と同じぐらいですが、味は口の中で少し膨らむ程度で全体に奇麗な、いかにも女神といった感じのお酒でした。 

・ 麓井のまどか 

Dsc_0133このお酒は山形県の美山錦55%精米の生酛純米本辛口の圓(まどか)です。独自の生酛造りで醸造した定番のお酒で、燗に向いたお酒だそうです。 

酒質はアルコール分16度、日本酒ぞ+7~+10、酸度1.4~1.5で、酵母は山形酵母です。 

飲んでみるとソフトな飲み口で後味が生酛独特の酸が奇麗に切ってくれる、辛いというよりはドライな感じのお酒でした。 

以上で飲んだお酒と蔵の紹介は終わりますが、ジャズを楽しみながらお酒を飲むのも結構楽しいものでした。

お客様のほとんどが日本酒を楽しむというより、ジャスを楽しんでいるようでしたし、お客様の質が日本酒の好きな仲間とは少し違った雰囲気が感じられました。これも主催した高橋さとみさんの雰囲気が醸し出すものなのでしょうね。

僕のように日本酒が好きなものにとっては、蔵元と色々お話ができる時間が多く取れたというメリットもありました。 

このような会を計画した高橋さとみさんのご苦労は大変なものだったと思います。また今回を陰でサポートしている高橋さとみさんの旦那様にもお礼を言いたいと思います。 

今年の末にまた開催されるようなので、また参加したいと思います

最後にさとみさんと演奏仲間との写真を高橋さんのFACEBOOKからお借りして貼り付けてみました。少し明るくしておきました。

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高橋さんありがとうございました 

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七賢のお酒は最近すごく酒質が上がっています

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調布市の仙川にある日本酒バーあふぎ山梨県の七賢を醸している山梨銘醸の専務取締役北原対馬さんをお呼びしての会が開かれましたので、参加してきました。お店のママが静岡県藤枝育ちなので、いつもは静岡の蔵をお呼びすることが多いのですが、今回はゆえあって、ママが去年七賢の蔵を訪問する機会があって、今日の日を迎えることになったそうです。お店の詳細は下記のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-c472.html 

最初にお店の前でのママと対馬さんのツーショットをお見せします。 

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今回は早速蔵の紹介と北原対馬さんの紹介をいたします。蔵は山梨県の北斗市白州町のあります。この地はJR中央線の長浜駅から南西に2-3Km行った釜無川と尾白川の間に挟まれた場所にあり、甲斐駒ヶ岳からの伏流水が豊富に出る場所で、近くにはサントリーの白州蒸留所があります。ウイスキー蒸留所は近くに川があって冷気があふれていて豊富な水がある場所に作られますから、日本酒の醸造にも適したところだ思われます。 

山梨銘醸は元々長野県の信州・高遠で酒造業を営んでいた北原伊兵衛光義さんが分家をして白州の水のほれ込んで1750年にこの地で大中屋として創業したそうです。この大中屋の母屋を新築した際に、高遠城の城主よりお祝いに贈られた「竹林の七賢」の欄間にちなんで七賢という名がついたようです。その後10代目の北原庫三郎山梨銘醸に改組設立したのが大正14年ですが、蔵としては250年の歴史を持つ老舗の酒造会社と言えます。 

現在は12代目の北原兵庫さんが1977年に社長となって、長男の北原対馬さんが営業に、次男の北原亮庫さんが杜氏として、新し酒造りを営んでします。この地は昔は宿場町として栄え、ほとんど地元向けの普通酒や本醸造を主体とした酒造りをして、生産量も年間9000石を超えるほどだったそうです。兵庫さんの代に入り、特定名称酒への切り替えを始めるとともに、農業法人の「大中屋」の設立や直営レストランの開業などを取り組み、現在の礎を造っています。現在のの生産高は2500石です。 

でも、山梨銘醸が大きく変わったのは、北原兄弟が蔵に戻ってからと言われています。兄の対馬さんは青山学院大学の経営学部を卒業し、弟の亮庫さんは父と同じ東京農大の醸造学部を卒業し8年前の25才の時に蔵に戻って酒造りを始めたそうですが、蔵元が蔵人として酒造りを始めたのは今まで初めてのことだったそうです。そして、亮庫さんが杜氏になったのは今から6年まえの2011年だそうです。最初はあらゆることが問題だらけで、何から手を付けてよいか解らない状態でしたが、兄の対馬さんと話し合い、15年先までのビジョンを5年刻みで描いて、目指す酒質、体制、売り上げや利益まで考えたうえで、新しい設備投資をしたそうで、現在は大掛かりな改革が一段落したところだそうですが、まだまだやりたいことは色々あるそうです。 

それではお二人でどんな改革をしてきたのでしょうか。 

<目指す酒質の決定> 

  この蔵の仕込み水は硬度が20で、透明感があり、奇麗で潤いのある水ですが、ミネラルが少ないので、発酵力が弱く味の豊かなお酒にはなりにくいという欠点があります。でも逆にその特徴を生かした酒造りを目指すことにしたそうです。具体的には水の特徴である柔らかくてすっきりとしたお酒で、軽めのお料理に合わせられるお酒に絞り込み、吟醸系をベースとして不得意な生酛系の酒造りはやめることにしたそうです。 

そのために麹は固く締め、吟醸酵母を使って低温でじっくりと発酵させるだけでなく、アルコール耐性の弱い吟醸酵母が死滅して発生する雑味や香りを防ぐために、原酒でアルコール度数を16度以下に仕上げるようにしたそうです。さらに、上槽後は3-4日以内に火入れすることを励行し常にフレッシュな味が保てるっようにしたそうです。 

更に酵母の選択にも特徴がありました。協会酵母18号は通常最初に甘みが出て、カプロン酸エチルの香りが強く出るのが特徴ですが、この蔵の水では香りが弱く、味にくどさが出ないので、これを主体として使っていますが、後味の切れを出すために協会18号と協会9号酵母のブレンドを使っているそうです。9号酵母だけでもいいのではと思いましたが、9号酵母だけでは味が薄くて辛いお酒になるそうです。仕込み水によってこんなに違うのですね。、 

<蔵の主な設備改造> 

 最近の醸造設備の進歩は凄いものがありますが、非常にお金のかかることなので、小さい蔵ではなかなか難しいですが、この蔵では酒質向上のために少しずつ変えてきたそうです。蔵見学をしていませんので、詳しいことは分かりませんが、酒造萬流の記事から引用すると次のような設備改善が行われたようです。
 ・ 仕込み蔵の空調化と1.5トンの小仕込み化
 ・ 洗米と浸漬の自動化
 ・ 麹室の建て替え
 ・ 酒質測定機の導入による自動化
 ・ 貯蔵設備の充実化
 

<酒造体制の改革> 

 これまでは期間雇用の蔵人が24時間体制で行っていた酒造りをやめて、原則月曜日から金曜日までの8時間勤務を実施しました。このために作業の効率化と酒造計画の組み立て直しを行い土日の作業の撤廃をしたそうです。また、蔵人全員が無線通話機をもって各人の作業の共有化をしたそうで、これにより蔵人に心の余裕が出て酒質の向上が図れたそうです。たとえ生産量が減っても蔵人ののやる気の向上と酒質の向上が会社としての利益を生むのでしょう。 

それから今まで作ってきた品ぞろえを統廃合して、原料米の品種は山田錦、ひとごこち、夢山水、あさひの夢だけとし、精米歩合は70%、57%、47%、37%の4パターンに絞って作業性と品質向上を目指したそうです。7の数字が多いのは七賢の名前とのこだわりのようです。

以上がこれまで行った蔵の改革で、これにはまだまだ終わりがないようですが、これらの改革で明らかに酒の資質は良くなってきていることは確かだと思いますが、それについてはこの会で飲んだお酒の紹介の中で、説明したいと思います。 

それでは飲んだお酒の紹介に入ります。 

1.スパークリング酒 星の輝 

Dsc_0208このお酒は瓶内2次発酵のスパークリング酒で、お米はひとごこち70%精米の純米酒です。まずタンク内でアルコール度数が10度くらいのもろみを造り、それを瓶に澱を絡ませて詰めてから、室温で瓶内発酵させると、9気圧くらいに圧力が上昇した時に瓶の口を冷凍して澱を凍らせてから、口を瞬間にあけて澱を抜いて再び栓をするそうです。その時120CCくらい抜けてしまいますが、それはお互いに補充をして商品にするそうです。その作業は手作業だそうですが、自動化することもできるけれども非常に高価だそうです。 

このお酒の開発は2015年から始めたそうで、開発にあたっては勝沼のスパークリングワイン工場や県の技術センターに行って勉強したそうです。ワイン.スパークリングと違うところは火入れをすることや、リキュールを入れられないことです。開発の当っては変動要因として一次発酵後の残存の糖の量、アルコール度数、澱の量、発酵温度があり、これを色々変えて決めたそうです。その結果、アルコール度数は11度になったようですが、今年発足したawa酒協会に発表に間に合わせています。 

シャンパングラスで飲んでみましたが、さわやかな香りと奇麗な泡が立ち上がり、軽やかでさらりとしたと甘みを持ったシャンパンと言いたいようなお酒でした。精米度が70%なのでややナッツのような香りがしますが、ほとんど気になりません。価格は720mlで税抜きで5000円です。 

対馬さんがこのお酒を注いでいる写真を見てください。落ち着いた雰囲気を持った方でした。対馬という名前は長男なので本家との関連でつけられたとのことでした。 

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このスパークリングを超える新しいスパークリングの「杜の奏(もりのかなで)」というお酒が10月1日に発売されました。サントリーの白州蒸留所とコラボレーションして出来たスパークリングで、1次発酵させた日本酒をウイスキー樽で熟成した後、瓶詰めして2次発酵させたスパークリング酒で、720mlで1万円もするそうですが、今までのスパークリングとは次元が違う味わいだそうです。飲んでみたいですね・・・・・

2.鑑評会用出品酒

Dsc_0210このお酒は山田錦37%精米の大吟醸で、アルコール度数17度の原酒です。酵母は協会18号酵母だけを使った鑑評会用の出品酒で、市販していないお酒です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りは立ちますがそれほど強くはありません。甘みと酸味がうまくバランスしたいかにも出品酒らしいお酒でした。 

鑑評会用のお酒は市販酒とは違って、車でいうとF-1に相当するもので、技術的なチャレンジはありますが、これに重きを置いているわけではなく、市販酒のコンテストであるIWCへの出品も大切にしているそうです。今年はアルコール添加の大吟醸で挑戦したけれども、来年以降は純米酒で挑戦するそうです。 

3.純米酒 風凛美山

115781_2このお酒は麹米がひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米の純米酒です。風凛美山という名前は甲斐駒ヶ岳の凛とした美しさから名前を付けたそうです。酵母は協会18号と協会9号のブレンドだそうです。このお酒は写真を撮るのを忘れたので、インターネットからお借りしました。 

アルコール度数は16度の原酒ですが、飲んでみるとべったりとした甘さではなく優しい甘さを最初に感じながら、後味がすっきりと消えていくバランスのお酒でした。これは9号酵母からできる奇麗な酸が上手くバランスしているからだと思いました。 

温度が上がるとちょっとベタっとなるので冷で飲むの良いと思いました。 

70%精米の掛米を使っているとは思えないほど、奇麗に仕上がっていて、これで税抜きで1升2000円とは安すぎる感じですが、ちゃんと利益は出しているそうです。このコスパは驚きです。しかもIWCで連続して受賞をしているそうですからすごいですよね 

4.純米吟醸酒 天鵞絨(びろーど)

Dsc_0215このお酒は夢山水57%精米の純米吟醸酒でアルコール度数は15度とやや低めですが、これも原酒だそうです。天鵞絨の味という名前がついているのはビロードのような舌触りのお酒という意味だそうです。

飲んでみると香りは穏やかなですが、飲んだ後の中頃からふわっとふくらんで、消えていくお酒で、今日飲んだお酒とは少しバランスが違っているようです。このお酒は温度が上がってもあまり変わりませんでした。 

淡い味のお料理に合わせられるお酒で、お料理の素材を引き立てるお酒を目指して作ったそうです。アルコール度数は低いけれどもお料理ののマッチングはとても良いと思いました。価格は税抜きで1升2700円ですからコスパは良いです。 

5.純米大吟醸 絹の味 

Dsc_0217このお酒は夢山水47%精米の純米大吟醸でアルコール度数は16度の原酒です。このお酒も1回火入れで、基本的には生酒はあまり出していないそうです。絹の味という名はなめらかなお酒をイメージしたそうです。酵母は18号酵母です。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りが強くはないけど、しっかり感じられ、うま味と甘さが最初にポンと広がるお酒でした。お食事に合わせて飲むお酒というよりは、お酒だけで香りと味を楽しむお酒のように思われました。 

価格は税抜きで1升3000円ですから、このお酒のコスパもとても良いと思います。 

6.純米酒 ひやおろし 

Dsc_0219このお酒は6月に作った純米酒を1回火入れして瓶に詰めてから15度から20度くらいの室温で約3か月熟成をしたお酒です。 

お米はは3番のお酒と同じだと思いますので、ひとごこち57%精米で、掛米があさひの夢70%精米と思われます。(これについては説明はありませんでした)。 

ひやおろしの定義は難しいのですが、昔は冬に作ったお酒を火入れした後、常温のタンクで秋まで熟成して瓶詰めして出すお酒を言っていたと思います。最近は初めから瓶詰めして熟成させるところが多いようですが、熟成の温度は決まっていません。これを秋上がりと呼ぶ蔵も多いようですが、ひやおろしは秋に限らす半年くらい熟成して出すことを言うという説もあります。 

飲んだ感じでは甘みは少し減った分スウット口に入ってくれますが、ちょっと辛みを感じました。でも新酒の若々しさは残っているように思えました。 

7.燗熟純米 2年熟成 

Dsc_0222このお酒は2014年にお燗用のお酒として造った山廃純米酒で、今は製造していないお酒です、お店のママが去年蔵見学した時に蔵で売っているのを見つけて購入したものです。 

お米の名前は聞き忘れましたが、精米は70%の純米酒で酵母は7号酵母で、アルコール度数は17度です 

飲んでみると、香りはほとんどなく、奥に甘みを感じるけど適度な酸と辛みを感じるお酒でしたが、お燗をすると透明感とフラット感が出てすっと飲めるお酒へと劇的な変化をしました。 

こんなに良いお燗酒になるのなら、また作ってくださいとお願いしたけれども、山廃造りはやめたそうなので、もう2度と飲めない貴重なお酒となってしまいました。残念・・・・・・ 

このお酒を買ってきたママに乾杯!こういうタイプの燗酒もいいと思うけどね。

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以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒はどのレベルのお酒も酒質が高くきれいであるけれど、きちっと味を出していながら、嫌みのないお酒に仕上がっていますが、同じ味の酒はなく、一つ一つ目的を持った味わいに仕上げているのが良いなと思いました。確かに高級なお酒もありますが、どの酒もコストパフォーマンスはよく、特に純米酒の風凛美山は凄いです。対馬さんの説明ではお酒をあまり飲まない人でも、飲めるお酒を目指しているそうです。前段で説明したとおり、最近の蔵の大改革で、お酒の酒質が大幅に上がったことは間違いありません。

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万齢と福祝の蔵元の会はとても楽しかったよ

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先月錦糸町のある居酒屋の「だれやめ」で、万齢を醸している小松酒造の社長小松大祐さんと福祝を醸している藤平酒造の常務取締役の藤平淳三さんをお呼びしての会が開かれましたので、参加してきました。 

この会は僕の酒飲み友達のお誘いで行ってきたのですが、「だれやめ」というお店は知らなかったけど、こじんまりとしたお店と聞いていましたが、2蔵もお呼びするのはなかなかできないことで、どんなお店なのか興味津々でお邪魔しました。お店は錦糸町の南口から南へ歩いて3分の所にありました。 

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お邪魔して驚きました。本当に小さなお店でカウンタと奥の小さな部屋でたった10人程度しか入らないこじっまりの店ですが、大変こだわりうを感じるお店でした。店長は福永健太さんで、大学を卒業後、宮内庁御用達の料理師会とかよろずや料理師会などの修業をされ、現在のお店「小さな蔵だれやめ」を持ったそうです。だれやめとは鹿児島弁で晩酌をするという意味だそうです。「小さな蔵」と銘打つだけあって、色々な蔵とのつながりがあるようで、この会も10回目を迎えたそうです。凄いところに来たな・・・ 

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この方が店長の福永さんです。にこやかのお顔の中に何かこだわりを感じますよね。 

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福永さんのこだわりに後で凄いものをお見せしますが、カウンターの前にある骨付きの豚のハムですが、2年がかりで作るそうですが、こんなものがお店のカウンターに置いてあるだけでも驚きです。 

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本日のお刺身はひがしものマグロの赤身の塊です。大間の本マグロの半額で買えるそうですがそれでも8000円/kgするそうです。 

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 マグロの塊をガスバーナーで表面を炙っていました。今度僕もやってみようかな。

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今回は万齢の小松社長と福祝の淳三常務さんおお二人をお迎えしましたが、このお二人に対してお客様がたった6人という超こじんまりの会でした。 

<仕込み水に違いによるご飯と出汁の差> 

福永店長が特別なものを出していただきました。それは小松酒造の仕込み水と藤平酒造の仕込み水を使ったご飯と昆布だし汁でした。お米はひとめぼれで、水加減をまったく同じで炊いたものと昆布の量とお塩も量を同じにした出汁だそうです。白米おにぎりは下の写真ですが、お吸い物の写真を撮り忘れました。 

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小松酒造の仕込み水は敷地内の130mの井戸から出た軟水で、福祝の仕込み水は敷地内の600mの井戸からとった中硬水だそうです。驚いたことに仕込み水だけで味が変わるのです。 

 ・ 昆布だし: 小松酒造より福祝の方が昆布の味が良く出ていました。福永さんのコメントではかつおだしは小松酒造の方があっているかもとの話でした。 

 ・ 白米ご飯 : 福祝の方が全体に柔らかく、小松酒造の方が表面が硬い感じがしました。味の差はわかりませんでした。 

いずれにしても仕込み水によって酒の味が変わるということはよく聞きますが、ご飯や出汁までも変わるとは驚きでした。 

では蔵の紹介と飲んだお酒の紹介に入ります。 

<福祝 藤平酒造(とうへいしゅぞう)> 

この蔵は千葉県の久留里市内にあり、久留里線の久留里駅から歩いて数分の所にあります。もともと城下町として栄えたところで、平成の名水100選に選ばれるほどの名水が出るので、この小さな町に昔は多くの蔵があったというほど酒造りが盛んなところです。 

創業は享保元年ですから1716年ですからいまから約300年も前のことです。もともと藤久盛(とうきゅうさかり)というブランドのお酒を造っていましたが、淳三さんのお父さんがおめでたい行事には必ず清酒が飲まれていたので、七福神の福とお祝いを重ねた福祝という銘柄にしたそうです。その父は昭和55年に亡くなったそうで、その後母の恵子さんが社長となっています。この蔵には南部杜氏がおられましたが、15年前から息子3兄弟だけで酒造りをしています。 

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長男の和也さんが経営を担当、次男の典久さんが醸造を担当、3男の淳三さんが営業を担当していますが、酒造りの方針は3人が議論をして決め、仕込みの時には3人が力を合わせて酒つくりをするそうです。今年は一人蔵人が増えて4人で行っているそうですが、蔵の生産量はまだ320石だそうです。酒造りは蔵におられた高橋杜氏に指導を受けただけで、特別な修業はしていないそうです。

<万齢 小松酒造> 

小松社長とは3年前の八芳園の槐樹で日本酒の会をやって、その時のブログに小松さんの蔵と小松さんの経歴について詳しく紹介していますので、下記のURLをクリックしてご覧ください。万齢は長生きをしてもらいたいという意味だそうです 

槐樹:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-5858.html 

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 小松酒造の現在の生産量は350石に増加していますが、400石以上にはしないそうです。それは小松さんが余裕をもって酒造りができる限界だからだそうです。この会の時にお話になったロマネコンティの夢についてお聞きしたら、今もそれを目指しているそうです。具体的には生産量は増やさず、価値の高い酒を造って多少高くてもお客様が納得して買っていただく酒造りを目指しているそうです。この考えの底辺にはこれからは日本酒の幅を広げていかないと日本酒業界全体が低下してしまう恐れがあると考えておられるからです。個性的なお酒を造りには、奇麗すぎる環境では作れないので、個性的なお酒を造れる環境整備も大切だと考えておられるようです。 

小松さんを紹介するうえで外せないイベントがあります。それは小松さんが九州の清酒協議会の会長の時に開催した九州S1グランプリです。それは九州の清酒を東京の人にPRするために企画したもので、決められたお食事をしながら九州のお酒を飲みどの酒が一番人気かを参加者の投票できめるというとてもユニークな企画です。その仕組みはとてもよく考えられていて、少し複雑なので詳細については、僕が書いた下記のブログを読んでください。 

S1グランプリhttp://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/s-1-1979.html 

このイベントにより確かに九州の地酒のPR度は高まりましたが、この企画の準備があまりにも大変なので2014年の第4回を最後に中止されたそうです。 

もう一つ今年新しいイベントがありました。それは佐賀県酒造組合が日本酒ダンスを造りYOUTUBEに流したのですが、見たことはありますか?佐賀県のほとんどの蔵の社長が出演して踊っていますが、小松さんも2回登場しています。下記にそのURLを書いておきますので、ご覧になって小松さんを見つけてください。うさぎと帽子が目印です。 

https://www.youtube.com/watch?v=5N4l_TklNlM 

それでは飲んだお酒の紹介をします。 

福祝が7種類 

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 万齢が7種類でした 

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Dsc_0149_3<福祝 特別純米 山田錦55> 

このお酒は福祝のお中でも一番売れ口のお酒で、日本酒度は+1、酸度1.4、アルコール度数15-16度で酵母は協会1501の1回火入れです。口に含むと旨みがふわっと広がりつつ消えていく、切れの良いお酒でした。 

<万齢 純米吟醸 夏の生 薄にごり> 

アルコール度数は16度で麹米が山田錦50%精米、掛米が雄町50%精米の純米吟醸です。夏酒として6月より販売しているお酒ですが、少しシュワシュワ感があって飲みやすいお酒でした。酵母は協会9号系の佐賀9号です。この蔵では基本的には、麹米に山田錦を使用するそうで、これはよりおいしいお酒を造る仕掛けの一つと思われます。 

Dsc_0153<福祝 純米 雄町60> 

このお酒は原料に全量雄町60%精米を使た純米酒で、この蔵としては初めて熊本酵母を使ったそうです。熊本酵母は協会9号の基になった酵母で、協会9号より香りは少ないがしっかり味を出せるそうです。 

飲んでみると確かに香りは少なめですが適度な旨みが出て、後味の余韻もあるので雄町の良さを引き出しているように思えました。 

<万齢 純米大吟醸 灯> 

このお酒は、お米は佐賀県の一般米の佐賀ひより45%精米の純米大吟醸です。酵母は協会9号と協会1801号のブレンドですから、ある程度フルーティな香りを出した純米大吟醸ですが、それほどカプの香りは強くないお酒でした。 

Dsc_0165_3<福祝 純米吟醸 彗星55> 

彗星というのは北海道で生まれた酒造好適米で、飯沼酒造より紹介されて使ったものですが、今まで使っていた五百万石は新酒の時は良いけど秋口まで引っ張っても味が伸びないので、少し熟成してもおいしくなるお米として使用したそうです。 

酵母は協会1801の前に開発された協会1601を使っているそうです。1601は1801に比べて発酵力が弱いけど奇麗な香りを出す酵母で、奇麗な味わいが出るそうです。飲んでみたら、軽い奇麗なカプロン酸と程よいうまみのバランスが良くなかなかいいお酒でした。 

<万齢 純米全量雄町 生原酒> 

この蔵では麹米を通常山田錦を使うのですが、このお酒は全量68%精米の雄町を使ったお酒で、酵母は佐賀9号を使った無濾過生原酒で、半年間生のまま熟成させたお酒です。 

飲んでみると確かにうまみは出てきていますが、僕には生熟成の香りが気になりましたが、小松さんのお話では海外で人気だそうです。 

Dsc_0174<福祝 中汲純米 生原酒> 

このお酒は山田錦55%精米の特別純米で、最初のお酒の中組を絞ったまますぐ瓶に詰めた生原酒です。日本酒度は+1で酸度は+1.4、アルコール度数17度でした。 

飲んでみると生の味とガス感が残っていて最初に香りと旨みがドンと膨らみすぐ消えるお酒でした。うまく生の良さを引き出していると思いました。

<万齢 特別純米 超辛口>
 

このお酒は小松酒造で一番売れているお酒で、ラベルが5月人形で有名な鍾馗様がついているのが特徴で、平成17BYに初めて作った辛口のお酒だそうです。お米は西海55%精米で、酵母は佐賀9号で日本酒度+9、酸度1.6の辛口ですが、鍾馗様は守り神と言われているせいか、蔵一番の売り上げを達成しているそうです。飲んでみるとスルッと口に入る飲みやすいお酒でした。 

Dsc_0193_2<万齢 秋の酒 特別純米超辛口> 

小松酒造では現在辛口シリーズを出していて、春は通常の辛口、夏は後味が少し甘い辛口、秋は雄町を使った辛口、冬はお燗がおいしい辛口だそうです。 

このお酒は秋に出している麹米が山田錦で、掛米が雄町55%精米の特別純米で日本酒度+9、酸度1.4のお酒です。秋まで熟成したお酒ですが、ひやおろしではないそうで、この蔵ではひやおろしは1回火入れ生詰め原酒を言い、このお酒は加水して15度のお酒だそうで、ひやおろしと呼んでいません。 

このお酒もなかなかいいとおおもいましたが、この蔵のお酒はやはり辛口系の方があっているかもしれませんね。 

福祝 山田錦 純米吟醸50    福祝 山田錦70 辛口純米 

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 <福祝 山田錦 純米吟醸50> 

山田錦50の純米吟醸は特別純米55の次に売れているお酒だそうです。酵母は協会1801号と金沢酵母(協会14号)とのブレンドだそうです。飲んでみるとカプロン酸の香りと酢酸イソアミル系の香りが混じって、さわやかな香りに仕上がっていて、口に含むと味わいがぱっと膨らんですぐにすっと消えていくお酒でした。 

<福祝 山田錦70 辛口純米> 

このお酒は山田錦70%精米の純米酒で、酵母は協会14号です。ですから飲んでみると酢酸イソアミル系のさわやかで穏やかな香りがします。精米度70%にしてはうまみも感じるし、とてもきれいに感じるお酒でした。 

<福祝 燗酒純米酒> 

Fuku_kan_1800_sq_5このお酒が最後に飲んだ福祝のお酒で、お燗して香りを立てないように香りの少ない酵母を使った上に完全発酵させるために、少し高温で自由に発酵させ最後に温度を下げる方法を取っているそうです。具体的には秋田県で開発した花酵母の協会1501を使ったそうです。 

飲んでみると昔流行ったお燗酒とは違った透明感がある上にふくらみも感じるお酒でした。なかなかのものでした 

これで福祝のお酒の説明は終わりますが、福祝の共通の味わいは香りはあまり立てずに、じわっと味のふくらみを中ほどに持って行って、余韻を持たせるような造りをしているように思えました。

全国新酒鑑評会で連続金賞を取ったころのお酒は香りが高くあまり膨らみがないように思えましたが、最近の造りはだいぶ変わってきているように思えましたし、かなり野心的なお酒造りに挑戦しているようなのでこれからが楽しみです。 

<万齢 純米吟醸 希(のぞみ)> 

Dsc_0948_3このお酒は3年前のS1グランプリに出品するために作ったお酒で、香りがあって甘口ですっきり飲めるお酒として造ったお酒です。それまでのS1グランプリで優勝したお酒はどれも甘口で、辛口のお酒はすぐに落選してきたのを見て、自分の蔵は辛口が主体でしたが、思い切って甘口にチャレンジしたそうです。 

S1グランプリはおつまみを食べてまだ口の中におつまみがある時にお酒を飲んだ場合は辛口は合わないそうですが、おつまみを食べ終わって飲む場合は辛口でもいいことが判ったそうです。 

お米は佐賀ひより50%精米で酵母は聞きませんでしたが、9号系と18号系のブレンドではないかと思います。日本酒度は-14もありますが、飲んでみるとそれほど甘さを感じませんでした。このお酒はS1グランプリで第4位になったそうですから成功したと言えますね。 

<のみりんこ> 

Dsc_0185このお酒は飲むための味醂を目指して造たものだそうです。本来味醂は呑むためのお酒で室町時代に造られた和酒でしたが、江戸時代に砂糖の代わりにお料理に使われるようになって明治時代に料理用として定着してしまったそうです。 

甘酒は日持ちしないで腐りやすいので、何とか腐らない甘酒を造るために焼酎の中で甘酒を造ることで出来たのが味醂です。飲む味醂と料理の味醂は何が違うかというと、料理の味醂は出来た味醂を一度火入れをして炭素ろ過したしたお酒を言って、飲む味醂は生のお酒だそうです。このお酒は平成25年から造っていますが、日本で初めてだそうです。 

日本酒度は-180ありアルコール度は14%ですが、食後の味醂は消化を助ける働きがあるそうです。 

以上で万齢のお酒の説明を終わります。最後に各蔵の今後目指している方向の説明がありましたので、これを紹介します。 

福祝:来年度は秋田のあきたこまちを使った高温山廃にチャレンジするそうです。また特Aの山田錦をを使ったお酒を11月に発売するそうです。 

万齢:日本酒は決して売れているわけではないので、今後一人でも多くの人を日本酒を飲む場に連れてきて日本酒のPRをしてもらいたい 

最後に小松大さん、祐藤平淳三さん、福永健太さんにお礼を申し上げます。

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蒼天伝はさわやかでも味のあるお酒でした。

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10月1日の日本酒の日に南澤正昭さんが企画している今年15回目の「蔵と語る会」として、品川区旗の台にある小さな呑み屋・ぶちで蒼天伝(男山本店)の柏杜氏を囲むが開催されましたので、参加してきました。蒼天伝は宮城県のお酒だということは知っていましたが、今まであまり飲んだことがないけど、最近IWC酒部門で2年連続GOLDメダルを受賞したり、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016で最高金賞を取ったり、2016年にはANAの国際線のファーストクラスのお酒選ばれるなど、輝かしい結果を出している蔵だと知り、その秘密を少しでも知りたいと思い参加しました

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呑み屋・ぶちさんは去年オープンしたばかりの新しいお店ですが、店長の岩渕英和(いわぶちひでかす)さんは石巻市出身で、東京でお酒を勉強しているときに蒼天伝を知り気に入って、お店では蒼天伝をメインに扱っているそうで、蒼天伝なしではお店が成り立たないほど重要なお酒だそうです。 

カウンターの後ろから覗いている方が岩渕さんで、手前の方が杜氏の柏大輔さんです。

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このお酒を提供している酒屋さんは南小岩にある「なだや酒店」で、その3代目として活躍している渡部知佳さんがこられていて、この日もこのお店で囲っていたお酒を含めて色々提供していただきました。とても元気で明るい酒屋さんです。 

右から柏大輔さん、南澤正昭さん、渡部知佳さんです。 

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では早速まず蔵の紹介をいたします。 

この蔵は宮城県の気仙沼にありますが、創業は大正元年ですから比較的新しい蔵です。気仙沼は東北屈指の漁港で、明治時代から港に出入りする漁船が増えて酒の需要も上がってきたのを機会に、創業者・菅原昭治が酒造免許を取り、京都伏見の岩清水八幡宮(別名・男山八幡宮)に大願成就の御礼祈願に行った時に、八幡宮宮司より拝受した名前が伏見男山です。ですから、気仙沼にありながら伏見男山が代表銘柄となっております。 

その後、気仙沼のカツオやサンマを食べながら飲むお酒として地元中心にお酒を造り続けてきましたが、伏見男山が京都のお酒と間違われたり、男山と名がつくお酒が全国に10件くらいあり、他のお酒と混同してしまうということがあったので、現在の4代目の社長の菅原明彦さんが、約15年前に気仙沼を表現する名前にかえることを思いつきました。 

名前だけでなく、気仙沼のお酒らしい味に変えることも行いましたが、まず行ったのが「蒼天伝」という名前つけでした。気仙沼の自然の素晴らしさをお酒にこめて表現しようと、気仙沼の青い空、青い海を表す「蒼天伝」としたそうです。 

「蒼天伝」とするからにはさわやかさがあり、香り控えめだけど味わいのあるお酒造りを目指しましたが、開発を初めて最初の5年はなかなか思うような味を造ることができなかったそうです。杜氏が南部杜氏の鎌田勝平さんに代わってやっと狙い通りのお酒になり始めたのが2007年だったそうです。それを切っ掛けに「蒼天伝」のPRをするために、カツオが水揚げされる父の日に「蒼天伝おいしんぼの会」を開催して、やっと名前が知られるようになった時に起きたのが東日本大震災でした。 

それは2011年の3月11日のことです。海沿いにあった国の登録有形文化財にもなっていた木造3階建ての本社は地震では壊れなかったのですが、後から来た津波で1、2階部分全壊流失する被害を受けたそうです。下の写真が被害前の本社の建物と震災後の建物です。 

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木造には思えない風格のある建物ですが、一階が構造的に弱そうなので、つぶれてしまったのでしょうね。 

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本社近くにあった資材置き場や瓶詰めラインが全部浸水したそうですが、幸い酒蔵の方は30mくらい離れたところにあったので、津波は門から数mまで迫ったけれど、直接的な被害は受けなかったそうです。蔵には出荷前のお酒が2タンク残っていたので、翌日から作業を開催しましたが、停電のため計測装置が動かない中、タンクの温度管理だけはしたそうです。 

その時のことを柏杜氏はよく覚えていて、社員の中には家族を亡くした人も大勢いるし、町はほとんど全壊状態で多くのお客さんを失っているので、これで酒造りは終わったなと感じたそうです。その中で社長が何としてでも残った酒をすぐにでも世に出したいと言われた時は、なんでこんな時に酒を出しても仕方がないと反発をしながら、しぶしぶ従ったそうです。でも、町が落ち着いてくると周りから酒を出してくれとの要望も出てきたので、周り町がまだ停電の中、瓶詰めするために発電機で電気を起こして使ったけれども、周りの人から何も文句を言われないので、ますますやらざるを得ない状況になったそうです。 

2つのタンクのお酒も夏にはすべて売り切ったものですから、お酒が無くなったたので初めて夏場の仕込みにチャレンジしたそうです。その時柏さんが副杜氏で鎌田さんが杜氏でしたが、二人とも全く経験のない夏仕込みを、いろいろ知恵を絞って(たとえは瓶貯蔵の冷蔵庫で酒米を冷却するなど)冬仕込みに近い環境で行い、思いのほかうまく成功したそうで、この経験がその後の酒造りの勉強になったそうです。 

鎌田杜氏は岩手県からくる季節対応の南部杜氏でしたが、2012年の冬の仕込みをした後で退社することになり、2013年からは副杜氏の柏さんが杜氏となり、酒造りの全責任を負うことになったそうです。柏さんのお父さんは気仙沼の遠洋漁業をするひとでしたが、蔵と密接な方だったようで、息子の大輔さんは大学を出られた後すぐに蔵で酒造りに従事したようです。特に蒼天伝の開発はすべてを任されたので、その思い入れは強く、蒼天伝の名前もラベルの文字もすべて柏さんの発案で、たまたま父が書道を勉強していたので、外部に頼むお金もなかったことから、父にラベルの字を書いてもらったとのことでした。 

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柏さんとは初めてお会いしたのですが、名杜氏のような威厳のある雰囲気の方ではなく、とても謙虚で自分は何も知らない素人の杜氏ですと言いながら、好奇心旺盛で他の人の良いところは何でもすぐ取り入れる柔軟性のある方のように思えました。酒造りそのものは鎌田杜氏の技術をしっかり受け継いでいるだけでなく、酒造りのセンスがある方で、独自で常に改善させる努力をしているように思いました。 

その証拠に杜氏になった翌年の2014年には数々の賞をいただき、さらに前述した輝かしい賞を取るまでに至っているのは、単なる偶然ではないと思います。会の終わりに柏さんの今後の夢は何ですかとお聞きしたら、早く杜氏をやめることだと言われたのには驚きました。それはほとんど冗談だとは思いますが、杜氏への責任の重さをひしひしと感じてるからだと思います。柏さんのブログを見ますと自転車のロードレースがお好きなようで、趣味が色々あってそちらに時間を割きたいのかもしれませんね。そのためには後継者の育成が最大の課題ではないでしょうか。当分は頑張って良いお酒を造くるしかないですね。 

今は震災からもう6年が経過しましたが、蔵の生産量は以前と同じ600石位だそうです。良い話としては、全壊した本社が近いうちに震災前と同じ形で復興すると聞きました。いつできるのでしょうね。楽しみです。 

この会は下のような雰囲気で開催されました。こじんまりとしているけどいい雰囲気ですよね。 

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では早速柏さんが造ったお酒を紹介しましょう。この会はお話を聞きやすいというメリットはあるのですが、僕のような飲んだお酒を1本1本写真に撮りたいと思う者にとってはなかなかそのチャンスがなかったので、一本一本の写真は「はせがわ酒店」のホームページからコピーさせていただきました。まず最後に取った全体写真をお見せします。 

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右から下の順番に並んでいて、この順番で飲んでいきました。 

・ 純米大吟醸 蔵の華45%精米
・ 特別純米 蔵の華55%精米
・ 美禄 春 山田錦
・ 美禄 夏 山田錦
・ 美禄 秋 雄町50%精米
・ 純米吟醸 蔵の華50%精米
・ 特別純米 生 蔵の華55%精米
・ 美禄 冬 26BY 美山錦
 

1. 純米大吟醸 蔵の華45%精米 

Dsc_0242このお酒は宮城県産の蔵の華45%精米の純米大吟醸で、酵母は宮城県のB酵母だそうです。このお酒はこの蔵で最も高級なお酒で桐箱入りで1升税込みで5400円です。桐箱なしでも4500円もします。 

1月にタンク2本作って、2月に絞って瓶燗火入れを1回行たお酒です。 

飲んでみると香りは華やかですが、それほど強くはなく、柔らかで繊細な味わいが素敵なお酒でした。1回火入れのお酒でしたが、フレッシュ感があり、まるで生酒のようでした。どんな火入れをしているかは聞きませんでしたが、火入れの腕もしっかりしていると思われました。 

この蔵の仕込み水は超軟水で発酵力は弱いけれど、うまく作ると繊細な良いお酒になるそうです。確かにその通りのお酒でした。 

2. 特別純米 蔵の華55%精米 

32223115このお酒は蔵の華55%精米の特別純米で酵母は宮城マイ酵母です。 

この特別純米は15年まえに蒼天伝として初めて作った蔵の定番のお酒ですが、毎年少しずつ進化しているようです。 

飲んでみると香りは華やかではないけど落ち着いたさわやかな香りで、酸味があって甘みと酸味のバランスがいい食中酒と言ったお酒でした。 

酸度は2.0くらいで日本酒度は±0くらいにしているそうです。なかなかいいお酒です。価格は1升税込みで2808円ですから高くも安くもない手ごろな価格ですね。 

<美禄シリーズ> 

美禄シリーズは県外のお米を使ったお酒のシリーズで、「酒は天の美禄」ということわざがあるように、美禄には「すばらしい贈り物」という意味があるそうです。蒼天伝の美禄は春・夏・秋・冬の四季に合わせて4回だけ出荷するもので、季節ごとに味わいを変えて出す旬なお酒なので、まさに日本の風土からの「すばらしい贈り物」と感じてほしいそうです。美禄の具体例を下記にしまします。美禄を都内で取り扱っているのは「なだや」と「長谷川酒店」だけだそうです。 

・ 蒼天伝 美禄 春 山田錦 搾ってそのまま瓶詰めした生原酒 

・ 蒼天伝 美禄 夏 山田錦 夏まで熟成させた1回火入れの酒 

・ 蒼天伝 美禄 秋 雄町らしさを出すため秋まで熟成した酒 

・ 蒼天伝 美禄 冬 美山錦 冬の生貯蔵酒

3.蒼天伝 美禄 春 山田錦55%精米

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山田錦55%精米、酵母は宮城マイ酵母を使った特別純米酒で、澱がらみのしぼりたての生原酒で価格は1升3132円だそうです。 

蔵の華の特別純米とと同じ酵母のお酒ですが、飲んでみると酸味は同じくらいですが少し甘みを出している感じでした。でも熟成したせいか、少し丸みを感じました。このお酒は半年以上熟成しているので、半年たった効果がどのくらいあるかは比較しないとわからないですね。 

美禄シリーズはラベルに色のついた十字線があります。春はその機構を表すのかピンク色ですね。 

4.蒼天伝 美禄 夏 山田錦55%精米

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このお酒は美禄の春と同じ時期に別のタンクで作った特別純米で、お米の精米度も酵母も同じですが、1回火入れをして、瓶詰めの状態で-2℃の冷蔵庫で熟成したお酒です 

春のようなフレッシュさはなくなっているけれども、熟成の良さが出ていて、口に含んだ時にぱっと横に膨らむような味わいと切れの良さがあって、とても良いバランスの酒になっていました。これはなかなかいいです。価格は春の同じ1升3132円です。 

ラベルは夏らしく白色をバックに青い色の十字線が入っています。

 

5.蒼天伝 美禄 秋 雄町50%精米 

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このお酒は岡山県産の雄町50%精米の純米吟醸で酵母は9号酵母を使っているそうで、美禄シリーズではもっとの新しいお酒です。価格は1升3600円です。お米の値段が高いので割高になっています。 

飲んでみたら香りはそれほど華やかではないし、雄町にしてはふくらみが少ないし、切れがシャープで少し雄町らしくがないと感じました。ぜひこの蔵らしい奇麗さがあって、余韻が楽しめるようなお酒を造ってもらいたい気がしました。 

ラベルは秋らしく紅葉色の十字線が入っていました。 

6. 純米吟醸 蔵の華50%精米 

32222961_3このお酒は蔵の華50%精米の純米吟醸で、酵母は純米大吟醸と同じ宮城B酵母を使っています。造りは純米大吟醸とほぼ同じですが、純米大吟醸は600kg仕込みで、純米吟醸は900㎏仕込みです。でも当然造りの細かいところは違うそうです。 

でも価格は大幅に違っていて、純米大吟醸は木箱なしでも1升4500円しますが、この純米吟醸は1升3085円ととても割安です。 

飲んでみると香りは純米大吟醸と同じさわやかな香りがして、味は甘みと酸味のバランスが良くとても良いお酒でした。これほど価格が違うのなら純米吟醸でいい気がしました。 

特別純米と同じ色の文字ですが、瓶が緑から茶になっていました。 

7. 特別純米 生酒 

このお酒はNO.2の特別純米の生酒で「なだや酒店」オリジナルの限定200本のお酒です。お店で残っていた最後の1本です。ですから写真はありません。全体写真から見てください。 

飲んでみると火入れに比べると口に含んだ時の甘みが強く感じます。香りにフレッシュ感があるけれども、後味の感じは同じでした。火入れは全体に柔らかいけど、生酒は尖った感じがします。どちらが好き化は好みの問題ですね。 

8. 美禄 冬 26BY 美山錦55%精米 

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このお酒は美禄に冬バージョンですから美山錦55%精米の特別純米のはずですが未確認です。26BYの酒でなだや酒店の2℃の冷蔵庫で年、その後5℃の冷蔵庫で1年熟成したもので、たまたま冷蔵庫の中で見つけた最後の1本だそうです。 

美禄の冬を飲んだことがないので、新酒との比較はできませんが、このお酒は凄いお酒でした。飲んでみると当たりがすごく柔らかくて含んだ時の味わいがフラットで天鵞絨のようにスルーっと入ってきます。こんなにうまく熟成しているのは、酒質が良いからだと思います。こんなお酒がいつも飲めたらうれしいですね。 

この酒のラベルは文字が鼠色で、十字の線薄い青色でした。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。

<まとめ> 

今回初めて蒼天伝シリーズをいろいろ飲みましたが、この蔵のお酒の味は非常に安定していて、あたりが柔らかくて軽い感じですが、しっかりと味を乗せてくる飲みやすいお酒でした。 

造りの特徴はどこにあるのですかと柏杜氏にお聞きしたら、一番大切なのは原料処理で米の特徴に合わせて丁寧に吸水量を管理することで、やればやっただけの結果がついてくるとのことでした。

柏杜氏は謙遜していますが、とても前向きにチャレンジされているのでこれからが楽しみな蔵ですね。
 

最後にこの会の関係者がわっと騒いでいるお姿をも見せしましょう。なだやの渡部さんが一番乗っているみたいですね。

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南澤さんありがとうございました。また面白い企画がありましたら、教えてください。

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埼玉県には新しさを感じる若手の蔵があります

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毎年10月の上旬に埼玉県酒造組合の主催による大試飲会が大宮のソニックシティでひらかれますが、今年は10月10日の火曜日に埼玉35蔵(登録されている全蔵数)が一同に会しての大試飲会が開かれましたので参加しました。 

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この会は1部と2部に分かれていて、前半は酒造関係者のための時間で、14時30分から1時間半、2部一般消費者向けでその会場で引き続いて16時から19時半まで行われます。今回は取材を目的として1部から参加し、試飲した酒はすべて吐きする形で頑張りました。でも、1時間半で35蔵全部の試飲はとても不可能だし、16時からは人が多くなりすぎて取材どころではなくなりました。 

今回参加して受けた印象は、埼玉の蔵の質が確実に上がっていると思ったことです。例えば川越のある鏡山ですが、昔はうまいけどパンチが強すぎて沢山は呑めない酒だなと思っていましたが、今回飲んでみると味はきちっと残しながら奇麗さが出たお酒に変身していました。柿沼杜氏にその理由をお聞きしたら、自分でもわからないけどお客様の要望を聞いているうちに変わってきたのですと言われたのが印象的でした。これはとても良いことだと思いますが、下手をするとみんな同じような酒になる恐れがあるので、気をつけてもらいたいですね。 

埼玉県の蔵のお酒は昔は印象が薄かったので、2008年と2014年にこの会に参加して自分なりに気に入った蔵ののお酒をブログにまとめたことがありましたので、それを下に載せておきます。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-f6ed.html 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-a1ea.html 

ここで紹介した蔵は合計で11蔵しかなく全体の約30%にしかなりませんので、今回はもっと紹介したかったのですが、今回は僕が飲んで面白いなと思った蔵の中で比較的若い人が酒を造っている蔵に良いものがあったので、その蔵の現状を含めて紹介することにしました。 

1.佐藤酒造店 越生梅林 

この蔵は越生梅林のある場所の近くにある蔵で、東武八高線の越生駅から北東に約1.5㎞程行ったところにあり、関東地方全体から見ると平野から秩父の山々の方にちょっと入ったところにあります。近くに越辺川が流れ、日本関東百選に選ばれている「黒山三滝」を源とする奇麗な水がでるところのようです。創業は1844年ですから江戸末期ですが、きっと梅の産地として有名な街のお酒として地元中心に酒造りを続けてきたのでしょう。 

ですから冬の時期に日本酒を造り、6月以降より梅酒を造ってきた蔵ですが、日本酒造りにはきちっとしたこだわりがありました。それは、麹歩合を23%として米本来の味を出すこと、低温長期醸造で喉越しの良い酒を造ること、人の目が届く少量生産をすることをモットーとしてきたようです。現在の社長は佐藤忠男さんで、「越生梅林「」という銘柄を立ち上げた人で、千葉県から来た杜氏と共に酒造りをしてきたそうです。 

でも、現在は20代を中心とした若手4名で生産量500石の酒造りをしているそうで、いつからそんな蔵になったのでしょうか。実はそれは2011年に「起きた東日本大震災と関係があるそうです。 

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この方が杜氏の佐藤麻里子さんです。女性のお年を聞いてはいけないけれども、まだ26歳の超若手杜氏です。麻里子さんはこの蔵の長女で昔から酒造りのお手伝いをしていたそうですが、蔵を継ぐつもりななく東京の大妻女子大に行ったそうです。そんな時に東北大震災が起こったのです。蔵の造りは古いので瓦や壁が落ち、まともな酒造りができないと判断し、社長は蔵をやめようと決意したそうですが、家族会議をした結果、子供たち(麻里子さんと弟)が廃業するのを反対し、2人が後を継ぐということで廃業をやめたそうです。 

麻里子さんは大学を卒業した後、蔵の杜氏に酒造りを教わり酒造りを始めたのですが、高校時代から酒造りが好きだったせいか、すぐの腕を上げてきたので、杜氏にすることを決めたそうです。ですから酒造りをして4年年目、杜氏になって3年目だと思います。杜氏としての経験はまだ浅いので、どんなお酒を造るのか興味がありました。 

杜氏になって最初に作ったのが純米吟醸「まりこのさけ」です。 

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この酒は女性にも気楽に飲んでもらえるように瓶の容量も500mlと小さくして、デザインの梅のもようを前面に出した女性らしいお酒でしたが、大変評判が良かったけど、今年からは女性らしさを前面には出さない新しいブランドの「中田屋」を立ち上げています。これはどんなお酒なのでしょうか。下に写真をお見せします。
 

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中田屋は特約の酒屋だけに卸すブランドなので、この会にはそのお酒はありませんでしたが、それと同質なお酒が用意されていました。このお酒は「中田屋」と同様に、ラベルの色で原料米がわかるようにされていて、赤は美山錦、青が五百万石、桃色が五百万石と美山錦のブレンド、銀色(?)が山田錦です。僕は飲んだ中で赤の五百万石が気に入りましたので、それを持ってもらいました。 

飲んでみますと香りはあまりたたずに、口に含むと優しい甘みが静かに広がり、後味がぱっと切れるのではなく、静かに辛みを伴わないでフェードアウトするお酒でした。一言でいえば女性ら良いお酒と言えます。他のお酒はまだちょっと完成度が低い気がしましたが、酒造りへの彼女のセンスが感じられるお酒と言えます。 

子供たちが蔵の後を継ぐことが決まってから、社長は蔵の全面改築をはじめ2年前に最新鋭の蔵が完成し、娘が杜氏としてスタートするという華々しい立ち上がりをしましたが、なんといってもまだまだ立ち上がったばかりの蔵なのですから、暖かく見守っていきたいと思っております。これからどんな変化をしていくのか楽しみです。 

気づいた方のおられると思いますが、佐藤麻里子さんの名前は幻舞の杜氏の千野麻里子さんと同じ漢字ですから、良い杜氏になると思いますよ。 

2.石井酒造初緑、豊明

石井酒造は久喜市の近くにある東武日光線の幸手市にあります。ここは日光街道と御成街道の分岐手にあたる、宿場町として栄えたところです。この日光街道沿いの大地主であった石井家が造り酒屋を開業したのが始まりで、創業は1840年ですから、180年近い歴史を持つ老舗の蔵です。昔はお酒を飲む風習が定着していたので、全盛期には5000石という大規模な生産量があったそうですが、昭和の終わりになって次第に生産量がへり、平成のはじめには3000石とになっていたようです。 

石井家の当主は歴代才覚があった人が多いようで、5代目は酒類卸業を、6代目が幸手ガス事業を起こし、7代目の前社長の石井明さんは所有する土地を利用してゴルフ練習場G-FIVEを立ち上げるだけでなく、酒事業も生産縮小を見込んで2000年には蔵の改築をしたようです。面白い写真を見つけました。下のURLをクリックしてください。 

https://www.google.co.jp/maps/place/%E7%9F%B3%E4%BA%95%E9%85%92%E9%80%A0%EF%BC%88%E6%A0%AA%EF%BC%89/@36.0689756,139.7100067,3a,75y,90t/data=!3m8!1e2!3m6!1sAF1QipOhH9jjq1q6EPDhT-Md917xZwGFWlSq1oZ_ZGj3!2e10!3e12!6shttps:%2F%2Flh5.googleusercontent.com%2Fp%2FAF1QipOhH9jjq1q6EPDhT-Md917xZwGFWlSq1oZ_ZGj3%3Dw128-h86-k-no!7i1616!8i1080!4m5!3m4!1s0x0:0xc9832d448850a095!8m2!3d36.0689756!4d139.7100067 

この石井酒造の写真を見ると、ゴルフ場の写真とスーパーマーケトBELCの写真と石井酒造の写真が一緒に載っています。これから想像すると、蔵の敷地の大部分をBELCに売ったか貸した後に残った蔵を改築して新しい蔵にしたのではないかと想像できます。いやーお金持の蔵のようですね。 

でもこの蔵が大きく変わったのは息子さんの石井誠さんが蔵に戻ってからです。誠さんは1987年生まれで、蔵を継ぐことは大学に行く時から決めていたので、経営を学ぶために早稲田大学の商学部に入学されて、卒業後は東京の醸造研究所で3か月研修を受けた後、東京の小山酒造で酒造りを学び、父の助言でガス会社で2年勉強した後、2013年に蔵に戻ってきます。そしてその年11月には8代目の社長に就任することになります。下の写真が石井誠さんで現在30歳です。 

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これは前社長が蔵を改築した時から思い描いていたことだと思います。その証拠に誠さんが蔵に戻る3年前に若き優秀な蔵人を採用しています。彼は和久田健吾さんといい、2010年に東京農大醸造学部の修士課程を修了した優秀な方ですが、研究より実践をしたいと思い、大学時代に石井酒造を紹介され、社長の明さんと面接をしています。その時、入社したらすぐに酒造りを任せるということを仰ったので、入社を決めたそうです。それは息子が蔵に戻る時までに杜氏として酒造りを習得してもらう狙いがあったからだと思います。そして、息子が戻ったら、酒造りはすべて息子に任せ、自分は社長を退くというシナリオがあったに違いありません。 

ですから、2013年の造りから、26才の石井誠社長、27才の和久田杜氏というコンビがスタートしたことになり、若い人たちによる新しい酒造りが始まりました。誠さんは良いお酒を造るだけではなく、埼玉県の酒をもっと世に知らしめることをやりたいと思っていましたので、すぐに2つの新しい企画を立ち上げました。 

第一の企画はクラウドファンディングのプロジェクトです。簡単に言うとお客様に資金を出してもらって、その資金で大吟醸「2歳の醸」を造って配布するというプロジェクトだそうです。これは見事に成功し約200万円を集めたそうです。下の写真がその時の「二歳の醸」と思われます。 

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今でもこのシステムはオーナー制度として残っています。、現在は一人1万2千円で、定員100名でオーナーを募集して、色々な種類の720ml6本と酒粕を配布しています。また2歳の醸はこの名前の権利を宝酒造に渡して2016年には宝酒造から新しい「2歳の醸」のお酒が出たようです。色々なことをする蔵ですね。 

次に打ち出した企画は「埼玉SAKUダービー」です。これは埼玉県にある二つの蔵が、水、米、精米歩合、種麹、酵母を同じの酒を造って、どちらのお酒が旨いかをお客様に決めてもらうものです。自分お蔵のほかには和久田さんの先輩の鈴木隆広さんが杜氏をしている久喜市の寒梅酒造が選ばれました。これはどちらが人気があったかが大切ではなく、これにより、2つの蔵の酒の知名度を上げるの目的のようです。でも酒の銘柄を石井酒造の酒を「彩の原石 幸」とよび、寒梅酒造の酒を「彩の原石 喜」としたのは、埼玉県には良い酒があるよと叫んでいる感じがします。 

この蔵は新しい体制ができてからまだ3造りしかしていませんので、お酒の酒質を問うのは少し厳しいかもしれませんが、今年の全国新酒鑑評会で初めて金賞を取っていますのでとても楽しみです。どんなお酒を造っているのでしょうか。 

この会場では豊明と初緑のお酒を飲みました。初緑はアルコール添加した吟醸酒で、山田錦や美山錦を使った原則9号酵母のお酒ですが、豊明は純米酒で埼玉県産のさけ武蔵を使い埼玉酵母を使っています。埼玉酵母はAからHまで色々あるそうで、目的に合わせて、使い分けているそうです。ここでは豊明の純米吟醸の花火を飲みましたが、甘みがあって香りはイソアミル系のさわやかな香りのあるお酒でした。 

ここのお酒のイメージはまだはっきりしないところがあるので、どんなお酒を狙っていますかとお聞きしたら、色々なタイプのお酒を造りながら色々と試している時期ですと言われたように、酒としてはこれから変化しながら定着していくものと思われます。蔵の生産量はまだ200石だそうですから、これからじっくりと立ち上げていくのでしょうね。 

3.滝澤酒造菊泉

この蔵は深谷市の旧中山道沿いの、JR深谷駅から数百mのところにあります。ここは古くから宿場町として栄えたところですので、多くの酒蔵があったものと思われます。この蔵の創業は1863年に小川町で行い、明治33年にここに移転してきたそうですから、ここで他の蔵と競い合って生き残った蔵だと思います。 

ですから今でも昔の風情を残した蔵で、インターネットで見ると蔵の母屋の写真のような、昔の趣のある姿をしていますが、蔵そのものは赤レンガ造りだそうです。その後どのように成長したかはわかりませんが、現社長の滝澤常昭さんは、地域のロータリークラブや深谷商工会議所の役員をされている方のようです。
 

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現在は息子さんの滝澤英之さんが専務取締役・杜氏として酒造りを一手に引き受けてやられているようです。 英之さんは蔵元の長男として生まれましたが、若い頃は酒造りをするつもりはなかったそうです。でも親からはお前は後を継ぐもんだと言われていたので、最後はそうなるのかなとは思ったそうですが、大学に行くときはそのつもりは全くなく、早稲田大学の教育学部に入ったそうです。大学3年生の時に漫画の「夏子の酒」を読んだ時に、昔の蔵の光景が思い出され、酒造りは面白そうだと思ったのが酒造りをする切っ掛けになったようです。 

大学卒業後は福生市にある石川酒造に3年間お世話になり酒造りを勉強し、その後広島の醸造研究所で1年間研修を積んで、1994年に蔵に戻ってきました。蔵には南部杜氏がおられて、その方にみっちり酒造りの指導を受けたそうですが、石川酒造の杜氏は越後杜氏で、南部杜氏とは細かいところでだいぶ違ったので、最初は大変戸惑ったそうです。それでも南部流の酒造りを勉強していくうちに、その違いの良いところが判ってきましたが、基礎となっているのは南部流の方法だそうです 

結局9年間南部杜氏の下で勉強した、1996年から杜氏になって、全ての酒造りを任せられたそうです。でも最初の1-2年は思った酒だできず、それまで4年間全国新酒鑑評会で金賞を取ってきたのに、自分が杜氏になってからは3年間金賞は取れなかったそうです。でも4年目になってやっと安定した酒が造れるようになって、その後は連続して全国新酒鑑評会で金賞が取れただけでなく、、IWCの鑑評会でも金メダルを取れるようになって、現在に至っています。 

前述した2つの蔵では若い人が簡単に杜氏になったかと思うと、英之さんのように12年の下済みを経てやっと杜氏になった人がいますので、単に杜氏と言ってもその実力を測ることは難しいように思えます。でも長年の経験によって身につくことはいっぱいあると思うので、英之さんがどんな酒を造っているのかは大変楽しみでした。 

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この方が滝澤英之さんで、現在46才ですから決して若手ではありませんが、敢えて選ばせていただきました。この蔵はどんなお酒を造っているのでしょうか。 

この蔵の酒たるブランドは菊泉で、菊のように香り高く、泉のように清らかな酒という意味だそうです。その主力製品は「菊泉 さけ武蔵吟醸生原酒」でした。この酒はさけ武蔵60%精米で、アルコール度18%、日本酒度1.5、酸度1.2のアルコール添加の吟醸酒です。飲んでみると口当たりがとても良くてさわやかな香りがあるけど、アルコールの強さを感じない驚きのお酒でした。これは技術のなせる業だと思いました。英之さんはさすが、腕のいい杜氏になっておられましたね。 

もう一つ見つけたお酒が「菊泉 ひとすじ」です。このお酒は今年発足したAWA協会が認定するスパークリング酒で、2016年に発売を開始したお酒です。このAWA協会の認定基準は大変難しく、この協会に参加しているのは生産高が2000石を超える蔵ばかりで、生産高500石の滝澤酒造が参加することは凄いことです。でもこれができたのは偶然ではありません。2010年にはこれの基になる瓶内二次発酵の発泡酒「彩の淡雪」を発売していたので、これを改良して完成させたそうです。 

原料米はさけ武蔵60%精米、アルコール度12%、日本酒度ー26、酸度4.3というお酒ですが、僕が飲んだことのある水芭蕉や七賢に決して劣らない素晴らしいお酒だと思いました。この技術も簡単にできるものではないのにちゃんと完成させているのはただものではないですね。これからどんな酒が飛び出してくるのか楽しみです。 

4.権田酒造直実

Dsc07633この蔵は熊谷市にある老舗の蔵で創業は1850年です。この地は平安時代に武将・僧侶として活躍した熊谷次郎直実が有名ですが、その名前を取ったお酒「直実」を主要銘柄としています。 

いつもは社長の権田清志さんがおられるのですが、今年は息子さんの権田直仁さんがおられました。直仁さんは東京農大の醸造学部を卒業後スーパーで働いていたのですが、4年ほど働いたのち、親が帰って来いというものですから、今年から蔵に戻ったばかりで、まだ造りはやっていないそうです。 

持っていただいたのは特別純米さけ武蔵です。地元のさけ武蔵60%精米、9号酵母を使った純米酒で、アルコール度数15%、日本酒度+5、アミノ酸1.5、と言っていましたが、飲んでみると全く辛みを感じない、どっしり味のあるけど飲みやすい不思議なお酒でした。これをお燗をするとさらに旨みが出て楽しいお酒に変身しました。これは今どきのお酒ではない良いお酒です。 

お父さんの権田清志さんは熱血漢で酒造りの熱い思いを持った人なので、その血を引き継いだ直仁さんにはこれから大いに活躍してもらいたいと思います。 

以上で僕が推薦する4つの蔵の紹介を終えます。佐藤酒造店以外はすでに1回紹介した蔵ばかりですが、新しい情報がいっぱいあったので、少し詳しく紹介さていただきました。また、権田酒造の直仁さんはこれからの人なので、簡単な紹介に終わらせていただきました。

このほかにも注目すべき蔵として、寒梅の寒梅酒造、帝松の松岡醸造、天覧山の五十嵐酒造、力士の釜屋酒造などが良かったとおもいますが、こまた次の機会に紹介させていただきます。

最後にこの会に注文を付けるとしたら、1部の開始時間をもう少し早めて、2時間以上取っていただきたかったです。よろしくご検討をお願いいたします

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東大蔵元会の惣誉と喜多屋の酒は秘密をご紹介します

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毎年10月の第3土曜日は東京大学の本郷キャンパスでホームカミングデイが開かれます。ホームカミングデイというのはどの大学でも行われているようですが、年に一度卒業生の交流を深めるのを目的としたイベントを行う日を言うようです。東大では講演会やシンポジウムなどの真面目なものから、東大オーケストラOBやOGによる室内楽演奏会や親と子供が楽しめる広場や東大落語会など気軽に参加できるイベントもたくさん開催されています。 

その中にお酒の好きな人には絶対見逃せない東大蔵元会という利き酒会のイベントがあります。これは東大出身または東大で教えている日本酒の蔵元の説明を聞きながら、その蔵のお酒を試飲できるイベントです。いつも安田講堂前の銀杏並木の所で開催されており、1杯100円から200円(30mlくらいかな)で自由に飲むことができます。この会には卒業生でなくてもだれでも参加できますが、卒業生が主体となっているためかあまり混んでいないので、酒好きの人には絶好の穴場のイベントです。 

今年はあいにく雨になってしまいましたので、屋外のイベントなので準備が大変そうでしたが、11時には予定通りオープンしていました。その時の写真を下に載せておきます。まだあまり人がいませんね。 

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今年の参加蔵は去年より1蔵増えて11蔵になっていました。会のメンバは下記の通りですが、今年は新政酒造、出羽桜酒造、金水晶酒造、大七酒造は他の仕事の関係で、本人が出席できずに代理人が来られていました。本人が参加していないとやっぱり寂しいですね。その代わり去年来られなかった喜多屋の社長の木下浩太郎さんと花の露の社長の冨安 拓良がお見えになっていました。 

1.わしの尾 代表取締役 工藤  (工学部2003年卒)  

2.新政酒造  代表取締役 佐藤 祐輔(文学部1999年卒)  

3.出羽桜酒造 代表取締役 仲野 益美(東大非常勤講師)  

4.金晶水酒造 常務取締役 斎藤 美幸(教養学部1988年卒)  

5.大七酒造   代表取締役 太田 英晴(法学部1982年卒)  

6.下越酒造   代表取締役 佐藤 俊一(農学部卒) 

7.惣誉酒造   代表取締役 河野 遵(経済学部1983年卒)             

8.武重本家酒造 代表取締役 武重 有正(工学部1981年卒) 

9.長龍酒造   代表取締役 飯田豊彦(経済学部卒1986年卒) 

10.喜多屋  代表取締役 木下浩太郎(農学部1987年卒) 

11.花の露  代表取締役 冨安 拓良 

東大蔵元会が発足したのは3年前でそんなに前のことではなく、僕はこの会に去年初めて参加したので、その時のことについては下記のブログにまとめましたので興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

今年は僕の仕事の関係で1時間ほどしかいられなかったので、去年ほどの情報は得られませんでしたが、去年来られなかった蔵を中心に新しい情報だけを纏めてみることにしました。花の露とは初めてお会いしたのですが、時間をゆっくり取れなかったので、この蔵の紹介は来年にすることにします。 

1.惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、市貝町はJR宇都宮駅から東へ10㎞程入ったところで、小貝川の最上流の人口12000人の小さな町です。創業は明治5年で、約150年弱の歴史を持つ蔵ですが、もともと江戸時代に滋賀県で酒造りをしていた蔵がここに出店として始まったそうです。どうしてこんな田舎町に滋賀からわざわざ出てきたのかはよくわかりませんが、鬼怒川の伏流水と冬場は厳しく冷え込むという土地が酒造りに向いていたからでしょうね。それ以降、地元に愛されるお酒造りを続けていて、今では3000石の生産量がありますが、そのほとんどを県内で消費してるそうです。それだけ地元の人に信頼される酒質を守っていたのでしょう。 

現在の社長は5代目の河野遵さんですが、1961年生まれで、1983年に東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾など色々なところを経験されたあと、1989年に蔵に戻って1995年に社長に就任しています。社長になってすぐやられたことは新しい杜氏の阿部孝男さんと協力して2001年に生酛造りを復活させたことです。生酛造りは酒母に乳酸を投入する速醸法が開発されるまでの酒母造りとしてに用いられた方法です。生酛造りは、蒸米と米麹を丁寧に櫂で磨り潰すことにより、自然の力で乳酸が程よくわいてくるのを待つ方法のために、速醸法に比べて酒母を造るのに手間と時間がかかるけれども、コクがあって、きりりとした酸と色々な旨みが出る味わい深いお酒になります。 

生酛造りは江戸時代に完成した伝統ある製法ですが、その技術に現代の技術をかみ合わせて開発したのが惣誉の生酛造りで、惣誉では生酛ルネッサンスと呼んで今ではその技術で多くの酒を造っています。そして今目指しているのは伝統と現代の技術を融合させた製法によりエレガントな味わいを出すお酒造りだそうです。 

こうして生まれたお酒の一つに東京大学コミュニケーっションセンター(UTCC)だけでしか販売していない「淡青 純米大吟醸」と「淡青特別純米」があります。淡青という色は今や東大のスクールカラーとなっていますが、それは第1回東大・京大対抗レガッタをやる際に抽選で東大のボートのオールの色がライトブルーに、京大のオールの色がダークブルーなったという経緯があります。そのスクールカラーの発祥の当事者となった東大ボート部のOBが懇親会で飲むお酒の「淡青」を造ろうということになり、惣誉の河野さんに依頼したというわけで、今年の9月15日に発売となりました。どんなお酒なのでしょうか。 

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この2本が僕が購入した「淡青」で左が純米大吟醸、右が特別純米です。ラベルがおもしろいでしょう。青い水の上にはボートを漕ぐ様子が書かれていますが、これは東大ボート部が勝利した時のシーンを版画家の原田維夫さんが描いたものだそうです。この酒は東大の卒業生や関係者が同窓会や宴席の場で利用していただくとともに、母校への愛好心を醸成し同窓会活動の活性化につなげてほしいという思いで商品化したものだそうです。 

主な製品の概要を下記に示します。 

・ 淡青 純米大吟醸 生酛造り 

   原料米: 兵庫県東条と吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 45%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 3585円
4合瓶

・ 淡青 特別純米 生酛造り 

   原料米: 兵庫県吉川(特A地区)産山田錦
   精米度: 60%精米
   酵 母: 協会7号、協会9号、協会14号
   アルコール度数:15%
   価 格: 1720円 4合瓶
 

ここに示した数値ではどんなお酒はわからないと思いますので、このお酒のコンセプトを社長にお聞きしましたので、ご紹介します。今流行りのお酒はカプロン酸エチルの香りが強く、甘目でフレッシュなお酒が多いですが、このお酒は冷蔵保管しないと品質が維持できない欠点があるので、冷蔵庫に保管しなくても味がへこたれないこと、海外でもおいしく飲めるように熟成によってますます味が乗ってくること、味が複雑で深みがあって品の良い香りのある酒を目指したそうです。 

そのために凄いことをしています。それは3種類の酵母を使った別々の醪を造り、それに製造年度の違う2種類のお酒も含めて瓶に詰めるときにブレンドして、2回火入れをして作っているそうです。そこまで気合を入れているお酒とは思いませんでした。 

特別純米を飲んでみると、強くはないけど品のある香りとともに口に含むとしっかりした味わいがあるけれども後味は少し辛みを感じながら切れていくお酒でした。日本酒度は4で。グルコース濃度を1.1~1.2に抑えて酸度1.8にして切れの良さを出しているようですが、それほど強く酸は感じませんでした。これは生酛造りの味わいのある酸のせいではないかなと思いました。 

純米大吟醸の方は香りは全く同じですが、口に含んだ時の甘みが違いました。グルコース濃度を1.8まで上げてうまみを出していますが、精米度を上げることによる奇麗さがあるので、後味の切れと余韻に差が出るようです。やはり僕がこっちのほうが好きだな。 

こんなに気合を入れたお酒ですから、ぜひ皆さん呑んでください。飲む価値のあるお酒です。最後に社長にこのお酒を持ってもらいました。見てください。お酒が違いますね。それは淡青は東大のUTCCでしか販売できないお酒なので、この蔵元会には持ってこれないので、中身は同じですが、ラベルに惣誉と書いてあるお酒を持ってきたそうです。 

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2.喜多屋 

この蔵は九州一の穀倉地帯の南にある八女市にあります。八女市と言ってよくわかりませんが、久留米市から南に十数km南に下がったところのようです。江戸時代末期の文政年間に米屋をしていた木下家の長男の斉吉が喜多屋という酒屋を始めたようです。喜多屋という名は酒を通して多くの人に喜びを与えたいという気持ちから付けられたようです。その斉吉さんは酒造りに情熱を燃やし、自ら蔵に入ってさけつくりをしたので、「主人自ら酒造りをすべし」が家憲となっているそうですからすごいですね。 

現在は7代目の木下宏太郎さんが社長として蔵を引っ張ていますが、宏太郎さんの時代になっても家憲は守り継いでおり、造りたいお酒のコンセプトを自分で考えるだけでなく、その作り方のレシピも考え、蔵人に指導をするなど、酒造りのすべてをコントロールしているそうです。この会社は全員社員なので、昔の杜氏制度はやめていますが、製造責任者は当然いますが、その人を含めて蔵人全員で技術を共有してお互いの役割をはっきり認識したたうえで酒造りをするように努力しているそうです。 

常に今までの常識を打ち破って新しい酒造りにチャレンジして、今までになかった理想のお酒を目指しているそうですが。それはどんなお酒なのでしょうか。それは芳醇でかつ透明感のあるお酒、つまり芳醇さと透明感を両立させたお酒を追及しているそうです。それは別の言葉でいえば、優しく、丸く膨らんで、余韻が奇麗に消えていく酒だそうです。その追及には終わりはないですが、2013年にその成果が実を結んだようです。それは2013年のIWCの酒部門に出品した「大吟醸 極上 喜多屋」が日本酒5部門の中で最優秀賞を獲得したからです。つまり世界一と評価されたのです。社長のお話では世界一になったことが重要ではなく、賞をいただいた時の表彰のコメントが「Intensity and Purity]ということで、目指した味わいが評価されたことが非常にうれしかったそうです。 

宏太郎さんはどんな人なのでしょうか。1962年に八女市に生まれ、久留米大学付属高等学校を卒業した後、東京大学農芸化学科に入学されています。一浪して1回留年したので卒業は1987年だそうです。その後5年間宝酒造で修業したあと、1992年に蔵にもどっています。そのあと、東京の醸造研究所に2年3か月勉強したそうですが、その時学んだことがその後一番役に立っているそうです。特にその時の先生であった岩野君夫さんを師と仰ぎ、一番の弟子と自称するほど、先生の理論や考え方を身に着け酒造りに生かしているそうです。先生はその後秋田県立大学の教授として赴任しましたが、そちらにもよく出かけて教わったそうです。その先生が言われた言葉に、「いいお酒は「残らず寂しからず」と言われており、それを自分流に解釈して現在の理想の酒の姿としているそうです。 

お話を聞くととても考え方がはっきりして、明快にお話しされる方で、しかも自信たっぷりのお話されるので、ついつい引き込まれてしまいますね。 

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社長になったのは1999年ですが、自ら蔵に入って色々な改革をしています。現在の蔵の生産高は4700石で、そのうちの特定名称酒は3000石でその平均精米度は54%ですから非常に質の高いお酒を中心においていることが判ります。これだけの生産をするには、ある程度の機械化を進める必要がありますが、伝統的な作りの良いところはきちっと抑えたうえで機械化しているようで、蓋麹法の良さをきちっと踏まえた独自の自動製麹装置を開発しても、蔵人全員に、蓋麹法をマスターするように指導しているそうです。 

こうやって平成9年には最新鋭の設備を備えた新工場を建設し、さらなる品質向上に努め最近は海外への輸出にも力を入れすでに販売している国は17か国にもなっているそうです。その喜多屋が蔵元会にはどんなお酒を持ってきていただけたのでしょうか。 

持ってきていただいたのは下の写真の3本です。この写真ではよくわからないので、お酒の紹介の時には特別純米 蒼田はインターネットから借用し、他の二本は購入したものを家で撮ったものを載せました。 

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それからお酒の特徴は社長が語ってくれましたが、酒質については説明がなかったので日本酒サービス研究会からインターネットで載せていたものを書き写して載せました。これからどうして社長が説明したお酒になったかも考えてみました。 

<特別純米酒 蒼田 山廃仕込み 

Skitaya05_2原料米:福岡県産山田錦60%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:-3~ー1
酸   度:1.9~2.1
アミノ酸度:1.8
 

このお酒は山廃仕込みが出す酸味を活かした肉料理に合わせたフルーティな日本酒を目指したお酒です。酵母は18号と9号を使っているそうです。18号の華やかなかおりと9号の発酵力の強さを活かすためですが、同時使用のブレンドではなく、18号と9号を時間差でいれるそうです 

飲んでみるとフルーティだけど旨みも酸味もあり、あまり飲んだことのないバランスのお酒でした。これは酒質の数字を見ても良くわかりますね。食中酒としての甘みを最初に感じさせながら、中盤で旨みと酸をバランスさせて切れを出しながら、味も濃い料理にも合わせられるお酒になっているようです。 

純米大吟醸 喜多屋 50%磨き> 

Dsc_0466原料米:山田錦と雄町50%精米
ALC度数:15~16
日本酒度:+2~+4
酸   度:1.2~1.4
アミノ酸度:1.5
 

このお酒は山田錦の柔らかい味の良さと雄町の押しの強さをうまく引き出したお酒を目指したものです。山田錦と雄町の使用量の日は6:4だそうです。麹米と掛米を別のお米を使うことはよくありますが、2つの原料の良さを引き出すためには、そのやり方ではできないそうです。具体的には酒母、初添、仲添、留添で原料米の味が引き出せるように原料米の比率を変えるそうです。難しそうですね。 

酵母は自社酵母ですが、M310酵母をベースとしとしていて、大吟醸系は皆この酵母を使っているそうです。 

飲んでみるとフルーティな上品な香りの中に、複雑な味わいを感じさせるお酒になっていました。あまり酸味を上げない代わりに、甘みを少し抑えてる割にはアミノ酸を少し高めに持ってきているのは適度な旨みを持たせて、食事に合うお酒を狙ったのではないでしょうか。 

<大吟醸 極醸 喜多屋 

Dsc_0469原料米:福岡県産山田錦35%精米
ALC度数:16~17
日本酒度:+3~+5
酸   度:1.0~1.2
アミノ酸度:0.9
 

このお酒はIWC2013で最優秀賞を取ったお酒で、芳醇でありながら透明感を持たせたお酒を狙ったものです。 

飲んでみると上品な香りと共に柔らかく甘みが広がって口の中にすっと入っていき、その後ぱっと膨らんで消えていくお酒でした。確かに芳醇な味を色々感じるけど、最後にそれが一つになって消えていくのが透明感につながるのでしょう 

酒質から見るとちょっと辛口で酸味が少なく、アミノ酸を抑えて奇麗さを出す大吟醸の標準的な数字ですが、数字には見えない秘密があるのでしょう。これについての蔵しい説明はありませんでしたが、今までの経験の中で天から降りてきたような手法を思いつき出来たものだそうです。その手法はよくわからないけど、確かに一度飲む価値は絶対にあるお酒であることは間違いないです。

これで今回の東大蔵元会のお酒の紹介は終わりまが、両方の蔵とも今までにないお酒を造ろうという気概を感じました。これが現状に満足しない東大蔵の魂かな?

最後に新しく参加された花の露 社長の冨安 拓良のお写真を載せて終わりにします。来年に詳しく紹介しますので必ず来てください。待っています。

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富士錦酒造の蔵開きは日本一の規模らしい

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先日、調布市の仙川にある日本酒バーあふぎでの今年最後の蔵元を囲む会がありましたので、参加してきました。今回は静岡県の富士錦酒造の社長の清信一さんをお呼びしての会でした。清さんとは静岡県の酒造組合が主催するイベントなので時々お会いしてなかなかいいお酒を造っているなと思っていましたので、じっくりこの蔵のお酒を味わってみようと思ってきました。 

富士錦酒造はJRの富士駅から北の方に20㎞程上がった上柚町にあります。富士駅から山梨県の甲府駅を結ぶJR身延線の富士宮駅からも7-8kmも離れている富士山の西の麓に位置していて、標高が270mあるので、冬は結構寒いところのようです。酒造りとして適しているのは富士山の伏流水が豊富にあるからのようで、蔵の敷地内の30mの井戸からくみ上げた水を仕込み水として使っています。この水は富士山の溶岩層の第3層にある水で、富士山に降った雪や雨がしみ込んで80年近い時間をかけて湧き出てきた水で、硬度が32の軟水です。非常に柔らかくてとげをまったく感じない水で、これが富士錦のお酒の骨格になっているそうです。 

創業は元禄年間(1688~1704)年だそうで、300年以上の歴史のある蔵ですが、もともとこの地の地主で、ここで出来たお米を流通させる商売をしていたそうです。酒造りは余ったお米を使って、副業として始めたので、その生産量は200石足らずの小さな蔵だったようです。この蔵のお酒にははっきりした銘柄がなかったのですが、1914年(大正3年)に第14代目の当主の弟さん(清崟太郎)が衆議院議員を時の尾崎司法大臣を実家にお招きした時に、夕日を受けた富士山を見て感激して「富士に錦なり」と言われたことから、その言葉をいただいて「富士錦」と命名したそうです。

その後、戦後の農地改革や企業整備なので6年間休業していたこともありましたが、昭和26年に酒造りを再開しました。しばらくは他の蔵と同じような普通酒を造っていましたが、17代目の当主は昔の行われていた本物の酒造りを目指して開発を進めた結果、昭和46年に「富士天然醸造酒」を発売をしたのが大きな変革の始まりでした。そのお酒は「富士の湧き水と米だけで醸造した酒」というキャッチフレーズで出したお酒で、今でいう純米酒を全国に先駆けて出したのです。当時は純米酒という言葉すらない時代で、米のほかに調味料や醸造用アルコール入れることが普通に行われていましたので、価格が大幅に高くなる純米酒の醸造をやる人はほとんどいなかったようです。調べてみると全国で最初に純米酒を復活して出したのは京都の玉乃光酒造で、昭和39年のようですが、富士錦酒造のこの行為が業界に風穴を開ける大きなきっかけになったようですが、そのことはあまり知られていません。純米酒の普及と言えば純粋日本酒協会がありますが、この協会が発足したのは昭和48年です。でも、この協会には玉乃光は参加しているけど富士錦は参加していません。いろいろあるのでしょうね。 

富士錦が出した当初の純米酒は価格が高いうえに味は辛くて厚みのあるお酒でしたのであまり売れなかったようですが、その後研究を重ねて品質が上がりお酒も売れるようになり、現在は生産高も2000石になっています。 

そして今の富士錦の体制を築き上げたのは第18代目の蔵元の清信一さんです。信一さんは非常に変わった経緯で蔵元となっていますし、あの事件がなかったら今の僕はないと言っておられるほどですので、まず、それを紹介しましょう。 

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 信一さんは1993年横浜生まれの横浜育ちで、優しそうな顔立ちの現在54歳のダンディな方です。お父さんはシンガポールで金型を作る会社を経営していたので、将来はその会社を継ぐことを考えて、大学は中央大学の理工学部の管理工学科に進学されました。管理工学と言っても経営学とITを一緒にしていたような学問でしたので、卒業後は大和証券のシンクタンクの「大和総研」に就職して、生命保険会社などのシステム構築の仕事を担当して9年間務めたそうです。 

その間に東京で知り合った人と1993年に結婚することになったのですが、その年の12月に奥様のお兄さんが交通事故で急死されたのです。奥様は富士錦酒造の社長の娘さんでしたので、後継ぎが無くなり信一さんに後を継いでもらいたいとの声が強くなってきたので、どうするか悩んだそうです。でも、仕事が一段落した2年後の1996年に富士錦酒造に入社することを決め、家族で柚野に拠点を移し、養子縁組をすることになったそうです。父の会社の後は弟に譲って、自分は蔵に入ったのですが、お母様は泣いて悲しんだそうです。それはそうでしょうね。でもそれをお許しになったお父様は心の広い人ですね。 

全く酒造りを知らない人でしたから、急遽東京農大の醸造学科に通って、蔵の事情をお話しし、半年で2年分のカリキュラムを勉強したそうです。前半の授業では必死に聞き落さないよう勉強したのち、後半の2か月は東京で泊まり込みの醸造実習を行い、1996年の11月から蔵に入りました。最初は総務部長として製造から営業、製品造り、経理と色々なことにかかわり、2年ほど勉強した後、1998年に専務になり、2006年に社長に就任しています。 

信一さんは会社に入ってから数々の改革を進め確実に成果を上げてきています。蔵に入ってまずやったのはコンピューター導入による作業効率のアップです。まずは事務処理を手書き中心からコンピューター化し、、お客様管理をシステム化して提案型営業へのシフトへと転換し、、経験や勘に頼っていた造りの仕事の数値化により再現性追求するなどを行ってきたそうです。システム化については自分の得意な分野ですが、東京で学んだシステム化で大切なことは関わる人の連携が大切だということはわかっていましたので、よく話し合って進めたので、比較的スムーズに行ったそうです。 

しかし、造りの部分は色々な作業を数値化しても、肝心なところは造り手の感性が大切なことはよくわかったそうで、その部分は今でも大切にして伝統を守ることも留意しているそうです。もう一つの大きな改革は蔵開きを始めたことだそうです。 

蔵開きは年に1回3月の春分の日に蔵を開放してお酒の試飲と蔵の見学が基本ですが、地元のそば粉で打ったそばを出したり、地元で取れた鮎の塩焼きを出したり、最近は子供のための移動動物園を設けるなど、地元の村おこしの会の協賛を得て、子供も大人も家族も楽しめる完全に地元密着型のイベントになっているそうです。これを始めたのは信一さんが蔵に入った翌年からだそうで、自分から杜氏の社長にけしかけて実現したもののようです。

第1回目は雨のため800人ほどでしたが、年々参加者が増えて、今年の2017年は21回目で1万4000人が来場したそうです。僕がグーグルマップで確認したら、蔵の中にそんなに広い敷地はありません。蔵の周りの田圃にビニールシートを敷いて、富士山を見ながらお酒を飲んで過ごすようです。それにしても1万4000人とは凄すぎます。日本中の蔵の中でもこんなに人が集まる蔵開きはないと思います。インターネットで拾った蔵開きの風景を載せておきます。天気が良いと最高ですね。来年はぜひ行ってみたいですね。 

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最初は会社がある場所や蔵の存在を知らせる目的で始めたのですが、この町で作ったものを販売するなどしているうちに年々にぎわって地元の名も売れて、この町に移住する人が増えるなど地元に貢献できるイベントになった来たそうです。さらにお酒の知名度も上がり、お客様から酒屋さんに富士錦のお酒を指名してもらえるようになり酒の売り上げアップにもつながったそうです。 

最後にお酒造りについて触れてみたいと思います。信一さんが蔵に戻った時に一緒に富士錦酒造の杜氏になったのは南部杜氏の畑福 馨さんです。畑福杜氏と信一さんは入社同期の桜でお互いにとらわれるものがなく、真っ白な状態で出会ったので、二人で色々なお酒を試行錯誤しながら作り上げてきたそうです。これが信一さんにとって、大変良かったのではないでしょうか。畑福さんは平成22年の静岡県清酒鑑評会では純米の部で県知事賞を受賞するなど静岡を代表する名杜氏と称されていますが、平成23年に退職されることになりました。 

新しく来られた杜氏が小田島健次さんです。この方も畑福さんと同じ南部杜氏ですが、若くして杜氏になり静岡県の色々な蔵の杜氏を経験され、60才で定年になることを信一さんが聞きつけ、頼み込んで平成23年から富士錦酒造の杜氏となったのです。小田島さんは今年66才になられますが、常に少しでも上を目指す気持ちを持ち続けておられる方で、平成25年と28年で静岡県清酒鑑評会の純米吟醸の部で知事賞を取るほどの腕前を持った優秀な杜氏です。これからが楽しみですが、次の杜氏の育成も大切になりそうです。 

静岡県の蔵のお酒の話をするときにはどうしても静岡県沼津工業センターの研究員の河村傳兵衛さんとの関係に触れておく必要があります。河村さんは吟醸造りでは独自の理論を持ち情熱をもって静岡県の蔵の酒造りを指導してきた方で、今日の静岡流酒造りを築いた人です。静岡県の蔵の中には河村流に従わなかった蔵もあるようですが、富士錦は河村先生の指導を受けそれを活かして使っている蔵の一つですが、信一さんのお話では僕は悪い生徒で良く怒られていたので、一番の弟子にはならなかったと謙遜して言われていました。でも、富士錦のように非常に奇麗な水でお酒造りをするには河村流の造りが適していたのではと思われます。 

以上で蔵の紹介を終わりますが、河村先生のことや、静岡酵母をしれたい方は下記のブログをクリックして見てください。
 http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27e3.html 

それでは早速飲んだお酒の紹介に入ることにします。今回は8種類のお酒を飲むことができました。飲んだお酒はお店のママの板倉さんの前にずらっと並んでいますが、よくわからないので、これから1本ずつ紹介していきます。ママのことを知りたい人は下のブログをクリックしてください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/index.html



1.富士錦 大吟醸出品酒 山田錦 

Dsc_0357このお酒は平成29年3月に行われた静岡県清酒鑑評会で入賞したお酒ですが、去年知事賞を取っているお酒は純米大吟醸でしたからちょっと違うものです。どうして純米大吟醸を出さなかったのかは聞きませんでした。 

原料米は兵庫県産の山田錦40%精米で酵母は静岡酵母のHD-1です。アルコール度数は17度、日本酒度は+3、酸度1.4でした。 

飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけどそれほど強くはなく、酢酸イソアミルのさわやかな香りもする独特の香りでした。蔵の5℃の冷蔵庫で半年以上熟成していたので、香りは減っているけど、奇麗な仕上がりでしたが、味乗りはしてきていました。 

今の段階の方が食事と合わせるのなら良いと思いました。 

2.富士錦 純米大吟醸 雄町 

Dsc_0358原料米は岡山県産の雄町45%精米で、酵母は協会18号と他の酵母とのブレンドだそうです。ブレンドと言っても2つの酵母を同時に入れるのではなく、別々のもろみを立てて最後の段階でもろみをブレンドしてから搾るそうです。2つの酵母を同時に投入すると強い酵母が勝ってしまうからだそうです。 

アルコール度数は15.5度、日本酒度+2、酸度1.3でしたが、飲んでみると含んだ時にもしっかり味わいを感じますが、飲んだ中盤から味がスウット伸びてくるバランスのお酒で、つい微笑みが出てしまうようなお酒でした。良いです。 

このお酒は今年の雄町サミットで入賞したお酒ですが、造った時はもっとクリアーなお酒だったそうですが、熟成することによってうまく味が乗ってきたそうです。雄町はどうもそういう特徴があるようです。雄町を扱いだしたのは去年からだそうで、来年も楽しみですね。 

3.富士錦 特別純米誉富士 

Dsc_0360このお酒は原料米に「誉富士」60%精米を使ってるのが特徴です。誉富士は静岡県が平成10年に開発したお米で、山田錦を放射線処理とその後の系統選抜によってできたお米で、山田錦より背丈が低く(1mくらい)根元がガッチリしていて倒れにくいのが特徴ですが、心白は山田錦より大きくあまり高精米には向かないけど、味は出しやすいお米のようです。このままでが吟醸用には使えないので、静岡県では現在改良中のようです。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度数は16.5度、日本酒度+3、酸度1.2です。飲んでみると酢酸イソアミル系のさわやかは香りがしていますが、味がしっかりしていて飲み応えのあるお酒でした。常温でもぬる燗でもおいしく飲めるそうです。 

このお米は自社田で作ったお米で、2014年にフルネットの純米酒大賞を取って、社員一同大いに盛り上がったそうです。 

4、富士錦 純米原酒 ひやおろし 

Dsc_0364_2このお酒は原料米を酒造好適米ではない食用米の愛知県産の「あいちのかおり」65%精米を使ったお酒を秋まで貯蔵したひやおろしです。 

「あいちのかおり」は愛知県の農業作物の研究所で、愛知の希少米「ハツシモ」と「コシヒカリ」の系統「ミネノアサヒ」を交配して誕生した愛知県を代表する飯米の品種です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で酒質はアルコール度数は17.5度、日本酒度+2、酸度1.4です。飲んでみると味は比較的軽めですが、口当たりがすごく柔らかいお酒でした。富士錦の水の良さが上手く引き出されているような気がします。 

お燗して飲みましたが、口当たりの柔らかさは変わりませんでしたが、後味に辛みを少し感じるようになっていましたが、バランスは崩れていませんでした。 

このお酒は名古屋国税局主催の平成29年清酒鑑評会の純米の部で優秀賞を取ったそうです。ここに出品するにあたっては5本あったタンクの酒を蔵人がテースティングしてもっともよかったものを出したそうです。同じように作ってもタンクによって違うのですね。 

5.富士錦 純米 青ラベル 

Dsc_0367このお酒は静岡県産の五百万石を使ったお酒で、このお米を使った理由は5年ほど前に花の舞酒造が地元の農家に五百万石を造ってもらった時に、造ったお米を全量使いきれなかったので、富士錦酒造が買い取ることになって、始まったお酒です。 

五百万石65%精米で酵母は静岡酵母NEW-5を使っていますが、今まで飲んだお酒とは味が違ったお酒になったそうです。五百万石は溶けにくいお米なので、どうしても味が軽くなる傾向があるそうです。 

酒質はアルコール度数15.5度、日本酒度+3、酸度1.3で、飲んでみるときりッとしたちょっとシャープなお酒でした。こういう味は外国人お好みになるのか、去年のモンドセレクションで賞を取ったそうです。 

6.富士錦 湧水仕込み 純米酒 

Dsc_0365_2このお酒はひやおろしと同じ「あいちのかおり」65%精米の純米酒で、酵母も同じですが、東京の酒屋さんお注文で、アルコール度数を変えて名前も少し変えて出したお酒です。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+4、酸度1.5でしたが、飲んでみると、口に含んだ時の味が弱くて、特徴が薄い感じがしました。これはアルコール度数が低いせいかもしれません。 

社長のお話ではこのお酒は作り立ての時は結構おいしかったそうですが、現時点ではちょっと味が変わってしまったようで、その原因はわからないそうです。 

お酒の味は難しいですね。 

7.富士錦 純米吟醸生酒 熟 

Dsc_0371このお酒はちょっと特殊なお酒です。原料米は長野県の美山錦55%精米の純米吟醸の生酒ですが、12月に絞った生酒を瓶に詰めて、4度の冷蔵庫に保管していた熟成酒です。 

酵母は静岡酵母のNEW-5で、酒質はアルコール度17.5度、日本酒度-1、酸度1.6でこの蔵のお酒としては少し甘口で酸味で切れを出してバランスさせたお酒です。 

飲んでみると甘みを含んだしっかりした味わいがドンと来るけど、後味がすっきりと消えていくお酒でしたので、アミノ酸は少ないのではないでしょうか。味の濃いお料理にもある酒好きの人に合うお酒だと思いました。 

どうしてこんなお酒を造ったのですかときたら、10年前くらいに冷蔵庫の中に新酒の生酒が残っているのに気が付いて、春の蔵開きに出したら、評判が良くて追加注文が来たので、それ以来、蔵の定番として造っているそうです。 

驚いたのはこれを燗をしたらまるで姿を変えて、柔らかくてフラットになってとても飲みやすいお酒に変身したことです。お燗温度はやや高めの45度くらいがよさそうです。 

8.富士錦 本醸造 寒造り 

Dsc_0375このお酒は原料米は「あいちのかおり」65%精米の本醸造ですが、酵母な静岡酵母のNO2を使っています。 

酒質はアルコール度15.5度、日本酒度+5、.酸度1.3で、少しアルコール度を低めにした辛口ですっきりした軽い味わいの冷にもお燗にも合うお酒を狙ったようです。 

飲んでみると他の純米酒より香りが高いのは酵母のせいだと思われます。飲んでみるとあまりアルコール感がしない本醸造らしくないお酒でした。 

お燗にしてみたら味が少し膨らんでくるので、お燗にあっていると思われますが、このお酒は2017年の燗酒コンクールの熱燗の部で金賞を取ったそうです。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を全体に見てみますと、熟を除くと日本酒度は+2~+5、酸度は1.2から1.5と比較的狭い範囲の酒質を示していました。社長はうちの蔵は酸が高いお酒は得意でないからと言われていましたが、これはやはり河村傳兵衛さんの影響が色濃く出ているのと、仕込み水の良さを引き出すために自然とここに収まったのではないかと思われます。 

最後に皆で集まった集合写真を載せておきます。最後の最後に、清社長の得意技をお聞きしましたので、ちょっとお教えします。清さんはカラオケがお得意で、特に矢沢永吉の唄が得意だそうです。今度一度カラオケで勝負することを約束してお別れしました。 

清社長長い時間色々説明していただき、ありがとうございました。 

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若竹屋酒造は不思議な蔵です

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今まではブログを書くための貴重なデータをネットワークHDDであるNASに保存していたのですが、暮れのかたずけで、レイアウトを変えることをしていたら、NASの電源を誤って抜いてしまいました慌てて電源を入れなおしたのですが、ファイルだけは見えたけど、中身が読めない状態になったので、早速そのメーカーに問い合わせて色々確認しているうちに、ついにレッドランプがついてお手上げの状態になってしまいました。メーカーの話では、「こうなったら復帰はできません。リカバリー専門の会社でデータ復帰しかない」とのことでした。 

それからが大変で、ある専門の会社に持ち込んだら、HDDが破損しているらしいけど何とかデータは読めるかもしれない。だけど急いでやると80万円はかかるとの返事でしたので、それなら諦めますと言って交渉しているうちに、年明けの出来上がりなら20万円以下で対応しますということなので、手打ったら、なんと年度末に全データが読み込んだ新しいHDDと壊れたNASが戻ってきました。きっと技術的にはすぐ読めたのに吹っ掛けられたのだと思いましたが、貴重なデータが戻ってきたので良しとしました。戻ってきた壊れたNASのHDDを取り出してチェックしてみましたが、読めないのはしかたがないけど、再利用のためのフォーマットもできない状態でした。どうやって読んだのでしょうね。この経験で分かったことは以下のことです。 

1.RAIDタイプのNASは停電に弱いので使わないほうがいい。使うのなら無停電電源装置と電源が抜けにくいタイプのNASを選ぶしかないですね。 

2.貴重なデータもいつも使う本体のハードディスクに保存しておき、定期的に専門のバックアップソフトで外付けのHDDに保存する方が確実です。最近はクラウドの方が良いとの意見も聞きますが、DOSから復帰できるかが心配です。 

3.万が一HDDが読めなくなって専門のリカバリー会社と交渉する時はあせらず1社だけでなく数社と交渉をする。 

そのおかげで年明けからブログの再開を始めました。今回は一般社団法人「酒類ビジネス推進協会が主催する「応援しよう 頑張る蔵の美味しいお」の第4回目です。第1回は千葉の小泉酒造、第2回は東京の田村酒造場、第3回は千葉の東薫酒造、そして今回は福岡県の若竹酒造場の副社長の篠田成剛さんをお迎えしての会でした。 

小泉酒造と東薫酒造の時は参加してブログに書いていますので、良かったらご覧ください。 

小泉酒造:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e160.html 

東薫酒造:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-79c5.html 

この方が協会の代表者の宮坂芳絵さんです。まだお若いので協会の運営は大変だと思いますが、精力的に頑張っておられます。彼女の凄いのは会のために案内のオリジナルな冊子と造って全員に配ることです。これはなかなかできないことです。 

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この協会の設立の趣旨は小泉酒造のブログで書きましたので、それをご覧ください。本来は良いお酒を造っている比較的小さな蔵を応援しようというのが一つの目的だったと思うのですが、田村酒造はお金持ちの蔵なのでどうかなと思っていました。でも小泉酒造や東薫酒造ならその対象としてもいいかなと思ったのですが、今回の若竹酒造場はどんな蔵なのでしょうか。僕はよく知らないで参加しました。副社長のお話では生産量が250石と言っておられたので、これは良い蔵をキャッチしたなと思っていましたが、このブログを書くにあたって、インターネットで色々調べてみるとそんなに小さな蔵ではないことが判りましたので、まずは蔵の紹介をしたいと思います。 

この蔵は福岡県久留米市の田主丸(たぬしまる)町にありますが、JR久留米駅から東に20㎞くらい行った筑後平野の東のはずれです。創業は1699年の元禄で初代の若竹屋伝兵衛がこの地に蔵を開いたそうですが、伝兵衛さんは余ったお米で酒を造るような大地主ではなく、単純にお酒そのものに魅力を感じて酒を造り始めたそうです。ですから、自分で、米を選び購入し、酒を造ることに資産を注いできたようですから、苦労されて酒造りをしてきたのでしょう。 

それから今日までずっと酒を造り続けてきたわけですが、、その間には飢餓や革命や戦争など色々な時代を切り抜けたのは、伝統の技術を守り抜こうという努力ではなく、意欲的に革新し続ける努力をしたからようです。若竹屋の家訓に「若竹屋は先祖から受け継ぎ志商いにあらず、。子孫より預かりしものなり」という言葉があるそうです。この言葉には深い意味を感じますね。昔からの伝統を守っていくのではなくて、子孫へ残していくために変えていかなければいけないことと、残していくべきことをバランスさせて意欲的にチャレンジしなさいという意味があるように思えます。家訓のようにこの蔵は色々なことにチャレンジしてきているようですので、それについてご紹介します。 

<林田春野さんの例>

まずは最初は12代蔵元の林田博行さんの奥様である林田春さんのチャレンジを紹介します。春野さんは久留米の日本酒の造り酒屋に生まれ、昭和5年に若竹屋に嫁ぎ、蔵の女将として支えてきましたが、日本酒に変わる新しいお酒の開発を思いつき、色々な研究を進めた結果、麦焼酎をベースに胡麻油を添加すると、独特のくさみがきえることに気が付き、長い間試行錯誤をして、胡麻と麦を使った焼酎(もちろん麹米は使います)をある程度の貯蔵期間熟成した焼酎の「胡麻祥酎」を開発することに成功し、1978年にそれを製造する紅乙女酒造を立ち上げています。この焼酎は国内の鑑評会でも多くの受賞を受けるだけでなく、海外では2006年から5年連続国際味覚品質審査会で三ツ星賞を受賞するなど輝かしい成果を上げています。2014年からは九州をめぐる豪華列車のななつ星の車内ドリンクとして選定されています。未来につながる新しいビジネスを立ち上げたことになります。 

<林田博行さんの例>

春野さんのご主人の林田博行さんも凄い人のようです。この田主丸地区は古くから独自の産業を立ち上げる努力を色々していたのですが、その一つが巨峰の栽培でした。巨峰は伊豆の大井上先生がこの品種を編み出した人ですが、その栽培が難しく、大井上先生の代には成功しなかったのです。しかし、その弟子の越智先生が耳納連山に囲まれて水はけが良い田主丸の土地が巨峰の栽培に適していると判断し、そこで巨峰の栽培の研究をしたいと思ったそうです。でも資金がないので博行さんに支援を頼み込んだそうです。博行さんはその話を聞き、気前よく研究所の土地と建物を提供して、巨峰の栽培の研究所の設立の貢献しました。研究所の設立は昭和31年でしたが、その後栽培を重ねて昭和35年には巨峰栽培に成功し現在に至っています。そういう意味で、博行さんは巨峰栽培の生みの親として高く評価をされています。 

その後巨峰の栽培は次第に拡大していきますが、この巨峰からワインを造ることを思い立ったのが息子の13代蔵元の林田正典さんでした。正典さんは醸造学の博士でしたので、こういった発想ができたものと思われます。そして、1972年(昭和47年)にワインを生産する株式会社巨峰ワインを設立させ、今でもその生産を続けていますが、現在は14代蔵元の林田浩暢さんが社長をしています。 

<林田浩暢の例>

この方が林田浩暢さんですが,インターネットから拝借しましたので、いつ頃のお写真かはわかりません。 

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この林田浩暢さんも凄い人のようです。つぎに浩暢さんが何をしたかをご紹介しましょう。浩暢さんは1965年に13代の正典さんの長男に生まれ、蔵の跡取りとして育ってきたのですが、大阪大学の博士号をもつ父親に対するコンプレックスもあり、若竹屋なんて継ぎたくないと高校を卒業すると東京に飛び出して明治大学の夜学に通いながら、広告代理店のアルバイトをして生活をしていたそうです。そんな折に実家から池袋の西武百貨店で試飲販売をするので手伝えという知らせが来ました。バイト代をはずむということで引き受けて、販売をしたのですが、最初は人前で声も出せなく全く売れない状態だったそうです。これではいけないと恥ずかしさをこらえて下を向いて声を出したら、お客様が来るようになったので、思い切って顔を上げて博多弁で声を出したら大勢お客様が来て、お酒がすごく売れたという経験をしたそうです。この経験が大きく彼を変えるチャンスとなったようです。 

お酒を売るということはお酒を造る人だけではなく、米を作る人、瓶にラベルを張る人、それを運ぶ人、お店で売る人など多くの人の手によって成り立っていることを初めて感じたので、この全体の仕組みを考えられる若竹屋の仕事が面白い、これなら好きになれるかもしれないと思ったそうです。その後広告代理店をやめて、西武デパートに雇ってもらって大学を卒業するまで営業を勉強したそうです。 

蔵に戻ったのは1992年27歳の時でした。家に戻った時の若竹屋の年商は7億円弱ありましたが、毎年赤字経営で億単位の債務超過があり、何とかしないといけない状況のようでした。当時は量産量販型の経営でしたので、生産量を抑えて高品質高粗利益販売にする改革を断行したそうです。具体的には今後の経営計画を立ててそれを仕入れメーカーに説明することにより、お互いにハピーになることを理解してもらい、仕入れ価格を下げてもらう交渉をしたことと営業部の廃止しお客様部に変えて営業することでした。それまでの営業は主に問屋に商品を売り込みどのくらい売上を出したかで評価していたのを、問屋ではなく販売店に買っていただく提案をどのくらいやったかで評価するようにしたそうです。その効果は徐々に出てきて、2006年には売上3億円と半分に減りましたが、経常利益が2000万円になるまでに持ち直して現在に至っています。 これは頭でわかってもなかなか実行が難しいことだと思います。

現在売り上げがどのくらいの会社なのかはデータがないのでわかりませんが、3億円以上あるものと思われます。日本酒の生産量が250石だとするとその売り上げだけでは到底3億円にはなりません。上述した会社などの関連の売り上げがあって達成しているものと想像できます。ですから若竹屋は日本酒の生産量は少なくても、それだけで経営している蔵ではないので、本当に小さな蔵とはだいぶ違うことをが判りました。そういったことを理解して若竹屋のお酒を見てみたいと思います。 

お酒の紹介に入る前に今回お酒の説明をしていただいたのは副社長の篠田成剛さんです。、まずこの人の紹介をしましょう。下の写真が成剛さんです。頭の毛は薄いけど若い感じですね。 

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成剛さんは社長の林田さんとは名字が違いますが、社長の弟で8歳年下だそうです。成剛さんも父のことが嫌いで、兄と同じように東京にあこがれていたので、東京の大学に行ったそうですが、卒業の時、就職の内定が4社あって迷ったので兄に相談に行ったら、若竹屋の現状を説明して、問題点が多く抱えていて解決しなければならいことがいっぱいあり、弟の力が必要だと説得されて、蔵に戻ることになったそうです。兄とは仲が良く、スナックに行くとよくデュエットをするほどだそうです。また、最初は日本酒が嫌いだったそうですが、愛知県の会社に修業した時に、日本酒が好きになり利き酒も得意になったとのことでした。 

ちょっと下の写真を見てください。 

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画面をクリックして拡大してみるとわかるのですが、すごく目によって表現される方です。この目で営業されたら相手はイチコロですね。声もとても良い方で、今回でも周りが騒がしくて話を聞いてくれない時に彼の良く通る声で聴いてくださいというと、会場がぱっと静まったくらいです。この方もなかなかの人ですね。血筋は争えません。 

それでは早速飲んだお酒の紹介に入ります。篠田さんはお話は面白いのですが、あまり専門的なことをお話しされなかったのと、他の人の話し声で聞き取りにくかったので、肝心なことが書けなかったのはお許しください。

1.「響(もてなし)」大吟醸  

Dsc_0324このお酒は田主丸の山田錦38%精米した大吟醸で、酵母は9号系の自社酵母だそうです。銘柄は「響」と書き、もてなしと読むようですが、その字がラベルに書いてあります。でも、読めないですね。 

ラベルのデザインは成剛さんがやってるそうで、ある書道家が畳2畳敷きの大きさの紙に書いた文字を写真で撮り縮小したものを使っているそうです。 

このお酒は全国新酒鑑評会に出した出品酒でこっそり蔵から持ってきたそうです。酒質は日本酒度+1、酸度1.1、アルコール度数16度のお酒でした。 

飲んでみると香りは抑え気味で、奇麗な甘みが広がり余韻も少し感じるお酒ですが、ちょっと辛みを感じてしまいましたがそれが特徴なのかもしれません。 

2.「極」 純米大吟醸 

Dsc_0325このお酒は「響」と全く同じお米、同じ酵母で、スペックも同じですがアルコール添加をしていない純米大吟醸です。 

極というブランドのお酒は今は販売していない銘柄だそうで、極と名をつけないで単純に純米大吟醸という銘柄で売っているそうです。 

飲んでみると、香りは「響」と同じ香りですが、やはり抑え気味です。こちらの方が旨みがあって、辛みが少ないので全体的に奇麗さ感じました。この味なら純米大吟醸を全国新酒鑑評会に出品してもいいような気がしました。 

3.「渓(たに)」 ひやおろし 

Dsc_0327このお酒は山田錦50%精米の純米吟醸を1回火入れしたのち、蔵の18℃のタンクで半年熟成してそのまま瓶詰めしたひやおろしです。 

酒質は日本酒度+3、酸度1.2、アルコール度数15%ですが、飲んでみるとj、熟成の香りはあまりしないけrど、うま味は増してバランスはよくなっているように思えました。 

5で紹介する「渓」と同じスペックのはずですが、熟成するとこんなに変わるのだということが良くわかる典型ではないかと思われます。 

4.「坐」 無濾過 生原酒  

Dsc_0330このお酒は福岡県産の夢一献を68%精米の純米酒の無濾過生原酒です。 

夢一献は福岡県で開発した酒造好適米ですが、病気に強く味の良い飯米の開発を目的に育成中に偶然できたお米だそうです。粒が大きくて、蛋白含有量が少ない酒造適性のあるお米で、レイホウに変わる米として現在作付け面積が広がってきているそうです。 

酒質は日本酒度+4、酸度1.7、アルコール度数17%というお酒で、飲んでみると最初にうまみと甘みがドンと来るけど、酸が強いので後味を切ってくれるのが特徴です。 

アルコール度数が上がるとパワーが出る分、切味が悪くなるので、酸を高くしてバランスさせたようです。低温で1年ぐらい寝かせるともっと面白くなるのではと思いました。 

5.「渓」 純米吟醸 

Dsc_0332_2このお酒は前述したひやおろしの1回火入れのお酒のはずです。特にそういった説明はありませんでした。副社長のお話では特徴のないのが特徴のお酒だそうです。 

確かに飲んでみると口に含んだ時にうまみがぱっと広がるのではなく、ゆっくりと奥に広がっていって、いつの間にか消えてしまうお酒でした。 

悪く言うとコクのある柔らかい水のようなお酒で、特徴がない分どんなお料理にも合わせやすいかもしれませんね 

6.「坐」 純米 夢一献  

Dsc_0306このお酒は4番のお酒のアルコール度数を15.5%まで下げて、2回火入れをした純米酒です。 

たしかにアルコール度数が下がった分だけ飲みやすくはなっていますが、2回火入れ独特の老香的な香りが出てしまっているのが、残念です。 

やっぱり、2回火入れする場合はこの香りが出ないように管理してもらいたいです。

 

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 7.ヌーディ 無濾過 

Dsc_0335このお酒のラベルを見てください。お米にビキニを履かせたデザインになったセクシーなイメージのお酒です。この蔵にはこの蔵に38年間ずっと杜氏をしていた横尾正敏さんがおられますが、彼は東京農大を卒業後、若竹屋に入って蔵を背負ってきた杜氏ですが、まじめな性格で努力家なので、副社長が横尾さんらしいいやらしさを出したお酒を造ってくださいと3年間言い続けてきて今年やっと気に入ったものができたので出したお酒だそうです。

お米は全量雄町を使っていて、精米度は60%で酵母は9号酵母を使った特別純米酒だそうです。 

飲んでみると珍しく香りが立って、甘みと酸味を感じるおさけで、全体にねっとり感があって、後味に余韻を感じるお酒でした。確かに今までの酒とは違うちょっといやらしさが出ているのかもしれません。 

8.デザート酒 博多練り酒 

Dsc_0340このお酒は室町時代の造りを再現した練り酒です。練り酒の作り方は米ともち米を乳酸発酵させ、その乳酸液に米、麹、水を入れて再び発酵させて、それを臼で引いたのちに絹布で濾すもので、アルコール度数が低い白く濁ったお酒で、日本酒の原点と言えるようなお酒です。 

練り酒は室町時代から江戸時代にかけて造られていて、その中でも博多練り酒の評価が高かったようです。豊臣秀吉が九州に行った時に、愛飲したと言われています。 

実際に飲んでみるとねっとりとした甘酸っぱいお酒で、アルコール度数が3度なので、今ではデザート酒でしか使えないのではと思いました。このお酒は13代目の蔵元が十数年かけて再現したおで、現在も引き続き造られています。 

9.馥員元禄之酒 

Dsc_0342このお酒の13代目の蔵元が創業時代のお酒を再現するために元禄時代の書を読み漁って、再現したお酒だそうです。 

ですから精米はあまりしていない玄米に近い米で作られていますが、手法はわかりません。お酒の色は琥珀色をしています。 

5年の熟成酒のようなので、飲んでみると香りは熟成のカラメルとか醤油のような香りがしますが、普通の熟成酒とは少し違うような気がしました。まずは甘さを感じて軽い酸味も感じますが、うま味は複雑で濃厚な感じです。ロックで飲みたい気がしました。沢でも山飲めるお酒ではないですね。 

練り酒や馥員元禄之酒を造ろうという13代目の蔵元は大変勉強家で、伝統を重んじる理論追求型の人ではないでしょうか。

以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、この蔵のお酒を一言で表現するのは難しいですね。色々なお酒を造っている割には今一つ特徴が捉えにくかったけども、チャレンジする姿勢は感じました。今後どう変わるか、じっくり見守っていきたいですね。

最後にこの協会のお酒の会は第4回を迎えて感じたことを述べてみます。会の趣旨はよくわかるし、努力をされていますが、折角蔵元さんが来ているのですからもう少しじっくり蔵元さんのお話を聞くように仕向けた方が良いと思います。そのためには会のはじめにそのことをお願いすることと、この人数でやるならマイクとスピーカーを用意することです。ぜひ携帯用の質の良いものをお買いになったらどうでしょうか。 

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浪の音を醸している佐々木酒造店は将来が楽しみな蔵です

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去年の11月のはじめに第20回みやぎ純米酒倶楽部・穣の宴が開催される日の午後一番に、以前から気になっていた佐々木酒造店を訪問しました。この蔵の存在を初めて知ったのは2016年10月の宮城県酒造組合が主催する試飲会でした。宮城県の蔵と言えば、浦霞と一ノ蔵が有名ですので、僕はもっと小さな蔵として墨廼江、日高見、勝山、伯楽星を取り上げてこのブログで紹介したことがありますが、佐々木酒造店の浪の音は全く知りませんでした。以前に書いた上記4蔵の紹介の記事を下記に載せておきますので、興味のある方はクリックしてご覧ください。 

墨廼江:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-8dc1.html 

日高見:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-83e1.html 

勝山:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-993c.html 

伯楽星:http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-401f.html 

佐々木酒造店については生産量が100石に満たない小さな蔵であること、兄弟二人だけで酒造りをしていること、東日本大震災で蔵が津波に流されて現在仮設蔵で酒造りをしていることは知っていましたが、厳しい環境の中で、とても質の高いお酒を造っているのを知り、どんなところでどんな酒造りをしているのか大変興味を持っていました。ですから、試飲会の席で蔵見学できますかとお聞きしたら、どうぞと言われていたので、1年後の昨年11月に訪問させていただきました。 

蔵は名取市閖上(ゆりあげ)にありましたが、閖上の地は漁港として栄え、そこに流れる名取川はその上流が広瀬川となって仙台市につながっていましたので、昔から伊達藩に非常に大切にされたところだったようです。この地に佐々木酒造店を創設したのは明治4年で、創業以来140年以上たつ老舗の蔵ですが、今では名取市に唯一ある蔵となっています。でも創業のころの経緯は調べてもよくわかりませんでした。 

名取市はJR東北本線の名取駅を中心に東西に広がある大きな町で、名取駅から海岸までは約6kmほどありますが、ほとんど平らな街なので津波は海から2㎞程まで内陸まで来たそうです。蔵は海岸より1㎞程内陸の名取川のほとりにあったので、まともに津波に被ったとそうです。 

専務取締役の佐々木洋さんは地震の時は出かけていて、揺れがひどかったの蔵の煙突が心配で蔵を見に戻ったら、案の定煙突は折れて倒れかけていたけど自社の敷地内だったので安心していたところ、津波が来るのが見えたので急いで鉄筋コンクリートの建屋の屋上に逃げて命拾いをしたそうですが、他の建物は全壊したそうです。その時の写真がこれです。この建物は39年前の宮城県沖の地震の後に土蔵から鉄筋コンクリート造りに変えたので、生き延びたのですね。 

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このあたりを洋さんに車で案内してもらいましたが、防波堤を2重に作って閖上地区は徐々に色々な施設ができつつありますが、まだまだ復旧の2-3合目くらいの感じに思えました。この蔵は昔はどんな蔵だったのでしょうか。明治時代は「佐々木多利治酒造場」という名前だったそうで、その時の絵ハガキを洋さんが見つけてFACEBOOKに載せていたので、お見せします。下の写真のように凄い立派な蔵ですが、縮尺は正しいかどうかはわからないそうです。この蔵が佐々木酒造店になったのはいつごろかわかりませんが、この煙突と中庭はあったそうです。この当時の生産量は400石でしたが、震災の前は200石位だったそうです。 

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震災後、被害を受けた蔵の中に奇跡的に3つのタンクの純米酒「宝船浪の音 名取物語」の新酒だけが無事だったので、6月には他の蔵の設備を借りて瓶詰めし、2012年の2月には閖上さいかい市場内に仮店舗を造り、3月には震災復興酒「閖(ゆり)」として発売したそうです。そして2013年度にはお酒を造りたいといろいろ検討してきましたが、復興計画がなかなか決まらないので、元の土地での再開は不可能と判断し、名取市内の下余田に復興工業団地ができることになったのでそれに申し込み再開の準備に入りました。ゼロからの復旧でしたが、多くの蔵からの支援を受けて、その年の12月にはこの団地内に仮設の蔵を造り現在に至っています。 

現在の会社の組織を見てみますと、佐々木洋さんが専務取締役、弟の佐々木淳平さんが取締役杜氏で、社長が母の佐々木知加枝(ささきちかえ)さんでした。あれ、父親は何をしているのかと思い調べてみますと、お名前は佐々木一十郎(ささきいそお)さんで、1998年から2004年までは佐々木酒造店の社長をされていたのですが、2004年に名取市の市長に当選されて時、社長をおやめになって奥様の知加枝さんにバトンタッチしたようです。これはたぶん市長の公務員としての制約のためだと思います。 

その後3期市長を務めましたが、2016年に選挙に敗れて、現在は元々経営していた美田園わかば幼稚園の園長をしておられて、酒造りにはタッチしておられません。この幼稚園は元々祖母が創立した幼稚園で、蔵の隣に閖上わかば幼稚園としてあったのですが、震災で壊滅してしまいました。震災前までは知加枝さんが理事長をされていましたが、震災後は場所を移して新しく美田園わかば幼稚園として再開していたようです。なるほど、明治時代の蔵の広い土地の一部が幼稚園になっていたのですね。ですから佐々木家は名取市の名士だったことが良く判りました。 

それでは蔵の見学した状況を紹介しましょう。 

前述したとおり仮設蔵は駅から東に2㎞程行った工業団地内にありますの徒歩でお伺いするつもりでしたが、洋一さんが車で迎えに来ていただきました。工業団地の入り口は自分のカメラで撮ったのですが、設定を間違えて撮ったため写っていませんでしたので、グーグルMAPから拝借しました。 

まずは工業団地の入り口です。奥に四角い箱のような建物が工場群です。 

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上から見てみましょう。上の列の左から2番目が佐々木酒造店の蔵です。広さは20m×25mで、高さは5mくらいでした 

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構造は鉄骨スレート造りで、空調がない代わりに窓をふさいで、壁は発泡ウレタンを吹き付けて断熱していました。この断熱性は非常に効果があるそうです。空調がないので10月から4月で酒造りをしているそうです。 

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この建物の全体写真は撮れませんが、下の写真を見てください。床はコンクリートでリノリウム処理はしていません。広い建屋の中で冷蔵庫と麹室とボイラーだけがプレハブ小屋のなかに設置されていますが、後の装置は床の上に置かれていました。これらの装置の多くは全国の色々な蔵からの応援でそろえることができたそうです。 

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この応援には宮城県産業技術センターの橋本建弥さんが全国の技術者仲間に応援の声をかけていただいたおかげで出来たそうです。良かったですね。 

それでは造りの流れに沿ってご紹介していきます。 

この地は家庭用の水道水しかないので、超軟水の仕込み水をローリーで運んで使っているそうですが、そのためのトラックは九州の焼酎メーカーから頂いたものだそうです。ローリーの水を中空糸ろ過で奇麗にして仕込み水として使っているそうです。トラックやその他の機械をいただけることになり、現地まで取りに行ってトラックを運転して戻ってきたそうです。とても大変だったそうです。

原料米はちゃんとした置き場はなく、空いているところに置いてありました。使用しているお米は地元のひとめぼれ、県北のトヨニシキ、山田錦の3種類だけです。 

洗米は自動計量機とウッドソンの組み合わせて使っていいました。 

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この蔵は麹米も掛米も限定吸水をしていて、洗米したお米を袋に入れて、盥の中に一定時間沈めて浸漬するそうです。 

使用している水の温度は下記のプレートフィン熱交で温度制御をしているようです。どんなものに使ってるのかは聞き損ないました。

 

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蒸気発生装置として三浦製作所の0.75トンの重油式小型ボイラーでを購入しましたが、消防法の関係で建屋の中に設置されていました。 

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造られた蒸気は下の写真のスチームクリーナーで奇麗にされ、必要な温度にまで加熱されます。この装置は神戸の櫻正宗さんから頂いたそうです。 

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甑は1000㎏で、通常は300kg~500kgのお米を蒸しています。この部屋は蒸気の排出装置はないので、出口までもっていって蒸すそうです。その写真がありましたのでつけておきます。 

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雨の日はいろいろな対策ををするそうですが、晴れの日はこんな形で蒸しているようです。
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蒸したお米はスコップですくい上げて冷却しますが、温度の高い麹米は簀子の上で手でかき混ぜながら冷却し、温度の低い掛米はこの放冷機(中古品を購入)で行うそうです。 

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次は麹室ですが、奥に自動製麹装置がありますが使わないで、床を使って造っているそうです。一部屋しかないので出麹も同じところでやるので温度管理が大変だそうです。 

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これが酒母タンクです。随分小さいですね。 

Dsc_0397_2酒母造りは高温糖化酒母方式だそうです。具体的には最初に麹と水だけで60度でドロドロした甘酒状態にしたのち、水を入れて40度のなったところで乳酸を投入し、さらに25度まで冷却して酵母を入れて発酵させ酒母とするそうです。 

なぜ高温糖化酒母を使ったかというと、酒母室がないので雑菌による汚染を恐れて、より安全な高温糖化法を選んそうですが、初めての試みでしたので色々な人に相談したそうですが、伏見の藤岡酒造さんには大変お世話になったそうです。 

次はいよいよ仕込みタンクです。 

3000Lのステンステンレスタンクが5基あり750KL仕込みをしているそうです。週1本仕込みで、金曜日が添え仕込み、土曜日が踊り、日曜日が仲仕込み、月曜日が留仕込みだそうで、麹は米の状態で変えますが、一般的には酒母が総破精で添え以降は突き破精にするそうです。 

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いよいよ搾りですが、この蔵は全量槽搾りだそうです。槽は佐瀬式吟醸用搾り機で、最新のものを購入したそうですが、自動化が進み手がかからないのでとても使いやすいそうです。 

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瓶詰め用の瓶太くんとイタリア製の打栓器がありました。すべて貰い物のようです。 

Dsc_0401_3Dsc_0408以上で蔵の内部の様子の説明を終わります。重要な設備は将来引き続き使えるように新規購入し、そのほかのものはできるだけお金を使わないように工夫していることが判りました。でもお酒の質を落とさないことには壽分気配りをしているようでした。

今後の計画をお聞きしたところ、早ければ来年の10月に元の場所に新工場建設のスタートをさせ、再来年の秋に新工場をスタートさせたいとのことでした。 

その日の夜に仙台市の勝山館で第20回みやぎ純米酒倶楽部「穣の宴」に参加して佐々木酒造店を訪れ、佐々木兄弟にお会いしました。その時の写真です。右の方が兄の専務取締役の洋さんで蔵全体のことと麹造りを担当しています。左の方が弟の取締役杜氏の淳平さんです。お二人ともどこかの蔵で修業したわけではなく、蔵に南部杜氏がいた時にその方から勉強したようです。 

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蔵見学を通してこの環境でどうして素晴らしい酒ができるのかわかりませんでした。仮設の蔵で設備が十分でないのに、奇麗だけど当たりの柔らかいふくらみのある味がするのはどうしてですかと洋さんに聞いたら、仕込み水ではないですかと答えられたけど、僕はそれだけではない、二人の造りに対する思いの表れではないかなと思いました。二人を見ていると震災の苦労などは少しも見せないで前向きに取り組んでいるのは、良き父、母のもとですくすく育った生まれの良さがあるのではとも感じました。これから新工場ができてどのようになっていくのか楽しみです。これからもずっとウオッチして応援していきたいと思います。 

佐々木洋さん 蔵のご案内ありがとうございました。

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宮城県の小さな蔵には魅力を感じます

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毎年11月のはじめに仙台市内の勝山館で、宮城県酒造組合が主催するみやぎ純米酒倶楽部「穣の宴」が開催されますが、今回は今年で第20回を迎える伝統ある会です。この会には今まで1回も参加していませんでしたが、お料理が素晴らしく、良いお酒がいっぱいあるので、絶対行くべきと、僕の日本酒友達の入江さんに勧められて初めて参加しました。 

勝山館はあの勝山企業が運営する仙台の迎賓館で、結婚式場、宴会場、レストランなどで使われる所で、地下鉄北4番丁駅から歩いて5-6分の所にあります。開宴は夜7時ですから、真っ暗の中、探しながらたどり着きました。暗いので館の全体は全くわかりませんが、高い塀に囲まれた立派な入口でした。 

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中に入ると「穣の宴」に案内があり、ほっとしたのを覚えています。 

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勝山館の案内を見ますとこんな外観だったのですね。Shozankanimg

会場に入ってみますと中央に各蔵のブースがあり、壁際にお料理のコーナーがあって、その間に立食用のテーブルが置かれていました。去年までは今回の参加者は400名程度だったと聞きましたが、今年は550名のようですので、ちょっと混みあっていましたね。 

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「穣の宴」はもともと、みやぎ純米酒倶楽部が支援してできた会のようですが、現在はみやぎ純米酒倶楽部が発展的に解消して10年前に出来た宮城サポート倶楽部が支援しているようです。宮城サポート倶楽部に参加している蔵と宮城県酒造組合に参加している蔵は全く同じ25蔵のようです。今回は森民酒造店と橋平酒造店が不参加だけで、23蔵が参加していたようです。 

宮城県蔵は一ノ蔵と浦霞が有名ですが、僕はその中でも小さな蔵で良いお酒を醸している蔵を取り上げてブログに載せてきました。 具体尾的には墨廼江、日高見、勝山、伯楽星蒼天伝を取り上げてきましたが、ごく最近浪の音も取り上げました。以前に書いた記事を下記に載せておきますので、興味のある方はクリックしてご覧ください。  

墨廼江http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-8dc1.html  

日高見http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-83e1.html  

勝山http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-993c.html  

伯楽星http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-401f.html  

蒼天伝http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-98f1.html 

浪の音http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-8dc1.html 

今回はそれ以外の蔵で僕が気に入ったお酒を醸して売る蔵を見つけるのが目的で参加しましたので、それを紹介しますが、その前に紹介するものがあります。 

<お料理編> 

この会のお料理は仕組みもすくめて大変良かったと思います。お料理はチケット制で入場と同時にこんなチケットを配られます。 

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 これは僕がもらったチケットで、料理をいただくと判子が押されます。これなら料理は入場者の人数分用意されているはずなので、ゆっくり楽しむことができます。しかも会が進んで残り20分になるとチケットに関係なく余っている料理がフリーに食べられるのです。これは凄いですね。それでもこの会の会費は5400円ですから安いです。 

しかもどの料理もとてもおいしかった。ちょっと食べたお料理の写真を載せておきます。 

1.4元豚のロースト 

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2.自家製おから炒め 

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3.女梶木の味みそやき 

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4.勝山館季節鍋 

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5.きのこあんかけ焼きそば 

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いくつか写真ととるのを忘れましたことはお許しください。 

<宮城県の米> 

蔵の華:耐冷性が弱点の美山錦に変わるお米として、山田錦と寒さに強い東北140号を交配して1997年に宮城県で開発された酒造好適米で、山田錦や雄町より淡麗で美山錦よりふくよかで、味わいはやららかで清楚な傾向だそうです。純米吟醸用に使われることが多く、宮城県の酵母との相性がいいそうです。 

ササニシキ:1963年に宮城県で開発された食料米で、あっさりした触感で、こしひかりに並ぶ東北地方の優れた品種として栽培されてきましたが、耐病性や耐冷性が弱く次第にひとめぼれなどの他の品種に置き換えられてきています。酒米としてはどっしりとした酒質の酒ができるが、やや雑味が多くなるようです。 

ひとめぼれ:ササニシキの後継品種として1991年に開発された食料米で、コシヒカリに次ぐ第2位の銘柄に成長しています。耐冷性は抜群で、東北から沖縄まで広く栽培されています。 

とよしにき:1969年に秋田県で開発された食料米で、耐冷性は強くないが、耐病性や耐倒伏性が強いので、主に岩手県と宮城県で栽培されています。酒米としては南部杜氏が好むお米と言われています。 

<宮城県の酵母> 

初代の宮城酵母は1965年に宮城県の醸造試験所により「浦霞」の吟醸醪から分離した酵母で、1985年から協会12号酵母として領布されていましたが、最近は新しく華やかな吟醸香の酵母は開発され次第に使われなくなっています。この酵母は吟醸酒に向いた酵母でしたが、純米酒に向いた発酵力もあり、うま味と酸味のバランスの取れた酵母が期待されていました。 

宮城県産業技術総合センターでは1997年より新しい酵母開発を進め、2000年に宮城マイ酵母の開発の成功しました。この酵母は初代宮城酵母を親としていますが、初代の酵母に比べてアルコール濃度が上がっても発酵力が落ちないので安定した醪ができるうえに、味わいも酸がとげとげしくなく、丸みを感じるので、全体的なバランスが良く、すっきりとした柔らかい酒質になったそうです。 

蔵に行くと宮城マイ酵母とは言われないで、宮城A酵母とか宮城B酵母というのを聞きますので、もっと調べてみますと、同センターは2010年に3種類の酵母を発表しています。その名前は宮城酵母MY-4008、MY-4017、My-4021の3種類です。これを通称呼び名として、A、B、Cと呼んでいるのかもしれません。その時の説明では4021が一番香りが高く、4008が穏やかな香りだそうです。正しいことを知っている人がいたら教えてください。 

では早速蔵の紹介に入ります。すでに紹介済みの浪の音ですが、ブログの中ではお酒の味については触れていませんでしたので、浪の音を含めて5蔵を紹介することにしました。 

1.浪の音 佐々木酒造 

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佐々木酒造は名取市にあるとても小さな蔵で、東日本大震災で蔵が壊滅したので、仮設の蔵でお酒を造っています。お写真のご兄弟で酒造りをしていますが、右側の方がお兄さんの佐々木洋さんで左の方が弟の佐々木淳平さんです。洋さんは経営全般と麹室担当で、淳平さんが杜氏をしています。それではどんなお酒を造っているのでしょうか。 

今回は純米大吟醸の浪庵、純米吟醸の玲瓏、特別純米の閖の3本を飲みましたが、僕が気に入ったのは特別純米酒と純米吟醸でした。閖はひとめぼれ60%精米で9号酵母を使ったお酒で、玲瓏はとよにしき55%精米で秋田B酵母を使ったお酒です。どちらもテクスチャーが良く滑らかさを感じるお酒ですが、香りは閖の方が穏やかな香りで、玲瓏の方が少し華やかな感じでした。、閖は飛び出るところはあまりないけど、どんな食事にも合わせられるバンスの良い仕上がりでした。玲瓏は閖よりはうまみを感じるので、少しバランスが違いますが、これもなかなか良い仕上がるいでした。このお酒の良さを感じるためにはあまり冷やさないほうがいいように思えました。 

2.栗駒山 千田酒造 

千田酒造は宮城県と山形県と岩手県の境界にある栗駒山の麓の栗駒中野町にある蔵で、大正9年に千田養治郎さんが最初鶯沢で操業を開始しましたが、その後栗駒中野町に良い水があるの知り、昭和12年に現在地に来たそうです。栗駒山の麓と言っても蔵駒山の頂上からは20kmも離れた小さな町の中にあります。 

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この方が5代目社長の千田善彦さんです。この蔵の特徴は何といっても栗駒山の雪どけ水の良さがそうでです。生産量は300石ぐらいで少ないのですが、蔵の設備には資金を使っているようで、精密醪温度センサー、自動製麹機、全量瓶貯蔵可能な大型冷蔵庫など最新設備を持っているそうです。 

僕が飲んで気に入ったお酒は特別純米でした。お米はササニシキ55%精米で、口に含むと酢酸イソアミル系の爽やかな香りとともに、ドンと来るのではない奇麗な甘みと共に酸味を感じながら後味の方まで旨みが奇麗に広がるお酒でした。日本酒度は+2、酸度が1.8、アミノ酸が1.2でしたので、なるほどねいう感じでした。このお酒もあまり冷やさないお方が良いと思いました。この蔵も水の良さをうまく引き出していると思います。 

3.荻の鶴、日和田 荻野酒造 

荻野酒造は千田酒造と同じ栗駒市にあると言っても離れていて、ほとんど岩手県との県境にあるJR東北本線の有壁駅のすぐそばにある蔵です。この地は奥州街道の宿場町として栄えたところで、平安時代に金が発見されたことから金成町と言われたそうです。創業は江戸時代末期ですから約180年の伝統ある蔵です。この蔵の水も栗駒山からの伏流水で奇麗な軟水だそうです。 

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写真の方は8代目蔵元となる専務取締役の佐藤曜平さんです。この蔵は荻の鶴という銘柄を造ってきましたが、曜平さんが東京農大を卒業酒蔵に戻ったのが平成14年で、すぐ作った銘柄が日輪田(ひわた)だそうです。日輪田はお日様と田んぼが輪になるというイメージで、すこし田舎っぽいお酒をイメージして作っているそうです。生産高は500石位だと思います。 

僕が気に入ったお酒は日輪田の山廃純米大吟醸でした。このお酒は雄町45%精米のお酒で、飲んでみるとしっかりとした酸味と旨みが口に中に広がるけど、スウット奇麗に消えていく中に後味に余韻を感じるお酒で、雄町らしさが出ていました。曜平さんは造りの責任者で、このお酒は自信作だとおっしゃていました。 

4.宮寒梅 寒梅酒造 

この蔵は東北本線の小牛田から出ている陸羽東線の西古田駅から西に1㎞弱行った多田川のたもとにある蔵で、まさに田園地帯の中にある蔵です。創業は大正5年ですから比較的新しい蔵で、蔵の名前も岩崎酒造だったようです。寒梅酒造と名を変えたのは戦後の復旧の昭和32年で寒さに耐えて咲く寒梅からとったようです。今では新潟県の越乃寒梅、埼玉県の寒梅と並んだ寒梅酒造となっています。 

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 この蔵の特徴は自ら作る米の種類の多さではないでしょうか。美山錦、ササニシキ、ひとめぼれ、まな娘、愛国などを栽培しています。そのほか秋田の亀の尾や熊本の神力も使っているそうです。この蔵の生産量は300石強の量ですが、家族ぐるみで酒造りをしています。父の岩崎隆聡さんが社長兼杜氏で、常務の健弥さんが麹造り、娘さんが酒母造りをしているようです。お写真お方が岩崎健弥さんで、娘さんの真奈さんのお婿さんだそうです。この蔵は最近設備投資をして四季醸造をしているそうで、これからが楽しみな蔵です。 

色々の酒を飲んでみましたが、カプロン酸系の香りの高いお酒が主体で、最初の1杯でうまいと言わせることを狙っていいるようです。僕が気に入ったお酒はあまり香が高くない特別純米の鶯咲(おうさき)でした。お米は愛国55%精米の純米酒で、繊細でキメ細かい味わいで程よい余韻があるお酒でした。愛国というお米は元々静岡で開発された食料米で、宮城県で栽培されるようになって、愛国と名付けられたと言われています。明治から大正にかけて、東北の亀の尾、西日本の神力と並んで関東の愛国とよばれた時期もあったのですが、食料米としてはすたれて今では酒米として少量造られているようです。こんなお米を使うのは何かこだわりがあるのでしょうか。 

最後に奥様とのツーショットを載せておきます。 

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以上で「穣の宴」で見つけた蔵の紹介を終わりますが、他にも魅力的な蔵もありましたが、時間がなくてご紹介できない状態でした。たった2時間でおいしいお料理も食べながらの会の中で見つけるのは大変なことだとわかりました。これからはお料理はなくてもゆっくり試飲できるような会に絞って参加するようにしたいと思った次第です。でもこの会が悪いわけではなく、このような会では思い切って楽しむようにした方がいいのかなと思いました。

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まんさくの花と美濃紅梅とジャズの夕べ

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去年の12月の中頃に目白のイタリアンレストランのMAC’s CARRORT日本酒をジャズで楽しむ会(SAKE&JAZZ)が開かれましたので、参加してきました。この会は日本酒マニアで、一般社団法人「日本の酒」の理事長をしている高橋さとさん夫婦が開催している会で、今回が26回目だそうです。さとみさんはジャズを聴くことが好きで、よく旦那様とお二人でジャスをジャズを聴きにいかれたそうで、特にピアニストの福田重男さんのフアンだったそうです。福田さんと交流をされているうちに福田さんが日本酒がお好きなことがわかり、生バンドのジャズを聴きながら日本酒を楽しむ会を開いてくださいとお願いされ開催したのが始まりだったようです。 

新橋のお店で開いたのが最初だったそうですが、開催の要領もわからないまま始めただけでなく、お店の場所代も高かったせいもあって、大赤字のスタートだたそうです。でもその後色々な人からのサポートもあり、赤字を出さない程度にはなってきているそうですが、26回も続けるのは凄いことです。こんな企画は他にはほとんど聞いたことはありません。ジャズと日本酒が好きな方は是非来ていただきたいそうです。 

今回のMAC’s CARRORTはJR目白駅から歩いてくらい2分くらいのところにあるお店で詳しいことは僕の下記のブログを見てください。このブログは第25回の時に初めて僕が参加した時の様子を描いたものです。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-225a.html
 

今回は暮れの忘年会と重なっているためか人数は少なめでゆったりと楽しめることができました。 

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今回参加された蔵元はまんさくの花を醸造している秋田県の日の丸醸造の社長の佐藤譲治さんと美濃紅梅を醸している岐阜県の武内合資会社の社長の武内昌史さんのお二人です。出品していただいたお酒は下記のとおりです。 

1.日の丸醸造 

・ まんさくの花 H29年3冠受賞酒 大吟醸 28BY
・ まんさくの花 純米大吟醸 亀GOLD 生詰原酒 28BY
・ まんさくの花 純米吟醸 ダイヤモンドドロップ28BY
 

2.武内合資会社

・ 一滴千山 純米直詰め荒走り生原酒 29BY
・ 美濃紅梅 特別純米酒 28BY
・ 兄花金紋 28BY
・ 美濃紅梅 純米吟醸酒 28BY
 

蔵とお酒の紹介は後で行うとして、まず演奏者の紹介をします.。誰をお呼びするかはすべてピアノの福田さんがアレンジしているそうですが、基本はお酒の好きな人に声をかけているようです。今回のメンバーは以下の通りです。

・ ピアノ    福田重男
・ ベース   藍沢栄治
・ ボーカル Mamiko Bird
 

この方たちの詳しい情報は良く知りませんが、会の途中で福田さんとはちょっとお話したので、そこでお聞きしたことを少しだけ紹介します。 

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福田さんは群馬県前橋出身で、お父様は全く音楽教育を受けていない人ですが、クラッシックが大好きで、非常に高価なレコードを購入したり、FM放送が出始めた時にはそのためのアンテナを自分で立てたりするほどの凝り性だったそうです。ですから重男さんは小さい時からをクラシックを聴かされ、父は息子を指揮者にするのが夢だったので、好きでもないピアノを習わされたそうです。ジャスに出会ったのは中学の時だったそうですが、大学に入った時に良い師匠と出会ってジャズにのめり込んだとのことです。でも小さい時からピアノに慣れ親しんだのが今のベースになっているのは間違いないですね。指揮者にはならなかったけど有名なジャズピアニストになったのですから、大したものです。 

福田さんはワインが大好きでしたが、沢山飲みたいので高級なワインではなく安いワイン買うのが常だったそうです。今では日本酒も好きになったけど、やはり沢山飲まないと気が済まないそうです。要はお酒が好きなのですね。でもお酒が好きでないと、このような企画をサポートすることはできませんよね。この会が発足した原点が判ったような気がしました。 

会の終わりに演奏された軽快なジャス(名前はわかりません)を聞いてください。

「171216_003.MP3」をダウンロード

それでは蔵とお酒の紹介に入ります。 

<まんさくの花、日の丸醸造> 

この蔵は秋田県の横手市増田町にある蔵で、創業は江戸時代のはじめの1689年ですからとても古い歴史のある蔵です。この地は江戸時代は物資の集散地として、明治に入っては商業活動の地として、そして大正時代には吉野鉱山の増産などがあり、流通の中心の町として県内随一に繁栄したところで、大正時代が最盛期だったようです。しかも豪雪で有名な土地なので、蔵を建屋の中に造った内蔵(うちくら)が有名な街です。 

内蔵とは屋の背後に土蔵を立てて、これを鞘とする上屋で建物で覆い、母屋と連結した構造になっています。この土蔵を増田町では内蔵と呼んでいて、外からはその存在もわからない構造をした建物で、雪国ならではものです。内蔵は雪国にはよく見られるようですが、増田町は内蔵がある地区に集中しているのと、今でも沢山の内蔵が現存していて、内部が豪華なことから注目されています。そして、平成13年より公開されるようになっています。 

それを模式的に描いたのが下の図で、右の写真はある旧金物店の内蔵で、内部はとても豪華な蔵になっています。 

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その蔵の母屋の写真がありましたので、載せておきます。中の様子が全く分からないですね。現在は観光物産センターの「蔵の駅」として使われています。

 

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この内蔵は増田町の繁栄の象徴と言えそうです。日の丸醸造の建物も内蔵構造をしており、文庫蔵として国登録有形文化財となっています。内蔵は大別して物を仕舞っておく文書蔵と座敷として使っている座敷蔵があるそうですが、もともと文書蔵が多かったのが、明治以降座敷蔵が増えたそうです。この文庫蔵は増田町の数多い内蔵の中でも、その意匠や豪華で繊細な装飾がひと際際立った内蔵となっているそうです。醸造用に使っている蔵もあり、日の丸醸造もその一つだと思いますが、文化財としては文書庫の分類に入っているようです。日の丸醸造の内蔵の写真を下に載せておきます。

 

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日の丸醸造は大正時代は生産量が5000石もあったそうで、東北を代表する蔵として栄えたそうです。しかし、戦時下の企業整備令によって廃業に追い込まれることになったそうで、戦後先代の佐藤光男さんが買い取って蔵の歴史を継承したようです。静岡県出身の先代は仕事も全く場違い酒造りは大変だったと思いますが、努力も実って一時は1万石近くにまでなったそうですが、現在は特定名称酒を重視した造りで1400石位の生産量を維持しています。 

日の丸醸造という名前は蔵の名前としては珍しい名前ですが、この名前は秋田藩主佐竹公の紋所が扇に日の丸だったことから付けられています。この名前の商標登録は明治40年だそうで、それ以来「日の丸」を主要銘柄として酒造りをしてきました。しかし、戦後日の丸のイメージが国粋主義に感じる人が多かったので、他の銘柄を考えていた時に、NHKの朝の連続ドラマで秋田県横田市を舞台に「まんさくの花」が放映されたのを機に新たな銘柄として「まんさくの花」が誕生したそうです。 

「まんさくの花」はそれまでの主力製品の「日の丸」の重みのある酒質とは異なり、奇麗で優しい酒質のお酒を目指し、今では日の丸醸造の代表銘柄となっています。この蔵の酒造りの特徴は何といっても仕込み水の良さです。栗駒山系の伏流水を蔵内の4本の井戸からくみ上げて使っていますが、硬度5の軟水で柔らかくて優しい水だそうです。もう一つの特徴は出来たお酒は全量瓶貯蔵で保管できる低温貯蔵庫を持っていて、火入れに関しても酒質が変わりにくいパストライザーなどの専用設備を使うなど、お酒の酒質を変化させない努力をしていることです。 

もう一つの特徴はこの蔵には秋田県が生んだ3人の名杜氏の一人である高橋良治さん(70才)がおられることです。他の二人は阿桜の照井俊男さんと雪の茅舎の高橋藤一さんです。この3人は山内杜氏で仲が良いそうで、雪の茅舎の高橋杜氏の息子さんは阿櫻で酒造りをしていて、照井さんの後を継ぐと言われているのは有名な話です。この蔵の高橋杜氏が大切にしているのは蔵の清潔さと仲間との一体感で、楽しく、明るく、前向きに酒造りをすることだそうです。初めて知ったのですが、「まんさくの花」は熟成を楽しめるお酒を目指しているそうなので、今後はまんさくの花を熟成して飲んでみたいと思っています。 

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最後に社長の佐藤譲治さんをご紹介します。譲治さんはこの蔵で育った後、京の大手銀行に就職され、120人の部下を持つ支店長にまでになった方ですが、47才になった時に、蔵に戻る決意をされたそうです。平成10年に蔵に戻ったそうですから現在66歳ではないかと思います。まんさくの花に2011年に訪問したことがあるのですが、蔵の中にJBLのスピーカーを見つけて驚いた記憶があります。 

JBLスピーカーはジャズを聴くのに良いスピーカーと言われていますので、譲治さんはきっとジャズがお好きなのだと思います。譲治さんは蔵の人らしからぬ風貌がおありなのは、東京で育った上級ビジネスマンの経歴とジャスのセンスから来ているものと感じました。蔵を訪問した時のJBLの写真を下に載せておきます。なかなかのスピーカーだと思いますよ。 

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次に飲んだお酒を紹介します。 

<まんさくの花 H29年3冠受賞酒 大吟醸 28BY> 

Dsc_0479このお酒は平成29年度の全国新酒鑑評会で金賞を、東北清酒鑑評会で優秀賞を、秋田県清酒品評会で県知事賞を受賞した3冠受賞酒の大吟醸です。お米は兵庫県の山田錦38%精米で、M310酵母を使った大吟醸の原酒です。 

酒質は日本酒度が+3.0、酸度1.1、アルコール度数16%でしたが、約1年間蔵の5度の冷蔵庫で熟成したお酒でしたが。 

飲んでみると香りは、全く熟成香はなく、熟成によって吟醸香は抑えられていましたとてもきれいなふくらみがふわっと広がった後にスウット消えていくお酒でしたが、後味に奇麗な余韻を感じるお酒に仕上がっていました。これはうまい!

東武デパートで売っているのを聞きすぐ購入しました。 

<まんさくの花 純米大吟醸 亀GOLD 生詰原酒 28BY> 

Dsc_0493このお酒は亀の尾を使っている純米大吟醸です。亀の尾は昔は東日本の食料米として一大勢力のあったおお米ですが、近年は他のお米にとってかわられ、1970年代にはほとんど作られなかったお米です。その後1980年に入ると新潟の久須美酒造と山形の鯉川酒造が相次いで酒米として復活させて、現在では秋田県を中心に酒米として栽培されるようになっています。 

このお米は溶けにくいけど硬いので精米しやすい特徴があるので吟醸用として使われることが多いけど、味の出しにくいお米と言われていますが、この蔵ではあえてこのお米のお酒を10年前から使うようになったそうです。このお酒のラベルはかわいいでしょう。社長が書いたそうです。 

精米度は45%で、酵母が自社酵母(9号系と他の酵母のブレンド)の純米大吟醸で、酒質は日本酒度が+1、酸度が1.3、アルコール度数は15%で、1回火入れの半年熟成のお酒です。 

飲んでみるとしっかりした味わいのあるお酒で、後味に少し辛みを感じるけどとてもバランスの良いお酒でした。亀の尾でこれだけしっかり味を出せるのは大したものだと思います。 

<まんさくの花 純米吟醸 ダイヤモンドドロップ28BY> 

Dsc_0515このお酒は麹米を50%精米の山田錦、掛米を50%精米の美山錦を使った純米吟醸酒の1回火入れで半年熟成の原酒です。 

酒質は日本酒度や酸度は書いてありませんが、アルコール度数は16度です。ラベルは日本酒がドリップしている習慣をとらえたもので、金環食のように輝いているので、ダイヤモンドドリップと呼んでいるようですが、袋搾りではなく普通の槽搾りのお酒です。 

飲んでみるとさわやかな飲み口ですが、ラベルがイメージするような透明感はない比較的普通のお酒のように感じました。ちょっとラベルのイメージが強すぎるので、このレベルのお酒でも袋搾りをした新しさがほしかったように思えました。 

<美濃紅梅 武内合資会社> 

この蔵は岐阜県大垣市の伝馬町にあり、この地は濃尾平野の西の根っこにある江戸から京都に行く東西の交通の要所として栄えたところです。また、昔から大垣は水の都と言われたほど豊富で清廉な湧水に恵まれていて、その水はとても柔らかい軟水なので酒造りに適した水と言われています。しかも冬は西にそびえる伊吹山から吹き下ろす伊吹おろしの寒風が吹き、一面雪になるほどの寒い土地なので酒造りの向いていた土地なのです。ですから昔から酒造りが盛んで、今でも酒造りの蔵が3蔵もあります。 

創業は江戸時代の中期の1744年に大垣城の近くに居を構え、清酒「兄花’(このはな)」を造り始めました。その後一時味噌、醤油、お酢なども手がけましたが、6代目の当主が酒業を専業とすることを決意して、現代に至っています。兄花とは寒梅に中でも一番先に咲く花のことを言うそうですが、「このはな」とは呼びにくいので、先代が特定名称酒を「美濃紅梅」という名にして発売することになったそうです。 

この蔵の杜氏は長年新潟杜氏の岡住一昭さんが勤めてきておられてきましたが、最近高齢になったのでやめられたので、今は社員の若手杜氏に変わっています。蔵の生産量は約150石と小さいですが、国内外の鑑評会でも様々な賞を取るほどのレベルのお酒を造っています。 

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武内昌史は地元の高校を出られた後、大阪学院大学にすすまれ、卒業後蔵に戻ってきました。父は東京農大を出ていましたが、蔵の仕事にあまり首を出さないようにしていたそうです。前杜氏の後釜が心配なので蔵の仕事をしようとすると、お前は造りには首を出すなと言われたので、仕方がなく杜氏に任せていたそうです。その父も5年前に亡くなり、現在は9代目の蔵元となっていますが、亡くなる前は体調が悪くなっていたので、10年前くらいから実質的に社長の代役をしてきたそうです。でも、酒の酒質のコンセプトは自分で決めて、杜氏と相談して造りをしてきたそうです。 

<一滴千山 純米直詰め荒走り生原酒 29BY> 

Dsc_0488一滴千山シリーズは2012年に首都圏向けのお酒として造ったお酒で、今までは炭素ろ過のお酒が多かったので、無濾過で生の原酒にチャレンジしたものです。その後このシリーズは低アルコール、超甘口のお酒のTAKE1を出すなどのお酒を出しているようです。これは武内社長の新しい狙いだと思います。 

このお酒は岐阜県産のこだわりがあり、お米は岐阜県産のあさひの夢はつしも(いずれも精米度65%)を、酵母は岐阜県が開発したG酵母を使っています。 

一滴千山とは「一滴の水でさえ沢山になり、多くの山々をゆったりと潤す」の意味で、「飲んで頂いた方々の心を潤すような、そんなお酒でありたいとの想いを込めて名付けましたそうです。 

酒質は日本酒度が+1.0、酸度1.6、アルコール度16~17度のお酒ですが、今年から新しい杜氏になった初めての酒のようです。 

飲んでみるといかにも新酒の生酒らしい香りとフレッシュさがあり、その中に程よい甘みと旨みを感じるお酒でした。一般米でこれだけの味とバランスが出せればなかなかのものだと思います。 

<美濃紅梅 特別純米酒 28BY> 

Dsc_0499このお酒は岐阜県産のひだほまれ60%精米で、10号系の岐阜県酵母を使った特別純米酒で、去年からフランスで始まった、フランス人によるフランス人のためのフランスで行う品評会の純米部門でプラチナ賞に選ばれたお酒です。 

このお酒の酒質の表示はありませんが、飲んでみると香りが抑え気味で、いわゆる吟醸香が少なく、うま味が口に含んだ後半に感じるので、これは吟醸造りですかとかアミノ酸が少し多いのではとお聞きしてみました。 

社長の話ではもろみの発酵温度がすこし高めで、アミノ酸は1.3くらいで、フランス料理にも合わせられる食中酒を狙ったものだそうです。 

ラベルが少し古風的ですが、フランス人には喜ばれるかもしれませんね。 

<兄花金紋 28BY> 

Dsc_0513このお酒はこの蔵が出している普通酒で、お米は岐阜県産のあさひの夢65%のアルコール添加のお酒です。まずお燗酒として出ましたが、常温と比較して飲んでみました。 

飲んでみたら吟醸香はほとんどしなかったので、吟醸造りではないお酒であることはすぐわかりましたが、このお酒の気に入ったところはテクスチャーの柔らかさでした。アルコール添加のピリピリ感がなかったので、社長にお聞きしたら特別なことはしていないというのです。 

もっといろいろ聞いてみると一番の理由は水の良さということになったのですが、このお酒は一度火入れしたのもをタンクで貯蔵して、瓶詰めの時にもう一度火入れするので、タンクを小分けにして貯蔵して、払い出した後の残ったお酒が酸化しないように管理していることと添加用のアルコールは少し寝かせてから使っていることぐらいだそうです。 

<美濃紅梅 純米吟醸酒 28BY> 

Dsc_0517このお酒は雄町55%精米の純米吟醸で、この蔵としては初めて雄町を使ったお酒だそうですが、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2017」において、 【COMMENDED(コメンデッド)賞】を受賞したお酒です。

酒質については記述がないのでわかりませんが、飲んでみるとちょっと普通のお酒にはない変な香りがするので、社長にお聞きしたら、確かのこれはおかしい。最初のお酒にはなかった香なので、戻って調べてみるとのコメントをいただきました。

ですからこのお酒のコメントは控えさせていただきます。

以上で武内酒造のお酒の紹介は終わりますが、この蔵の特徴がいまいちよくわからない気がしましたが、お酒造りの腕は良いものを持っていると思いました。新しいブランドを出したばかりなので、まだ安定していないこともあるのかもしれませんが、水の良さとか腕の良さを生かしたこの蔵らしいお酒造りを目指してもらいたい気がしました。

最後に集まった全員の集合写真を載せておきます。クリックすると大きくなりますよ。この写真が高橋さとみさんのFACEBOOKよりお借りしました。

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寒菊銘醸はこれからがますます楽しみな蔵です

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去年の暮れのことですが、八芳園内の日本酒料理店の槐樹蔵元と日本酒を楽しむ会が開かれましたので、参加してきました。今回は千葉県の寒菊銘醸の社長の佐瀬建一さんをお呼びしての会でした。寒菊銘醸の大吟醸の「夢のまた夢」がモンドセレクションの最高金賞を取ったことのある蔵だとは知っていましたが、今まで飲む機会がなかったので、この蔵がどんなお酒を造ってるかを勉強するつもりで参加しました。 

寒菊銘醸は九十九里浜のちょうど中央部分の浜に向かって広がる穀倉地帯の中心にある山武市(さむし)にある蔵で、明治16年に佐瀬源作がこの地に湧き出す水と、米処に目を付けて酒造りを始めたようです。小粒ながら一徹さを持つ冬菊になぞらえて、寒菊(かんきく)と命名したそうです。、最初はこの地の人たちのためだけの酒造りだったようで、生産量も100石足らずの小さな蔵だったようです。 

この蔵の庭には樹齢200年を超える大きな柿の木があり、この柿の木の根元から湧き出る清水を使って酒造りをしていますが、この水はミネラル分の多い硬なので発酵力が強く、味のあるお酒になるそうです。杜氏は以前は越後杜氏でしたが、1995年より岩手県から来ている南部杜氏の高橋正芳さんが酒造りをしていました。高橋さんは腕の立つ杜氏で、2009年にはモンドセレクションjで最高金賞を取った名誉大吟醸「夢の又夢」を造っただけでなく、全国新酒鑑評会で10年連続金賞を取っています。

その高橋さんを見つけて杜氏として育てたのが建一さんの父の4代目当主の佐瀬光久さんです。この蔵には昔から南部杜氏の仲間が来ていましたが、この中でこの蔵の杜氏として定着した人がいないことを問題としてとらえ、、杜氏補佐をしていた高橋さんに目を付け、まずこの蔵で修業させ、さらに他の蔵にまでいかせて教育して、ついにこの蔵専属の杜氏としたそうです。 

また、光久さんはビジネスにたけた人で、夏はお酒が造れないので夏に売れるビールの製造を思いつき、1億円を投じて製造設備を建設し、97年に「九十九里オーシャンビール」の発売を開始して、今では年間20万本も製造している立派な事業になっています。地ビール事業を酒蔵がやるのは獺祭の桜井さんもやって失敗したほど誰もが思いつくのですが、それを成功させることは難しく、成功させるには大変な努力があったと思われます。始めたころは蔵内部から猛反発を受けたと聞いています。光久さんの時代にお酒の生産量が一時1000石にまでになったようですが、現在は600石位の生産量のようです。

下の写真は九十九里オーシャンビールの製造工場の写真です。 

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久光さんを引き継いで5代目当主になったのが今回参加していただいた佐瀬建一さんです。建一さんは地元の高校を卒業後、千葉工業大学の化学科に入学されましたが、家業を継ぐつもりはなかったので就職して営業をするつもりで入ったら、なんと経理の仕事をさせられたそうです。そこで3年たった時に蔵に戻るように父に言われて戻ったのが15年前だったそうです。

下の写真は5代目社長の佐瀬建一さんです。

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ですから酒造りのことは何も知らなくて蔵に戻ったのですが、戻った理由は父が造った純米吟醸酒がとても良くできていらからだそうで、戻ってきてからは特に外に修業に行くこともなく、蔵の杜氏から勉強したのと、父が廃業した蔵に連れ行ってくれて、酒事業もうまくやらないと失敗することを教えてくれたことくらいだそうです。お父さんは息子をよく見ていて、うまくコントロールしていたことが判りました。 

その健一さんも5年前に父の後を継いで5代目の社長になってからは、酒造りはすべて任されていて、父は町の仕事だけをやり、酒造りには全くタッチしないそうです。このあたりも父の計画通りなのだと思います。高橋杜氏は高齢のため平成28年に退職されたので、28BYより30歳の社員杜氏に切り替わったそうです。この杜氏は元々成田飛行場の整備士をしていて、この蔵に入って酒造りの勉強した人だそうですが、感覚が繊細で、綺麗好きできちっと仕事をするこだわりの人なので、安心して任されるそうです。建一さんとはいつも酒造りの熱い議論を交わしているので、建一さんは自分のやりたいことをやっていけるそうです。 

自分が社長になってまずやったことは、酒は造った時の状態をできるだけそのまま維持したいので、200石の氷温冷蔵庫と200石の低温冷蔵庫を造ったそうです。現在は純米酒は全部無濾過にしたり、直汲みができる瓶詰め装置を使い生の直汲みの酒造りに力を入れているのと、来年度は火入れのレベルを上げるためにパスとライザーを導入すつもりだそうです。酒造りには高橋杜氏が築いたしっかりした技術があるので、後処理に力を入れているのはさすがですね。 

寒菊銘醸と槐樹さんとの関係は昔からあったようで、槐樹オリジナルな大吟醸「槐樹」は寒菊銘醸が造っているそうです。だからこの会ができたのですね。 

蔵の紹介はこのくらいにして、飲んだお酒を紹介します。お酒は5種類でした。 

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飲んだ順番に紹介していきます。 

1.寒菊 スパークリング 

Dsc_0526夏の日本酒の会でも日本酒で乾杯することが多いので、自分はビールで乾杯したかったことがよくあったそうです。それで、蔵が持っているビール会社で発泡酒を造ってみようと思い立って出来たのがこのお酒だそうです。日本酒は地元産のきたにしき(地元産の山田錦の別名らしい)とリンゴ酸が良く出る酵母77号を使った4段仕込みのお酒をビール工場のタンクに入れて、ビール工場のラインで炭酸ガスを吹き込んで作ったそうです。 

ですからビール瓶にスパークリング酒が入っている珍しい日本酒です。ラベルがとてもかわいらしいですが、これは蔵にある柿の木のイメージしたもので、建一さんがデザインしたそうです。 

アルコール度数は13度で、日本酒度はー20、酸度が2.7もありますが、飲んでみるととても飲みやすく、甘みもそれほど強くなく、辛みもないさわやかな酸を感じるお酒でした。これなら乾杯酒として良いですね。 

2.寒菊 純米酒 幻の花 

Dsc_0530このお酒は千葉県産の食料米のコシヒカリを60%精米して使った2回火入れの純米原です。この地域は米が豊富に取れるところで、コシヒカリが容易に手に入るそうです。 

このお酒は9号酵母のお酒とM310のお酒を調合して瓶詰めたもので、アルコール度数は17-18度、日本酒度+1、酸度1.7だそうです。 

飲んでみるとそれほど強くはないけど2回火入れ独特の香りが出ていたので、火入れの仕方をお聞きしたら、火入れは蛇管による火入れで、加熱後すぐ瓶詰め氏し、5℃の冷蔵庫で冷却したものだそうです。これだと冷えるのに時間がかかり香りがつくので、来年はパストライザーを購入するそうです。 

味の方は口に含んだ時のテクスチャーが柔らかく、口に入れた少し後から旨みが広がり後味がスウット消えるバランスの良いお酒でした。ぜひパストライザーに変えるともっといいお酒になると思われます。 

3.寒菊銘醸 純米大吟醸 雄町20 

Dsc_0533この蔵は兵庫産山田錦と地元産の五百万石をメインに扱ってきましたが、五百万石は熟成が早いし、山田錦は熟成が遅いので困っていましたが、3年ぐらい前から雄町を使うようになって判ったことは、雄町は春はさわやかだけど、秋になると味が乗って飲み頃になることだったそうです。 

去年岡山の米問屋が量は少ないけど20%精米の米があるけどどうするかとの問い合わせがあり、思い切って購入することにしたのですが、量が19俵と少なかったので200kg仕込みで造ったのがこの純米大吟醸だそうです。販売価格は4合瓶で税なしで15000円だそうです。凄く高いけど思いの分が上乗せされるのかな。酵母はM310です。 

飲んでみましたが、20%精米とは思えない爽やかだけど程よい味わいがあり、しかも雄町らしい余韻を感じるお酒でした。蔵には10年寝かせるために200本貯蔵しているそうです。火入れ回数は何と1回だそうです。このお酒がどのように変化するかは全くわからないし、自信もないけどチャレンジしますとのことでした。まずは5年後には飲んでみたいですね。 

4.寒菊 純米大吟醸 無濾過山田錦50 

Dsc_0537このお酒は山田錦50%精米の無濾過の純米大吟醸生酒で、28BYの2月に絞ったお酒で12月まで熟成したものです。この蔵では山田錦に適した酵母を色々試してきたのですが、18号酵母とは全く相性が悪く、結局M310酵母に落ち着いたそうです。 

今まで飲んだお酒の中では一番香りが高くて、カプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方の香りがして、今流行りのお酒に少し近づいているかなと思いました。 

でも旨みが奇麗で香りが高いというお酒ではなく、香りはやや抑え気味にですが、味がしっかり乗ってきていてしかも後味を残しながら最後にすっと消えていくとてもバランスのお酒に仕上がっていました 

5.寒菊 純米吟醸50 限定品 

Dsc_0539_2寒菊銘醸は九十九里の近くにあるので、色々なお魚と合わせてお酒を飲む機会が多いのですが、このお酒はイワシのような足の速いお魚の料理、例えばイワシの胡麻付けの魚の臭みを取ってくれるようなお酒を目指したものだそうです。 

お米の精米度は50%ですが、お米に何を使うかは年によって変えているそうで、敢えて純米大吟醸とは命名していないそうです。50%精米で1升3000円で販売しているので、とてもコストパフォーマンスの良いお酒です。 

酵母は4番のお酒と同じM310だそうですが、香りの立ち方が違うのでたぶん醪の立て方が違うのでしょうね。飲んでみるとテクスチャーが柔らかく、うま味は少し抑え気味ですが奇麗な立ち上がりと切れの良さを感じる呑みやすいお酒でした。 

Dsc_0701以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、2月末に西武デパートの日本酒売り名で社長自らが来て試飲販売していたので、寒菊のお酒を飲ませてもらいました。ここで大吟醸「夢の又夢」と純米大吟醸「源作」を飲みましたが、前者は優等生的な奇麗な酒で、後者は奇麗でありながら、味に厚みがあり飲みごたえのあるお酒でしたので、「源作」を購入しました。左の写真がそれです。またそのほか新酒として直汲みの無濾過生原を多く出していましたが、とてもフレッシュなお酒で面白かったので、大吟醸の生酒を買いました。 

ここで飲んだお酒から感じたことは、この蔵は杜氏が変わってまだ最初の年であること、社長が今出来るありとあらゆる酒造りにチャレンジしているところですから、これからがとても期待できると思います。生産高は600石と少ないですが、ビール会社も順調なようで、まだ基礎体力もあるので、今のうちにいろいろ試して、最終的には他の蔵とは違うオリジナルな立つ位置を明確にした造りをしていくと社長が語っていましたのが印象的でした。

これだけしっかりしていながらバランスの良いお酒を造っているのですから、これからどんなお酒に落ち着いてくるのかが非常に楽しみに感じました。

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どぶろくスタンダードは一度は呑んでみる価値のある酒です。

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僕は今までどぶろくを飲んだことはほとんどなかったのですが、先日東武デパートの酒売場で、そこの販売員をしている鈴木里香さんの強いお勧めで、初めてどぶろくを買いました。このどぶろくは普通のどぶろくとは違うものだそうで、いま大人気で東武に入荷すると、あっという間に売り切れるほどだそうです。見た目は白いにごり酒で何が違うのか飲んでみないとわからないので、買うことにしました。

 

このお酒は岩手県の遠野市にある民宿「とおの」のオーナーである佐々木要太郎さんが造っているどぶろくで、種類はどぶろく・スタンダードと水酛と生酛の3種類しかありませんが、この日はスタンダードしかなかったので、それを購入しました。下の写真がそのどぶろくです。 

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このお酒の酒質として記述されているのはお米が遠野1号とアルコール度数14度だけで、そのほかのことは何も書いてありません。早速飲んでみましたが、口に含むとまずさわやかな甘みが来ると同時に、甘酒やおかゆのようなつぶつぶの舌触りを感じるけど、中ほどに来るとつぶつぶ感が亡くなり、炭酸ガスによるシュワシュワ感と酸味と旨みが混じった新しい味わいを感じたと思おうとスーッと消えてしまいます。後味が良いので何杯でも飲めてしまうどぶろくでした。味の濃いお料理にも合わせることができる不思議なお酒です。この味ならお料理と一緒に出しても全く違和感はありません。ですからフレンチやイタリアンのシェフからも認められているようです。 

不思議なことに日本酒の澱酒のような生酒ぽい味がしなくて、全体的にはさわやかでありながら、適度な旨みと切れを感じる上品さなあります。これで、4合瓶で2200円で、少し高めですが十分その価値を感じました。飲んだバランスの感じでは、精米度は50から60%でないかと思いましたが、わかりません。

 

スタンダードは協会酵母を使った速醸の造りで、2200円/720mlですか、この他には酒母が水酛造りのどぶろく2700円/720mlと生酛造りどぶろく3300円/720mlがあるそうですが、飲んだことがないのでどんな味高はわかりません。写真を見つけましたので載せておきます。絶対に飲んでみたいと思います。

 

どぶろく水酛             どぶろく生酛
 

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<どぶろくが生まれた経緯について>

 

まず、どんな経緯でこのどぶろくガ生まれたのかをご紹介しましょう。まず要太郎さんのお写真を付けておきますが、僕はお逢いしたことがないので、インターネットからお借りしました。

 

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佐々木要太郎さんは遠野市で4代続く民宿の「とおの」の長男として1981年に生まれましたので、現在は37歳だと思います。彼は実家が民宿をやっているのが嫌でしょうがなかったそうです。それは朝早くから仕事をして休みらしい休みもなく家族で旅行したこともほとんどなかったからです。だから、サラリーマンにあこがれて、高校を出ると同時に盛岡に出て就職先を探し、検査技師をやったり、電話機販売のの営業マンをしたりして、曲がりなりにも通信関係のサラリーマン生活をして結婚もして子供もいたそうです。でもいろいろな事情で妻と離婚することになり、娘を引き取ることになって、子育てをしながら会社勤めをするのは難しいと考えていた時に、父親から実家に戻って一緒に仕事をやらないかとお誘いがあって戻ったそうです。

 

父親としては民宿の事業を新しく発展させたいと考えていた時に、遠野市がどぶろくの特区になるということを聞き、どぶろく造りをすれば新しい事業が立ち上げられるが、免許の申請が必要なので、これを息子にやらせれば、一挙両得と思ったそうです。どぶろくの特区が認定されたのは2003年ですが、要太郎さんは2002年に実家に戻って一緒に仕事を始めたそうです。

 

遠野地区はむかしからどぶろくの製造が盛んで、この地では「どべっこ」と呼ばれていたそうで、どぶろくを造ったことがない要太郎さんは他の人に教わってどぶろくを造って、民宿で飲ませるようになったのですが、ある時、新潟の杜氏に「こんなまずい酒は飲めるものではない」と怒られたれたので、造りを基本から勉強しようと岩手県の工業センターなどに教えをくたのですが、一番教えを受けたのが奈良県の久保本家酒造の杜氏で生酛純米酒の造りの名手の加藤さんだったそうです。加藤さんに教わったのは米のすべてを溶かしきることだったそうで、それまでは米のいい部分だけを抽出しようとしていたそうで、これから大きく造りが変わることになります。この時期がいつのことだかはわかりませんが、どぶろくを初めて作ったのは2004年で、どぶろくの免許を取ったのが、2005年で、宿泊設備を備えたレストラン「とうの屋 要(よう)」を造ったのが2011年ですからその前あたりではないかと思われます。

 

実はどぶろくの質が上がったのは醸造技術が上がっただけではないのです。その裏には米造りがあったそうです。もともと遠野らしい酒造りをするには遠野で造った米を使いたいという思いがあったので、2003年から米造りを開始していました。最初から無農薬無肥料であきたこまちを栽培をしていましたが、ある時遠野には遠野1号というお米があるのにどうして秋田のお米を使うのかと言われてハット思ったそうです。

 

遠野1号は北海道原産の「坊主6号」と山形原産の「亀の尾」を掛け合わせて造ったお米で、岩手県遠野農事試験所が昭和10年から開発に取り組み、昭和14年に寒冷に強く病中にも強いお米「遠野1号」として世に出したそうです。その後の農業技術の発展とともに生まれた新しい米に押されていつしか栽培されなくなっていたのです。要太郎さんはこの種もみを持っている農家からたった5gの種もみをもらい、発芽させては植え替えて徐々に量を増やしていきました。遠野1号の栽培を始めたのが2006年で、酒造りに使えるようになったのが2008年です。でもこれでいいお米が取れたわけではありません。

 

米造りは最初から無農薬無肥料の栽培を始めましたが、もともとこの土地は慣行農法を続けてきた田圃なので、無農薬無肥料を始めても急にはいい田圃になるわけでないそうです。15年間無農薬無肥料を続けた田圃と、5年間続けた田圃では稲のでき方が全然違うそうです。15年間続けてきている田圃で作った稲は病気には強いし、生き生きとしているそうで、米を蒸した時の香も違うそうです。ですから最近やっといい米がとれるようになり、自分が思ったどぶろくになりつつあるそうですが、まだまだ進化の途中のお酒のようです。

 

現在はレストラン「とおの屋 要」の裏手に「醸し田屋」という名の醸造施設を造り年間約100石(1升瓶で1万本)の製造している小さな造りですが、3年前から都内の飲食店お取引も始まり、2016年からはスペインやフランスやイタリアや香港などの海外進出も始まりました。ここでは要太郎さんはお米を作る農家であり、どぶろくを造る醸造家であり、料理人でもあり一人3役をこなすだけでなく、営業で飛び回る必要があります。ですから1年中大忙しで人手が足りないことと、今の技術を後の人に伝えたいことから、3年前から「どぶろく農家プロジェクト」を造って、スタッフの採用をおこない、今では短期研修生を含めて5人体制で行っているそうです。

 

今の要太郎さんの夢は良いお酒を造ろうとか、良いお料理を食べてもらおうという短期的な目標ではなく、もっと長いスパーンで造り上げてきた本物のお米、酒、料理を遠野に来て味わって、感じてもらって帰ってもらうことのようで、今だに終わりの見えない世界に向かって走っている方のようです。

<どぶろくの製造方法>

 

最後にこのどぶろくの作り方を要太郎さんが書いたものを見つけましたので、ご紹介します。この記述は水酛造りの場合でしたが、参考になると思います。水酛造りは生酛造りより前に開発された酒母造りの方法ですが、詳しいことを知りたい方は下記の僕のブログを見てください。

 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-0238.html

 

まず、生米と炊いた米を水中に2週間ほど浸しておいて十分に乳酸菌を繁殖させたそやし水を造ります。それに60%精米の蒸米と麹米を入れて発酵させていくと天然の酵母菌が増殖した酒母が出来上がります。スタンダードのどぶろくは酒母を乳酸と酵母を添加して酒母を造るので、手間がかかりません。その後日本酒の並行発酵と同じ要領で醪造りに入りますが、30日から40日かけて発酵させ、アルコール濃度14%までにします。この後が普通の日本酒と違ってきます。

 

この醪を絞ったらどぶろくでなくなりますので、そのまま火入れをせず生のまま瓶詰めをして、3~6か月瓶内熟成をしてして出荷するそうですが、原料となるお米は新米でなく1年寝かせた古米を使うそうです。その方が米の甘みが多くなるとのことです。この瓶内発酵に一番の秘密があるのかもしてませんが、瓶内発酵で最もいいバランス人るような醪造りにも秘密がありそうですが、よくわかりません。

 

宿泊設備を設けたレストランのことをオベールジュというのですが、とおの屋要はそのオベールジュです。民宿とおのとは別棟にあります。その写真がありましたので、お見せしますが死ぬ前に一度は行ってみたいと思っています。
 

とおの屋要の外観        玄関

 

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レストラン
 

 

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客室 テレビはありません

 

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なんと茶室もありました

 

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秋田酒の会で見つけた注目藏と面白いお酒

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今年の秋田の酒を楽しむ会は3月7日にTKPガーデンシティ品川で行われました。この会は大変人気なイベントのようで発売と同時にあっという間に売り切れるみたいで、去年はのんびりしていて購入できなかったのですが、今年は友人が購入した切符を僕に譲っていただけることになり、参加してきました。チケットは郵送してもらったのですが、よく見るとチケットの発行番号が何と1番だったのです。どうやって手に入れたのかな。下の写真をクリックすると確認できます。この番号が後で幸運を呼ぶことになります。 

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この会に参加した27蔵の内半分以上の蔵は良く知っている蔵でしたが、知らない蔵の中で注目したい蔵を見つけことと僕が面白いなと思ったお酒を見つけることを目的とて参加しました。でも夜の部の秋田の酒を楽しむ会は参加者が540人と非常の多いのでゆっくり調べることはできないと判断し、第1部の秋田の酒利き酒会にも参加しました。一部は業界関係者を対象としていますが、飲食店や酒屋さんだけでなく、マスコミ関係の方もOKのようでしたので、この形で参加しました。お前はマスコミではないぞと怒らないでくださいね。一応日本酒コンサルタントという肩書がありますので。・・・お前が勝手に名乗っているだけじゃないか・・・そんな声が聞こえてきそうですが、秋田の酒のブログを書くことで勘弁してください。 

一部の会場ですが、夜部のためのテーブルが置いてあって、壁際に蔵のブースがあるという感じでした。

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<僕が見つけた注目したい蔵> 

1.秋田晴 秋田酒造 

この蔵は秋田市を流れる雄物川の河口近くにあるJR羽越本線の新屋駅から徒歩10分くらいにある蔵です。この地は古くから湧き水の町と言われるほど良い水に恵まれていましたので、川口新助が明治41年にこの地で酒造りを開始しました。当初は萬歳酒造としてスタートしましたが、日露戦争に勝利したことから國萬歳酒造となったようです。その後、昭和44年に高九酒造店と國萬歳酒造の合同の瓶詰工場の秋田酒造が生まれますが、平成24年に國萬歳酒造と秋田酒造が合併し現在の秋田酒造となります。國萬歳酒造の時は川口和夫さんが社長としていたようですが、平成17年から娘の野本眞子さんが社長となって蔵を引き継いでいました。しかし、平成26年には不幸にして眞子が52歳の若さで急死されましたので、眞子さんの長男の野本翔さんが社長となったそうです。現在の蔵の生産量は500石ぐらいと思われます。 

野本翔さんは2014年に急遽蔵に戻るわけですが、それまで全く別の仕事をしていたそうで、蔵の経営をされるのは大変だったとは思います。この蔵には加藤貢さんという杜氏がおられますが、全国新酒鑑評会ではここ20年間で6回も金賞を取っている実力者です。加藤さんの流儀は時代に流されない昔ながらの技法を大切にしながら、酒質の向上に努めている方でその代表的なお酒が酔天楽」大吟醸です。僕も今回飲んでみましたが、アルコール添加のお酒ですが、しっかり旨みを感じる大吟醸でした。こういう人がいると安心ですね。下の写真お方が野本翔さんです。

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翔さんにお聞きしたのですが、自分としてはアルコール添加の大吟醸の技術を大切にしながら新しいお酒造りのチャレンジしているそうで、それがA(エース)シリーズのお酒でした。Aシリーズには2種類あって、純米吟醸Aと純米吟醸Aスカイブルーので、その酒質は以下の通りです。 

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① 純米吟醸A(赤いラベル):原料米あきたこまち55%精米、酵母協会1801、アルコール度数:16度、日本酒度-12、酸度1.8、アミノ酸1.4、 

② 純米吟醸Aブルースカイ:原料米三郷錦55%精米、酵母あきた雪国酵母、アルコール度数16度、日本酒度+4、酸度1.6、アミノ酸1.3 

この酒質を見れは呑む前からどんなお酒かはわかる感じしますが、飲んでみるとその通りのお酒でした。①のお酒はカプロン酸の華やかな香りと共にまず甘みを感じた後にしっかり旨みを感じるけど酸ですっきり切ってくれるお酒でした。一方②のお酒は最初にそんなに強い甘みを感じないけど後に奇麗な旨みを感じて消えるお酒なので、一言で言えば透明感があってちょっとドライだけど端麗辛口ではない旨みを感じるお酒でした。 

このお酒は呑んだお客の反応を見るために造ったチャレンジ的なお酒なのだと思いますが、これをベースにこれからどんなお酒造りを目指してくるのかは今後が楽しみです 

2.奥清水 高橋酒造店 

この蔵は秋田県の大曲市と横手市の中間にある美里町6郷にありますが、この地はたくさんの湧き水がでるところで、その湧き水は名水100選に選ばれるもので、「笑願清水」と言われているそうです。この水を使って明治18年に高橋さんが酒造りを始めたと言われています。奥羽山脈の浸透水が湧水となっていることと、この地の名前の宝門清水から名を取って奥清水という銘柄にしたそうです。 

ですから高橋家がこの蔵を引き継いできたのですが、平成4年に3代目の高橋当主が病死され、後継者がなかった結果、現在の小山潤一郎さんが後を継いで現在にいたっているそうです。現在は吟醸酒・純米酒・本醸造を中心に県外の出荷をメインにしている生産高600石位中堅の蔵です。 

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この方が社長の小山さんです。とても面白い人で、僕は酒造りのことは全くわからないのです。杜氏が勝手に造りをしていて詳しいことは何も教えてくれないのですと、笑っておっしゃっていました。ある意味では杜氏を信頼して任せている大物社長と言えるのかもしれません。 

この蔵の杜氏は古内茂美さんで山内杜氏の中では最も若い人のようですが、それでも今年60歳のベテラン杜氏ですが、大納川、月桂冠、朝の舞、秀よし、白瀑などを色々な蔵で修業をされ、10年くらい前に白瀑の山本さんが自ら杜氏をすることになり、山本をやめて高橋酒造に来たとのことです。古内さんは横手育ちの方ですが、長崎大学で化学分析を専門にやってた方のようで、とても勉強家で研究熱心な方のようです。最近、古内さんが白ラベンダー酵母の培養に成功したのです。 

この地は米処で、美山錦や三郷錦や酒こまちが栽培されていますが、三郷錦の名前が付いた由来の町ではありません。この地で有名なのは湧水とラベンダーだそうです。この地の町長さんが町起こしのために、このラベンダーから採取した花酵母を使ったお酒を造るように強く頼まれたそうです。 

町長に強く頼まれたので、社長は培養室を1000万円もかけて造って、杜氏にその開発を任せたそうですが、彼は夏場はその培養室に入り浸って3年間研究した結果、ついにラベンダー酵母の培養に成功したそうですが、その方法は社長にも一切教えてくれないばかりか、培養室にも入れてくれないそうです。 

そうやって生まれたお酒が下記のお酒です。このお酒は大吟醸と純米吟醸の2種類があります。 

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① 純米大吟醸「三郷雪華」:原料米は三郷錦38%精米、酵母は三郷雪華酵母(ラベンダー酵母)、アルコール度数は16.8、日本酒度±0、酸度1.6、アミノ酸度0.8 

② 純米吟醸「三郷雪華」:原料米は三郷錦55%精米、酵母は三郷雪華酵母(ラベンダー酵母)、アルコール度数は16.4、日本酒度+1、酸度1.8、アミノ酸度0.6 

飲んでみるとどちらの同じような香りで、酢エチとも酢イソとも違うマスカットのような香りがして、程よい甘みと旨みを感じながらきれいに消えていくお酒でしたが、大吟醸の方が旨みの広がりが大きい気がしました。①のお酒は平成29年度の秋田県清酒品評会の純米の部で主席を取ったお酒だそうです。 

古内さんは現在も新しい酵母の培養を行っているようですので、今後どのような酵母のお酒ができてくるか楽しみですね。 

3.出羽の冨士 佐藤酒造店 

この蔵は鳥海山の麓の由利本荘にある蔵ですが、同じ由利本荘市にある雪の茅舎とはは全く違うところにあります。雪の茅舎はJRの羽後本庄の町の中にありますが、出羽の冨士は羽後本庄から出ている由利高原鳥海山ろく線の終点にある矢島駅の七日町にあります。羽後本庄からは約20㎞ほど南に下がったところで、まさに鳥海山の麓の登山口にあたります。 

この地は秋田県の湯沢、六郷、新屋と共に銘醸地の一つとして言われ、昭和の初めには10蔵もの酒蔵があったそうですが、今では天寿と出羽の冨士の2蔵のみとなっています。佐藤酒造店のお酒の生産量は正確にはわからないけど、500石位だと思います。 

創業は明治40年で初代は佐藤久吉さんが当主です。鳥海山を地元ではその奇麗さから出羽の冨士と呼んでいたので、その名前を取って銘柄にしたそうです。この地は鳥海山の伏流水が豊富に出るところで、その清らかな水がもたらす良好な口当たりが特徴のようです。 

この蔵には酒造歴40年の小番(こつがい)力杜氏がおられます。小番さんは昭和51年に佐藤酒造に入り、平成6年から杜氏として活躍されています。社長は4代目当主の佐藤誠さんですが、現在76才歳で高齢なので、後継者として息子さんの佐藤博之さんが2年前から蔵に戻って修業をしています。博行さんはある大学の経済学を卒業後法律関係の仕事をしてきましたが、酒造るのことは全く知らなまま蔵に戻ったそうです。下の写真が博行さんです。 

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今回はおひとりでブースに立っておられましたので、おひとりでは大変でしょうと言いますと、昔阪急デパートの試飲会のバイトをした経験があるので、大丈夫ですと言われました。お酒のことはまだあまり詳しくないようですが、人の好い若者という感じですが、見た感じと違ってもう40才だそうです。とても人がよさそうな方でした。どんなお酒を造りたいですかとお聞きしたら、この蔵のお酒の特徴は甘口、旨口なので、その味を守っていきたいとのことでした。 

この蔵でちょっと面白いお酒を見つけましたので、紹介します。 

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このお酒は銘柄が3番と書いてありますが、3番の蔵付き分離酵母を使った純米吟醸酒です。もともとはこの酵母は蔵の神棚から分離したもので、2代目の当主が見つけたものだそうですが、秋田県では総合食品研究センターが各蔵と共同して蔵付き酵母を分離培養して、1番から25番までの名前を付けて蔵付き酵母として販売していますが、その3番の酵母だそうです。秋田県雄蔵付き酵母を知りたい人は下記のURlをクリックしてください。 

http://www.akitanosake.net/kuratsuki-koubo-25.php

原料米は美山錦60%精米で、アルコール度数16度、日本酒度+2、酸度1.7、アミノ酸0.8です。飲んでみると香りはそれほど強くはないけど、栗のような甘みを感じて適度な酸味を感じながら比較的フラットにひろがり、何か昔を思い出すようなほのぼのとした味わいのお酒でした。最近こんなバランスのお酒は飲んだことがありません。 

これは面白いなと思い、そばにおられた酒食ジャーナリストの山本洋子さんに紹介したら、確かに面白いお酒ねと言われて、写真を撮られてしまいました、その写真をお見せします。 

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4.銀鱗 那波商店 

この蔵は秋田駅の北にある土崎にありますが、土崎は旧雄物川の河口にあり漁業で栄えたところです。秋田藩の御用達商人であった那波三郎右衛門裕生が藩の命で醸造試験所のようなものを造ったのが始まりのようで、それは1807年のことです。本格的に酒造業を始めたのが明治4年ですから、とても歴史ある蔵です。 

大正5年に酒造業を続けるかたわら、呉服業も始めたことから那波商店という名前になったそうです。銀鱗の言う銘柄がいつ生まれたかはわかりませんが、この地は漁業が盛んな街なので、ソーラン節の一節の踊るかもめの港」から引用して、多くの漁師に愛飲されるように命名されたようです。 

この蔵は昭和の初めにコンクリーつ造りの近代的な蔵を造ったほど酒造りには古くから力を入れていたようですが、今でも酒造りのほか呉服、味噌醤油を扱っている会社です。お酒の生産高は750石位のようです。 

下の写真の方は社長の那波尚志(なばひさし)さんです。 

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ここで見つけたお酒は蔵付き酵母こまち美人です。原料米は秋田酒こまち60%精米、酵母は白銀K-87蔵付き酵母、アルコール度数16、日本酒度-4、酸度1.8、です。飲んでみるとそんなにも香は高くないけど、ワインのような酸味と甘みのバランスがよく、とろっとした旨みを感じました。これが4合瓶971円とはコストパフォーマンスがとてもいいです。 

このお酒は去年までは醪の温度を18度で留めて加水して絞って火入れしていたのを16度で行ったので変わってきているのかもしれないとのことでた。秋田蔵付き酵母に21号がこの蔵の酵母ですが、白銀K-87との違いはよくわかりません。 

5.千代緑 奥田酒造店 

この蔵は秋田県秋田と大曲の中間にある大仙市協和境にある蔵で、四方を山々で囲われた場所にありますが、創業300以上も経つ老舗の蔵です。こんな辺鄙なところでも秋田へ抜ける要所だと酒造りができるのですね。 

初代の当主がこの町から眺める山々見て詠った「若葉映えある四方の山々千代緑」という俳句から千代緑という名がついたそうです。この蔵は山内杜氏が来て酒造りをして伝統を守ってきていて、先代の奥田重裕さんの時は1400石もの生産をしていたようです。 

現在は下の写真社の奥田重徳さんが社長兼杜氏で頑張っておられます。この蔵は酒造りだけでなくお酒の小売りもしているので、重徳さんは東京の成蹊大学の経済学部を卒業後、このの営業をしていましたが、5年ほど前から酒造りをはじめ、秋田醸造試験所で酒造りを学び、社長兼杜氏として蔵人4人と酒造りをしているので、生産量は300石位だそうです。 

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この蔵のお酒は商品名が番号で書かれているので、イメージがつかみにくいのですが、どのお酒を飲んでも全部それなりの美味しいお酒で、穏やかで優しい食中酒という感じでした。その中でもお勧めのお酒は社長に持っていただいたNO12の純米大吟醸です。麹米が山田錦50%精米、掛米が美山錦50%精米で、使用酵母がNO12でそのほかの酒質は秘密のお酒でした。この酵母は造り立てはバナナの香りがするのですが、瓶に入れるころはその香りが出なくなるのでそれをいかに残すかの努力をしたそうです。 

ここの蔵は今年はほとんど生のお酒を出品したそうですが、本来は半年以上寝かせると味が乗ってくるので、来年はそういうお酒を持ってきますと言われていました。ぜひお願いいたします。 

以上で僕が見つけた気になる蔵の紹介を終わります.。

この秋田の酒を楽しむ会は年々人気が高まり、2部では新政が超人気で、最後までこの蔵に並ぶ列が亡無くなることはなかったけど、他にもいいお酒がいっぱいあるのにどうしてこうなるのかな。じっくり色々な蔵のお酒を自分の舌で確認すれば好みの酒が見つかると思います。この会のとても良かったことは出品酒の酒質をほとんど全部(100%ではない)書いてあったことです。 

最近酒質を書かない蔵が増えてきていますが、その理由の一つは数字よりは感覚で飲んで楽しんでもらいたいという理屈のようですが、世界の色々なアルコールがある中で酒質を書いてあるのは日本酒だけで、世界をリードする表現方法だと思います。また酒質の数字を見るとある程度のお酒の味を想像できるのは事実で、飲み手にとっては自分の好みの酒に早く出会う確率を高めてくれるものです。ぜひ日本酒に酒質を書く文化は是非残してもらいたいと思っています。この数字が正しいかどうかはあまり正確に議論しなくてもいいと思います。数字はいつ測定するかで変わるのは当然です。僕は酒質の表示を強く望んでいます。 

今回見つけた面白い酒>

1.ロイヤルストレートフラッシュ

Dsc00171_2このお酒は白瀑の山本合名会社の山本友文さんが新しく造った酒でこの時点ではまだ販売されていないお酒です(3月14日には発売されたみたい)。銘柄はロイヤルストレートフラッシュです。ロイヤルストレートフラッシュはトランプの10~Aまでの絵札の同じスートの連続をいい、その中で最も強いのがスペートです。これは何を意味するのでしょうか。 

山本さんはある時、5種類のお米と5種類の酵母を使ったらどんなお酒になるのだろうと思い、やってみようと思ったそうです。原料米は秋田の5種類の米、秋田酒こまち、吟の精、三郷錦、改良信交、美山錦で、酵母はAK-1、こまちR-5、協会6号、秋田酵母NO12、秋田純米酵母です。 

酵母は一緒に投入するしかないけど、原料米は酒母、麹米、掛米添え、掛米仲、掛米留で使い分けたそうです。精米度はすべて50%精米です。出来上がったお酒の酒質はアルコール度15%、日本酒度+1、酸度1.6、アミノ酸度0.8です。 

飲んでみるといろいろな味わいがする複雑味のあるお酒でした。いいかどうかは各自で判断してください。山本ならではの発想のお酒だと思います。

2.天巧 純米大吟醸 無濾過生 

Dsc00176天功は小玉醸造のブランドであることは酒通の人なら知っていると思いますが、太平山 純米大吟醸 の無濾過生はインターナショナルワインチャレンジで、第1位を取ったお酒の原酒を無濾過生で出した限定品です。 

原料米は山田錦40%精米、酵母は自社酵母、アルコール度数は17度、日本酒度+1.3、酸度1.3、アミノ酸1.1です。 

飲んでみると原酒だけあって、パワフルな味ですがそれを感じさせない素直さを感じるいわゆるうまい酒そのものでした。これが3300円で買えれば、すごく価値のあるお酒だと思います。 

僕はインターネットの直接販売で2本購入しました。 

3.影鳥海山 生酛 

Dsc00164鳥海山は天寿酒造のメイン銘柄の一つであり、なでしこ酵母で造った自信作ですが、6年前から影鳥海山として生酛純米酒の試験醸造を始めまして、去年から販売しているものの2年熟成たものだそうです。このお酒は2回火入れしたお酒をタンク貯蔵して1年後に瓶詰めしたら、生酛らしさが出ていなかったので、瓶貯蔵のまま7度の冷蔵庫でさらに1年寝かしたものだそうです。 

原料米は美山錦65%精米、酵母は901号でアルコール度数15度、日本酒度+1.0、酸度1.8、アミノ酸1.0です。 

飲んでみると熟成香が感じられるけど、生酛らしい酸味を感じるのでお燗すると引き立つように思えました。 

生酛の鳥海山は大吟醸がありますが、このお酒は酵母はなでしこ酵母で、生で1年ー5℃で貯蔵したものです。この二つを比較してみると面白いですね。 

4.Moving Suturday 

Dsc00149このお酒は福禄寿酒造の渡辺さんが造ったお酒で日本酒で作った貴醸酒だそうでが、その銘柄がMoving Satuerday というのが面白い。 

どうしてそんな名前にしたかは聞かなかったけど、MOVING SATURDAYとは、2008年4月5日から2009年9月26日まで、TOKYO FMで放送されていた土曜早朝の番組で、放送時間は毎週土曜日5:00 - 6:55と早起きしないと聞けない番組らしい。渡辺さんがこの意味で使ったかどうかわかりません。 

原料米は色々なお米を使うらしいが、精米度は50%、アルコール度数は14度とのことで、他の数値は非公開です。

飲んでみると普通の貴醸酒よりは甘さが少なく飲みやすいお酒でしたが、5月か6月ごろ発売になるようです。

5.純米大吟醸 IYAPU-3

Dsc00214_2この蔵を訪れたのが最後の最後だったので、十分味逢うことができなかったけど、この蔵の専務取締役の斎藤雅昭さんに持っていただきました。雅昭さんは東京の青山学院大学を出られて最近蔵に戻ったばかりで、背が高くとてもイケメンです。

そのお酒はIYAPU-3酵母を使ったお酒で原料米が秋田酒こまち50%精米、アルコール度数16度、日本酒度-1.0、酸度1.3、アミノ酸0.9でした。

「IYAPU-3」酵母は秋田県立大学(APU=Akita        Prefectual University)の岩野教授(I)と横山教授(Y)が開発した新酵母です。

飲んでみると香りは穏やかで落ち着いた香りで、味わいはまろやかでちょっまったりした面白いお酒でした。この蔵は酵母違いのお酒を楽しむ企画をしているので味わてみたらどうでしょうか。 

<僕が仕留めたお酒>

この会の最後にくじ引きでお酒が当たる余興がありました。山本さんの司会で佐藤祐輔がくじを引く形で行われ、約30人くらいしか当たらないのに、なんと僕が持っているNO1が当たってしまいました。確率5%です。しかもあったのは新政でした。

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お酒は新政のカラーズシリーズのラピスでした。祐輔さんがくじを引いて僕が当たるなんで夢のようでした。このお酒はチケットを買てくれた人にプレゼントしました。

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この会の最後に新政のブースに行っての記念写真です。この3人は東大出身の先輩後輩です。左から たくちゃん、祐輔さん、多摩のこうちゃんでした。

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以上で終わります

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置賜地区の地酒サミットで見つけた蔵の紹介

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米鶴酒造の梅津社長さんからFACEBOOKで置賜地区の地酒サミットが米沢市で行われ、おいしい米沢牛が食べれる良い会ですよというお誘いがありました。置賜地区がどんなところかはよく知らなかったけど、山形県中央の南部だということくらいは薄々わかっていて、東光の小嶋総本店や米鶴酒造や雅山流の新藤酒造があることは知っていましたが、他の蔵ははっきり言ってほとんど知らないなのに17蔵が集まそうなので、何か新しい発見ができるかもしれないと思ったのと、米沢牛が食べれる魅力に誘われて、新幹線日帰りで参加することにしました。 

調べてみると置賜地区は確かに山形県の中央南部にあり、南は福島県、東は宮城県、西は新潟県に接していますが、その間には高い山が連なっており、その山々に囲まれた盆地のことを言うようです。主な街は米沢市、南陽市、長井市などがありますが、この地区がまとまってこのような企画をしているとは知りませんでした。 

この会の主催おきたま食のモデル地域実行協議会で、この協議会は山形おきたま農業協同組合の中にあるようなので、農協が主体でこの地区の酒造組合と力を合わせて行われているようで、今回が4回目だそうです。でも前回の第3回は平成28年の秋に行われたようで、きちっと定期的に行われているようではありませんが、この協議会の会長の発言によれば、第5回目は東京でやりたいとの発言がありました。東京ではあまり知られていない蔵が多いので、成功するかちょっと心配です。 

今回は米沢市の結婚式場のグランドホクヨウで3月11日に行われましたが、参加者は200名ですが、会場が広いのでゆったりとした試飲会でした。写真を付けておきますが、東京ならこの倍の人を詰め込むのではと思います。 

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<おきたま地酒サミットのやり方について>

17蔵が中央にブースを構えていて、それを取り囲むようにテーブル席が用意されていて、とてもゆったりとして、蔵元さんとゆっくり話ができたのは良かったのですが、蔵元が来ていない蔵が半分くらいあったのはちょっと残念でした。また蔵の人が来ていてもお酒のことをあまり詳しくない方もおられたこともちょっと残念でした。僕は蔵元の方が出ている蔵と主に取材いたしましたので、僕が取り上げた蔵以外にも面白い蔵があったかもしれないと思っています。特にこの地区の若手の蔵元杜氏で造った「おきたま5蔵会」のメンバーには大変興味がありましたが、その大部分の蔵元がこられていなかったのはとても残念でした。きっと造りの真っ最中なので参加できなかったのではと思われますので、開催時期に関してはもっと検討してほしいと思います。 

もう一つ残念なことがありました。それは参加者に配られた出展地酒一覧表は、わかり易くてとても良かったのですが、お酒の酒質の表示で、原料米は書いてあったのですが、精米度が書かれていないのは驚きました。精米度はお酒の質を考えるとき非常に重要なことの一つなので、絶対に書いてほしい情報です。もう一つ、当日のブースに来られている蔵の人の名前も書いて欲しかったです。これについては間際にならないと決まらないので書きにくいい情報とは思いますが、知りたい情報の一つですので、やってもらいたかったな。 

<GI表示について> 

会場でのご挨拶で山形県が日本酒のGI表示で県単位のGI表示山形を2016年12月に日本で初めて取ったことを知りましたが、これは山形県の日本酒に関する様々な関係者の努力によって達成した素晴らしいことですし、素直にお祝い申し上げます。GI表示はお酒の品質を保証するものであることはわかりますが、GI表示をするには蔵がどのようなことをしなけれないけないのかの説明がありませんでしたし、消費者にとって具体的にどのようなメリットがあるのかが良くわかりませんでした。例えばこの表示には厳しい審査があって表示できるのであれば、GI表示された酒はいい酒に違いないと思いますので、消費者にとってはわかり易いけど、GI表示するのにお金や時間や手間がかかり過ぎれば、蔵元にとってはめんどくさいことになるわけですから、生産者は誰も取らなくなる恐れがあると考えます。ですから、生産者も消費者もメリットのある仕組み造りであることを説明してほしかったです 

<僕が見つけた蔵の紹介> 

冒頭に述べましたように、東光と雅山流と米鶴については知っている方も多いと思いましたので、紹介するのはやめて、僕が初めての蔵ばかりを紹介します、でも東光も雅山流も蔵人は来ていましたが、蔵元が来ていなかったのは残念でした。事前に雅山流の新藤さんと連絡を取った時に、この時期は造りに忙しい時で参加できないとおっしゃっていました。仕方がないのかな。

1.東の麓酒造 

この蔵は南陽市の宮内にあり、創業は明治29年で、酒田屋利右衛門の酒造部門を地元の在郷商人の遠藤家の栄次が引き継いだのが始まりで、当時は山栄遠藤酒造店という名前だったようです。(色々調べたけれども僕のような表現をした記事は一つもありませんが、色々読み解くと僕の表現が正しいのではと思っています) 

従って遠藤家が代々当主として引き継いで酒造りを続けてきました。お酒の特徴は丁寧な酒造りを する蔵で、 厳選した材料と高い醸造技術により、うまい酒造りをして いるにもかかわらず、ほんの数年前までは、地元だけで飲まれてい たようです。製造部長の新藤さんのお話では平成22年に東の麓酒造と名を変えたようです。 

去年までの社長は遠藤孝蔵さんでしたが、、去年の夏に88才で亡くなられて、現在は出羽桜酒造の仲野さんが社長を兼務されているそうです。詳しいことはわかりませんが、出羽桜酒造とは縁戚関係があったようです。現在の蔵の生産量は600石強のようです。 

Dsc00338_2この方が製造部長の新藤栄一さんです。その下に杜氏がおられますが、なんとその杜氏さんは元東北泉の杜氏をされていた神理(じんさとし)さんでした。神さんは3年前からこの蔵に来られて酒造りをしています。 

持っていただいたのは純米大吟醸の天弓 藍天です。このお酒は新藤部長と故遠藤社長が何か新しいコンセプトの酒を造ろうということで、東北芸術大学と共同開発したお酒です。丁度神さんが蔵に来た時から造り始めたようです。 

天弓とは雨が降った後の晴れの日に現れる虹のことで、この酒のシリーズには晴れ(天)」「雨」シリーズがあり、藍天は「晴れ」でやや甘口、桜雨、白雨、喜雨が「雨」で辛口だそうです。 

今回は藍天しか飲んでいませんが、藍天は雪女神40%精米、アルコール度16.5、日本酒度-2、酸度1.3の酒質で、18号酵母を使っているのでカプロン酸系の香ですが、あまり強く香りを出さないやや甘めの飲みやすいお酒でした。 

この蔵のスタンダードであるお酒の「東の麓」のお酒が9号酵母を使っているけど、カプの香りをださずに酢酸イソアミル系の爽やかな香りのするように作られていて、やや辛口のお酒でした。ですから、藍天はやや今風のお酒を狙ったものと思います。これからも新藤さんが中心になって蔵を引っ張っていくのでしょうが、仲野さんの味がどれだけ出てくるのか楽しみです。 

2.後藤酒造 

この蔵は江戸時代中期の1788年に初代後藤卯左衛門が高畠町に創立したのが始まりのようです。高畠町には後藤酒造のほか米鶴酒造、後藤康太郎酒造の3蔵がありますが、その中で高畠駅に一番近い最上川ほとりにあります。 

この蔵の近くには「辯財天」が祭ってある奥津島神社があり、その神社から「辯天」を名乗ることが許されたので、酒名を「辯天」としたそうです。「辯天」とは七福神の中で、音楽や芸能をつかさどる女神のことを言うそうです。 

下の写真方は専務取締役の後藤大輔さんです。大輔さんは蔵元の息子さんで東京農大を出られて、20年前から杜氏と一緒に酒造りをしているそうです。現在47才だそうですから、酒造りはほとんど彼に任されているようで、現在の生産高は600石のようです。 

Dsc00341_2大輔さんには2本の辯天を持っていただきました。右手に持っているラベルの青い辯天は純米大吟醸原酒で、お米は出羽燦燦48%精米で、アルコール度数17.5、日本酒度+3、酸度1.5です。協会18号酵母を使っていますが、それほどカプの香りはせず、口に含むとふあっと旨みと甘みが広がり後味がすっと消えていく良いバランスのお酒でした。

左手で持っていただいた辯天は特別純米原酒で、お米は出羽の里60%精米のお酒です。アルコール度数は17度、日本酒度+3、酸度1.5です。飲んでみると2回火入れの香りがするために吟醸香がマスキングされてしまい、ちょっと残念でしたが、うま味と酸味のバランスが純米大吟醸と同じように良いなと思いました。 

大輔さんに現在どんなお酒造りをしているのかお聞きしたら、先代が香り高い酒を求めていたので、自分としては香りを抑えた旨みを活かした食中酒を求めているそうです。 

この蔵は全国新酒鑑評会でここ20年間で11回も金賞を取っている蔵で、小さい蔵の中では実力もあり、頑張っている蔵だと思います。 

3.後藤康太郎酒造 

この蔵は後藤酒造と同じ高畠町にありますが、後藤酒造とは縁戚関係はないそうです。蔵は高畠駅から南東に5kmほど山の麓の方に行ったところにあり、近くに学業の神様として有名な日本三文殊の一つの亀岡文殊があります。その文殊がある文殊山からの伏流水を仕込み水にしています。創業は江戸時代中期だそうで、とても古い蔵ですが、地元のための酒造りを続けている地道な蔵で農村型蔵と言えるのかもしれません。 

小さいながら自社精米機を導入するなど、酒造りにはきちっとした取り組みをしていて、特に純米酒は40年前から取り組んでおり、地元では純米酒の錦爛(きんらん)と言われるほどだそうです。 

生産高は昔は1000石くらいあったようですが、現在は500石強の生産量のようです。写真の方は蔵元の息子さんの後藤隆暢(たかのぶ)さんで、現在41歳で蔵元杜氏として酒造りをしておられます。隆暢さんは東京農大を卒業され、他の酒屋に勤めた後、15年前の26歳の時に蔵に戻ったそうです。 

Dsc00342隆暢さんには2本のお酒を持ってもらいました。右手に持っているお酒は羽陽錦爛の純米大吟醸で、原料米は雪女神40%精米、アルコール度数16度、日本酒度-7、酸度1.3です。このお酒には山形県のGIマークがついていました。飲んでみると日本酒度-7の割には甘く感じないけど、口の中ほどまで旨みを感じるので、アミノ酸が多いのではと思いました。お聞きするとアミノ酸度は1.1とのことでした。 

左手に持っていただいたお酒は、純米吟醸高畠の四季で、原料米は出羽燦燦精米度不明、アルコール度15度、日本酒度+3、酸度1.3です。飲んでみるととてもすっきりした飲みやすいお酒でした。このタイプのお酒がこの蔵のベースの味のようです。 

隆暢さんの造りたいお酒はどんなお酒ですかとお聞きしたら、この蔵は伝統のある蔵なのでその技術は伝承しつつ、世の中の流行りを追うことなく、派手ではないけど時代にあった酒を気づかれないように造っていきたいそうです。これからどんなお酒に落ち着いていくのかは大変興味があります。

4.中沖酒造店 

この蔵はJR奥羽本線の赤湯沢駅から西に8㎞程行ったところ、フラワー長井線の西大塚駅の南にあります。ここは置賜地区の中央のやや北側にあり、まさに米どころにあると思いますが、国内最大級のダリアの生産地で有な場所のようです。 

創業は大正12年ですからそれほど古い蔵ではないですが、創業当時から家訓の「酔心は浄心に宿る」をモットーに地元向けのお酒を造っており、生産量が現在300石位の小さな蔵です。 

写真の方は3代目蔵元の高橋義孝(よしゆき)さんです。現在42歳の蔵元杜氏で、専門の大学を出ているわけでなく、福井県の早瀬浦で1年修業をした後、蔵に戻って酒造りを続けておられます。置賜地区の蔵元杜氏が5蔵集まって五蔵会を造っていますがそのメンバーの一人です。この会で唯一お逢いした五蔵会の杜氏さんでした。 

Dsc00344持っていただいたのは代表銘柄の羽陽一献の純米大吟醸 醸心(じょうしん)です。原料米は雪女神40%精米、酵母は山形酵母KAのブレンド、アルコール度16度、日本酒度-4、酸度1.4のお酒です。

飲んでみるとそれほど強くはないが、さわやかな香りの中に甘みと旨みが奇麗に広がってぱっと消えていくお酒で、雪女神らしい特徴をうまく引き出しているように思えました。

純米吟醸の夜游(やゆう)も飲みましたが、すっきりした辛口で、普段飲みできるおさけでした。噂によるとこの蔵には大吟醸10年氷温貯蔵熟成酒1升2万円もするお酒があるようで、飲んでみたかったです。この蔵は小さいけど色々とチャレンジしているようなので、大いに頑張ってもらいたいです。 

5.香坂酒造 

この蔵は米沢市中央にあり、創業は大正12年ですから比較的若い蔵です。ホームページの会社紹介によると、全国でも珍しいもち米とワイン酵母を使ったお酒とか山形県で一番日本酒度の高い辛口(+19)のお酒とか、しぼりたての純米酒を-30℃で凍結させたお酒とか珍しいタイプのお酒を造っているようですが、この会には持ってきていませんでした。 

Dsc00339写真お方は従業員の黒岩さんで、2本のお酒を持っていただきました。左手で持っているのが純米大吟醸紅梅、搾りたて生原酒です。お米は出羽燦燦ですが、どぶろくのような澱がいっぱいのお酒ですが、日本酒度が+4ですがそれほど辛くなく適度な甘みですっと飲めました。 

右手のお酒は純米吟醸紅梅で、お米は出羽燦燦でアルコール度数15.5、日本酒度+3.5、酸度1.3でした。飲んでみると非常に軽い感じで飲めてしまうお酒でした。 

この蔵の社長は東京農大を出られ、現在66歳の香坂洋一さんですが、息子さんの香坂洋平さんも東京農大を出られて、現在蔵で活躍中とのことでした。お二人ともこのブースには来られていなかったのはとても残念でした。お二人に酒造りの考え方など色々なことをお聞きしたかったです。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、最後にこの会を紹介していただいた米鶴酒造の梅津さんの写真を載せておきます。梅津さんは会の最初に山形GIについてご紹介していただきました。蔵の人とのツーショットです。

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豊酒造(華燭)は一味も2味も違うお酒を目指しています

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今年も3月の21日の行われた福井県酒造組合が主催する春の新酒まつりに参加することにしましたので、その前日にどこか蔵見学をしたいと思い、いろいろお願いした結果、鯖江市にある豊酒造・華燭を訪問することになりました。この蔵には18年前に訪問したことのある蔵で、去年の春の新酒まつりで久しぶりに社長のお逢いして、飲ましてもらった20年古酒が素晴らしかったので、ぜひ訪問したいと思っていました。 

<蔵の歴史と現状>

この蔵は鯖江駅から西に2-3㎞程行ったところにある小さな蔵で、創業は1753年と古い蔵ですが、9代目の佐々木惣吉さんが明治時代にj国立醸造試験所の一期生として醸造学を学び近代的な造りを取り入れて、蔵元が酒造りに深くかかわるようになったそうです。その後清酒鑑評会に入賞するためにYK35といわれた山田錦と協会9号酵母を使った酒造りを行うなど一定の成果を上げてきましたが、それを大きく変えたのが現在の社長で11代目の蔵元の佐々木宗利さんです。下の写真の左の方です。 

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右側の方が息子さんの佐々木克宗さんです。 

この蔵には以前には杜氏がおられて、古くは丹波杜氏、次が新潟杜氏、そして最近は能登杜氏と変わってこられて、宗利さんはこの3流派の杜氏の杜氏のもとで修業をし、数々の技術を習得し、全国新酒鑑評会や金沢国税局酒類鑑評会で金賞を取るまでになり、酒の生産高も頑張って1000石を達成するまでになったそうです。それで、販路を広げようと東京の酒販店に交渉すると、東京で売るためにはこういう味の酒にしろとかいろいろ言われているうちに、知らず知らずのうちに当社の当蔵の個性が失われてきたことに気が付いたそうです。特に最近は金賞を取るためのレシピが出来上がっていて、誰でも同じようなお酒が造れる時代になり、ある意味では蔵の個性が失われる傾向があることに危機感を感じたそうです。 

そこで平成14年(2002年)からは自らが杜氏になり、自分の造りたいお酒だけを造るようにしたそうです。僕が蔵を初めて訪れたすぐ後のことだったのですね。具体的には福井県の気候風土が生み出す地酒に徹して、基本的には山田錦はやめて福井県産の五百万石に特化して、協会9号酵母もやめて福井県で開発した酵母とM310酵母だけを使った、昔からの伝統ある淡麗なお酒造りを徹底するようにしたそうです。家族+αだけで酒造りをするので、お米の洗米、蒸し、麹造り、酒母、醪造りを見直し、必要最低限の作業に抑える努力をしてきたそうです。ですから蔵元杜氏だけで自分のやりたい酒を造るのであればどんなに頑張っても500石どまりだそうで、現在は約300石の生産量で少しずつ二したいそうです。 

宗利さんが杜氏になって酒造りを初めて16年目になり、今年で62才になるそうですが、6年前に息子の佐々木克宗さんが茨木大学の農学部を卒業して、蔵に戻ってきて酒造りを始めたので、いずれ息子に引き継いでもらいたいと思い、自分が持つ技術を全て教えてきました。その結果、昨年度に息子が造った精米度50%の五百万石の純米大吟醸が全国新酒鑑評会で入賞する実績を上げたので、今年の造りから商売のための酒造りはすべて息子に任せるようにしたそうです。宗利さんはこれからどうするのですかとお聞きすると、やりたいことは一杯あり、今までやりたくてもやれなかったことや商売の幅を広げる新しいことをやるそうです。 

その具体的なものの一つに昨年から販売し始めた「20年古酒の1997酒造り宗利」や、今年初めて造った酒で、これから販売する「華燭 無吟香吟醸酒」があります。前者は常温のタンクで20年熟成した古酒ですが、普通の古酒のよりずっと色が薄く熟成香が弱いけどテクスチャーが素晴らしく、柔らかくスウットと飲めるお酒です。後者は吟醸造りだけれでも吟醸香が全くないお酒を造ったそうで、お燗にすると最高にその実力を発揮する酒でした。いずれも宗利さんが造った逸品だと思います。詳しい内容は後で紹介します。そのほか発酵食品の開発に凝っていて、すでに食べる甘酒、塩麹より優しい醴塩、造り酒屋のこだわりの味噌を造って販売していますが、これからもっといろいろな発酵商品を増やしていくそうです。 

克宗さんも負けてはいません。売りを目的としたお酒造りは宗利さんの酒造り技術を踏襲するだけでなく、その中に自分の技をきらりと埋め込んで一層完成させると同時に、新しいチェレンジもしているそうです。新しいチャレンジを行うと言っても今風なものではなく、オリジナリティの高い新しい酒造りのようです。一つだけ見せてもらった物のは4-5%の微炭酸低アルコール酒で、飲ませてもらったけど僕には飲みやすいけどアルコールが低すぎる気がしましたが、さらに改良して何とか商品化したいそうです。 

こうやって見ると、今年から新しい弥次喜多コンビの親子による新しい酒造りがスタートする元年になりような予感がします。業界をあっと言わせるお酒を発信してもらいたいけど、お話を聞いてみると、これで儲けてやろうというような気合は感じない、とても自然体の取り組んでいる姿勢が良いなと思いました。とても息の合ったお二人のように思えました。 

<蔵見学>

それではどんな蔵で酒造りをしているのかを見学させていただきました。次に蔵の見学の様子をお見せしますが、2000年一度訪問したことがあるのですが、外観はほとんど変わっていない気がしました。 

蔵の正面の建屋です。昔のままです。 

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書面玄関の入口の土間です。18年前とほとんど変わっていませんでした。 

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洗い場のようですが、奥に薮田の搾り機が見えます。床はコンクリートで今流行りのリノリウムではありませんでした。 

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次の写真には和釜と放冷機が見えますが、古いものを使っています。

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麹室は石壁でしたが、内部は木製だそうです。室は1部屋しかないので、温度管理が大変だそうです。いずれ変えなければいけないと考えているようでした。中には天幕式の製麹機と中箱(10~15kg)の床があるだけだそうです。 

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仕込み部屋の2階が麹のさらしと酒母室になっているようです。 

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仕込み蔵は解放タンクが並んでいました。空調はしていません。 

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搾り機の隣に手製の袋搾り機のようなものがありました。組み立て型の槽搾り機のようなものらしいです。この写真ではどう使うかわからないでしょうね。良いお酒はこれで絞った後薮田を使うそうです。 

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貯蔵室は結構広くて沢山の密閉型のタンクが並んでしました。ここのどこかに20年古酒のタンクがあるようです。空調設備はありません。

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ご覧いただければわかるようにサーマルタンクが1本もありません。それはこの蔵のお酒は基本が火入れして常温貯蔵するのがベースなので、生原酒は冬場だけしているためにサーマルタンクがいらないそうです。 

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火入れの基準は瓶貯蔵するものは1回火入れ、タンク貯蔵するのは2回火入れだそうです。

以上で蔵の内部の紹介は終わりますが、特に蔵の設備には新しいものはなく、ごく普通の昔ながらの蔵をそのまま使用しているのようでした。でもあまり整理整頓されていないのがちょっと気になりました。蔵の中を奇麗にしないと奇麗なお酒にならないと思っているので、それだけは気になりました。

<試飲したお酒について>

最後に写真のようなお酒を試飲させていただきました。この写真はちょっとピンボケで拡大しても良くわからないと思いますので、左からその銘柄を示すことにします。この蔵が扱っている普通酒以外のほとんどすべての銘柄だと思います。蔵訪問でこんなに用意していただいたのは生まれて初めての経験です。 

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① 華燭大吟醸 滴 五百万石40%精米、ALC17度、日本酒度+5、酸度1.2 3年熟成酒 

② 華燭大吟醸 五百万石40%精米、ALC15度、日本酒度+4.5、酸度1.3 10年熟成酒 

③ 華燭純米大吟醸 五百万石40%精米、ALC16度、日本酒度+2、酸度1.2 

④ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑤ 華燭純米大吟醸 五百万石50%精米、ALC16度、日本酒度+1、酸度1.2 

⑥ 華燭純吟 山田錦55%精米、ALC15度、日本酒度+0、酸度1.3 

⑦ 五穀豊穣 五百万石麹55%、掛60%精米、ALC15度、日本酒度+10、酸度1.2 

⑧ 華燭純米酒 低温瓶内貯蔵酒 五百万石60%精米、ALC18度、日本酒度+1、酸度1.7 

⑨ 越前国府 五百万石麹65%、掛60%精米、ALC155度、日本酒度+3月、酸度1.4 

⑩ 華燭特別純米 土蔵育ち 五百万石60%精米、ALC16度、日本酒度+6、酸度1.3 

⑪ 華燭本醸造 五百万石65%精米、ALC14.5度、日本酒度+0.5、酸度1.2 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 酒質すべて非公開 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 五百万石55%精米、ALC15度 日本酒度+10、酸度1.2 

これらのお酒をひとつづつは説明しませんが、この蔵のお酒は+0~+5ぐらいで、酸度は1.2~1.3を標準としているようで、たぶんアミノ酸もあまり出さないお酒なので、淡麗と言われていますが、熟成させることにより味を調えているのだと思います。どのくらい熟成させるかは銘柄によって違うようですが、表示がないので詳しいことはわかりません。低温で熟成しているのは②と⑧だけではないかと思います。 

酵母は精米度50%以下の大吟醸クラスは福井県のF501酵母を使い、純米酒以下はM310(10号酵母)を使っているそうです。 

⑥のお酒だけ山田錦を使っているのは、福井県産の山田錦を使ったお酒を町おこしのために造ったためで、来年も山田錦でと言われたら造らないそうです。 

この中で興味があるのは④と⑫と⑬のお酒でしたので、それだけを紹介します。 

④ 華燭 純米大吟醸 

Dsc_0786_2のお酒は息子さんの克宗さんが造った28BYの出品酒で、特別の農家に作ってもらった五百万石を50%精米したものを使た純米大吟醸で、酵母は福井県のF501です。このお酒が全国新酒鑑評会で入賞したお酒です。 

精米度50%の純米酒で全国新酒鑑評会で入賞した例はほとんどないと思うので、凄いことだと思います。このお酒はラベルが2種類あって、写真の④のラベルは宗利さんが造ったもので、⑤のラベルが克宗さんが造ったラベルです。克宗さんのラベルは五百万石、50%精米、F501の5-5-5という意味をあらわしたものだそうです。少し漫画チックで、やっぱり若い人の感性は違うね。 

味の方はというと、酢酸イソアミル系の爽やかな香りの中に、奇麗なふくらみを感じるお酒で、この蔵としてはちょっと今風かな。でもこのお酒が2000円で買えるのならコストパフォーマンスは良いと思います。 

⑫ 華燭1997酒造り人宗利 

Dsc_0784このお酒が去年発売した20年古酒です。この蔵は昔からタンクにいろいろなお酒を寝かせていたようですが、このお酒だけは熟成がすごくうまくいって出来たようです。 

酒質に関する情報は一切非公開で、想像してくださいとのことでした。精米度は60%と聞いたことがありますので、日本酒度や酸度はきっとここの定番の辛口系と同じだと思います。要はどのように熟成させるかだと思いますが、20年間タンクに放置していたわけではないそうです。ここに何かノウハウがあるのかもしれません。 

飲んでみると20年の古酒とは言えない軽い熟成香がすれけどあまり気になりません。このお酒の良いのは何といっても口当たりの柔らかさで、甘いわけではないけど口の中に軽いうまみが残ります。これは精米度が60%なので熟成中で淡白質がアミノ酸に変化したのではないかと思いました。このお酒の良さを楽しむのであれば常温が良いと思います。 

普通の古酒は色も香りも付いて紹興酒のようになるけど、それはむしろ積極的に古酒になるように甘みや旨みをのあるお酒を熟成しているからだと思います。僕のお酒の先生の菅田さんが自宅で大関のワンカップを部屋で熟成させた実験をしていますが、3-5年は色が濃くなってきましたが、それを過ぎるとほとんど色が変わらなかったそうです。きっと甘みや旨みが少ないお酒は熟成が遅いのだと思います。 

しかもこのお酒の販売方法が変わっています。この蔵に来た人には問屋でも酒販店でも個人でも価格は同じで500mlが2000円で、購入した人がいくらで売ろうとかまわないそうです。 

⑬ 華燭 澄み透る吟醸酒 無吟香 

Dsc_0785このお酒は今年4月から発売されつ吟醸酒ですが、摩訶不思議なお酒です。原料米は麹は五百万石55%ですが、掛米は不明です。アルコール度数は15度、日本酒度は+10、酸度は1.2とごく普通の辛口の吟醸酒のようですが、実は造りが違うようです。吟醸酒造りですが、吟醸香を一切出さないように作ったそうです。どうしてそんなお酒を造ったのでしょうか 

飲んでみると確かに吟醸香はしないし、うま味は少ないので、ちょっと物足りないお酒でした。不思議なことに、これをお燗すると、全く姿を変えます。少し甘みが出てくるのですが、お燗独特の香りもなく後味に嫌みがなく、飲み飽きしないいくらでもおいしく飲めるお酒になりました。

吟醸香のない吟醸酒を造るとこんなお酒になることを、前もって予測していたとしたら、凄いことです。

価格は500mlで1000円ですが、相談すれば1升瓶でも売ってくれるようです。 

以上でお酒の紹介は終わりますが、このほかにも色々な古酒がでてきました。30年ものもあり、飲んでみるとウイスキーのようなおさけもsりました。この蔵の古酒造りの技術は凄いものがあります。 

<発酵食品について> 

この蔵では醴塩、甘酒、味噌を扱っていますが、僕は醴塩(れいしお)が気に入りました 

Reishio_2塩は古代の甘酒(醴)を造る過程に天然塩を加え発酵することにより、塩糀の塩の使用量を1/3(当社比)で甘味と塩味が特徴の塩糀とは一味違う調味料になったそうです。タンパク質分解酵素・アミノ酸などの成分は塩糀と変わりませんので
塩分を控えたい方には最適だそうです。
 

ここではねぎを生のままで切ったものと醴塩を合わせたものを出していただきました。ねぎの香と感触を残しているものの、醴塩の塩分と旨みがバランスしているので、最高のつまみでした。これはそのまま冷凍しておくといつでも食べられるそうです。 

写真をお見せしますが左はへしこの醴塩あえで、右がねぎと醴塩和えです。 

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社長から醴塩の絶品レシピを教えてもらったので、家に帰ってから造ってみました。妻にも褒められたのでご紹介します。それは豚肉の醴塩漬けです。豚肉のロース部分(バラでもいい)を醴塩と混ぜてチャック袋に入れ24時間冷蔵庫で保存します。それをお湯の中で約40分煮るだけです。豚肉の中に醴塩の旨みが入り、それだけで絶品のおつまみになります。しかもゆでた残り湯はスープとして使えます。僕はコンソメとわかめともやしを入れて食べました。騙されたと思って造ってみてください。

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今年の福井県の新酒まつりは大変でした

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今年も福井県の酒造組合が主催する春の新酒まつりに参加してきました。場所は去年と同じ福井市内のフェニックス・プラザのフェニックス・プラザ大ホールで開催され、今年も去年と同じ24蔵の参加で、開催時間も13時30分から17時まででした。
 
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今年は開宴時間より少し前から入場させたので、あまり待ち時間がなく入場できたのですが、入場すると同時に黒龍酒造と加藤吉平商店の前には試飲するための行列がずらっと並んでしまい、ほとんどの人が開催の挨拶を聞いていない状態から始まりました。 

去年は初めての参加でしたので仕組みが良くわからないまま、開会の挨拶を聴いてから、列ができていない蔵を中心にいろいろな蔵のブースを回り、何とか7蔵を取り上げてブログに書きました。自分でも良くやったと思うほどで、それなりに充実した試飲を楽しみブログを書き上げることができました。その記録は下記のブログを見てください。 
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今年は去年とはだいぶ事情が違いました。きっと入場人数が去年よりかなり多かったのだと思います。今年は友人を連れての参加でしたので、僕も入場と同時に黒龍の前に並んで、黒龍の「しずく」を飲んでから、他の蔵を回り始めたのですが、今年はどの蔵にも人が並んでいるので、仕方なくそこに並んでブースの前できたらお酒を飲めるのですが、後ろに待っている人が大勢いるので、何か1杯飲んだらそこを離れざるを得ない状況でした。これではとても蔵元とお話したり、色々な種類のお酒を飲むことなどできる状況ではなかったので、とても取材にはなりませんでした。この状態が延々2時間くらい続くことになるので、疲れ果てて途中で休憩を取る始末でした。 

3時半を過ぎると少し人が減ってきましたので、ブースの蔵元とお話ししながらお酒を飲めるようになったので、少し気合を入直してブース巡りを開催しましたが、今度は思いがけないことが起こりました。それは蔵で用意したお酒が足りなくなり、人気のお酒が飲めなくなったのです。これではその蔵のお酒を紹介することはとても難しいことになります。その中でなんとか僕が気になった蔵だけをご紹介しますが、去年のような紹介記事にはならないことをはじめにお断りしておきます。
 
蔵の紹介をする前に来年以降の開催内容について開催者に注文を付けておきます。
 
1.ホールの大きさにあった人数に制限してください。
2.出品するお酒の紹介のパンフレットを造ってください。  
3.蔵ブースのレイアウトを地区別にするなどわかり易くしてくださ
     い 
4.会の終わりになるまで酒が無くならないように十分な量を確保
     してくだ さい。 
5.予算的にこれができないのであれば、入場料金のアップを検
     討してください。
 
僕の勝手な意見ですが、これができないようあれば来年からはこの会への参加をあきらめるつもりです。
 
それでは以下に4つの蔵を紹介します。
 
1.常山酒造
 
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写真お方は専務取締役で杜氏の常山晋平(とこやましんぺい)さんです。晋平さんは9代目の蔵元で、元の杜氏の栗山さんが退職したのを切っ掛けに、2015年から杜氏として酒造りを続けていますが、晋平さんになってどんな味になったのでしょうか。
 
実はこの会の前日に、40分程度の短い時間でしたが、特別に時間を割いてもらって蔵見学をさせていただきましたので、少し蔵の紹介をいたします。晋平さんから蔵の中身はSNSにはアップしないように言われていましたので、大丈夫だと思うところだけを少しだけ紹介させていただきます。 

蔵はJR福井駅から歩いて10分くらいのところの町中にあります。下の写真がお店の入り口です。この奥に蔵があります。この蔵は江戸時代の1804年にこの場所に創業したそうで、当初は「常祝」とか「羽二重正宗」の銘柄のお酒を造っていたそうです。現在の銘柄の「常山(じょうざん)」が誕生したのは1996年だそうです。

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この蔵は戦争中の福井空襲や昭和23年の福井地震で2度も蔵が無くなるトラブルを乗り越えてきた蔵で、写真の建屋1999年年に作り替えたものだそうです。この蔵の銘柄の「常山」が認めらてきたのは2002年から栗山雅明さんが杜氏になってからです。栗山さんは静岡県の浜松出身で「青島酒造」8年間酒造りを学んでからこの蔵に来て、辛口でどっしりしたお酒を中心にした酒造りをしてきました。そして2014年(25BY)で、定年で蔵を退職されますが、22BYと23BYでは連続して全国新酒鑑評会で金賞を取るまでになっています。 

晋平さんは現在33才ですが、2010年に蔵に戻って栗山さんのもとで酒造りを勉強し、2012年には国税局の造像試験所でみっちり研修を受けた後は本格的に酒造りを始めました。そして、栗山さんが定年になった25BYから満を持して杜氏として酒造りを始まます。栗山さん造りを踏襲しつつ、米の旨みと奇麗さを兼ね備えたようなお酒へと変身したようです。
 
蔵の中はあまりお見せできませんが、2年前に蔵の中の土間や壁を全て塗りなおしたそうで、蔵に入った時に奇麗な蔵だなと思ったほどです。その代表的な場所は薮田の搾り機の部屋ですが、床は特殊な塗料で塗りなおしたほかプラズマクラスターを入れてカビの繁殖を抑える工夫をしていました。
 
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仕込み部屋のタンクはすべて真っ白な解放型タンクで、とても清潔感があふれていました。さらに搾りの部屋は5℃の空調が出きるようになっており、搾ったお酒はサーマルタンクで冷却をしながら澱引きして、その後瓶詰めして生酒はー5℃、火入れは+5℃の貯蔵をするなど徹底したコールドチェーンにこだわっているようでした。
 
この蔵の中を見るだけで、酒の品質がわかるような気がしていて、その証拠には去年の28BYで晋平さんとしては初めて金賞を取るまでになっています。
 
以上で蔵見学の紹介は終わりますが、春の新酒祭りでは飲んだお酒は写真んもないし、銘柄もよくわからず飲んだので、確かな紹介は出来ませんので、、蔵で試飲したお酒で紹介したいと思います。
 
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から純米大吟醸、超辛純米生60、霞純米吟醸です。 

1.常山 純米大吟醸  美山錦50%精米、福井酵母はFK-5です。マスカット系の香がするイソアミル系の爽やかなお酒でした。酸度は1.3~1.4でした。福井県産の美山錦をPRするために造ったそうです。
 
2.常山 純米生 山田錦60%精米 酵母は協会酵母1401で日本酒度は+8、酸度1.7のお酒です。飲んでみると確かに後味に辛さを感じますが、米の旨みがしっかりかんじて、後味の酸が奇麗に切ってくれるので、白身肴に合う感じがしました。このお酒がこの蔵のベースのお酒だと思います。
 
3.霞 純米吟醸 1回火入れ 麹米が山田錦50%精米、掛米が山田錦60%精米の純米吟醸で酵母は協会1801と自社酵母のブレンドです。飲んでみると旨みを感じるけど、カプ系の香りのする華やかなお酒でした。少し流行り系のお酒を造ったようです。
 
この蔵のお酒で共通に感じるのはテクスチャのやさしさで、仕込み水の軟水の良さを馬無引き出して、その上にお米の旨みを載せていながら切れを出しているお酒のように感じます。どのおお酒を飲んでも良さが感じられる造りで、今後どのように変化していくのかが楽しむ蔵でした。
 
.株式会社 越の磯
 
今まで福井の会に参加していて、この蔵の存在を今回初めて知りました。この蔵はえちぜん鉄道三国芦原線の日華化学駅前にある蔵で、創業は1909年ですからそれほど古い蔵ではありません。昔は福井県越前岬の突端に位置していた越廼村というところで蔵造りをしていたので、越の磯という名前を付けたようです。
 
インターネットで調べてみてもあまり古いことには触れておらず、地ビール製造で有名な蔵のようです。写真お方は専務取締役で杜氏の磯見邦博さんです。邦博さんは東京農大を卒業されて、最初は日本酒をメインに造りをしていたそうですが、1994年の細川内閣の時の酒造法の改正で、ビールの醸造免許を2千KLから60KLに引き下げられて、地ビールが各地で作られるようになったので、ビール造りを思いついたそうです。いろいろ検討した結果、福井県産の六条大麦に目を付けて、1998年から地ビール「越前福井浪漫麦酒」の醸造を始めました。
 
生産高は日本酒が400石で、ビールはそれより少ないけれども、2010年に香港の情報誌のビール特集で、大手メーカーのビールを抑えて人気第1位になってから、海外でも注目されるようになったようです。
 
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61rmxg9twql__sl1000_日本酒はあまり多くの酒類は造っていないようですが、この日は一期一会という純米大吟醸山田錦33%精米と大吟醸山田錦40%精米の2種類をいただきました。両方とも少し熟成させているようで、テクスチャーが良くて、とろりと口の中になじむいいお酒でした。この会ではあっという間になくなったようで、後半に行ったらもうありませんでしたので、他のお酒を持ってもらいました。 

持っていただいたお酒は五百万石60%精米の寒仕込の純米酒の越廼磯です。今年から名前を変えて新しく出したお酒のようで、本醸造もあるようです。
 
インターネットで見る限り、この蔵のお酒は自社のオンラインショップや流通経路での販売が多く、特定の小売店ではどこで売っているのかよくわからなかったです。でも、お酒の味はそこそこ良いと思いました。
 
3.吉田酒造
 
この蔵については去年のブログに書きましたので、、下のURLをクリックして見てください。http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-2f64.html
 
この時は社長の由香里さんと亡くなった智彦さんを取り上げましたので、今回は今期から新しく杜氏となって頑張っている娘さんの吉田真子さんのことを少しご紹介しましょう。真子さんは関西大学に行っていたそうですが、父が体調を崩したことから卒業後蔵に戻って酒造りの道に入ったそうです。まるまる2期の造りをした後、知人の伝手で去年5月に立ち上がったばかりの北海道の新しい酒造会社の「上川大雪酒造」の川端杜氏の下で、Makuakeクラウドファンディングの試験醸造を一緒に経験することにより酒造りの勉強をした後、蔵に戻って29BYから杜氏として酒造りをしています。 
 
下の写真が真子さんで24歳だそうですから、日本最年少女性だそうです。クラウドファンディングで有名なMakuakeが、今年の1月から4月まで真子さんのお酒を取り上げて、ファンディングの募集をしていた時の写真を拝借しました。  
 
最近ではテレビにも取り上げられて一躍注目を浴びていますので、急に有名な人になりましたね
 
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この蔵は父親の智彦さんが一昨年に急死されて大変だったのですが、奥様の由香里さんが社長になるとともに、長女の吉田祥子さんが営業を担当し、祥子さんの旦那様の吉田大貴(養子)が真子さんを支援する製造を担当し、家族で力を合わせて頑張っているのです。こんな蔵はみんなで応援したいですね
 
下の写真は新酒まつりの会場におられた由香里さんと大貴さんです。大貴さんは鹿児島出身で東京のある会社に勤めていた時に祥子さんと出会って結婚したそうです。子供の時は雪など見たこともない生活だったそうですが、今では寒い冬の中で酒造りをしているそうですが、楽しいそうです。頑張ってください。
 
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祥子さんは当日は会場におられませんでした。それは翌日から東京池袋の東武デパートでの試飲販売会に出席するためだそうです。僕は翌日東武デパートに駆けつけて、祥子さんにご挨拶した後、真子さんが造ったお酒を試飲し、下記の純米大吟醸を購入しました。
 
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このお酒は純米大吟醸吉峯です。智彦さんが苦労して造った地元の山田錦45%精米のお酒ですが、香りはカプロン酸エチルの香ですが穏やかです。口に含むと奇麗な甘みが広がり奇麗に消えていくのですが、穏やかな辛みを感じながら少し余韻を残しながら消えていくお酒でした。いかにも女性らしいさわやか系の大吟醸に思えました。僕の感覚では日本酒度は1.5、酸度1.3という感じでしょうか。
 
このお酒は会場にはありませんでしたし、会場ではどんなお酒を飲んだかよく覚えていません。
 
4.田邊酒造
 
この蔵はこの会の最後の最後に訪れましたが、会場には専務取締役の田邊啓朗(たばべひろあき)さんがおられました。この蔵は去年蔵訪問をしていますので、蔵の詳細はそちらをご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-ea66.html

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蔵見学した時は弟の田邊丈路さんが対応していただいたたので、僕が蔵見学したことは知らなかったようです。啓朗さんは東京の明治学院大学を卒業後蔵に戻ったのですが、弟の丈路さんの方が早く蔵に戻っていたので、造りは弟に任せて自分は営業をしているそうです。この兄弟のコンビはなかなかのものだと思います。 

Dsc00439持っていただいたのは少し面白いお酒です。福井県立大学との共同研究で生まれた酒で、梅肉や紅梅液を販売する高野吉平商店の梅壺から採取した天然梅酵母を使った酒だそうです
 
原料米五百万石70%精米、アルコール度数12度、日本酒度-35、酸度3.5のお酒「プリュネ」です。飲んでみると、甘酸っぱい中に米の旨みを感じるお酒でした。
 
日本酒の可能性を探る試みの一環として行ったそうです。
 
以上で福井春の新酒まつりの報告を終わりますが、あまり蔵の紹介ができなくてすみませんでした。でも少しは面白いネタを紹介したつもりです。 

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鏡山酒造は新しさを求めて頑張っています

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古いことで申し訳ありませんが3月の中旬に八芳園内にある日本料理の槐樹で第22回の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会が開かれましたので参加してきました。今回は川越市にある小江戸鏡山酒造の営業部長の五十嵐昭洋さんをお招きしての会でした。昭洋さんは営業部長で、現社長は五十嵐さんのお兄さんの五十嵐智勇さんのようですが、智勇さんは天覧山を醸している五十嵐酒造の蔵元社長ですから、昭洋さんは実質小江戸鏡山酒造の社長と言える方だと思います。 

僕が鏡山酒造を知ったのは2013年の神田の醇の日本酒の会で初めてお会いしたので、その時のことは下記のブログに書いてありますのでご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-6adf.html 

<小江戸鏡山の創立の経緯> 

このブログを読めばこの蔵ができたいきさつなどは大体わかりますが、改めて整理してみます。川越には昔から鏡山酒造という蔵がありましたが、2000年に急所廃業することになりました。川越は昔から小江戸と言われたほど、伝統ある町で蔵造りの街並みや菓子屋横丁など和の文化を持った町でここに酒蔵がないのは寂しいと立ち上がったのが五十嵐昭洋さんだったのです。 

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昭洋さんは五十嵐酒造の次男として育ちましたが、兄がいたので蔵を継ぐつもりもなく、酒造りをするつもりはなかったそうで、大学を卒業してからヤナセ自動車の販売をしていたそうです。もちろん蔵の再建には川越に住む多くの人の支援と協力があった出来たのですが、もともとの鏡山酒造があった場所は別の事業の場所に充てられていて利用することができなかったので、場所選びが大変だったそうです。そんな時に川越にある老舗の醤油蔵の一角を酒蔵として借りくことが決まったそうで、この地に2007年小江戸鏡山が誕生することになります。 

酒蔵造りにはまずは仕込み水が大切なのですが、醤油蔵にはきれいな湧水があったのは幸いしたのですが、そこに酒蔵を立てるには大きな問題がありました。それは醤油蔵が使っている麹菌も酵母菌も酒蔵が使う菌とは相いれないものでしたので、その影響を断ち切ることが大変だったそうです。醤油の生産初期には大量菌が空中に放散されるので、酒蔵が醤油蔵のそばに建設することはあり得ないことだそうです。 

ここまでは槐樹の会で昭洋さんから聞いた話ですが、実際にどんな蔵になっているのかとても興味深かったので、後日5月の連休明けに蔵を見学させていただきましたので、まずそれを紹介します。 

<小江戸鏡山の蔵見学> 

蔵は西武新宿線の終点の本川越駅から蔵の並木通りを北に向けで1㎞程北に行った仲町の交差点を左に曲がったところにある松本醤油商店の右側の建物です。下の写真は販売店ですが、お酒と醤油の両方を売っているお店になっています。右側の建屋に小江戸川越自家製面と書いてありますが、人気のラーメン屋さんだそうです。 

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鏡山の蔵はこの鉄筋コンクリート造りの奥にあり、テニスコート1面くらいの広さだそうです。下の写真は松本醤油の入り口から見た鏡山酒造の建屋です。窓のない鉄筋コンクリート造りなのはわかりますが、全容はわかりません。

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この建屋の裏側にまわると蔵の全容が見えてきます。ここの写真を撮り忘れましたので、グーグルマップのストリートビューからお借りしました。この建屋が蔵の裏側で、こちらには小さな窓がついていますが、とても密閉性の良い鉄筋コンクリート造りなのが良くわかります。

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それでは中に入ってみましょう。訪問した時はたまたま新酒の生酒の出荷にぶつかったので蔵の中に販売前のお酒が山積になっていたので、ちょっと普段より雑然としているのは仕方がないですね。 

では蔵のの中に入ってみます。下の写真は洗い場で、洗米機が奥に見えます。袋などの選択等の大潟洗濯機がドンと置いてありました。奥に見える窓は一般見学者のためのものです

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このステンレス製の扉が麹室の入り口です。

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麹室の中も見せていただきました。壁は奇麗な杉製の板張りで、とてもきれいな室でした。麹造りの効率を考えると2室欲しいですね。 

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ここが仕込み室で2200Lのサーマルタンクが6基ありましたが、一つは仕込み水用で、もう一つは出荷のための貯蔵用のようでした。通常は1週間で1タンクの仕込みで、総米600kgで、1200Ⅼ(1升瓶660本)のお酒ができるようです。確かに4つのタンクがあれば、まわせますが、3期醸造のはずなので、1か月4造りの9か月だと計算上約250石しかできないことになるけど、400石の生産となると1週間2本の醸造もやっているのでしょうね。そうなるとタンクも6本フル稼働せざるをえないと思うけど、どのようにしているのかはお聞きしませんでした。でも生産スケジュール管理が大切なことはわかります。

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下の写真は仕込み室の2階のフロアです。とても作業のしやすい環境で、完全にコンクリート製の壁に囲まれていました。

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搾りは小型の槽が2台用意されていて、1タンクのお酒を同時に2台の槽で絞るようで、ある程度搾ったら、袋を積み替えて1台の槽で搾るそうですが、油圧式でないので粕の比率が多くなるそうです。

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以上で蔵の紹介は終わりますが、確かに狭い場所での酒造りですが、造りに支障があるようには思えませんでした。強いて言えば槽を薮田式に変えた方が効率的なような気がすいました。もう一つは床や壁を特殊塗装することにより清潔性を上げるとか、へパフィルターを使ってより奇麗な空気の取入れをすれば、もっといいお酒ができるような気がしましたが、今のままでも十分おいしいお酒を造れる環境にあることはわかりました 

<槐樹で飲んだお酒の紹介> 

今回は5種類のお酒をいただきました。この蔵のお酒の生産量は3期醸造で年間400石だそうで、辛みや渋みを抑えた芳醇でやや甘口のお酒を目指しているそうです。杜氏は柿沼和洋さんが創業以来ずっと担当してきており、造りは蔵人3人と季節パートで頑張っているそうですが、忙しい時期は五十嵐さんもお手伝いするそうです。 

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1.ワイン酵母仕込み 純米酒 

Dsc00366_2このお酒はワイン酵母を使ったお酒で、原料米は一般米(彩のみのり)60%精米、アルコール度数13度のお酒です。この蔵はラベルに酒質を一切公開していませんが、SSIの報告では75%精米と書いてありましたが、最近変わったのかもしれません。 

このお酒は半年くらいの熟成しかしていませんが、やや色がついていて、飲んでみると香りはワインの果実香とお酢に近い香りが混ざった香りで、甘くて酸っぱいお酒でした。 

酸度は不明ですが、3.0以上はありそうで、コハク酸が通常の倍以上あるそうです。油性分の多いお料理にはぴったりではないかと思いました。 

2.純米無濾過生原酒 雄町 3.純米吟醸 澱がらみ 

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2番のお酒は右側の白いラベルに赤い文字の鏡山と書いている雄町60%精米の純米酒です。3月の段階ではまだ販売前のお酒で、タンクから直汲みして持ってきたお酒だそうです。ですからやや澱がらみで、シュワシュワ感もあるお酒でした。 

アルコール度数は17度もあるしっかりした甘みがあるお酒で、雄町らしさを出すにはもう少し奇麗さがいるかなと思いました。でも雄町らしいパワーはあったと思います。 

3番のお酒は黒いラベルに銀色の鏡山と書いてるお酒で、玉栄50%精米の純米吟醸です。玉栄は滋賀県お米ですが、もともと近江との関係があって使っているとのことでした。飲んでみるとアルコール度数は16度ですが、厚みがしっかりあって、後味に若干の渋みがあるので、コクのあるお酒に感じました。

4.斗瓶どり滴酒 5.純米酒 澱がらみ 

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4番のお酒は薄い黄色のラベルに金の鏡山と書かれた大吟醸です。埼玉県で開発されたさけ武蔵35%精米の大吟醸斗瓶どり雫酒です。さけ武蔵は埼玉県が開発した最初の酒造好適米で、12年の歳月をかけて2004年に発表され、今では熊谷周辺で主に栽培されているお米です。改良八反流れと五百万石のDNAを持つ若水ををかけ合わせて造られたものです。 

酵母はM310を使ったそうです。飲んでみると確かに奇麗な味わいになっているものの、やや膨らみが足りないような気がしました。この蔵は25BYで初めて全国新酒鑑評会で金賞を取りましたが、その時のお米は山田錦でしたので、まだ全国新酒鑑評会で金賞を取っていないさけ武蔵で金賞を取るべくチャレンジしているそうです。さけ武蔵は扱いにくいお米で、溶けやすいのにすぐ固まる傾向があって、これで賞を取るのは大変だそうです。でも着実にレベルは上がってきているので、近いうちに目的が達成されることを期待しています。29BYの全国新酒鑑評会では入賞で、惜しくも金賞を逃しました。

5番のお酒は薄黄色いラベルに緑の鏡山と書かれた澱がらみの純米酒です。原料米はさけ武蔵60%精米で、酵母は協会1801酵母だそうです。飲んでみるとカプロン酸エチルの香りはするけど、それほど強くはなく、含んだ時にふくらみを感じるので、これは良いと思いました。もしかしたらさけ武蔵はM310より1801酵母の方が合うのかなと思いました。素人考えですが・・・・

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、山田錦をやめてあくまでも埼玉県産のさけ武蔵にこだわるのはとてもいいことだと思いますので、これからもチャレンジを続けてください。この蔵が最も得意としているお酒の味は軽やかできれいなお酒ではなく、味わいのある甘口系のお酒だけに後味の切れだけは大切にしてもらいたいと思っています。

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基峰鶴の蔵元との会は驚きの会でした

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4月の最初の日曜でしたが、南小岩にある「なだや酒店」の渡部知佳が企画した会で、南澤正昭シェアしてFacebookでご案内していただいた会がありましたので参加しました。この会は佐賀県の基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんをお呼びしての会でしたが、基峰鶴という酒は飲んだことがないけど、女性の蔵元さんが来るということで興味がわいたので申し込んだ次第です。 

日曜日の13時にJR小岩の栃錦関の銅像の前に集合というだけで、どこに行くのかも、何時から日本酒の会が開かれるのかもわからず(実際には柴又のイタリアンレストランで15:30から行うと書いてあったのですが、僕がよく読まなかっただけのようです)、行ってみるとそれらしい人が誰もいないし、時間になっても渡部さんも南澤さんも現れないし、間違えたかなと思っていたら、渡部さんがにこやかに現れてほっとしました.。南澤さんは体調が悪くて欠席とのことでした。小森綾子もおられましたので、ここで初めてご挨拶しました。 

そこで、ここから柴又の帝釈天までバスで移動したあと帝釈天に行ってからイタリアンレストランに行くことを初めて知りました。簡単に言えば柴又帝釈天の観光付き日本酒の会だということが判り驚いたのですが、柴又の帝釈天は単にお参りするだけでなく、結構観光できるところが多いのにまたまた驚いてしまいました。知らない方も多いと思いますので、日本酒の会の紹介の前に、ちょっとそれをご紹介します。 

<柴又帝釈天> 

柴又帝釈天は映画「男はつらいよ」の主人公のフーテンの寅さんの出身地として有名なとことですが、帝釈天はどんなところであるかは良く知りませんでした。ちょっとインターネットで調べてみると帝釈天とはもともとインドの最古の経典の中では軍神と呼ばれた神様で、仏教の中では守護神としてあがめられている神様のようです。この守護神は仏の教えを信仰し従うものは病難や火難などの災難に逢えば、帝釈天が必ず守護し、悪魔を除き退散してくれると言われており、古くから厄除けのご利益があると信じられてきたようです。 

この帝釈天の板本尊が安置されているのが帝釈堂で、正式名称は経栄山題経寺という日蓮宗の寺院で、この寺ができたのが江戸時代の初期ですが、現在の帝釈堂の内殿は大正4年に、拝殿は昭和4年に完成したそうです。 

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<彫刻ギャラリー> 

帝釈堂内殿の外部は東・北・西の全面が装飾彫刻で覆われており、法華経に説かれる代表的な説話10話を選び視覚化したもので、大正11年(1922年)から昭和9年(1934年)にかけて、加藤寅之助ら10人の彫刻師が1面ずつ分担制作したそうです。 

この羽目板の中央の段には十二支と天人、下方の段には千羽鶴が表され、高欄(縁)より下の部分には花鳥および亀を浮き彫りで表わしています。これらの彫刻を保護するため、内殿は建物ごとガラスの壁で覆われ、見学者用の通路を設け、「彫刻ギャラリー」と称して一般公開しています。 

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たまたまこの彫刻ギャラリーのガイドをしている人にお会いして、お聞きすることができましたが、本格的に行われたのは関東大震災以降で、材料を調達するのも、職人を集めるのも大変だったそうです。1枚の板の大きさは縦1.3m、横2.3m、厚み20cmもあり、表面から少しずつ掘っていくのですが、立体構造になっているので最後はどうやって掘るのか想像できないほど、ただただ感心してしまい、本当は色々触りたくなるほど感激しました。見たことのない人は是非行ってみてください。法華経を知らなくても十分楽しめます。 

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<大客殿と大庭園(邃渓園)> 

帝釈堂に内殿にある彫刻ギャラリーを見終わったらそのまま廊下を通って大客殿に行けます。大客殿は大きな座敷を4部屋を一列に配した総檜造りの平屋建てが特徴で、昭和10年に完成しました。その建屋から眺める日本庭園は邃渓園と呼ばれ、大客殿の竣工に合わせて造られ始め、少しずつ手を加えながら昭和40年に現在の形となり、2016年には東京都指定名勝庭園に指定されています。 

庭園が回廊でゆっくり楽しめるようにデザインされており、下の写真は一番奥の回廊からから大客殿を眺めた時の写真です。奥に大客殿が見えますね。大客殿と彫刻ギャラリー両方で400円ですから大変割安です。

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<帝釈天参道> 

柴又駅から帝釈天に向かう参道で、なかなかの風情ですね。寅さんに関するお土産がたくさん売られていました。 

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<ピッツェリア・ルナ・エ・トルチェ> 

柴又帝釈天の観光も終わり、柴又駅のすぐそばのイタリアンレストラン「ピッツェリア・ルナ・エ・トルチェ」で基山商店(基峰鶴)の女将さんの小森綾子(りょうこ)さんを囲んでの日本酒の会が始まりました。実は綾子さんは小岩駅から柴又帝釈天の観光もご一緒でした。下の写真はお店の入り口の写真です。 

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お店は本格的なイタリアン料理店で、ナポリからピザを焼く釜を輸入したほどの凝りようです。この窯の燃料は薪ですから本格的なもので、こんな窯を持っているお店は日本広と言えども少ないと思います。

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下の写真は鶴見さんのブログに載っていた写真をお借りしました。右から中央の方がこのお店の店長に鶴見直人さんで、右の方が蔵元の小森さん、左の方がなだやの渡部さんです。みんないい顔していますね。 

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鶴見直人さんは柴又そだちですが、辻料理師専門学校のフランス校を卒業したあと、フランス料理店で研修を積んでいる時に、縁があってイタリア料理に興味を持ってイタリアナポリのピッツアが気に入って数々の有名店で修業をし、ついに柴又にお店を持つことになったそうです。現在は日本ナポリピッツア職人協会の一員となり、、ピッツアの技術向上や普及に努めているそうです。また、本場にはナポリピッツア職人協会があってそこにも属しているそうです。 

写真の釜はナポリから船便で50日かけて横浜に運び、そこから10トントラックで柴又まで運んだそうですが、イタリア人らしく全く梱包もなく裸でついたそうですが、無事何事もなく動いたようです。 

僕たちはピッツアとは呼ばないでピザと呼ぶことが多いようですが、もともとナポリ生まれのピッツアがアメリカにわたっていろいろな形になってから日本にピザの名前で輸入されたので、この方が有名になっていますが、本場のピザはピッツアと呼ばないといけないようです。この日に頂いたピッツアをお見せします。旨そうでしょう。具が生地の上に載っているだけでなく包み込むようになっていました。

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鶴見さんの夢は全国大会で優勝して、ナポリに行くことだそうです。今年は入賞だたようですから、近いうちに実現するかもね。そうなったら盛大にお祝いするそうです。 

<基山商店について> 

基山商店は福岡市から南に約20㎞くらい下がった福岡県との県境にある佐賀県の基山町にある蔵です。創業は明治の初期に地主数名が共同で酒造りを始め、その後小森初蔵さんが一人で引き受けた後小森商店として酒造りをしていましたが、大正9年に現在の合資会社基山商店となっています。その後、地元に愛され、親しまれる酒を造ってきた蔵ですが、杜氏は肥後杜氏の鶴田岩一さんが担当してきました。 

蔵の社長は2代目当主の小森純一ですが、確か2005年から2017年まで基山町の町長をしていたのようで、なかなか蔵の仕事に手が回らなかったようです。息子の小森健一郎が2001年に東京農大の醸造学部を卒業後、奈良県の梅乃宿酒造で1年半修行して、2002年に蔵に戻ってきて鶴田杜氏のもとで酒造りをしていましたが、父の町長の仕事が忙しくなったことから、蔵を閉めようという話が持ち上がった時に、長女の綾子(りょうこ)さんが、店の販売を担当することになったようです。 

綾子(りょうこ)さんは結婚されて20年くらい専業主婦をしていたのですが、100年近く続けてきた蔵を閉めるのは忍びないと思い、弟と手を組んで蔵の仕事を始めたのが2013年で、もう5年になりますが、すっかり板についている感じですね。健一郎さんは2015年から杜氏兼専務取締役として、綾子さんは営業販売部長として活躍されています。 

写真の方が綾子さんです。蔵の生産量は350石と小さいので、なかなか東京の酒屋さんでは買えるところが少ないようですが、数少ない酒屋の中になだやが選ばれるなんて、渡部さんは先見の目があるなと思ったんですが、色々聞いてみると渡部さんは奇麗な綾子さんに惹かれて食いついたようで、下心満杯の渡部さんでした。

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この会が始まった経緯は渡部さんが小岩のあるピザ屋でここのピザおいしいねと店長に行ったら、柴又のピザ屋にはとてもかなわないと教えてくれたので、渡部さんがここにきて店長と仲良くなったのが始まりですが、この会が鶴見さんが柴又の店でピッツアを食べながらの日本酒の会をやりたいと渡部さんに声をかけたのがきっかけで、今回が第1回目だそうです。 

<基峰鶴のお酒の紹介>

ですからお酒はすべて渡部さんが料理に合わせて用意したのですが、基峰鶴はたった4種類で他に8種類のお酒を飲む会になったのですが、僕の目的が基峰鶴のお酒なので、それだけを紹介することにしました。 

1.基峰鶴 純米大吟醸 きたしずく 生 

Dsc_0753きたしずくは北海道で2013年に開発された酒造好適米で、親に雄町とほしのゆめの交配種であるF1と吟風を掛け合わせてて造ったお米で、吟風より酒質は落ちるが蛋白質が少ないので、雑味が少ないけど耐寒冷が強く育てやすいお米のようです。 

このきたしずく40%精米した純米大吟醸の生酒です。飲んでみるとしっかりした味とは言えないけど、奇麗な味わいが広がり、余韻も残るバランスのいいお酒でした 

この蔵の酵母は9号系がベースですが、純米吟醸以上はM310を入れて、香りを出すようにしているようです。このお酒なら首都圏でもOKだなと思いました。 

2.基峰鶴 純米吟醸 山田錦 生 

Dsc_0755この蔵では25年くらい前から地元産の山田錦を使いたいと、基山町の農家に依頼して契約栽培をしています。この山田錦を50%精米した純米吟醸です。 

飲んでみると、さすが山田錦ですね、うま味とふくらみを感じるおさけでした。香りはきたしずくの方が強く感じたけど、酸はこちらの方が少し多いような気がしました。お米によって味わいの出方が違うので、それに合わせた酸のバランスを取っているものと思われます。 

2017年からフランスの地で、フランス人によるフランス人のための日本酒の会が開かれましたが、そこでプラチナ賞に選ばれたお酒だそうです。 

3.基峰鶴 純米吟醸 レイホウ 生 

Dsc_0759レイホウは昭和44年に安定して数量が取れる飯米として開発され、昭和40年代には九州全体に普及しましたが、食味と耐病性に劣ることから徐々に減少し、最近は酒造用に栽培されてきたようですが、後で開発された夢一献に圧され気味とのことです。 

この蔵ではレイホウとの相性が良いので、昔からつかってきたようですが、飲んでみるとそこそこおいしいお酒でした。華やかではないけど、癖のない飲みやすいお酒で、普段呑みには良いのかもしれないと思いました。 

レイホウは飯米なので50%磨くことは少ないですが、50%精米の純米吟醸を出しているのは蔵の実力かもしれはないと思いました。 

4.基峰鶴 純米吟醸 雄町 生

Dsc_0761このお酒は55%精米の雄町の純米吟醸です。雄町と言えば山田錦の親にあたる古い生まれの米だけど、雄町ストと言われる人が大勢いるほど有名な酒造好適米です。雄町は造り手により、色々な味わいを出せるお米と言われているので、どんな味わいか興味がありました。 

飲んでみると上記の3つの酒とはバランスが違い、旨が口に含んだ時にすぐ立ち上がるのではなく、少し後ろに来るのでアミノ酸が多いのかなと思っていたら、これは蔵で1年熟成したお酒なのが判りました。それならこのバランスになったのは理解できます。

杜氏の弟さんが造りたてのお酒が奇麗すぎたので熟成させたそうですが、生なので熟成が少し進み過ぎたのかもしれません。特に温度が上がると重たく感じました。 

雄町は難しいけどやりがいのあるお酒なので、これからもチャレンジしてください。僭越ですが、雄町の酒としては茨城県の結城酒造の結を是非飲んでみてください。絶対に参考になると思います。 

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、この蔵のお酒は派手さはないけど柔らかさを持ったバランスの良いお酒を目指していることはわかりましたが、もう一つきらりの光るものがほしい気がしました。。よろしくお願いします。 

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栃木県の有名どころのお酒の動向を調べてみました

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栃木県酒造組合が主催する次世代栃木の酒の会は今年は大崎駅の近くにある大崎ブライトコアで行われました。酒販店・飲食店向けの第一部と一般のお客様向けの第2部とに分かれていましたが、日本酒ブロガーとして取材するには2部は人が多すぎて難しいと思い、栃木県の酒造組合に1部に参加してよいかを問いあわせたところ、参加しても良いとの許可を受けましたので、参加してきました。 

この会の第1回目は2003年のようですので、今回は16回目となります。僕が初めて参加したのは王子駅の北とぴで行われた2009年の時で、図々しく一部に参加してブログに書いた記憶があります。その後開催場所が北千住に移ってからは一般の部で参加しましたが、混雑していたため、とても取材にはなりませんでした。その後、北千住では1部の後半にネット関係発信者の時間を1時間も受けていただいたことを知り、2014年と2015年と連続してこの時間帯に参加し、ブログに書きました。その時のブログのURLを下記に書いておきます。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-71c9.html 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-7a5f.html 

2009年の時から取材した蔵は22蔵(十一正宗、惣誉、朝日栄、澤姫、姿、開華、松の寿、旭興、雄東正宗、池錦、若駒、北冠、とちあかね、門外不出、望、柏盛、大那、忠愛、日光誉、菊、鳳凰美田、四季桜)にもなりましたし、東力士と天鷹は蔵を訪問したことがあり、別途ブログに取り上げていますので、すでに栃木県の蔵は殆どの蔵を取り上げてきたことになります。 

今年は3年ぶりの参加で、何を取り上げようか迷いましたが、栃木の酒と言えば「下野杜氏」を外して語ることはできません。下野杜氏の制度が発足したのは2006年で、すでに12年がたって、今では下野杜氏は当たりまえの世界となり、すでに27人ほどの資格者がおられるようです。初めてこの会に参加した時は栃木の酒は華やかで何か垢抜けしたお酒を目指しているなという雰囲気を強く感じたことが思い出されます。今あらためて下野杜氏が醸し出す酒は今どこを目指しているのかを勉強してみようと思い、有名どころのお酒を飲んで、蔵元のご意見を聞くことができましたので、それをご紹介したいと思います。どの蔵を取り上げるかは、たまたま蔵元さんとお話ができた所の中から取り上げたものですので、偏ってしまったかもしれませんが、お許しください。 

1.澤姫 井上清吉商店 

この蔵は宇都宮の少し北にある白沢町にある蔵で、この町は水の町と言われたほど水路が町中にあるところで、ここに明治元年に創業したそうです。白沢の澤の字と地域に愛されたいという気持ちから姫という名を取って澤姫という銘柄にしたそうです。 

この蔵の生産量は約400石強とまだまだ小さな蔵ですが。この蔵を今の形にしたのは現社長の井上裕史さんです。裕史さんはこの蔵に生まれ、東京農大の醸造学部を卒業後蔵に戻って、蔵におられた杜氏の下で、酒造りを勉強しましたが、その方が急病のため引退したために25才で杜氏の代理を務めることになります。その後岩手県外出身者としては当時最年少の29歳の若さで南部杜氏資格試験に合格して、正式に澤姫の杜氏に就任しました。 

僕がお気に入りの大吟醸澤姫を持ってもらいましたが、僕が1升瓶を持つと4合瓶に見えますよと笑っていました。佐志賀にそんなことはないですね。 

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栃木県は従来から南部杜氏と越後杜氏の2つの流派の杜氏が酒造りをしていて、杜氏の後継者不足の問題が起こりはじめていたので、若手を中心に蔵の垣根を越えて技術交流ができる環境を造ろうという動きが立ち上がりましたが、その中心になった一人が裕史さんだったのです。この若手のグループを中心とした栃木県酒造組合が栃木県産業技術センターの協力もと栃木県独自の杜氏組合ができることになります。 

下野杜氏組合がすぐできたかどうかは不明ですが、2001年には下野杜氏の育成のために酒造技術者養成講座がスタートし、最初の下野杜氏が生まれたのが2006年のことです。その1期生には「澤姫」井上裕史さん、「松の寿」の松井宣貴さん、「とちあかね」の伊藤和義さんがおられます。現在では27人ほど資格を持った人がおられるようで、全国の杜氏組合として認知されているようです。 

下野杜氏はハイブリッドな杜氏なので、色々なタイプの酒造りをしているようです。その中で裕史さんは「真・地酒宣言」をして栃木県産のお米しか使わないことを進め、独自の道を切り開いておられます。特に生酛・山廃など昔からの伝統ある造りにはこだわりを持ち、伝統ある味の特性を生かしたお酒のみならず。新しいタイプのお酒にもチャレンジしています。現在は44才の蔵元社長ですが、平成25年に社長となった時に、蔵で育った南部杜氏兼下野杜氏の佐藤全さんに杜氏を譲っておられます。現在どのようなお酒を造っているか楽しみですね。 

ここで試飲したお酒の写真を見ていただきます。 

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僕が気に入ったのは澤姫の大吟醸と純米大吟醸でした。大吟醸はひとごこち40%精米で、純米大吟醸は五百万石40%精米で、酵母はどちらの栃木酵母TF(カプ系)と他のとちぎ系のブレンドだそうです。でもこの2本は造りがだいぶ違っていて、大吟醸は酸を抑え気味で日本酒度を+5ぐらいで、米の旨みを出しながら切れを求めたと酒に対して、純米大吟醸は日本酒度を±0と甘めにして酸をちょっと高めで切れを出していながらアルコール度を少し下げてさわやかさを出したお酒でした。きっとこちらの方が女性向なのではと思いました。僕は大吟醸の柔らかいふくらみが気に入りました。 

生酛は意外にやさしい味わいで、山廃は酸が少し強く出ていて香りもちょっと特徴があったので、僕は生酛の方が好みでした。井上さん自身がどんなお酒を目指しているのかをお聞きしたら、どのお酒も後味の切れを出すようにしていますが、特にプレミアムの純米吟醸を1年寝かしたお酒がお気にいりだそうです。今回は新酒しか持ってきていてなかったので飲めませんでしたが、日本酒度が+5くらいあって、ちょっと酸を出しているので、熟成に向いていると思われます。1年熟成させると驚くほど変わるそうで、これは是非飲んでみたいお酒だと思いました。 

僕の印象では下野杜氏らしい旨みと切れのバランスの良さと伝統あるお酒造りの良さを組み合わせを追及しているように思えました。

2.杉並木 飯沼銘醸 

この蔵は栃木市に1811年から創業した歴史ある蔵です。創業者は新潟県長岡市から出稼ぎにきた飯沼岩次郎さんが見込まれて当主となったようで、現在は飯沼徹典さんが8代目の当主をされています。 

当初の銘柄は「秋錦」だったようですが、良く売れたのでかなりの量をを造っていたようでしたが、6代目の時に新しく「富貴」というお酒をだし、7代目の時に「杉並木」という酒を造り始めました。杉並木は端麗辛口の酒で、地元には人気の酒として定着したようです。その後現在の8代目の徹典さんが2002年に首都圏向けの限定流通ブランドとして「姿」をだしました。このお酒は味わいのある濃醇なタープのお酒で、ほとんどが生酒として販売されているようです。現在の生産量は約500石で、杉並木が6割。姿が4割ぐらいだそうです。 

僕が姿を知ったのは約10年くらい前で、たつなみ酒店(現在のうえも酒店の前身)で知るようになり、味わいのしっかりした酒だった印象です。その後、2010年に池袋の酒菜屋で姿を囲む会があり、そこで初めて徹典さんにお会いしています。その時のことは下記のブログに書いていますので、興味があったらご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-21fc.html 

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この方が飯沼徹典さんです。たぶん徹典さんがこの蔵の製造責任者兼社長だと思いますが、どこで修行されて今に至っているかどうかはわかりませんが、長年越後杜氏を招いて酒造りをしてきたので、ここで勉強し、技術を伝承してきたものと思われます。ですからいわゆる下野杜氏とは一線を画すのかもしれません 

この会ではすべて「姿」を出品していました。姿が使用している原料米は山田錦、雄町、北しずく、ひとごこち、吟風ですが、全て600kg仕込みの少量生産の造りで、基本は無濾過生原酒です。吟風だけが火入れのお酒でした。 

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全種類飲んでみましたが、全て共通の味わいのバランスを感じました。日本酒度が±0前後、酸度が1.6~1.8ぐらいで、生原酒の旨みを出しながら酸で後味を切っていく造りでしたが、お米によって旨みの出方がちがっているようです 

北海道のお米である北しずくと吟風を使っているお酒は2種類出ていましたが、それは飯沼社長が北海道の大学出身で、仲良くしている居酒屋のおやじさんから北海道のお米を使ってくれないかということで、北しずくを使うことにしたそうです。初めて使ったのが約6年前で、本州では一番早く使った蔵の一つですが、今では結や福祝でも使うようになっています。奇麗な味わいが出るお米ですが、姿に使うと結構味が出るので、とても相性が良いのかもしれません。 

酵母はほとんど協会酵母1801を使っているようですが、それほど香りは強く出していません。栃木酵母のT-ND(ニューデルタ)はイソアミル系の香の酵母ですが、今年からT-ND3となって酸の生産を少なくなったので、雄町と吟風に使ったようです。18系の雄町はドンと味が出るお酒だったのに対して、T-ND3を使った雄町はさわやかな香りと味わいにとなり雄町らしい余韻を感じるお酒になっていました。雄町はイソアミル系が似合っているかもしれませんね。 

吟風は姿では珍しい火入れのお酒でしたが、それは呑みやすい夏酒を目指したからのようです。酵母も1801とT-ND3のブレンドだそうで、結構いいバランスのお酒だと思いました。 

3.桜川 辻善兵衛商店 

この蔵は栃木県の南東部の真岡市にあり、近江商人である辻善兵衛さんがこの地に創業して、すでに260年の歴史があるそうです。その後の蔵の歩みのことはよくわかりませんが、大きく変わったのは現在の蔵元杜氏(16代目)である辻寛之さんが蔵に戻ってからのようです。下の写真が辻寛之さんです。 

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この蔵は元々南部杜氏がおられたようで、寛之さんは高校を卒業後、茨城県の「武勇」で2年間修業されて20年前の21歳の時に蔵に戻っています。その後、蔵の南部杜氏が体調を崩して、22才の時には製造責任者となっていますが、翌年の関東甲信越国税局酒類鑑評会で大吟醸桜川が金賞を受賞するほど、才能のある方なのでしょう。下野杜氏についても取得の努力をされて、2007年に第2期生として下野杜氏になられ、蔵を引っ張ってこられましたが、2年前に社長に就任しています。生産高は400石位だそうです。 

僕が初めて寛之さんとお会いしたのは、前述した姿を囲む会が開かれた時に、寛之さんが突然現れて(勿論計算済みの演出)お会いした2010年のことです。それから辻善兵衛をウオッチしてきましたが、2012年に開かれた第4回雄町サミットで優秀賞に選ばれて以来、ずっと連続して優秀賞を取ってきたのに、ここ2年は入賞できなくなってちょっと寂しい思いでした。ですからこの日が楽しみだったのです。 

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あれ、雄町がない!どうしたのかな。うっかりその理由を聞くのを忘れてしまいました。ちょっと順番に整理してみますと、下記のようになります。 

1.櫻川 大吟醸斗瓶囲い 山田錦40%精米 酵母M310

2.辻善兵衛 純米大吟醸 山田錦50%精米 酵母熊本9号+1801 

3.辻善兵衛 純米大吟醸 愛山50%精米 酵母熊本9号+1801 

4.辻善兵衛 純米吟醸 五百万石53%精米 酵母協会1401+栃木T-1 

5.辻善兵衛 純米吟醸辻風 夢錦50%精米 協会酵母1401+栃木T-1 

6.辻善善兵衛 生酛純米 夢錦58%精米 酵母熊本9号酵母 

写真にはないけどこのほかにプレミアム普通酒 PREMIUM S がありました。プレミアム普通酒は普通酒の概念を変える吟醸造りのような丁寧な造りをした普通酒のようで、日本酒の本当の良さを気楽に楽しんでもらうためのお酒だそうです。2015年の夏に初めて出したそうですが、これはおいしいと評判なったそうです。その後も少しずつ改良を重ねているそうですので、飲んだことのない人は是非呑んでみてください。酵母は7号酵母、原料米は朝日の夢でした。 

今年の大吟醸はM310らしい香りのある奇麗なお酒でしたが、日本酒度を+5と辛めに仕上げていて、酸も抑え気味で気味でしたのでまだ若い感じがしました。ちょっと寝かせて熟成させてから飲みたかったです。純米大吟醸は愛山も山田錦も1801酵母に熊本酵母をブレンドして香りと甘さを抑え気味にして、生酒でちょうど良いバランスにさせたようです。 

純米吟醸は五百万石も夢錦も14号酵母と栃木酵母T-1で、五百万石は大人の落ち着きがあり、夢錦の辻風は香りもさわやかで、すっきり仕上がっていたので夏酒として良いように思えました。夢錦は兵庫県が開発した酒造好適米で、母方に山田錦の流れをくんだお米、父方に兵系23号を使って交配して造ったぽ米で、兵庫の酒米3錦の一つに上げられているお米で、溶けやすく使いやすいお米だそうです。

全体的には昔のパワフルさを抑えた少し大人のお酒に変化しつつある感じがしましたが、雄町はどうなっているのでしょうか?。どうして持ってこなかったのかな。また姿らしい雄町の酒を造っていただきたいな。 

4.惣誉 惣誉酒造 

この蔵は栃木県の市貝町にありますが、創業は明治5年ですからそれほど古い蔵ではありませんが、もともと滋賀県で酒造りをしていた蔵が栃木県に出てきたのが始まりのようです。現在は5代目の河野遵さんが社長をされています。 

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河野遵さんは1961年生まれで、東京大学経済学部を卒業された後、松下政経塾の第6期生など色々を経験を積んだ後、1989年に28才で蔵に戻ります。酒造りの経験はなかったはずですから、岩手県から来ていた南部杜氏に指導を受けて、経験を積んでこられ、1995年に44才で代表取締役社長になられました。 

社長になってすぐやられたのは生酛造りの復活でした。生酛造りは江戸時代に酒母を造る方法として確立された技法ですが、明治時代に開発された速醸法に比較して手間と時間がかかるので、次第にすたれてきていましたが、うまく作ると速醸法よりコクがあって、きりりとした酸が上手くバランスしてくれる味わいのあるお酒になるということで、最近かなり見直されてきている技法です。この技法をいち早く取り入れたのは目の付け所が良い方だと思います。 

東大蔵元会がどのようにして生まれたかはよくわかりませんが、東大卒業生の酒造経営者が中心に集まる会で、2013年に発足したようで、河野さんはその一人です。そして秋のホームカミングデイで東大正門前の銀杏並木にテントを出して、東大蔵元会の醸する日本酒を試飲する会が2016年から開催されるようになりました。その時の様子は僕がブログに書きましたのでご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-e423.html 

更にそれを切っ掛けに東大ボート部のOBが東大応援旗の淡青をイメージしたお酒を造ろうと惣誉酒造に製造の依頼があり、去年それが完成しホームカミングデイで公開されました。それについても僕が書いたブログがありますので、見てください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-6890.html 

このように最近になっていろいろなことを発信されていますが、2011年の東日本大震災で蔵の建物が被害を受けたのをきっかけに、事務所とゲストハウスの改築を奥様の出身である東大建築学科の大野名誉教授にお願いして造ったそうで、写真を見るととても素敵な建物のようなので覗いてみたくなりました。その写真をホームページからお借りしました。随分幻想的なお部屋ですね。 

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次に今回飲んだお酒をご紹介しましょう。東大の淡青は生酛仕込みの特別純米と純米大吟醸でしたが、どちらも3種類の酵母の醪から搾ったお酒の粘度の違うものをブレンドして造ったお酒ですが、このお酒と同じコンセプトでですが、生酛仕込みではなく速醸仕込みのお酒を今回飲むことができました。 

Dsc00522この写真のお酒は辛口特別純米です。兵庫県の特A地区の山田錦60%精米の速醸法で作った特別純米で、ラベルにはアルコール度数15%としか書いてありませんが、実はこのお酒は協会7号酵母、協会9号酵母、協会14号酵母のお酒をブレンドした火入れのお酒だそうです。 

ブレンドは杜氏がやるのですかとお聞きしたら、ブレンドは結局は好みのの問題となるので、経営者自らの責任でやるのが良いので、自分でやりましたとのお答えでした。 

飲んでみると当たりが柔らかくとげがなくすうと飲める、しみじみおいしいお酒に仕上がっていました。今流行りのお酒とはちょっと違うタイプのお酒でした。 

他にも試飲させていただきましたが、その詳細は省略させていただきますが、この蔵は今まで紹介したお蔵とは方向性の番う少し大人のお酒を目指しているように思えて、そのためには手のかかることでもやってしまうという執念を感じました。 

結局生酛仕込みでも、速醸仕込みでも3種類ブレンドのお酒を出しているようですが、ラベルには表示されていませんので、そのことはわかりませんんね。でも生酛仕込みかどうかは惣誉の文字でわかりますので、参考にしてください。また、熟成したお酒をブレンドするということは、熟成の期間ががいること、ブレンドすると必ず余るお酒がでるはずですから、蔵に余裕がなければできない技だと思います。 

生酛仕込み           速醸仕込み 

Psouhomarekimototokujyun1_8Psouhomaretokujyun1_85.松の寿 松井酒造店 

この蔵は塩谷町にあちますが、この地は日光北街道に面しているところで良質な湧水が出るので、創始者の松井九郎治さんが新潟県から移り住んで1865年に酒造りを始めたそうです。蔵の裏手には松林があったことから縁起の良い寿という字を添えて松の寿という酒名を付けたそうです。でもこの地は人口が少なく酒の売り先には恵まれないことから大手の桶売りもしていたことがあったようです。創業時は松井九郎治商店と呼んでいましたが、昭和28年に現在の松井酒造店と変更しています。 

この蔵を変えたのが5代目の当主の松井宣貴さんです。宣貴さんは長男として生まれ、後を継ぐために東京農大の醸造学部に進学後、卒業後は群馬県の酒造会社で4年半修行をしてから1994年、26才で蔵に戻ってきます。蔵に戻った時は越後杜氏がおられましたが、1997年に急遽やめてしまったので、宣貴さんが1998年から実質杜氏の仕事をすることになります。 

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その後残っていた職人と一緒に試行錯誤をしながら酒を造り始めましたが、2001年には全国新酒鑑評会で初めて金賞を取ることができ、その後も定期的に金賞を取るまでに至っています。そして下野杜氏の発足にはいろいろと貢献し、見事2006年に下野杜氏1期生として認定されています。その後は全国新酒鑑評会では金賞にはあまり恵まれなかったけれども、IWCでゴールドメダルを取るなどの実績を残しています。 

次に飲んだお酒の紹介をいたしますが、どういうわけか写真を撮るのを忘れていますので、文字だけの紹介となります。今回展示されたお酒は純米吟醸(山田錦、雄町、ひとごこち)と純米酒(美山錦、ひとごこち、とちぎ酒14)と山廃純米(五百万石)でした。 

一通り飲んで感じたことは初めて松の寿のお酒を飲んだ時は香りが立って、ちょっと甘いけど奇麗な酸で切ってくれるようなお酒だと思っていましたが、今回は基本は同じなんですが香りは抑え気味にしてきている分だけ、ちょっと特徴が薄くなっている気がしました。 

そこで松井さんにこれからどんなお酒を造ろうとしているのかをお聞きしたら、今までは18系や9号系のブレンドが中心にしてきたけど、この蔵の仕込み水の良さを出したお酒にするために香りをカプ系からイソ系に変える努力をして、6号系も14号系も使ってきましたが、まだ自分が狙っている酒にはなっていないそうです。例えば特別純米美山錦生酒は28BYは自社の9号酵母をつかっていましたが、29BYが6号酵母と9号酵母のブレンドで造ったそうです。来年以降は14号系は酸が出やすいので金沢酵母を使ってみたいとおっしゃっていました。 

松井さんは18号系である完成度の高いお酒を造ることには成功したのでしょうが、現在は酵母を変えながら蔵の仕込み水に適した酒を模索していることがよくわかりいました。来年以降の新しい試みに大いに期待したいと思っています。松井さんの凄いのは毎年使用している酵母はラベルには書いてありませんが、販売店には明示していることですね。これはぜひ続けてもらいたいですね。 

6.仙禽 せんきん 

せんきん㈱は東北本線の氏家駅の近くのさくら市にありますが、創業は1806年だそうですから212年もたっている老舗の蔵です。創業時の蔵の名前は仙禽酒造で、仙禽とは仙人に使える鶴のイメージを表すそうです。素敵な名前ですね。先代の社長の薄井篤さんはアイデアマンで、大谷石の地下貯蔵を仕込み蔵や貯蔵蔵にしたり、いち早く杜氏制度をやめるなど画期的なことを行い、普通酒の仙禽を中心に販売を広げ、一時は3000石位になったそうですが、バブルがはじけて急激に経営が苦しくなったそうです。 

息子の薄井一樹さんは11代目に当たりますが、蔵の経営にはあまり関心がなく、大学の経済学部に進むものの本気になれず大学を中退し、当時注目を浴びていたワインソムリエの田崎信也が主宰する日本ソムリエスクールに入学して、ソムリエの資格を取ります。その後同校の講師として勤めることになるのですが、22才の時に実家のお酒の仙禽を先輩と飲んだ時にその酒の評判が悪く、福島の「飛露喜」を飲まされてそのお酒との違いを痛感することになります。このことをきっかけに実家に戻って後を継ぐことを決意するのです。 

一樹さんとはこの会でお会いできなかったので、6年前に神田の醇でお会いした時の写真を使いました。 

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2004年経営再建のために24歳で実家に戻って帳簿を調べてみると、素人の自分が見ても危ないのがわかる状態だったようです。とにかく今までの仙禽の悪いイメージを払拭する必要があり、そのためには、ただ美味しくするだけではなく、飲み手をあっと驚かせるようなインパクトのある味にしようと思ったようです。彼の結論は甘酸っぱいお酒を目指します。その頃は端麗辛口の時代でしたので、甘いお酒は売れないと言われていましたが、ソムリエの彼はワインの経験から色々なお料理に合わせるには甘酸っぱいお酒がベストだと確信していたようです 

一樹さんがこんな酒にしたいという設計図を書いて、昔から蔵人として頑張っていた小林さんや2006年に蔵に戻ってきた弟の真人さんと協力して新しお酒を完成させたのが2007年のことです。凄いのは再建の方法でした。2008年にこのお酒を売る新会社の「せんきん」を立ち上げて、営業権と醸造設備を新会社に売却して古い会社を畳んでしまいます。ですから10代目の父は経営からはずれ、新しい人が社長となり、一樹さんは専務取締役となり、正人さんは常務取締役になります。 

生産量は最盛期の10分の1(300石)からスタートすることになりますが、こんなお酒は売れるはずはないとと思っている人も多かったと思いますが、いざ市場に出してみたところ若い女性に大ヒットし一気に人気ブランドに駆け上がることになります。 

僕が初めて一樹さんにお会いしたのは2012年ですが、すでに生産高は500石となっていました。その頃は現在せんきんが主張しているドヌーブという概念がまだ公にはなっていませんでしたが、その形が見え始めていた気がします。ドヌーブとはワイン業界でブドウ栽培から醸造までを通して行う生産者のことを言うそうですが、せんきんは蔵で扱う原料米を全て仕込み水の地下水と同じ水脈の田圃で栽培することを2014年に宣言しています。扱っているお米は山田錦、雄町、ひとごこち、亀の尾の4種類ですが、それにより愛山や特Aの山田錦はは使わないことになるので、お酒造りにどのような強みになっているのか僕にはわかりませんが、蔵のイメージアップには役立っているのは確かです。 

一樹さんは他にも次々と新しい企画を打ち出しています。せんきんのお酒のシリーズを、モダン、クラシック、ナチュール、ドルチェ、季節限定の5種類としてわかり易くしています。 

下の写真はせんきんの常務取締役で製造責任者の薄井正人さんです。甘酸っぱいお酒のキーは何といっても酸だと思います。この奇麗な酸を出すにはいろいろ大変で苦労して出したそうです。 

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更に昨年からせんきんとは違うシリーズのお酒「羽水(うすい)」を出しています。最近のせんきんは一部の流通でしか買えないお酒となっており、従来の仙禽を扱っていた日本名門酒会の加盟店ではせんきんではなく霧降という銘柄を扱っていました。これをやめて、またせんきんの制約となっている米の調達も一切こだわらないお酒を出すことになり、このお酒のコンセプトは製造責任者の正人さんにすべて任されたようです。羽水がこれからどのように変化していくかは楽しみです。特に今年の夏に出す羽水はお幅に造りを変えたとのことでしたので、期待して飲んでみてください。 

正人さんのお話では今年の生産高は2000石くらい行くかもしれないというほど、生産量が拡大していますが、味がどうなのかこの会で試飲してみました。 

出品されていたお酒は仙禽一聲、モダン無垢、クラシック雄町、仙禽ナチュールの4種類でした。 

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僕が気にったのは仙禽一聲と雄町でした。一聲は山田錦35%精米のプレミアムモデルで鶴の一声という意味だそうです。うまみと酸とのバランスが良くきれいでいてしっかり味が楽しめるお酒に仕上がっていました。酵母はカプ系ではない栃木酵母だそうです。 

雄町はさわやかなイソアミル系の香で雄町らしい余韻が楽しめるお酒でした。正人さんの話では雄町は溶けやすいお米なので、うまく作ると奇麗なな余韻を楽しめるお酒になるそうです。 

モダン無垢は仙禽らしい甘酸っぱいお酒で、ナチュールは亀の尾90%精米の生酛ですが、とても90%とは思えない奇麗さと味が出ていましたので、お聞きしたら1年j熟成させているそうです。 

今回飲んで感じたことは全体に奇麗さが出ており、生産高の増量にもかかわらず味の低下は見られませんでした。そのことをお聞きしたら、蔵の清潔さには十分心がけているのと1タンクの造りを600kg~1500kgに抑えているからではないかとおっしゃっていました。ますます、これからが楽しみですね。誰もが90点が取れるようなレシピで酒を造っているといずれお客に飽きられてしまうので、一味違うお酒造りをしようという姿を強く感じました。 

7.東力士 島崎酒造 

この蔵は現在は那須烏山にありますが、創業は1849年で今の地より少し南の茂木町で島崎彦兵衛さんが酒造業を始めます。その後2代目の熊吉が烏山にある老舗の蔵を譲り受けでここに居を構えます。この熊吉さんが無類の相撲好きだったことから酒名を「東力士」と名づけたようです。 

そして4代目の1971年(昭和46年)の時に社名を株式会社島崎酒造に改名し、現在に至っています。島崎酒造は熟成酒、特に大吟醸のビンテージの蔵として有名ですが、この長期熟成酒製造を始めたのは1970年ですから今から48年も前のことだったのです。まさに時代に先駆けてのチャレンジだと思いますが、これを引っ張たのは5代目の当主の島崎利雄さんだったようです。当初は地下貯蔵庫で5℃の低温で熟成をすることをしていたのですが、国が戦車を造る工場として昭和20年に造ったものの利用されずに終わった洞窟を1999年に買い取って、低温長期熟成の道を本格的に走ることになります。 

この洞窟貯蔵庫は年間平均温度が10℃ですが、夏場冬場で±5℃くらい変化するので、熟成には向いた貯蔵庫のようです。広さも総延長600mもあるので最大で1升瓶を20万本も貯蔵できる能力を持っているそうです。この熟成酒のお酒のスペックについては昔から疑問を持っていたことがありましたので、現社長の島崎建一さんに聞いてみました。また、最近造られているのお酒についてもコメントしたいと思います。 

下の写真お方が島崎健一さんです。建一さんは1969年生まれで、東京農大醸造学部を卒業された後、新潟の蔵で修業された後現在に至っていますが、一番力を入れたのが杜氏の育成です。この蔵は長きにわたり新潟県の越後杜氏に造りをお願いしてきましたが、30年以上前から地元の人材育成に努め、10年ほど前から完全に地元社員だけで作ろができるようになっているそうです。建一さんは2012年に代表取締役となり、蔵の生産高は現在約1500石だそうです。 

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成酒について酒質と熟成度についてお聞きしましたら、お酒の中の糖度とアミノ酸が多いと熟成スピードが上がると教えていただきました。酸度についてはどうですかとお聞きしたら明確な関係はわからないそうです。確かにそれは間違いないことだと思います。理論的にはアルコール自身は変化をしにくい成分なので、そこに入っている成分の多いものと言えば糖とアミノ酸ですから理屈に合います。それをどのように変化させるかは、まさに管理方法にかかわるわけですが、この世界は日本では歴史の浅いので、ワイン用には実績がないので、まだまだ分からないことが多い世界と言いったほうが良いと思います。

東力士の酒と言えば、昔は甘口の酒だと思っていましたが、10年ほど前から違ったお酒も出すようなったようです。それを今年から社長のアイデアでで新しいお酒へとリニューアルしたそうです。見てみましょう 

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その代表的なお酒がこの3本です。左から紹介しましょう。 

1.東力士 純吟 直汲み 無濾過生原酒 愛山55%  

2.東力士 純吟生原酒 極雫 うららか 五百万石、とちぎ酒14号60% 

3.東力士 純吟生原酒 極雫 澄艶 山田錦55% 

この3種類のお酒は極雫シリーズで、10年ほど前から販売を開始し、少しずつ種類を増やしてきているそうですが、昨年までは「杜氏入魂袋吊り、極一滴雫酒」でしたが、名前が長すぎるという理由で「極雫」となり、デザインもこの写真のように一新したそうです。 

愛山ととちぎ14号は酵母がM310と小川酵母のブレンドで、山田錦は小川酵母でした。ですから山田錦の方はイソアミル系の爽やかな香りに対して、他はカプロン酸の香りを強く感じました。でもどのお酒もフレッシュ感があり、優しいうまみを感じるお酒で、今までの東力士とは世界が違うお酒でした。社長にはお聞きしませんでしたら、これからどのお酒をメメインとしていくのでしょうか、見守っていきたいと思いました。 

以上で栃木県のお酒を一通りチェックしてみましたが、一時の下野杜氏のブームは落ち着いてきており、各蔵とも独自のお酒造りを追及しようとしていることが判りました。今や全国の若手の蔵元がいろいろ立ち上がってきている時代になっている中、その中で早くから変革をしてきた栃木の酒がこれからも引っ張て行くようになってもらいたいと思っております。そのためには、また新しい企画が必要なのかもしれません江。

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