先日五反田のお祭り本舗で60回目の蔵元を囲む会が開かれましたので、参加しました。このお店にはJOYOFSAKE の後の2次会等たまにふらりと出向いたりしていたのですが、蔵元を囲む会には初めての参加です。今回は高知県の赤岡町にある豊の梅の高木酒造の高木直之さんをお呼びしての会でした。高木さんとは去年土佐のうまいものと地酒祭りの会でお会いしているのですが、久しぶりにお会いできるので、楽しみにして出かけてきました。
このお店は今更皆さんにご紹介するお店ではなく、酒通の人はよく知られているお店です。でも知らない人のためにホームページを添付しようと思ったのですが、このサイトのホームページは去年から更新されていなくて、あまり役に立ちそうもなかったので、色々調べてみたら、下記のようなサイトが見つかりました。ここから、イベントやブログやFACEBOOKに飛べます。
http://omatsurihonpo.jimdo.com/
この日は会の途中で思い立って入り口の写真を撮りに行ったのですが、酔っていたせいかぶれまくり。仕方がなくお祭り本舗のHPの写真を拝借しました。
五反田の駅を出て桜田通りを目黒川のほうに歩いて橋を渡ってすぐ左に曲がれは、写真のように賑やかなお店でが出てきます。
お店の中には色々なものが貼り付けられていて、賑やかな雰囲気です。左のカウンタの中が調理場で、今赤い法被を着ている方が店長で板前の荻野哲夫さんです。釣りが大好きで、色々なところに魚拓が張ってあります。ちょっと店長をアップしてみますね。
今ちょうどお刺身を造っているところでした。店を見渡しても蔵元の人はいないし、蔵元の会はどこで行われるのかなと思ったら、お店の奥に20人強の人が座れる部屋があり、そこが会場でした。荻野さんのお話では、蔵元の人と直接お話ができる人数でやりたいということで、20人ぐらいが適当と思っているそうで、今後も人は増やさないでやるそうです。それは良いことですね・・・・・・
では早速蔵元を囲む会の様子をご紹介しましょう。
この方が高木酒造の5代目の社長兼杜氏の高木直之さんです。現在50歳だそうですが、杜氏になったのは8年前の18BYの造りからだそうです。直之さんは広島大学を出られて、バイオテクノロジの会社で微生物関係のお仕事を10年ほどされて、蔵に戻ったのですが、蔵にお戻った時は酒造りは全く知らなかったとのことです。蔵に戻ったのは平成7年ではないかと思われます。
蔵には高知県最後の土佐杜氏といわれる有沢国一さんがおられました。有沢さんは昭和7年の生まれで、高知酒造や土佐鶴酒造を経て、平成5年に高木酒造に来られたそうです。その時すでに61歳だったようです。きっと4代目のお父さんは有沢さんがお元気なうちに直之さんに蔵に戻ってもらい、豊の梅の酒造りを継いでもらいたかったのでしょうね。直之さんは蔵に戻る前に高知県の他の蔵で1年修業をしたそうですが、後は有沢さんを支えながら勉強してきたそうで、平成18年に有沢さんが80歳で引退をして、直之さんが杜氏になられたそうです。
高木酒造は高知県香南市赤岡町にある生産量はまだ350石の小さな蔵ですが、この蔵を説明するには赤岡町を紹介する必要があります。この町は高知市から東へ約20kmに位置して、合併して大きくなる前は日本一小さな町として名を売ったことがあります。海から見るとこの一帯が赤く盛り上がった岡のように見えたことから赤岡という名がついたそうです。昔から交易の中心の町として賑わっていたそうで、今でも色々なイベントか行われています。
その一つは毎年4月高岡町の浜辺で行われる「どろめ祭り」があります。どろめとはかたくちイワシやまいわしの稚魚のことです。どろめ祭りとはその日に地引網で取れたばかりのどろめを肴に大杯飲み干しす競技大会を言います。男性が1升、女性は5合のお酒を大きな盃で一気に飲み干し、飲み干し時間と飲みっぷりの総合点で競い合うものです。
写真のような簡単な舞台をつくり、その台上で飲み干すのですが、男性が約12秒から13秒で飲むそうです。実はここで飲むお酒は高木酒造の3代目の当主の久吉さんが飲みやすく飲み飽きしないお酒として造った「楽鶯 豊の梅」を使っているそうです。
もうひとつのイベントは毎年7月に行われている「絵金祭り」です。絵金とは江戸時代末期から明治時代に高岡町で活躍した浮世絵師の弘瀬金蔵のことを言います。彼は高知城下で生まれ、絵の才能を認められ、江戸で狩野派の絵師として修業を積んだ後、20歳の時に高知藩の御用絵師となります。しかし、狩野探幽の贋作を描いた嫌疑をかけられ、職を解かれて狩野派も破門になります。その後叔母を頼って赤岡町に移住し、町絵師金蔵と名乗り、地元の人のための多くの絵を描き「絵金」という愛称で親しまれたそうです。
ですから町の中には金蔵が描いた多くの屏風絵が残っています。そこで高岡市は昭和52年に絵金の屏風絵を商店街に飾りながら、様々な催し(土佐絵金歌舞伎の上演、高木酒造の蔵開放など)が行われる絵金祭りを始めたそうです。5代目の直之さんは平成15年に土佐金蔵という純米酒の製造・販売を始めました。直之さんの高岡町への思いが良くわかります。
このように高木酒造は高岡町とは密接な関係を維持しながら、地元を大切にしている蔵だと思います。今直之さんが酒造りの思いを聞いてみました。
地元の文化として位置づける地酒の味を保ちつつ、21世紀の超高齢化社会時代に魅力ある大人の文化を演出できる心の豊かさや、やすらぎを提供できるお酒を作りたいそうです。具体的にはどんなお酒なのでしょうか。僕なりに整理してみました。
・ 伝統ある土佐杜氏の造りを継承して、手作りの良さを伝えていく
・ 高知のお酒の味を大切にしつつ、東京の人にも美味しいと思わせるお酒をつくる。
・ 純米酒は冷でもお燗でも美味しい食べ物に合わせやすいお酒にする。
・ 高知県の酒造好適米である「吟の夢」と高知県で開発した高知酵母を主体に酒造りをする。(純米吟醸や純米酒は高知県以外のお米も利用しているものもあります)
技術屋さんらしく酵母の選び方を図にしたものがあるので、ご紹介します。下側に高木酒造で作っている銘柄、上側に高知酵母の種類が書いてあり、矢印でどの酵母を作っているかがわかります。右側に行くほど、カプロン酸エチル系の香りが強くなり、左側に行くと酢酸イソアミル系の香りが強くなるように並べてあります。
大吟醸系はカプロン酸エチルの香りのCEL19+CEL11、純米吟醸系は中道の香りのAC95、特別純米は香りあ少なめのAC17+酢酸イソアミル系のAA41、純米酒が7号酵母を使っているのがわかります。
実は去年の5月に行われた土佐の旨いものと地酒祭りの会で直之さんに見せたもらった図が大幅に変わっていることを見つけてしまいました。下に示しますが、大吟醸系や純米吟醸系は変わっていませんが、特別純米と純米酒系が変わってることがわかります。直之さんが毎年良いものを作ろうとしている姿勢が良くわかります。
次にそれでは飲んだお酒を紹介します。
1.豊の梅 純米大吟醸 龍奏
このお酒は吟の夢40%精米の純米大吟醸を1年熟成したもので、アルコール度数16.5%、日本酒度+1、酸度1.6です。
このお酒が龍奏と名付けられたのはいわれがあります。蔵を改築した平成6年に海に第竜巻が現れ、蔵の真上に来た時すうっと消えて被害を全く受けなかったそうです。さらにこの年は四国の清酒酒鑑評会で最高の賞のリボン賞を取った幸運があったことから龍奏という名がついたそうです。
口に含んだ時に旨みがドンとこない大人のふくらみを感じると同時に心地よいきれいな酸味がうまく調和したお酒でした。
その会の後ですが、フルネット主催の純米大賞2013の純米大吟醸の部門で1位の最高金賞を取ったそうです。おめでとうございます。
2.豊の梅 大吟醸
このお酒は2011年に全国新酒酒鑑評会で、金賞を取ったお酒として販売されたもので、2年熟成したものです。2012年は出来上がりがちょっと悪かったので、2回火入れして出品したら、味が全く変わってしまって、賞が取れなかったそうです。初めての試みで失敗だったともことでした。
これも吟の夢40%精米の原酒で、アルコール度数は17.5%、日本酒度は+4、酸度は1.4です。
口に含んだ感じは純米大吟醸に似た味ですが、後味に辛みを感じるけど、酸味はほとんど感じなくて飲みやすいお酒でした。値段はこの大吟醸の方が高いけど、僕は純米大吟醸の方が好きだね。
写真をよく見てください。豊の梅の「の」字は純のように見えるけど、本当は能の変体かな文字で書いてあるそうです。この名前は赤岡町にあった寺尾酒造の商標の豊能梅を引き継いだので付いた名前ですが、今は通称豊の海としているそうです。
3.豊の梅 純米吟醸 松山三井
純米吟醸には吟の舞と松山三井の2種類がありますが、これは愛媛県産の松山三井50%精米の純米吟醸です。アルコール度数16.3%、日本酒度+4、酸度1.4です。
口に含んだ時の香りが凄く繊細な香りです。口の上あごの方に広がっていき、奥ですうっと消えていくお酒でした。あまり生酒の感じがしないで、味はしっかりしているのに、全体的には軽いイメージで、飲みやすいお酒です。
このお酒は都会の人には合うバランスのお酒かもしれません。
4.豊の梅 特別純米 吟の夢
吟の夢60%精米の特別純米で、アルコール度数16.5%、日本酒度+6、酸度1.7で、酢酸イソアミル系の酵母で、辛口のお酒です。
旨みもほどほど合って、辛口だけど後味がすうっと消えていき飲みやすいし、酸度が適度にあるので、食べ物に合わせやすいお酒だと思いました。お燗にも適しているお酒ですが、僕は冷でも常温でもいいお酒のような気がしました。
5.豊の梅 土佐金蔵
このお酒が岡山県産のあけぼの65%精米の純米生原酒です。アルコール度数は17.5度あります。酵母は今まで色々な酵母を使ってきましたが、今年から7号酵母を使用しています。
ラベルが赤で文字が白ぬきの土佐金蔵はアルコール度数を低くした純米酒です。
この蔵の中では一番コクがあると言われている酒で、飲んでみると大吟醸のようなふくらみはないけど、しっかりした厚みを感じる味で、口の中の方に膨らむけど、のどを越した時には消えている不思議な酒です。
6.活性にごり酒
これは日本一早場米と言われている高知県産の風鳴子70%精米の活性にごり酒で、アルコール度数18度、日本酒度-12、酸度1.3です。
このお酒は4代目の当主の院水さんが育てたおり酒で、8月に仕込んで、9月の初めに出荷するおさけですが、人気が高いので通年販売しているそうです。
飲んでみると甘いようで甘くなく、炭酸のしわしわ感とのバランスの良いお酒で、瓶詰めする際に火入れすることにより発酵を止めているので、普通のお酒のように扱えるようです。でも炭酸の圧力があるの明ける時は注意が必要です。とても飲みやすいので、酒に弱い人には注意が必要です。
7.リキュール はるか
地元の香南市の柑橘を生産する農家から声がかかり、高知県の工業技術センターの協力を得て出来たリキュールです。日本酒、ミカンの果汁(20%)、糖類、クエン酸が原料で、アルコール度8%、日本酒を-20、酸度8のリキュールです。
とてもさわやかで、お酒を飲んだ後口の中をリセットするには最適かもしれません。
このほか梅酒の生産もしていますので、試してみてはどうですか。
この蔵のお酒はドライなお酒が好きな高知にしては旨みをしっかりだしているように思いました。でもどのお酒も後味がきれいに消えていくので、どうやって作っているのですかと聞いたら、自分でもよくらからないけど、麹の作り方かもしれませんねと言われました。これが土佐杜氏流なのでしょうか。
最後にこのお店で食べたお料理を少しだけ紹介したおきます。
わらさ、そで烏賊、つぶ貝 あきしゃけの白子揚げ
そで烏賊はねっとりした味 これはうまい、初めてです
本日のイベントの カツオとうるめ鰯
カツオの味が上品で純米大吟醸でも合わせることができました。それだけ新鮮なカツオなのでしょう。お酒でカツオの新鮮さがわかるなんて凄いですね。
うるめ鰯は結構パワーがあるので、特別純米でないと合わなかったな。この会のお酒の中で度の食事にも合わせることができたのは、辛口の特別純米でした。
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