この会は地酒屋こだまの武さんが企画したもので、今年湯川酒造店が火災にあって、今期後半の造りを断念せざるを得なくなったことから、湯川酒造店を励まして応援しようと、東京の長野メッセで上京する機会をとらえて、東京で3日間開催され、5月17日の金曜日に最終回として新大塚のきの字で行われました。
湯川酒造店は長野県の西の岐阜県にに近い木曽渓谷の奥深くの薮原宿にある蔵で、江戸の初期からある老舗の蔵で、木曽路と木祖地と九郎右衛門の3種類の銘柄のお酒を造っています。蔵の写真をホームページから借りてきました。写真のように風格のある蔵ですね。
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現当主は16代目になる湯川尚子さんです。尚子さんは2005年に蔵を継ぐ覚悟で杜氏見習として蔵に入り、修行を続けていましたが、2011年の7月に先代の当主の湯川寛史さんが病気のためなくなられ、急遽後を継がれたのです。
今回の会の主催者である武さんのお話によると、先代の寛史がなくなられる前に尚子さんが16代目を襲名して、黒松仙醸の杜氏であった丸山慎一さんが新たに杜氏になることが決まったそうです。先代も病床の中でこの報告を聞いて喜んでおられたそうです。
なんとそのお二人が結婚することになるなんて、お二人と仲の良かった武さんでさえ、去年まで知らなかったそうです。去年のある時お二人が武さんのお店に来て、婚約の告白を突然受けた時には周りの人が驚いて吹っ飛んでしまったと聞いております。尚子さんもその時こんなことで、人が飛ぶなって初めて見ましたとこの会で告白されました。
お二人は去年の5月20日に松本で結婚披露宴が行われ、大変盛り上がった会だったそうです。式の途中から新郎の丸山慎一さんは意識がなくなり、2次回や3次会のことを一切忘れるほどだったらしいのです。披露宴の終わりには丸山さんが感極まって泣いてしまったことも覚えていないそうです。
本当かな?インターネットでその時の写真を見つけましたので、ご覧ください(呑ん子の放浪記から拝借)。
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確かに泣いておられます。でも泣いている新郎を優しく見つめている尚子さんの手が軽く支えているのを見ると、お二人の仲の良さが感じられますね。他にも二人のお幸せな写真もありますので、これも見てもらいましょうか
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これはちょっとかっこ良すぎますね。でも二人の思いが良く出ているいい写真です。場所はどこだかわかりませんが、バックの桜が素敵です。桜を見ると氷川きよしの去年のヒット曲を思い出します。亡くなった恋人を歌った歌なので、ここには不釣り合いですが、良かったら下のURLをクリック下聞いてください。
http://www.youtube.com/watch?v=bJCgt26VdxE
こんなわけで、丸山慎一さんは湯川家の杜氏湯川慎一として24BYから酒造りを始めました。湯川酒造店のお酒がどのように進化していくのが楽しみだった矢先、今年の2月25日の火災のトラブルに見舞われしまったのです。
出火元は甘酒を造る蔵で、電気系統の不良で火事になったようです。仕込み蔵や貯蔵タンクが被害がなかったのですが、甘酒の蔵の外側が原料処理のところだったので、新しいし仕込みが全くでき亡くなったそうです。ですからもろみや酒母の段階のお酒はをそれを色々なやり方で最後の搾りまでもっていったようで、それが今回試飲できるとのことでした。
この日は当然社長の湯川尚子さんと杜氏の湯川慎一さんのそろい踏みで、9種類のお酒をいただくことができましたが、お二人から色々と造りのお話を聞きましたので、それをおりこみながら飲んだお酒をご紹介します。
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慎一さんにとって新しい造りの最初の年だったので、最初はどんなことが気になりましたかとお聞きしたら、こんな答えが返ってきました。
・ 木曽路は山の奥ではないけど、山に囲まれた土地なので、日が暮れるのが早くて、直ぐ薄暗くなるので、モノクロの写真のようなイメージで驚いたそうです。
・ 標高は940mもあり、先代が日本一星に近い蔵と言ったそうで、真澄の宮坂さんからうちの方が高いとクレームがついたという話もあったようです。慎一さんにとっては標高が高いので、蒸米の上がりが心配だったそうですが、ボイラーを使っているせいか、特に問題がなかったとのことでした。
・ 24BYの全国新酒鑑評会の金賞受賞は本気で頑張ったのに、前の日の発表会で落選したことを聞き、今朝はふて寝をしていたそうです。ですから今日は慰めの会にしてくださいとのコメントがありました。
この蔵の仕込み水は木曽川の源流の地点なので、水は豊富なのですが、硬い岩盤の上を地下水が流れているのを汲み揚げて使っているそうですが、10mくらいの浅い井戸だそうで、水は比較的甘みのある中硬水だそうです。だから味がでやすいのでしょうね。
それでは飲んだ順番でお酒を紹介します。
1.九郎右衛門 純米吟醸 生にごり スノーウーマン
全量ひとごこち55%精米の純米吟醸のにごり酒で、瓶内発酵をさせたものです。瓶が透明で雪だるまの絵がついています。
ドライという感じではなく、最初に甘みを感じて、後で酸味を感じるバランスで、炭酸のせいでシャープさを感じる夏向きのお酒でした。
九郎右衛門には現当主の代が書いてあり、尚子さんが当主になった時から十六代となっています。
2.木曽路 純米吟醸
酛の6%だけ山田錦で残りは50%精米の美山錦を使った純米吟醸、火入れです。
木曽路の銘柄は主に地元向けに出しているもので、飽きずに飲める酒を目指しているそうです。
香りが立ち、旨みもしっかりしていて、口に含むとふわっと旨みが広がってくる、直球ストライクな酒と言えますね。
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3.九郎右衛門 純米吟醸 愛山
24BYから始めた愛山シリーズの一つです。兵庫県特A地区の愛山を全量使った55%精米の純米吟醸生で、香りの出やすい長野酵母と組み合わせたお酒です。
愛山は溶けやすいお米で味がでやすいので、これを酸で支えるバランスにしたそうです。飲んでみると確かに愛山の甘みがあるけど結構酸が強いように思えました。でも2杯目から酸味が抑えられて、甘みを強く感じるように変化してきました。これは面白い。
来年も愛山を使えるようになったそうで、、来年以降どんなお酒になるのか楽しみです。
4.木祖地 愛山1段仕込み
このお酒は愛山55%精米のひやおろしの純米吟醸として2月24日に仕込んだお酒ですが、25日に起きた火事のために初添え以降の仲、留めができなくなったので、1段のみで上槽したお酒です。アルコール度数は13.5度、日本酒度-25、酸度3.5というお酒でした。粕歩合が70%もあるので、あまり量は取れないので、270本だけ出荷したそうです。
飲んでみると数字ほどの甘さは感じません。酸味があると甘く感じないのでしょうね。
意外に面白い酒になったということなので、来年は最初から低アルコールのお酒にトライするつもりだそうです。楽しみですね。
ラベルはバカッパルと同じもののようですね。
これから九郎右衛門の生酒3連発に行く前に、尚子さんにお酒を持ってもらいました。持っているお酒の説明をしているところです。
九郎右衛門はお米が美山錦、ひとごこち、愛山の3種類、酵母が9号酵母、長野酵母の2種類の計6種類のお酒を造っているそうです。これは武さんの説明です。
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5.九郎右衛門 純米吟醸 生 9号酵母
美山錦55%精米の純米吟醸生、9号酵母の純米吟醸です。このお酒は九郎衛門の定番のお酒ですが、昔は白いラベルだったそうですが、3年前から黒系らべるので赤文字にしたそうです。このラベルは銀箔が入っているので光り方によっては銀色に見えます。チョット高いラベルだそうです。
12月に上槽したお酒で、生で保管していたので、やや生塾感が出てきているので、5-6月が飲み頃だと思うとの話でした。
確かに飲んでみると生酒らしい旨みが口の中の後ろの方に広がってくるタイプのお酒でした。
6.九郎右衛門 純米吟醸 生 長野酵母
長野県産ひとごこち55%精米の純米吟醸生で、長野酵母を使っています。長野酵母は毎年同じものではなく毎年選抜して良いものを造っていますが、今年はどうも出来が良くなかったようで、どの蔵も苦労しているようです。
長野酵母にも2種類あるそうですが、今年は長野酵母Dを使ったそうです。この酵母はもろみの後半で酸が上がり続けるので甘さを残さないと上手くバランスしないそうです。
確かに酸味があるけど、甘みとのバランスが良いので、長野酵母らしい奇麗な酸があって上手く出来たのではとおもいました。
7.九郎右衛門 特別純米 生 9号酵母
長野県産ひとごこち60%精米の特別純米で、9号酵母を使った定番のお酒です。ひとごこちは柔らかいお米で味がでやすいけれど、味があって切れのあるお酒を狙っているそうです。
今まではこのお酒は白ラベルの黒文字の定番のお酒ですが、杜氏が慎一さんになって、季節の合わせて色々なバージョンのお酒を出すようですから、定番の意味が少し変わるかもしれないそうです。
このお酒は旨みがあって適度な酸とのバランスが良く余韻がきれいなので、慎一さんらしい新しい味に変身しつつあるのかもしれません。
8.木曽路 山廃純米 あらばしり
山廃仕込みの酒は毎年1回純米を仕立てるのですが、今年は火災の前に酒母を仕立てていたのですが、この蔵ではその後の造りができないので、杜氏が以前勤めていた蔵の仙醸の社長のお願いして、仙醸の蔵でもろみを立てて造ったお酒です。お米はひとごこち60%精米です。
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仙醸の仕込みが終わらないと造りに入れないので、醪造りに入ったのは4月1日で、上槽したのが5月2日だたそうです。酛をつくたのが2月初めでしたので、山廃だからつかえたのでしょうねと慎一さんのお話でした。
仙醸には蔵の人も行って仕事をしたけど、醪管理は仙醸の安藤杜氏にやっていただいたそうです。そしてあらばしりが湯川酒造店のお酒として、中取りは仙醸のお酒として販売したそうです。ですからラベルがすこし変わっています。青色の2重丸が半分着いたラベルですが、その反対側の半分の2重丸は仙醸のお酒についているそうです。5月の長野メッセに出したそうなので、それに気がついた人は凄い酒通です。僕はまったくわかりませんでした。
飲んでみましたが、山廃らしい荒々しさのない飲みやすいお酒でした。これは普段の上槽のタイミングより早めに絞って、甘さを残しながら優しさを出したのだそうです。また、山廃の酛の造りを長時間低温引っ張らざるをえなかったのも奇麗な味になった原因かもしれませんとのことでした。
この二つのお酒をそろえるためには、湯川酒造店と仙醸の扱っている酒屋さんでしか買えないことになります。そうなると地酒屋こだまがもっとも可能性があるかも知れません。でももう無くなっているでしょうね
9.木祖地 醸し屋バカップル
次のお酒は二人の結構披露宴に出すために作ったお酒で、しらかば錦60%精米の純米酒です。しらかば錦は高地でも作れる耐冷性が強い酒造好適ましですが、お米の値段が安いので農家があまり造らなくなっているお米です。
しらかば錦は木祖村でも造っているお米なので、これを使った甘酸っぱいお酒を造ろうという遊び心で造ったそうです。
このお酒を慎一さんが持って熱心にお酒の説明をしているところです。
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二人の指を合わせてハートマークをデザインしたラベルのお酒です。結婚式の披露宴用だから出来たデザインでしょうね。このお酒のラベルの裏には意外なデザインになっていました
とてもシンプルなデザインで木祖村の雰囲気が出た洒落たものです。でも木祖地 醸し屋バカップルとはどこにも書いてありません。
披露宴に出したお酒をこだまやで1年間熟成したお酒です。どんな味になっているのでしょうか。
結構お米の味がでて、とろっとした甘酸っぱいお酒でした。ひとめぼれよりは、だらっとし味になるのは仕方がないかもしれませんが、これはお米のせいでなく二人の愛からくるものと思われます。
これで飲んだお酒の紹介は終わりますが、最後に杜氏としてこれからどんなお酒を造りたいのかをお聞きしました。
・ 前の蔵の仙醸は奇麗なお酒を造りやすかったのにたいして、湯川酒造店の酒は味あるけど野暮ったくない酒を目指したい。
・ 地元の酒は田舎ぽい酒が好まれるようで、それは優しさに通じる面もあるので、必ずしも変える必要はないかもしれないと思っている。
・ 県外に販売するお酒は味があるけど洗練されたお酒にしたいと思っているし、だんだんそれに近づいていると考えているとのことでした。
・ 毎年酒造りはリセットし、今までの積み上げの中で新しいものにチャレンジしていくつもりである。
最後に尚子さんに慎一さんは夫としてどんな人なのかを聞いてみました。
・ 優しい人だそうです。でも仙醸にいるときはもっと尖がっていたイメージがあったけど、今は丸くなったと思う。でも昔のセンスは持っていてもらいたいとのことでした。
・自分の持っていないものを持っていることがわかったし、今回の火事の後処理は彼がいなかったら大変だったと感謝していました。
二人の愛がとても感じられましたね・・・・・・・・・
これからも二人で力を合わせて良い酒を造ってください。
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