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ほまれ酒造は大きいけど興味深い蔵です

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白金の八芳園の槐樹で行われた第8回の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会に参加してきました。この会は会費は1万円と決して安くはありませんが、蔵元さんと直にお話しできる時間が長いのと、高橋料理長のお食事とのコラボレーションが素晴らしいので、しばしば参加させていただいている会です。 

今回ほまれ酒造の社長の唐橋裕幸さんが来られて、色々なお話を聞かせていただきました。このたびは暮れの金曜日に行われたので参加人数が7名と非常に少なかったので、まるで身内の会のような和やかな雰囲気で始まりました。

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最初の御挨拶の時の写真で、唐橋ユミさんの写真を持って、ユミの兄の唐橋裕幸ですとの挨拶からスタートしました。ユミさんはサンデーモンニングのアナウンサーなどで有名な方ですが、ユミさんの妹さんはプロの歌手なのは知っている方は少ないと思います。このように、素晴らしい才能を持った家族なので、幸裕さんの奥様のことも含めてこのブログの最後にまとめてご紹介しますので、最後まで読んでください。 

まずは、ほまれ酒造のことを御紹介します。ほまれ酒造は会津の喜多方市にある蔵で、創業は比較的後発で大正7年(1918年)に米問屋をしていた創業者の唐橋幸作さんが加納酒造を設立したのが始まりです。その後、大正10年に現在の地に本社工場を設立して、名前も唐橋酒造場に変えたそうです。そして昭和24年に現在の社名の「ほまれ酒造」を設立して現在に至っています。生産量は一時は2万石くらいあったそうですが、現在は1万石位だそうです。福島県では大手の蔵と言えます。 

ですから裕幸さんは4代目の蔵元社長だそうで、3代目の社長の唐橋幸市郎は以前福島県酒造組合の理事長をされるなど、外部のお仕事が多く、以前から蔵にはおられないことが多かったので裕幸さんは社長に代わるお仕事をしていたそうですが、東日本大震災の年の9月に社長になったそうです(現在41歳)。 

もうお気づきの方がいると思いますが、この蔵元になる人には必ず「幸」という名前が付けられています。ですから裕幸さんの長男には「なお幸」と名付けたそうです。なおの字はどんな字かは聞きませんでした。ですから裕幸さんは蔵を継ぐ宿命を持った人だったのですが、大学を卒業するまではそんな気持ちはなかったそうで、色々な経験をされている異色の経歴を持った人です。 

まず、高校は地元の高校ではなく独協埼玉高校を出て、成城大学経済学部経営学科に進学されました。(小渕優子の同級生だそうです) 直ぐにキリンビールの系列会社であるメルシャンに行くことになるのですが、その時には蔵を継ぐことを決意したそうです。その後MBAの勉強のためにサンフランシスコ大学に行かれて、30歳頃蔵に戻ったようです。独協高校はドイツ語の勉強があるし、アメリカでは英語を学んだと思うので、非常に語学が堪能な国際感覚を身に付けた方ではないかなと思います。 

でも蔵に戻る前はお酒造りの勉強はしていないそうで、蔵に戻ってから東広島の酒類総合研究所に研修に行ったり、福島県の清酒アカデミーに勉強に行ったそうですが、実際のお酒造りは直接のタッチはしておらず、会津杜氏の中島一郎さんにお任せしているそうです。 

この方が中島さんで、会津出身で新潟大学の農芸化学科を卒業され、1976年に入社して以来蔵で修業して、平成12年から杜氏をされています

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この蔵は7割が普通酒で、特定名称酒は3割くらいだそうですが、基本は手作りを大切にしながら、機械化できるところは積極的に進めてきたそうです。1割程度は小造りに特化し新しい酒造りにチャレンジしていて、全国新酒鑑評会や東北鑑評会で毎年のように金賞を取っている他、最近はIWCのゴールドメダルを取るなど、輝かしい成績を収めています。 

裕幸さんの酒造りに関連する思いを聞いてみましたが、次のようなことを挙げていただきました。 

・ 普通酒のレベルを上げて普通酒を復活させたいそうです。そのためには杜氏から色々勉強して、もっと良いお酒が作れる管理方法を確立したいそうです。 

・ 喜多方市だけでなく会津全体をアメリカのナパバレーのような街にしたいそうです。そのためにはお酒造りも大切ですが、色々な人が会津に興味を持って足を運んでみたくなるような、魅力ある町造りをしたいそうです。 

さすが、国際派の裕幸さんは考えている視野が広いですね。 

それでは早速の飲んだお酒をご紹介しましょう。9種類のお酒を飲みましたが、下の写真のように、綺麗に飾られていました

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いつものことですが、9種類のお酒はすべて違うグラスが用意されています。でも10個グラスがありますね。それはどこかで同じお酒が2回出てきたからです

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こんなところまで気配りしているのはこの会を企画している窪田理江子さんのセンスです。準備するだけでも大変ですよね。槐樹ならではの演出です。 

この会ではお酒に合わせて高橋料理長が事前にお酒を飲んで合わせた料理が出てきますので、今回はお酒の紹介とその時いただいたお料理を同時に紹介することにしました。 

1.無ろ過純米生原酒

Dsc_0558このお酒は会津坂下地区で造ったお米の華吹雪を使っています。華吹雪はもともと青森県が開発した酒造好適米で、耐冷性、耐病性を目的としたお米ですが、心白発現率は良いが、心白が大きく高精米が難しいので、大吟醸には向かないが純米に向いていると言われているお米です。 

この華吹雪を58%精米した純米酒の26BYの無ろ過生原酒で、酵母は協会9号です。日本酒度は+4のやや辛口ですが、しっかりした旨みと新酒らしいさわやかな香りと呑みやすさが素敵なお酒でした。 

新酒にもかかわらず柔らかさのある味わいがあるのは、搾って方1週間置いてから瓶詰をするからだそうです。細かい気配りが良いですね。

2.會津ほまれ 華吹雪仕込み純米酒 1年熟成酒

Imgrc0062008909_4写真を取り忘れたので、ほまれ酒造のホームページからお借りしました。このお酒は1の新酒と同じお米。同じ精米度の純米酒ですが、酵母は福島県の開発した酸の出にくいTM-1を使用しています。

このお酒を5℃のタンクで1年寝かせた熟成酒です。低温タンクを用意しているのはさすが、ほまれ酒造ですね。そのタンクのお酒を2回火入れして瓶詰めした純米酒です。 

飲んでみると1の新酒とは全く違うお酒で、熟成香がするので、新酒の香りはありませんし、2回火入れしているので旨みも減っていますが、熟成香を気にしなければ、呑みやすいお酒で、お燗が合いそうな気がします。

ここで高橋料理長の裏技が出ました。それは本物のトリフを入れたお燗酒です。不思議なことにあの熟成香がなくなり、ずっと飲みやすくなりました。トリフの香りは良く知らないけど、なんとも言えない別の香りが漂います。

 このトリフのお燗を見てもらいましょう。上に乗っているのがトリフです

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この二つのお酒に合わせてでてきたお料理は膳采です鴨の煮もの、ほまれ酒造の酒粕を使った奈良粕豆腐、イカニンジンとマグロづけ寿司でした。おいしそうでしょう

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3.純米吟醸生原酒 雲嶺庵

Dsc_0559雲嶺庵は蔵元が所有している直売店の名前で、もまれ酒造の敷地内の日本庭園の中にあります。この庭園は昭和25年に敷地内の原生林を生かして出来たのもで、1300坪の広さがあるそうです。キヤキ、モミジ、桜などが四季折々に風情ある景色を見せてくれるので、多くの人が見学されるそうで、しかも無料です。

このお庭から雲の間に磐梯山の山頂を見ることができることから、ここを訪れた元東大教授で文学博士の綿貫哲雄氏が雲嶺庵と命名したそうです。

さて肝心の雲嶺庵のお酒ですが、喜多方市で栽培された五百万石を50%精米した純米吟醸で、酵母は福島県で開発した「うつくしま夢酵母」を使っています。

飲んでみると1番のお酒よりは線が細いけどきれいな旨みが感じられるお酒でした。この蔵の一番人気なお酒だそうですが、この直販店か楽天市場のネットでしか買えないお酒だそうです。

4.純米大吟醸 生原酒 幸作

Dsc_0557このお酒は酒母だけを五百万石50%精米を使い、醪には40%精米の山田錦を使っているそうです。山田錦は手に入る時期が遅いので、酵母だけを早生の五百万石を使うのだそうです。ですから五百万石は6%しか使わないそうです。こんなやり方は初めて聞きました。

ですから厳密には大吟醸と呼べないのですが、国税局に認可を得て純米大吟醸と呼んでいるそうです。

幸作は創始者の名前からつけたものですから、この蔵で最も高級なお酒として名付けたものだそうです。この酒は純米大吟醸の良いところだけを取り出して造ったものです。この蔵には幸作と名付けない純米大吟醸もありますが、4号瓶で3000円で、幸作の5000円より割安です。

飲んでみたらしっかりした味わいで気品のある香りが楽しめて、後味の余韻もしっかりしているけど綺麗で、切れも滑らかで、さすがだという感じです。

この二つに合わせてでた料理が「こづゆ」です。こずゆは会津の郷土料理で冠婚葬祭に良く出る料理だそうです。

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牛蒡、粟麩、インゲン、椎茸、里芋、白滝、赤蒟蒻、貝柱を貝柱の出汁で煮詰めた物のようです。普通の郷土料理より綺麗に仕上がっていました。

5.會津ほまれ 大吟醸

04041634_4f7bf9939b59a_4このお酒も酒母に50%精米の五百万石、醪に40%精米の山田錦を使った大吟醸です。酵母は幸作がM310に対して協会9号を使っているそうです。 

飲んでみると、香りは控えめですが、味わい深さと、切れがあってお料理には合わせやすいと思いました。 

この大吟醸がIWC2014にゴールドメタルを取ったそうで、去年は純米大吟醸はゴールドメタルに輝き、引き続きの受賞になったようです。 

このお酒に出された料理は鰤の粕汁でした。ほまれ酒造の酒粕を使ったものですが、練粕はコレステロールを下げる効果があって、最近注目されているそうです

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6.4段仕込み 濁り酒

04041634_4f7bf9753f4ee季節限定の毎年10月に販売されるにごり酒です。

通常のお酒は3段仕込みですが、4段仕込みで甘さを出したにごり酒です。お米は麹米が68%精米の五百万石、掛米が70%精米の一般米を使っていて、普通酒と同じように醸造用アルコールや糖分を添加しているそうです。 

糖類を入れるのなら4段仕込みをしなくてもいいと思うかもしれませんが、発酵ででる甘さは糖分とは違った柔らかい甘さになるのだと思います。 

飲んでみると確かに甘さを感じますが、フレッシュな香りと酸味とバランスしたさわやかな甘みで、すっきりとしてますが、味はしっかりしているのでどんな料理に合わせるのでしょうか。 

鍋に合うお酒と言われていますが、高橋料理長は何を合わせたのでしょうか。鰯のまる干しを藁でくるんで蒸したものをフライにした藁薫まる干しフライでした。まる干しの鰯の苦みをにごりの甘みで抑える狙いのようです食べてみるとお酒を飲みながらでないとだめというほどピッタリの感じでした

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6番目は再度純米大吟醸の幸作が出てきましたが、少し温度が上がった幸作はとろみ感が出てきて、一層おいしく感じました。お酒は温度で全然変わるのですね。 

この幸作に合わせて出してきたお料理ねぎ蕎麦でした。會津ではお蕎麦をねぎ1本でた食べるといいますが、今回はねぎとワサビをつかたお洒落そばでしたね。

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7.ゆず酒

Yuzu_image_2このお酒はゆずと純米酒との絶妙なコラボレーションで生まれたお酒です。純米酒は華吹雪70%精米の純米酒で、ゆずは720mlに対して約7個分のゆず果汁が入っているそうです。 

アルコール度数は10度、日本酒度はー72、酸度は14.7ですから甘くて酸っぱいですが、飲んでみるとゆずの香りが凄いのに驚かされます。でも甘さが柔らかく、スイート飲めてしまい、癖になりそうは味わいです。 

日本酒が嫌いな女性でも飲めてしまいますが、アルコールが10%もあるので、弱い人は危険ですね。ロックやソーダー割がお勧めだそうです。1合1420円(税込)だそうです。

 

8.純米長期熟成酒

Dsc_0555この熟成酒は普通の熟成酒ではありません。米麹100%で造ったお酒なので、甘みと酸味が強い味になっているので、食後のデザートワインのような狙いを持ったお酒だそうです。 

お米は五百万石と華吹雪58%精米の米麹で、日本酒度はー20、酸度は3.1、アルコール度は18%で、それを約10年弱熟成させたお酒です。色は琥珀色になり熟成香強いですが、飲んでみると香りが気にならなくなります。 

口に含んだ時の当たりが柔らかくて、甘みと酸味のバランスがよく、後に残る甘みの消え方がきれいで、ちょっとハマってしまう熟成酒でした。 

ゆず酒と長期熟成酒に合うお料理なんであるのでしょうか。高橋料理長は鶏と果実(柿とリンゴ)の酒粕グラタンに合わせました。これがピッタシなのには驚いてしまいました。さすが、高橋さんの技ですね。

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9.搾りたて生 本醸造生原酒

Dsc_0562_4このお酒は昔からのヒット商品のようで、華吹雪65%の本醸造の無ろ過生原酒です。酵母は協会9号で、アルコール度数は18~19度と高濃度ですが、日本酒ぞはー6で甘口です。 

飲んでみると本醸造にもかかわらずアルコール添加の辛さは感じません。生原酒のフルーティさを感じつつ、しっかりしたうまさが口に広がりますが、後味が切れてきます。これは酸度が1.8もあって良いバランスになっているからでしょう。とても本醸造には思えません。 

これが2260円(税込)はとてもコストパフォーマンスが良いお酒だと思います。 

さて、このお酒に料理長はどんなお料理を持っていくのでしょうか 

目光のから揚げでした。このお酒はどんなお料理にも合うような気がします。

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これで飲んだお酒とそれに合わせてでてこられたお料理の紹介を終わります。ほまれ酒造は大きな蔵ですが、どのお酒も特徴があり、味わい深いものが多い気がしました。さすが安定したお酒造りができる蔵だと思いました。 

最後に唐橋社長と高橋料理長と営業の清水さんの写真をご紹介します。料理長は事前に全部のお酒を飲んで、メニューを作っているのには脅かされます。

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それでは最後の最後に唐橋裕幸さんの妹さんと奥さまのご紹介をします。 

唐橋ユミさん 

左が蔵のポスターの写真で右がアナウンサー姿のメガネ美人です。

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唐橋家の長女として生まれ、唐橋裕幸さんの妹になります。地元の高校を卒業後、実践女子大学の英文科を卒業後、高橋圭三塾で学んで福島のアナウンサになり、現在はフリーのアナウンサーとして活躍しています。 

現在出演しているのはサンデーモーニング(日 08:00~09:54 TBS)、センニュウ★感(日 24:35~25:05 テレビ東京)、バイキング(水 11:55~13:00 フジテレビ)、コロッケ千夜一夜(金 21:00~21:54 BS日テレですが、僕はコロッケの番組が好きです

今は城西国際大学の非常勤講師も務めているようですが、何を教えているのでしょうね。もう今年で40歳になりますが、まだ結婚されていないのが話題になっていますが、心配ないです。 

唐橋宙子(ひろこ)

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唐橋宙子さんはユミさんの妹さんで、玉川大学文学部芸術科卒業後プロの歌手として活躍されています。クラシックから童謡まで幅広く歌っておられます。現在は結婚されて今ではchuumamaと言われて、自分のブログも持っています。ソプラノできれいな声で唄っておられます。そのURLを付けておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=mEpWm4DS1pA 

唐橋家は凄い才能を持った家柄なのですね。

そこに嫁いだのが唐橋美由紀さんです

E565d64bf3bb76f634c49f2bbb3beafc791とても綺麗な方でしょう。裕幸さんとはメルシャン時代にお会いしたそうで、その後7年間のお付き合いをして結婚したそうです。アメリカ留学中は長距離恋愛だったのですね。 

今では2児の母で、ほまれ酒造のネットショップ楽天市場店の店長をされています。 

唐橋美由紀の名前でgoogleで検索してください。僕が取った写真が出てきます。勿論僕が書いたブログにもたどり着きます。 

最後の最後に僕が撮った唐橋夫妻の写真をお見せいたします。持っているお酒が違いますね。これで何時取ったかが分かれば酒通です。

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レマコム冷蔵庫対策はこれで完璧だと思います

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今までレマコムRCS-100冷蔵庫を日本酒用として使うための色々な対策をしてきましたが、今回その最終案をご提案します。今まで提案してきた対策の中であまり意味のないものと重要なものがありますので、整理した上で新しい対策を提案します。 

まずその前にレマコムRCS-100の温度制御がどうなっているのかを説明します。

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レマコムの内部は冷却板、それを制御するセンサーとダイヤルから構成されています。このダイヤルは数値を設定することができます

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このダイヤルの数値を上げれば、温度が下がることは間違いないですが、温度制御しているわけではありません。 どうやら冷凍機を動かす時間間隔を制御しているようです。ですからこの数字が大きくなれば、冷凍機が動く時間が長くなるので、庫内の温度は下がりますが何℃になるかは成り行き任せです。 

2013年の冬に温度記録計を購入し、ダイヤル設定を変えながら最適設定値を探して、この時はダイヤルの数値を4~5にすれば、0℃~3℃でコントロールできることを書きましたが、間違いであることがわかりました。その時の内容は下記のブログを見てください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-73dd.html

この実験をしたのは冬場でしたので、このダイヤルの数値で冬場は0℃~3℃で安定していたのですが、夏場になると気温が上がり庫内の温度が上がってきて、このダイヤルの数値だと2℃~7℃の大きくぶれることがわかり、場合によっては冷蔵庫の冷却機の表面に氷がついてしまい、急に冷却能力が下がる事態が起きました。この時は冷蔵庫の物を外に出して一度氷を解かさないと復帰しないことがわかりました。この状態になることは絶対に避けなくればなりません。夏場でも何とか安定して凍りつかない温度3℃~5℃くらいに維持できる方法がないか考えました。 

そこで思いついたのが冷蔵庫の中にFANを入れることです。この冷蔵庫はFANがないので冷却機の表面温度と庫内の温度には差があるので、外気が高い夏の時期は外からの熱により庫内の温度が上がると考えたのです。 

それでは庫内に入れられる適当なFANがあるでしょうか。色々検索した結果、見つけました。それはSANWA SUPPLY USB横型扇風機 ブラック USB-TOY75BKです。設置場所や大きさや能力から考えて、現在これ以外の適切なFANはありません。価格は3000円から4000円で売っています。検索してみてください。 

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このFANの欠点は音がうるさいことと、電源がUSBというところです。もともとデスクの上で使う扇風機として売られているものなので、その耐久性は心配でした。でも下図に示す通り、冷蔵庫の奥の冷凍機の上部にぴったり置くことができましたし、1年間使っても今のところトラブルはありません。 

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 一度セットすると電源を抜かなければFANを止めることができませんし、扉を開けないと動いているかどうかの確認が難しいですが、幸いFANの音がうるさいので、外から音で確認できます。FANのスイッチ類はFANのサイドにあります。 

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黒いポッチがスイッチで、上から電源、FANの強さ、最後が首振りのスイッチです。FAN強度最高、首振りで使っています。 

ではFANを動かしたときと、停めたときの庫内温度変化の様子を示します。 

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ダイヤル数値が一定でもFANがない場合は6℃~7℃になるのに対して、FANがある場合は3℃~6℃に下がってきます。明らかに温度は下がってきますが、振れ幅は大きくなります。これは僕の推定ですが、FANが動くと庫内の温度分布が均一になり、冷却機表面温度と庫内温度が近づくのに対して、FANのない場合は庫内温度がゆっくり変化するためではないかと思っています。 

庫内温度が均一になって、温度の平均値が2℃くらい下がるので、FANがある方が日本酒冷蔵庫としてはよいと思いますが、ダイヤル値はどの位が適切なのでしょうか。庫内温度の最低値が2℃を下回らないのを基準にしたらどうかと考えます。 

ダイヤル設定を3.0~4.0での時の庫内温度の状況をお示しします

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ダイヤル3.5や4.0の場合は0℃~5℃と温度は下がるのですが、稼働状況が少し不安定になるようです。ダイヤル3,0の場合は動きは安定していて温度は3℃~6℃で平均温度は4.5℃です。以上のことからダイヤル設定は3.0が良いと思います。これは冷蔵庫一つ一つで違いがあるものと思われますので、3,0から3.5ぐらいで調整してみてください。 

今まで行ってきた各種の対策についての僕なりの評価をしますと以下のようになります。

1.表のガラス扉の断熱について 

これについては僕は窓ガラス断熱シートフォーム(E1590)という名前で売っている厚み7mmのシートをガラス扉の裏に張り付けました。写真のようにお酒が入っている様子は見えますので、見てくれはいいです。でも、当初は窓ガラスの結露防止が目的でしたので、これでもよかったのですが、現在は冷蔵庫自体の断熱性能の向上のためには窓ガラスの断熱が絶対必要と考えていますので、透明性はなくなりますが、ウレタンフォームを使う方がいいと思っています。自分は実行していません。 

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2.保冷カーテンの設置について 

Img_1560冷蔵庫のドアの内側に幅150mm長さ880mmの透明の断熱シートを取り付けます。冷蔵庫の幅は410mmありますので、150mm幅のものが2枚と100mm幅のものを1枚用意してそれを冷蔵庫の内部に取り付けます。こうすると冷蔵庫のドアを開けた時に冷気が外に流れるの防ぐので、省エネになるのが本来の目的ですが、ドアを閉めている時もガラス窓に直接冷気が当たらないので結露対策にも役立ちます。 

これは冷蔵性能を上げるのに本当に役立っているかはわかりませんが、精神的にはこれがあると冷気が逃げない気がしますので、安心です。 

詳しいことは下記のブログを見てください。http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-8af8.html

3、結露対策 

この冷蔵庫の結露は露の時に起こりやすいです。ひどい時はガラス面の露が滴れ落ちで、床がびしょびしょになります。それを下で受ける装置を考えました。その方法は下記のブログを見てください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/rcs100_3960.html 

1年を通してみると、露が滴れ落ちるのは夏場の雨の時だけで、他の時期はそれほどではありません。ですからその時だけまめに拭くとか下に布を置いておき床が濡れないようにするだけで十分なことがわかりましたので、今は何もしていません。 

以上がレマコム冷蔵庫対策のすべてです。結論を簡単にまとめると以下のようになります。

ガラス窓には断熱材をはり、さらに保冷カーテンをつけ、庫内にはFANを設定し庫内温度を均一にして、庫内温度が0℃以下にならないダイヤル数値に設定する

レマコムを使う方はこれを参考に使ってみてください。 

最後にメーカーの人に一言いたいのは、日本酒冷蔵庫用としてレマコムRCS-100の扉をガラス扉でない断熱の良い扉の使用を製品を出し、庫内温度を外に表示できるようにしてもらいたいと思います。そして温度制御がもっと細かく制御できるようにしてもらいたいです。 

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平成7年東京農大同期の蔵元の会第2段

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今年も平成7年に東京農大を卒業した蔵元が用賀のなかむらやに集合して、蔵のお酒を蔵元の話を聞きながら飲む会が開かれました。この会が初めて開かれたのは去年の7月でその時の参加蔵は下記の6蔵でした。今年はさらに2蔵が参加されました。

  天吹   天吹酒造     代表取締役 木下壮太郎
・ 
磐城壽 鈴木酒造店 専務取締役 鈴木大介
・ 
会津娘 高橋庄作酒造店  杜氏  高橋亘
・ 
雅山流 新藤酒造店 専務取締役 新藤雅信
・ 
松乃井 松乃井酒造場 マネージャー  古澤布美子
・ 
南部美人 ㈱南部美人 代表取締役  久慈浩介

○ 岩木正宗 竹浪酒造店 専務取締役 竹浪令晃
○ 誠鏡    中尾醸造   製造責任者 中尾康孝

去年のことは下記のブログに詳しく紹介していますので、それをご覧ください。また竹浪酒造店のことについては別のブログに詳しく紹介していますので、そこをご覧ください

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-5daa.html

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-8973.html

ということで、今回は8人の蔵元の参加の会となる予定でしたが、南部美人の久慈さんは奥様が体調を崩して、急に参加できなくなったのと、中尾醸造の中尾さんは出席できない予定でしたが、ある人が特別参加していただきました

ですからほとんどの方が2回目の参加ということなので、今回は蔵の紹介よりは主に飲んだお酒の紹介ということにさせていただきます。

最初に全員がご挨拶された時の写真です。総合司会は天吹の木下壮太郎さんがやられました。去年の久慈さんのようなパワーはないけど、去年の11月に社長になられた貫禄が見られましたね。

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1.天吹   天吹酒造     代表取締役 木下壮太郎

Dsc_0147去年の11月に代表取締役社長に就任されて、ホームページにも明記されていますが、世間には積極的にはあまりPRされていないようです。 

蔵のご説明は敢えてしませんが、花酵母の酒つくりで西の横綱と言われている蔵です。

今回持ってきていただいたのは次の3種類です。

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裏大吟醸金賞受賞酒   純米大吟醸    純米吟醸雄町
袋吊りアベリア酵母    バナナ酵母    ナデシコ酵母 
 

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・ 裏大吟醸金賞は毎年愛山40%精米で出品しているものですが、このお酒は斗瓶囲いの原酒ですからアルコール度数が18%もあります。通常のお酒よりとろみ感があり厚みのあるお酒でした。このお酒は東京の2店しか出していない特別なお酒のようです。 

・ 純米大吟醸バナナ酵母はタンク1本しか作らなかったもので、市販するかどうか迷ったそうですが、市販したそうです。バナナ酵母は花酵母ではない特殊な酵母らしいです。バナナからとったものでもなさそうです。使用したお米は飯米のひのひかり50%精米の純米大吟醸です。呑んでみると飲む前の香りは軽い熟成香ですが、口に含むとバナナそのものの香りがします。入江さんの感想では青バナナの後味がすると言われていました。日本酒度が-7、酸度が3.4あるので、貴醸酒のような甘さと酸味を感じますが、今まで飲んだことのない味わいでした。 

・ 純米吟醸雄はふくらみを出せるお米なので、香りのよく出るナデシコ酵母に良く合うそうです。でもその香りを抑えるために少し甘めにしてバランスさせているそうで、日本酒を知らない人でも呑みやすいお酒にしているそうです。 

2.岩木正宗 竹浪酒造店 専務取締役 竹浪令晃 

Dsc_0136竹浪酒造店は青森県の岩木山の麓にある小さな蔵で、竹浪令晃さんはその16代目に当たる人ですが、今の流行のお酒造りには迎合しない独自の道を行くお酒造りをしています。 

何といってもこの蔵の究極の目標はお燗にあう酒造りです。こだわっているのは、お酒つくりだけではありません。蔵の生産高は100石位ととても小さいですが、ラベルのデザインは皆素敵で、センスがとてもいいです。プロのデザイナーが友人におられて、その人に頼んでいるそうです。これも変人と言われている令晃さんの技なのかもしれません 

今回持ってきていただいたのは以下の3種類です。 

純米大吟醸生原酒   七郎兵衛特純  岩木正宗 特別純米
美山錦45%       秘蔵古酒18BY
     華吹雪60%

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・ 純米大吟醸は秋田県産の美山錦を使用したもので、飲んでみると、アルコール感ガッつりのおさけでしたが、もともと加水したものを少し寝かせて飲むお酒の原酒なので、仕方だないのかもしれません 

・ 七郎兵衛の秘蔵古酒18BYは、華吹雪60%精米、まほろば酵母の特別純米原酒で、蔵の常温で8年熟成したお酒です。なかなか良い熟成でしたが、まだ販売していないお酒だそうです。 

・ 岩木正宗特別純米は華吹雪60%精米の特別純米酒で、約2年間寝かせたお酒でした。飲んでみると意外にすっきりとした味わいでした。 

3.雅山流 新藤酒造店 専務取締役 新藤雅信 

Dsc_0170この蔵は山形県米沢市にある生産高約1000石の蔵ですが、雅信さんが蔵に戻って新しく立ち上げたお酒が雅山流です。このお酒は蔵の前に育つ出羽燦々を使ったお酒に特定しています。このお酒が評判になったので、出羽燦々以外のお米で造ったお酒は裏雅山流と名付けました。 

それに対して九郎左衛門は鑑評会用に造った山田錦かと思っていましたが、どうも違うようです。裏雅山流にも山田錦があるし、九郎左衛門にも雄町があるからです。第8代目の九郎左衛門は酒造りの名人で、その人の技術の粋を集めて作ったお酒にこの名前をつけるようですね 

新藤さんこれで正しいですか? 

今回持ってきていただいたお酒は下記の3種類です。 

Dsc_01272右から紹介します 

・ 九郎左衛門 金城受賞酒 山田錦35% 大吟醸生詰め 

・ 九郎左衛門 雄町40% 大吟醸生詰め 

・ 裏雅山流 香華 無ろ過本醸造 

九郎左衛門は表から見ただけではどんなお酒かわかりにくいですが、裏から見ると一目瞭然です。下の写真を見てください。 

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・ 九郎左衛門金賞受賞酒はとてもうまい酒でした。さらさらとした感じの中に旨味があって辛みのない僕の好きな味です 

・ 九郎左衛門の雄町はぐっとさわやかな味で後味の良さがあるお酒です。とても良いきれがあります。今年のIWC吟醸大吟醸部門でトロフィー賞を受賞しています 

・ 裏雅山流 香華は出羽の里65%精米の本醸造ですが、本醸造とは思えないさわやかな香りと品の良さを感じる一段上の本醸造と思いました 

4.松乃井 松乃井酒造場 マネージャー  古澤布美子 

Dsc_0180松の井酒造場は新潟県の十日にある比較的小さなの蔵で、、古澤兄弟で酒造りをしている蔵です。布美子さんはこの蔵の常務取締役で杜氏をされている古澤裕と結婚されて、ここのマネージャーとして活躍されています。 

この蔵は昔から丁寧な作りをしている蔵で、ほとんどが地元で消費されることが多いので、東京では中々呑めないお酒ですが、全国新酒鑑評会で9回も金賞を取っている実力のある蔵です。この平成7年の同期の中では、第2位を占めていることはあまり知られていません。 

本日は松をデザインした着物姿でいらっしゃいました。素敵な方ですね。 

本日呑んだお酒は下記の3種類です。 

英保 純米大吟醸    松乃井大吟醸   松乃井 特別純米
長期熟成酒        山田錦40%    たかね錦55%  


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・ 英保長期熟成酒は越淡麗35%の純米大吟醸で、-2℃の冷蔵庫で3年間熟成させたお酒です。英保とは初代当主の名前出そうですから、蔵を代表するお酒と言えます。飲んでみると旨味もあるけど、優しさもある大人の味でした 

・ 松乃井大吟醸は全国新酒鑑評会に出すレベルのスペックとはほぼ同じの酒です。とてもきれいなお酒で、心をこめて造っていることがわかります 

・ 松乃井特別純米はたかね錦55%の純米酒ですが、この蔵は50%まで磨かないと吟醸と呼ばないみたいですね。しっかりとした味と切れのあるお酒でした。 

松乃井酒造のお酒は昔は淡麗辛口でしたが、今は少しずつ味のあるお酒に変化しているそうですが、少しでも味が変わるとクレームがつくので、色々ブレンドしながら味を調整して出荷しているようで、それだけ丁寧な酒造りをしているものと思われます 

5.磐城壽 鈴木酒造店 専務取締役 鈴木大介 

この蔵は江戸末期から福島県の浪江町で漁師のための酒造りを続けていましたが、2011年の東日本大震災の津波を受けて蔵ごと流された上に、福島第一原発の事故で立ち入り禁止地区となり、操業できなくなったのです。その後、山形県の長井市にある蔵を譲り受けて、ここで操業を開始し、現在に至っていますが、現在の生産高は震災前とほぼ同じ500石にまで復旧したそうです。震災ですべてのものを失ったのですが、たまたま研究用のサンプルとして会津の工業試験所に山廃の酒母が保管されていたのも幸いしたそうです。 

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鈴木さんは農大を卒業後、梅の宿酒造で4年間修業をした後、大阪の島田商店で営業の仕事をするなど、色々と経験を積まれたようです。蔵に戻ったのが平成11年で12BYから製造責任者となっています。 

今回出されたお酒は山廃純米大吟醸しずく取り、純米吟醸山田穂50%、特別純米会津産五百万石60%の3種類でした。 

僕が気に入ったのは山廃純米大吟醸です。山田錦45%、9号酵母の純米大吟醸を1年半氷温で熟成したものです。口当たりが柔らかくて、しっとりとしたうまみを感じるお酒でした。瓶の表には2011と書いてありますが、裏のラベルには正しい表示がなされていました。 

他のお酒についてはメモが残っていませんでしたので、省略します。このあたりから酔いがまわって、まともな質問もできていないようです

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 6.会津娘 高橋庄作酒造店  杜氏  高橋亘 

この蔵は明治の初めの創業した老舗の蔵ですが、亘さんは6代目の蔵元になります。会津若松ではどこでも普通酒をつくる文化があったそうですが、5代目のお父様の代に特定名称酒だけをつくると同時に地元のお米と水でお酒をつくる「土産土法」を打ち上げたそうです。そのため生産高は約500石となったそうです。

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 この方が会津娘の高橋亘さんです。亘さんが蔵に戻ったのは農大を卒業してすぐのことです。蔵には会津杜氏がおられたのですが体調崩されたので、製造責任者として杜氏の仕事をやってこられました。亘さんの代でやったことは土産土法にこだわる地酒造りを受け継ぎ、具体的には地元で造ったお米(五百万石)をベースとして山田錦を超える酒造りをすることでした。 

でも地元お米だけでは酒造りのの幅が広がらないことから、山田錦や雄町を使うこともやってきましたが、最近は山田錦の親である短稈渡船や山田穂のお米を使うチャレンジをしていて、今回そのお酒が飲めました 

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右側が純米吟醸の短稈渡船50%、その隣が純米吟醸山田穂50%で造りは全く同じで米違いだそうです。どちらも酵母は協会9号です。飲んでみると、短稈渡船は口に含むとすぐに味が広がるのに対して、山田穂は味わいがはっきりして、口の奥の方に広がる感じがしました。ですから山田錦はその両方の良さを引き継いだのでしょうね。 

一番左のお酒がこの蔵の定番のお酒で五百万石の特別純米酒です。これまた全く違うお酒でさわやかな香りと切れの良いのど越しが特徴かな。五百万石と短稈渡船は早生で、、山田穂は晩生で、晩世のお米は寝かせると味が出ることがわかったそうです。 

7.誠鏡  中尾醸造   製造責任者 中尾康孝 

色々な事情があって蔵元のお写真は省きますが、中尾醸造の関係者が出席されて、お酒のご説明を受けました。 

中尾醸造は広島県の竹原市にありますが、竹原市はお酒つくりの盛んな土地で、NHKのマッサンの竹鶴酒造や生酛つくりで有名な藤井酒造など3蔵があります。 

中尾醸造は昭和15年にリンゴ酵母の発見をしただけでなく、昭和22年には高温糖化酒母法を開発するなど酒つくりの技術開発に努力をした蔵です。それをベースにできたお酒が幻で、昭和20年代のヒット商品になったようです。 

今回試飲させていただいたお酒は下記の3種類です。 

幻 大吟醸原酒    純米吟醸 特醸生  純米たけはら
山田錦40%      雄町55%       新千本65%


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 幻 大吟醸原酒は山田錦40%精米、リンゴ酵母のお酒で、-1℃で1年間熟成したお酒です。市販商品としては幻桐箱という製品です。飲んでみましたがこれは旨い。造った時は香りが高いけど1年熟成させると香りが収まって味が増してくるそうです。 

・ 純米吟醸 特醸生は地元の雄町55%精米の純米吟醸で、9号系酵母だそうです。イソアルミ系の香りでも嫌みがなく、味があるけど軽快で後味が綺麗でした。ちょっと硬さを感じたので、熟成させるといいかもしれません。これはいいですね。 

・ 純米たけはら関東の辛口酒に対抗して日本酒度+0のお酒を売ろうとして造ったものです。お米は新千本65%で、お燗でも冷でもいい晩酌用のお酒だそうです。飲んでみると素直な味わいでした。冷より常温に近いほうがいいと思いました。 

以上でこの会の紹介は終わりますが、最後にメンバーがそろって、別の場所に移動された時の集合写真です。皆さん仲が良くて楽しそうですね。

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福島の若手杜氏が醸し出すお酒は素晴らしい

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先日大塚の地酒屋こだまの武さんが企画した会で、新大塚の酒味処「きの字」廣戸川の松崎祐行さんと山の井の渡部景大さんをお呼びして、お二人のお酒を飲みながらバトルする会が開かれました。何をバトルかはわかりませんが・・・・ 

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松崎さんは福島県の南の天栄村にある小さな(生産高400石)松崎酒造の6代目の蔵元ですが、7年前に蔵の杜氏が倒れたということで、急遽蔵に戻って修行をして4年前から杜氏として酒造りをしています。酒造りを始めた初年度から全国新酒鑑評会の金賞を取り、その後4年連続金賞を取り続けている注目の若手杜氏で、現在30歳です 

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渡部さんは南会津にある比較的小さな(生産高1000石)会津酒造の9代目の蔵元ですが、勉強のため東京農大の醸造学部に行きました。卒業後蔵に戻ってすぐに、蔵の仕込み水が超軟水という特徴を生かした綺麗で柔らかい味わいのお酒の「山の井」というブランドを立ち上げて評判を呼んでいます。杜氏になったのは3年前で現在28歳です。 

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このお二人を若い時から見ていたのが、武さんでした。先見の目があったのか、偶然なのかはわかりませんが、愛情を持って見つめていたことは確かでしょう。 

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この写真、武さんがぶら下がっている感じですよね。実は二人の背丈が高いのです。確か渡部さんは180cmもあると言っていました。 

では早速2つの蔵のお酒を楽しみながら二人の酒造りを覗いてみましょう。 

まずは廣戸川からいきます。飲んだお酒は下図の通りです 

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左から、純米吟醸無ろ過生原酒、特別純米、普通酒、純米吟醸初しぼり生1年熟成、純米酒にごり生、純米吟醸火入れです 

お酒の説明に入る前の廣戸川のお酒の特徴を示します。 

・ 使用しているお米は福島県産の夢の香だけです(除く普通酒)。夢の香で全国新酒鑑評会で金賞を取ったのは廣戸川だけだと思います。夢の香は山形県の出羽燦々と広島県の八反錦1号と掛け合わせて造られたお米で、溶けやすく味の出やすいお米だそうで、使用する前に冷蔵保管するそうです。こんなところに秘密があるのかも・・・ 

・ 酵母は福島県で開発した うつくしま夢酵母と煌酵母(吟醸用)ですが、今年は純米吟醸にはM310もブレンドしたそうです。夢酵母は煌酵母を含む総称のようで、夢酵母の中には色々種類があるのでしょう。 

・ 火入れはすべて瓶燗火入をしていて、瓶に詰めた後63℃まで温度をあげて、瓶が割れないように霧状の水をかけてゆっくり冷やすそうです。急激な温度変化で風味を損なわないようにしているそうです。最近は急速加熱、急速冷却のプレートフィン熱交やパストライザーが使われいるようですが、風味を損なうのですかね・・・・・・確かに出品酒は皆瓶燗火入れだと思います。

それではお酒の詳細を説明します。 

1.特別純米 

Dsc_0228_2夢の香55%精米、ゆめ酵母の純米酒ですが、このお酒が松崎流の廣戸川のベースとなっているお酒だと思います。 

このお酒の味わいは独特で、イソアミル系の優しい香りが口いっぱいに広がり、口の中でゆっくりと膨らんでいき、そのままスウット消えていくバランスでした。このゆっくりと膨らむ感じがいいですね。 

お燗して飲んでみましたが、とてもフラットになり、お燗もなかなかイケましたね。

2.普通酒
 

Dsc_0225このお酒はこの蔵の古くからある普通酒ですが、去年から昔のやり方を保ちつつ、祐行流を取り入れて酒をつくっているそうです。 

呑んでみるとクリーミーな香りを感じながら、とろりとした味でありながらすっきりとした後味があるので、飲んで楽しい酒でした。 

このお酒の原酒は山廃並みのアミノ酸があって、冷蔵庫で熟成しているそうですが、熟成が遅いお酒だそうです。クリーミーな香りがどこからきているかはわからないようです。 

3.純米吟醸 生原酒(黒 

Dsc_0222黒ラベルはちょっと緑っぽく写っていますが、本当は黒に近いです。お米は夢の香ですが、麹米が50%精米、掛米が55%精米の純米吟醸です。 

今年は香りを出すために煌酵母にM310をブレンドしたそうですが、僕には余りわかりませんでした。 

呑んでみると口の中で旨味が上にぱっと広がり、後味の余韻もしっかりあるお酒でした。

4.純米吟醸酒 火入れ
 

Dsc_0223このお酒は夢の香50%精米の純米吟醸酒の火入れです。 

M310が入っているので香りが少し高くなっているようですが、ベースの香りは煌酵母の香りのような気がしました。 

口に含むと、柔らかい旨味が口の中で横に広がる感じで適度な酸味を感じて後味がいい酒でした。 

なかなか、火入れのお酒がいいですね。 

5.純米にごり酒 

Dsc_0230_2このお酒は夢の香60%精米の純米酒のにごり生酒です。 

4年目に初めて挑戦したお酒のようで、いわゆる生酒とは違って、とろみ感のある味わいでいて、後味が切れる良さがありました。 

お燗を飲みましたが、すべてがきれいに変化してしまい、なにか日本酒でない味わいとなったのには驚きました。お燗をした武さんに聞いたところ、一度60℃まで上げて、下げたお燗だったようです。お燗は難しい・・・・ 

6.純米吟醸 初しぼり熟成酒

Dsc_0219このお酒は去年の純米吟醸初しぼりの生酒をこだまさんのお店で1年熟成したお酒です。 

生で熟成しているので、生の熟成が進んでいて、僕には余り好みでないお酒でした。 

純米吟醸酒に今年はM310をブレンドして使ったそうですが、来年からは福島ゆめ酵母にするそうです。松崎さんはいつもチャレンジしているのですね。 

次に山の井のお酒を紹介します 

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 全部で5本しか映っていませんが、最後の1本はシトラスのリキュールなので、別途紹介します。 

左から、津の夏酒、山の井雄町50、山の井60、山の井黒、山の井白です。山の井は裏ラベルを見ない場合は色でわかるのですが、写真だと良くわかりません。 

それでは個別にお酒を紹介しますが、茶色い瓶の黒ラベルは写真をとりそこなっていましたので、勘弁ください。 

1.山の井 雄町50 火入れ 

Dsc_0208雄町50%精米の純米吟醸ですから、大吟醸スペックのお酒です。山の井は裏ラベルを見ても精米歩合は書いてありますが、お米の種類は書いてなくて、感じるままに飲んでくださいと書いてあるだけです。雄町も書いてなかったかどうかはチェックしていません。 

飲んでみると最初に丸い甘みが来て綺麗な酸味を感じながら奥に細く味が伸びていくバランスでした。一言でいえば洗練された綺麗な雄町かな。 

時間を置いて2盃目を飲んだら、マロっとした柔らかさが出てきてバランスが変わりました。僕は冷たいほうが好きかな。

2.山の井 白
 

Dsc_0212このお酒は五百万石60%精米の純米酒の薄にごりのお酒で、アルコール度数は15℃ですが、原酒だそうです。 

この蔵は酵母の説明はないけど、香りがリンゴ系なので、酢酸イソアミルが出る酵母ではないかな。 

飲んでみると、澱の甘みと香りが最初に来るけど、いつの間にか消えていくバランスでした。 

ラベルには何も文字が書いてないように見えますが、光を当て直すと字が読めます。凝るのはいいけどわかりやすさも考えてもらいたい気がします。かすかに見えますね。 

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3.会津の夏酒 

Dsc_0209渡部さんが初めて挑んだ夏酒で、60%精米の酒ですが、アルコール添加が書いてないので、純米酒のようです。でも純米酒かどうかは明記した方がいいと思います。

夏酒は一般的には軽くて飲みやすいものが多いけど、ある程度の軽さと旨さバランスさせたお酒のようです。飲んでみると確かに味はあるけど適度な酸味できりっとした軽さを感じる酒でした。 

このラベルは子供(自分の子ではないよね)に太陽の絵を色々と書いてもらって、選んだもののようです。確かにラベルにユニークさは感じます 

4.山の井 60 

Dsc_0218_2山の井60は山の井シリーズのスタンダードのお酒で、五百万石60%精米の純米酒です。 

飲んでみると柔らかな香りと、適度な甘みと酸味とのバランスの良いお酒で飲みあきしにくいお酒だと思いました。 

お燗をすると酸は同じですが、甘みが出てきた気がしました。 

5.山の井 黒 

このお酒は写真がありません。山の井50、60、70のお酒をブレンドしたもので、それを地酒やこだまで1年寝かしたののです。 

武さんに言わせると、もともとすっきりしたお酒でしたので、寝かせてみたとの話でした。飲んでみると確かに熟成香はあるけどそれほど強くなく、後味がすっきりしてなかなか面白い仕上がりでした。 

このお酒はお燗することにより口当たりが一層柔らかくなり、良くなりました。 

6.シトラス 

Dsc_0235このお酒は純米酒をベースにしながら柑橘系のリキュールです。シトラスとは柑橘を意味するようです。 

柑橘系でも ゆず、カボス、すだち3種類をブレンドしたもので、アルコール度数は10%です。飲んでみると酸味がすごく、甘みもあり、さわやかな果実酒という感じです。 

デザインにも凝って、アートディレクターで人気コミックの装丁やロゴデザインをしている島田英昭さんに頼んだそうです。確かにかっこいいですね。なかなか思いつかないデザインです。 

以上でお酒の紹介は終わりますが、最後にお二人これからどんな造りをしていきたいかの抱負を聞きましたので紹介します 

<松崎祐行さん> 

自分の造りの欠点は十分わかっているので、その弱点は他のところでカバーしてきたそうです。まずは酒つくりの基本的レベルを引き上げていきたい。そのためには現在の特別純米のベースを上げることを努力することをやっていく。これができれば他のお酒のレベルアップにつなげていけると考えているそうです。 

4年連続金賞を取っている酒つくりの技術は県の先生の指導が大きく、そのレシピどおりにやったらできただけと謙虚に考えているようで、これからはもっと自分自身の酒つくりの技術のレベルアップが大切と思っているようです。自分を外から見つめられる人なのだなと思いました。これからどう変化していくのかを見守っていきたいと思っています。 

<渡部景大>

今世の中にはないけど、自分の頭の中だけにあるお酒をつくることを目指してみたい。それはいつできるかどうかはわからないけど、一生目指してみたいと言っていました。そのお酒のイメージは雄町50や山の井白、山の井60が近くて、もっと後味がいつ消えたかわからないほどスーッと消えてしまうようなお酒だそうです。

渡部さんは新しいお酒へのチャレンジが好きなように思えましたが、最終の狙いをきちっと進めているのが素晴らしい。でも心の底には野心が結構あるような気もしました。これからどんな酒をつくっていくのか楽しみです

<まとめ>

二人のお話を聞いて感じたことは二人とも、造りたいお酒のイメージを具体的に持っていることでした。僕はお酒つくりは素人だけど、お酒に対する具体的イメージを持つことが大切で、それを実現する技術はその中から生まれるのかもしれないと思いました。

二人のお酒に関する僕のイメージは山の井口に含んだ時にすぐに旨味がぱっと広がり奥にい行かないうちに消えてしまうお酒に対して、廣戸川飲んだちょっとあとからゆっくり旨味が広がりゆっくり余韻を残して消えていくお酒だと思いました。どちらがいいかは好みの問題ですが、どちらも酒質がいいのでしょう。ほとんど辛みは感じませんでした

僕個人の好みは雑味、辛みのないお酒だと最近わかってきました

最後にこれを企画してくれた児玉武也さん、お料理をつくってくれた木暮宏行さんありがとうございました。最後に関係者の集合写真を載せておきます

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日本酒とお料理の相性はどうやればわかるか

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9月18日に諏訪酒造協会の主催で銀座NAGANOにおいて、諏訪の9蔵のお酒の飲み比べながら好きなお酒を購入できる会が開かれまして、その中で現在日本酒造組合中央会の技術顧問をされている須藤茂俊さんが「料理と日本酒の相性はビジネスチャンス」という講演がありましたので参加して来ました。今回は講演の内容についてまとめてみました。というよりは僕の備忘という意味合いの方が強いかもしれません。

銀座NAGANOは去年の10月に長野県の新しいアンテナショップとして生まれたお店で、長野県を代表する食材や伝統食、WINE、日本酒、ジビエ、果物、野菜をはじめ、信州の暮らしを感じていただけるさまざまな商品を取り揃えている店で、2階には各種のイベントを開催できるスペースを持っています。 

また、長野県が推進する信州の味覚が楽しめる「旬の信州味わいコーナー」もあり、買い物の合間、仕事帰りにふらっと気軽に立ち寄ることができます。場所は銀座4丁目の交差点からすぐのすずらん通りを入るとすぐ右側に見えます。 

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上の写真のハゲ店の先に縦型の旗に銀座NAGANOという字が見えますか。正面の写真をお見せしましょう。アンテナショップの割には意外とわかりにくいでしょう。 

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会場はそのビルの2階です。ここには観光インフォメーションコーナーが常設されており、奥がイベントスペースになっています。会場の中央が講演会用で20人強のこじんまりとしたものでした。周りに蔵のブースがありました。 

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早速く講演内容をご紹介します。講演者の須藤茂俊さんは現在61歳で東京農業大学を卒業された後国税局に入省され、酒類総合研究所で品質安全研究部門で永年研究をされ、現在は日本酒造組合中央会の技術顧問をされています。特に日本酒と料理の相性については永年研究をされてきて、2012年に日本醸造協会誌に「食品と清酒の相性評価法」という論文を書かれるなど、この分野での第一人者です。 

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中央の方が須藤茂俊さんで、右奥に写っておられる方は諏訪酒造協会の理事長で、豊島屋(神渡)の代表取締役の林新一郎さんです。 

今まで僕は日本酒の相性は濃い味のお料理には味の濃いお酒を、味の軽いお料理には味の軽いおお酒を合わせて、口の中でお互いが反発しないで、融け合うかどうかで判断していましたが、今回の講演でそんな単純なものではないことを知り、改めて目からうろこという思いでした。 

それではどんな講演内容だったか簡単にまとめてみます。 

<お料理と日本酒の相性とは何か>

・ 相性とはお料理を食べた後にお飲んだお酒がしっくりくるか、違和感があるかをいい、しっくりすれば相性がいい、違和感があれば相性が悪いということになります。 

<相性感性について> 

* お料理にもお酒にも独自の風味(香りと味がまじりあって一体化したもの)があるが、お料理を食べた直後にお酒を飲むと、次のような効果でお酒の本来の風味が一時的に変化した風味像ができる。 

・ マスク効果 お料理が甘すぎるとお酒の甘みが抑えられる 

・ 対比効果  お料理に酸味があると酒の甘みが強調される 

・ 相乗効果 お料理に旨味があるとお酒の旨味が強調される 

・ 塩分効果 料理の塩分があるとお酒の甘みと旨味をアップ
                   する
 

* お料理を食べた時に起こる味覚リクエストがお酒との相性を決めるようである。味覚リクエストとは何か。お料理を食べた時おいしかった時には、その料理の余韻を損なわないでほしいという思いが無意識に出るようであり、また逆に刺激が強すぎた時は口直しがほしいとか、美味しくないお料理の場合は風味を補ってもらいたいという意識が出るようであり、これを味覚リクエストというようです。 

お料理を食べた後にお酒を飲んだ時に、その味覚リクエストにうまく応えれば、しっくりして相性がいいということになり、対応できなくて違和感を感じれば相性が悪いことになるようです。ですから相性は個人によって違うし、その時の状況によっても違ってくるので、相性をチェックする場合は、どんな味覚リクエストが生じたかをセットで考えないと判断することはできません。難しいですね・・・・・ 

<簡易相性テストについて> 

相性のテストは非常に難しい。それは人は味は覚えられないようにできているからである。人間は味を忘れることにより、毎日リフレッシュして次の料理を美味しく食べる仕組みになっているからである。ですからテストした時は必ず記録することが重要だそうです。

味覚テストはテストをする人が事前に十分な訓練をする必要があるほど、厳密で難しいものですが、簡単な相性テストのやり方もありますので、そのやり方を紹介してくれました。 

1.まず相性の先入観を取り去る(先入観があるとそれだけで
  感じ方が変わります)
 

2.料理を1口良く味わい、その時どんな味覚リクエストを感じた
  かを、無理やり意識して確認する

3.料理を飲みこみ5秒以内に、日本酒を一口味わうが、日本酒
  
を意識しないで、味覚リクエストだけを考て味わう 

4.日本酒の味わいから味覚リクエストに応じられたかどうかを
  
感じて、相性を決定する



<相性の良い料理はどんなものか> 

お料理の味の特徴の中でお酒の風味を良くしてくれる味わいは以下の通りです。 

 強い旨味 → 酸味・苦味・渋みを和らげ、風味を美味しく芳醇
           にする
 

・ 適度な塩味 → 甘みと旨味の感度を上げて、美味しさを増す 

・ 強い辛味 → 日本酒の甘みが辛味風味を爽快にし心地よく
            する
 

・ 豊富な脂 → 脂肪が舌をコーティングし、刺激味を和らげ
                 
まろやかにする 

・ うま臭み → 臭みを軽減し風味を良くする(吟醸酒は合わな
           いので注意が必要)

<相性の悪い料理はどんなものか> 

お料理の味の特徴の中でお酒の風味を悪くするものは以下の通りです 

・ 強い糖の甘み → 甘みに感度が悪くなり甘みを減らして水っ
                               
ぽくし、苦渋みを増して風味を損ねる 

・ 豊富なたんぱく質 → アルコールや酸がたんぱく質を変性
                               してざらざらとした成分となるので苦
                 渋みがます
 

・ 日本酒対照香 → 香りを強調するので、臭みを増して
                                風味
を損ねる 

<相性の良い具体的なお料理の例> 

・ 強い旨味や適度な塩味をがあるもの 

  魚の塩焼き、ハマグリの吸い物、ナマコのポン酢、
    ちゃんこ鍋、金目鯛の刺身
など

・ 豊富な脂肪や強い辛み 

  カワハギの肝、カマンベールチーズ、辛子明太子、
    豚肉の味噌漬
など

<相性の悪い具体的なお料理の例> 

・ 強い糖の甘み 

  栗きんとん、うの花、牛肉のパイナップルソースがけ、
    甘い煮つけ
など

。 豊富なたんぱく質 

  ロース豚カツ、めばちマグロのたたき(たんぱく質がミンチ状
    で出やすくなる)、春巻、
ヒラメの刺身(筋肉質のタンパク質) 

その他にも色々な例がスライドで示されましたので、そのスライドをお見せします。クリックして大きくしてみてください。個人的には本当かなとおもわれるものもありますが、永年の研究で出来たものですから、正しいのでしょう。参考にしてください。 

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ヒラメの刺身は相性が悪い代表で書いてありますが、これもお料理の仕方で相性が変わるので、そのつもりで見てもらった方がいいと思います。たとえば、ヒラメの場合は昆布〆にするとか煮つけにすれば相性が良くなるし、豚ロースのカツもひれカツにして少し強めに揚げれば良くなるそうです。 

<相性の良い日本酒はどんなお酒か> 

これは結論から紹介します。 

・ 酸味と苦渋味が弱く、糖の甘みが強くなく、アルコールの甘みが強く、吟醸香や芳醇香などの心地よい香りがあるものということのようです。 

これを一言で表すと「味がなめらかな」酒質といっていいそうです。 

この中でちょっとわかりにくいのは「アルコールの甘み」ではないでしょうか 

<アルコールの甘みとは> 

日本酒の甘みは糖の甘みとアルコールの甘みが混じったものです。アルコールの甘みはアルコールの濃度が15%の時ブドウ糖の1.5%の甘みに相当するようです。しかもアルコール濃度が増えるほど強くなるようで、アルコール濃度が15%を超えると特に感じやすくなるので、原酒が甘く感じるのはその効果のようです。 

Imgp02801_2アルコールは刺激、苦渋み、辛みを持っていて、通常はこれが甘みと相殺されてあまり感じないことが多いらしいですが、良い水に出会うと左のように、水が苦渋みや辛みと融合して抑えてくれるので、甘みを強く感じるようになるそうです。 

良い水とは蔵の仕込み水です。仕込み水は蔵によって違うけど、一般に甘みを引き出せる効果があるようです。

アルコールの甘米は糖の甘みの違いをどのように見極めるのかは説明がありませんでした。 

<日本酒の心地よい香りとは> 

香りの成分は色々ありますが、良い香りを出す成分はイチゴの香りを出す酢酸エチル(セメダインの香りにもなる)、バナナの香りを出す酢酸イソアミル、リンゴの香りを出すカプロン酸エチルの3種類が有名です。 

日本の代表的な銘酒の香りを下記のような表に纏めてみると一つの線になることがわかったそうです。この線に乗っているお酒が心地の良い香りと言えそうです。こんな表は初めて見ました。特に最近に人気の香りは左の方にあるようです。 

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<お料理と日本酒の合わせ方はどうするか 

・ 相性度の高いお料理にはどんな相性度のお酒を合わせても
  いい。
 

・ 相性度の中庸なお料理には相性度の高い日本酒を合わせる 

・ 相性度の低いお料理には日本酒は合わせない方がいい。

日本酒の相性度の高いものを選べばよいことになります。

<どのように味つけすれば相性度の高いお料理になるか> 

料理の味付けは大変重要で、料理にプラス要素を増やしてマイナス要素を減らす味付けをするのが良い。例を下に示します。

・ 鯛の刺身は皮つきの湯引きにする 

・ ヒラメの刺身は昆布〆にする 

・ ポン酢の合わせはどれも日本酒に合う

・ 洋風の辛みでなく和風の旨味のある辛味を使う。
    山椒、胡椒、ニンニク、ワサビなど

以上で先生の講演の内容の紹介は終わりますが、僕は最初に書いたようにお料理とお酒を同時に口にした時に、お料理とお酒の味わいが口の中でばらばらにならないで、融合すれば、相性がいいと思っていましたので、先生のやり方は実施したことはありません。先生のお話では料理が口の中にあった時に飲んで相性を見るのも間違いではないそうです。

僕には特に味覚リクエストとという感覚がないので、これからはこれに気をつけながら飲んでみることにしましす。今までどんな料理が相性の高いかということもこんなに整理して考えたことはありません。旨味や塩味は大切だと知っていましたが、辛味や脂肪が多いものが合うなんて知りませんでしたので、これについてもためしてみます。

大切なことは自分で体験してみることだと思いますので、皆さんも実験してみてください。

最後に講演会の後で試飲をした諏訪の9蔵を紹介します

御湖鶴 菱友醸造(下諏訪) 

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 真澄 宮坂醸造(諏訪市)

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 本金 酒ぬのや本金酒造(諏訪市) 

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 高天 高天酒造(岡谷市)

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 麗人 麗人酒造(諏訪市)

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 横笛 伊東酒造(諏訪市)

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 舞姫 舞姫酒造(諏訪市) 

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 ダイヤ菊 諏訪大津屋本家酒造(茅野市)

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 神渡 豊島屋(岡谷市)

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泉酒造の仙介と琥泉を飲んだことありますか

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僕が泉酒造の仙介に出会ったのは2011年に大塚のななみや(今は名前を変えています)で開かれた仙介の会です。この会がどのような仕組みで開かれたかはよく覚えていませんが、蔵からは杜氏の和気卓司(わきたくじ)と営業の永井正明さんが来られて、お酒のご紹介を受ていろいろなお酒を飲むことができました。その時のことはその時の内容は下記のブログを読んでください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-2418.html 

この度千駄木の稲毛屋仙介の会が開かれると地酒屋こだまさんから聞いて、久しぶりに飲んでみようと参加を申し込みました。稲毛屋の会は今流行りの蔵元をお呼びしての会が多いのですが、仙介はまだ東京では余り知られていないのに、今回はどういうわけか、この稲毛屋で行われました。行ってみてその理由がわかりました。稲毛屋で働いている日本酒ナビゲーターの小栗あさんが仙介のお酒が大好きで、企画したそうで、それをサポートしたのが児玉武也さんだということがわかりました。なるほどそういうわけだったのですね・・・

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左の方が店長の当間光浩さんでお隣の方が小栗あさんです。お二人とも学習院大学卒業のインテリさんですよ。知っていましたか? 

さて僕は稲毛屋の会には時々参加していますが、この会の良いところは一晩で非常にたくさんの種類のお酒が飲めるので、蔵の味を知るのにはとてもいいのですが、僕のようなブローガーにはとても取材しにくいお店です。それは飲むお酒の順番がお客好みで持ってきて飲むので、飲んでいるうちに飲んだかどうかもわからなくなること、お酒の説明がないままに飲むので、味とお酒の情報がつながらないこと、蔵元さんとお話をする時間が少ないことが挙げられます。 

今回も基本的には同じ状態でしたが、今回はワザワザ蔵元さんのところにいったり、お酒を納入している地酒屋こだまさんに聞きに行ったりしましたので、いつもより情報を得ることができましたので、ブログに書くことにしました。 

でもお酒の一つ一つの紹介を詳しくはしませんが、いただいたパンフレット情報だけは載せておきます。飲んだお酒をざっと見てください。仙介7種類、琥泉4種計11種類のお酒を飲んだはずです。 

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お酒の紹介は後にするとして、まずは蔵のお話と今回来ていただいた杜氏と営業の方を紹介します。 

泉酒造は神戸市の東灘区の大手の酒蔵の多い地区で、創業も260年前ととても古い老舗の蔵で震災前の生産高は3000石あったそうですが、平成7年の阪神・淡路大震災で蔵のほとんどを焼失する大被害を受け、蔵の再建を断念して親せき筋の香川県の蔵に委託生産を続けてきたそうです。 

蔵の娘さんだった泉藍(あい)さんは神戸芸術大学を出て、美術関係の仕事をしていましたが、両親の希望で平成16年に蔵に戻ってきて、若い人を中心に蔵の再建を目指し、平成19年にやっと再建できたそうです。そこから造り始めたお酒が仙介だそうで、これは蔵の再建を願っていた亡き祖父の泉仙介の名前を取ったのだそうです。 

お酒の生産量は当初は100石位でしたが、徐々に増えてきていて今年は300石強になるそうです。取締役の藍さんのお話によると、日本酒と言えば和食のイメージがありますが、それを超えて日常的に食べる家庭料理やイタリアンや焼き鳥などに合わせて飲めるお酒を目指しているそうで、蔵の再開から8年目を迎えてやっとその方向が見えてきたとのことです。 

ではそれをつくっている杜氏さんが和氣卓司(わきたつじ)さんを紹介します。昭和48年生まれ42歳で、丹波杜氏組合の所属していますが、なかなかの経験を持っておられます。 

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和氣さんは神戸市出身ですが、熊本工業大学の微生物関係の学科に入り、卒業後震災翌年の平成8年に灘にある蔵に入社したそうです。ここで12年間修業をした時に蔵が廃業することになり、自分の師匠の従兄がこの蔵の杜氏をしていたので、自分の弟子を行かせるからということで、この蔵に入ったそうです。蔵に入ったのが7年前の平成20年で、杜氏になったのが5年前の平成22年だそうです。蔵におられた丹波杜氏は高齢のためおやめになり、和氣さんが後を継いで現在に至っています。こだまの武さんの話ではユーモア一杯だけど頑固なの職人気質の人だそうです。

和氣さんが出した新しいブランドが、琥泉です。仙介は麹米が山田錦ですが、琥泉は麹米が五百万石で、掛米が一般米です。きっと値段をリーズナブルにして飲みやすい食中酒を狙ったものだと思いますが、琥珀色のお酒という意味で琥泉と名付けたそうです。どんなお酒かは後で紹介します。 

営業の永井正明さんは阪神・淡路大震災の1年前にこの蔵に入社され、廃業同然の時代を泉酒造とともに歩んできた、ベテラン営業マンです。震災後は大変ご苦労されたと思いますが、今のようになったことを一番喜んでいる人の一人でしょう。お歳は和氣さんの一つ上の43歳だそうです。 

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児玉さんに、この蔵との関連をお聞きしましたら、もともと友人からの紹介で震災後2年目に蔵を訪問して藍さんにお会いしたのが始まりだそうです。その後蔵が再開して、取引を始めた時には、まだ和氣さんはおられなかったそうです。震災直後からずっとおつきあいしているのは、さすが、児玉さんは見る目がありますね。児玉さんが育てたわけではないけど、暖かく見つめてきたことは間違いないです。

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では早速飲んだお酒を簡単に紹介します。

Imgp01531.仙介大吟醸 

山田錦35%精米の大吟醸で、搾ったままの生詰めを1回火入れしたものです。酵母は自社酵母ですが、7号系だそうです。飲んでみるとほどほどの香りと味のバランスが良く、僕の好な酒でした。これが1升5000円だそうですからお買い得ですが、でも本数が少ないそうです。 

2.仙介大吟醸無ろ過生原酒 

1番のお酒の生原酒で、非売品だそうです。口に含むと炭酸があるので、酸味を感じますが、いろいろな味を感じとれる楽しいお酒でした。時間を置いて飲むととてもバランスが良くなりました。 

Imgp01543.仙介純米大吟醸しぼりたて生原酒 

山田錦48%精米の純米大吟醸で、1番のお酒に比較すると後に雑味を感じるのは磨きの違いだと思います。でもフレッシュなのに味わい深さを感じるお酒でした。これが1升4000円を切って買えるのらいいのでは。 

4.仙介純米大吟醸おりがらみ生原酒 

3番のお酒に澱を絡めて瓶詰めした生原酒です。澱がらみになるとどうしても澱の味が強く出るので、僕は澱がらみよりは搾りたてのバランスの方が好きでした。

 

Imgp0157_25.仙介特別純米しぼりたて無ろ過生原酒 

麹米が山田錦65%精米、掛米が五百万石65%精米の純米酒です。適度な酸が効いて味わいもあり良いバランスのお酒だと思いました。このお酒がこの蔵のベースのお酒ではないかと思いました。 

6.仙介特別純米おりがらみ無ろ過生原酒 

全量山田錦65%精米の純米酒で、5番のお酒より香りが高く甘みを感じるお酒でした。香り系の酵母を使っているそうですが、何だったのでしょうか。5番のおお酒より1升200円ほど高い3240円だそうです。

 

Imgp01627.仙介特別純米ひやおろし 25BY 

冬絞ったお酒を1回火入れをしてタンクで貯蔵して秋に出したひやおろしをさらに1年熟成したお酒です。僕には香りも味も今までのお酒と別次元のお酒で合わなかったな。 

8.琥泉 純米吟醸無ろ過生原酒 

麹米を五百万石60%精米、掛米が兵庫県産の一般米を使った純米吟醸酒です。伸介のお酒とは違う素直であっさりした味わいですが、軽いわけではない中々よいバランスのお酒でした。1升3024円だそうですからいいと思いますよ。

 

Imgp01659.琥泉 純米無ろ過生原酒 

麹米が五百万石70%精米、掛米が一般米の純米酒で、搾ったお酒をそのまま瓶詰めし、-4度の冷蔵庫で貯蔵したお酒です。飲んだ印象はあまり残っていませので、コメントしません。 

10.琥泉 純米吟醸 夏の原酒 

8番のお酒とほぼ同じスペックですが、1回瓶燗火入れをしたものです。香が立ってきてすっと飲めるので、初心者にもいいお酒のように思えました。 

11.琥泉 純米酒 

このお酒は全く記憶にないので紹介はしません。 

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、このブログを書いてみて、稲毛屋の会でのお酒の紹介はなかなか難しいことを改めて感じた次第です。でもお酒を楽しむにはいいお会ですからまたおじゃましますのでよろしく。

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茨城県の今年の金賞受賞蔵を知っていますか

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今年の10月9日に茨城県酒造組合主催で、茨城地酒祭りが浅草の花やしき行われました。この日は同じ日に山口県、千葉県、群馬県、茨城県の酒造組合主催の試飲会が行われましたので、一遍に2か所行ってみようと、昼間の群馬県の試飲会に参加した後、茨城県の試飲会に参加することにしました。 

茨城の地酒祭りは今年で5年目ですが、初回に行った時は花やしきの半分の場所を使ってのイベントでしたので、狭くてあまりじっくり飲めなかった思いがあります。現在は花やしき全体を使ってのイベントになったこと、去年から茨城県の全国新酒鑑評会で金賞を取る蔵が急増したので、その原因を勉強するために参加することにしました。 

花やしきは浅草に古くからある遊園地ですから、そこでどうやってお酒祭りをやるのかイメージできますか。花やしきの紹介に使われているイメージ図をお見せします。 

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クリックして大きくしてみてください。中央に池や公園があり、それを取り囲むように通路があり、その通路の脇にブースをつくって、食事や試飲ができるようにレイアウトされていました。 

下の写真は入口に近いところの様子です。まさに遊園地の中という感じですね。 

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下の写真は池の脇のところの様子です。結構趣のある場所となっていました。 

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基本的に会場には屋根はありません。雨が降ったらどうするのでしょうね。今まで雨が降ったことがあったかどうかを聞くのを忘れました。 

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会場の入り口の脇には今年の全国新酒鑑評会の出品酒が並んでいましたが、これに気がついたのは会が終わるころでしたので、ほとんどの瓶が空になっており、試飲はできませんでした。こんな企画があるとは知りませんでした。来年からは入り口で会場のレイアウト図をつくって配ってもらいたい気がします。どこにどんな蔵、どんな企画展があるかわからず、飲むしかないことになるものですから・・・・・・・ 

これで会場の雰囲気をわかってくれたと思いますが、この中で今年の全国新酒鑑評会で受賞した蔵を探すのは大変なことでしたが、何とか時間内で10蔵を試飲することができました。とりあえず、試飲した順番に紹介してみたいと思います。 

1.青木酒造 御慶事 

この蔵は東北本線の古川駅のそばにある蔵で、創業は江戸末期の1831年の歴史があるそうで、銘柄の「御慶事(ごけいじ)」は三代目当主が大正天皇御成婚の折、皇室の繁栄と日本の国のますますの隆盛への願いを込めて「最高のよろこびごと」という意味で「御慶事」と命名したそうです。生産高は300から400石ぐらいと小さな蔵で、主に地元で飲まれているようです。 

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写真お二人は蔵元の奥様の青木弥生さんとその娘さんです。娘さんは看護師をしていたのですが、一昨年より蔵を手伝っているそうで、お酒のことが良くわかっていました。高校生の弟が蔵の仕事ができるようになるまで、頑張るそうです。お二人には今年と去年の金賞受賞酒を持ってもらいました。 

金賞酒はしっかりした味わいで、なかなかいい出来でした。お米は山田錦で、酵母は10号系M310酵母だそうです。杜氏は福島県出身の南部杜氏で、最近代わったばかりの48歳ですが、冬場だけ出かけてきている杜氏だそうです。過去の受賞歴を見ますと過去20年間で8回の金賞受賞は杜氏の腕が昔から凄い人だったのでしょうね。だからこの味が出せるのでしょう。 

2.廣瀬商店 白菊 

この蔵は茨城県の石岡市にある蔵で、創業は1805年ですからすでに210年も歴史のある蔵です。この蔵の特徴は万人受けをするずっと飲み続けられるような酒つくりだそうで、決して刺激的な美味しさがなくても体が無意識にほしがるようなお酒だそうです。 

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写真の方はブースの女性の方で、たまたま蔵元さんがおられず、蔵人の男の人がおられただけでしたので、女性にお願いしただけです。 

手に持っているのは今年の金賞受賞酒です。この蔵も酵母はM310で、青木酒造さんの金賞受賞酒とおなじ味のバランスを感じました。常温で飲みましたので、甘みを結構かんじるうまい酒でしたが、もう少し後味のきれがほしい気がしました。でも、これをベースにして造った市販の大吟醸はすっと飲めるお酒に仕上がっていました。 

Imgp0366会の終わりにもう一度ブースの寄りましたら、8代目の蔵元の専務取締役の廣瀬慶之助さんにお会いできました。後ろの明るいネオンのせいで変な写真になってすみません。 

手に持ってもらったお酒は金賞受賞酒でしたが、飲んだお酒はオヤジナカセというお酒でした。山田錦の大吟醸レベルのお酒だそうですが、この酒米をつくっている兵庫県の農家のせがれが初めて造ったお米で、このお酒を、親父に飲ませたらこれは旨いと泣いたエピソードからつけたお酒だそうです。飲んでみましたら中々いいバランスのお酒で、この蔵の造りがわかる気がしました。 

蔵の生産高は500石位と小さいです。この蔵も昔からの杜氏制を維持していて、専務は造りには余り介入しないようにしているそうですが、酒質にはこだわりがあるように思えました。金賞受賞回数は過去20年間で5回でした。 

3.岡部合名会社 松盛 

この蔵は常陸太田市にある蔵で、久慈川の上流の里川流域の水田地帯にある水とお米に恵まれたところにあります。創業は明治8年で、代表銘柄の「松盛」は屋敷内の松と酒の神様の松尾大社が栄えるようにと命名したそうです。 

生産高は600石位ですが、日本酒だjけでなく焼酎やリキュールにも力を入れている蔵です 

Imgp0358写真の方は社長の岡部守博さんです。持っていただいたお酒は大吟醸の松盛と純米吟醸の岡部です。 

金賞受賞酒は持ってこられなかったので、代わりの大吟醸を飲みましたが、この酒もお米は山田錦45%精米で、酵母はM310だそうで、他の蔵の金賞受賞酒のバランスによく似ていました。飲み口同じでも蔵によって後味に差が出るようです。 

純米吟醸岡部は静岡酵母で香りがイソアミル系のさわやかな香りで、飲みあきしないお酒に仕上がっていました。これはなかなかいいですよ。このお酒の中身を詳しく聞くのを忘れてしまいました。この蔵も全国新酒鑑評会で金賞を過去20年間で10回も取っている蔵なのですね。知りませんでした・・・・・ 

4.吉久保酒造 一品 

この蔵は水戸の偕楽園のある水戸市の本町にある蔵で、創業は寛政2年(1780年)ですから200年以上の歴史がある蔵です。もともと米を商う商人だったのですが、急遽酒造りに変身して成功したそうです。今の一品のブランド名をつくったのが明治の初めと聞いています。蔵の生産高は聞き忘れましたが、従業員が23人いるようですので、2000石位はあるのではと思われます。 

Imgp0359写真の方は蔵人の方ですが、お名前はお聞きしませんでした。山形県の東北泉の名杜氏であった佐々木勝雄さんを杜氏として招き入れたのが平成15年ですが、今も御活躍ですかとお聞きしたら、去年お辞めになたそうです。 

金賞受賞酒はなかったので、他のお酒を飲ませていただきました。純米吟醸の雄町は佐々木杜氏の造りとおなじと聞き、飲みましたが東北泉の酒とはちょっと違うなと感じました。 

このお蔵はM310と9号酵母を使い分けているようですが、短稈渡の純米吟醸は香り高く綺麗なバランスでしたので、このお酒を持ってもらいました。 

この蔵も過去20年間で金賞を9回も取っていたのですね。 

5.野村醸造 柚美人 

関東鉄道常総線の石下駅の北にある蔵で、創業は明治30年で、土着系の酒蔵として百十余年になります。酒銘の由来は当地が千年の歴史ある結城つむぎの産地であり、紬美人といたそうです。 酒質は柔らかく、すっきりと切れが良いのが特徴だそうです。蔵の生産高は1000石弱と思われます。今年の豪雨で鬼怒川が氾濫し、蔵が冠水して大変だったそうですが、仲間の支援を受けて、11月中の復旧の目途が立ったそうです。 

Imgp0360写真の方は代表取締役の野村一夫さんで、持ってもらったお酒は出品酒とおなじ造りの大吟醸です。酵母はM310だそうで、飲んでみると優しさがあって、この蔵の特徴が出てるようでした。なかなかいいですよ。 

この蔵の杜氏は55歳の南部杜氏ですが、他の従業員は皆社員だそうです。平成11年に入ってきた新人が杜氏の指示通りに素直に造ったら、初めて金賞が取れたそうです。なまじっか他の蔵の経験があると、無意識に我流が出てしまって失敗するとおっしゃったのが印象的でした。 

過去20年間で6回金賞を取っているそうですが、31歳の息子が早く一人前になるのを望んでいるそうです。 

6.磯蔵酒造 稲里 

磯蔵酒造は茨城県笠間市稲田地区にある蔵で,、創業は江戸時代末期だそうです。この地区は古くから稲の郷と呼ばれ、御影石の台地から湧き出る良質の水(石透水・軟水)があることから酒造りの絶好な地域だったそうです。 

この蔵は明治元年に稲里を酒名とした磯酒造店を開業させたそうです。この蔵は生産高が1500石もある立派な蔵ですが、酒造りは今の時代に流されないぶれない酒造りをしているようです。ですから過去に全国新酒鑑評会で金賞を取ったのはたった3回だそうです。

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左の人は営業の方で、右の人が社長の磯貴太さんです。初めに訪れた時は社長がおられませんでしたので、女性に大吟醸をもってもらいました。大吟醸は山田錦38%精米ですが、柔らかい落ち着いた味わいで、同じ山田錦50%精米の純米を飲みましたが、切れがあるけど旨味の表現に遊びがある味わいでした。随分個性のある酒造りをする蔵だと感じました。 

2度目の訪れた時に社長のお会いして、造りのことをお聞きしました。お酒をつくる時には、最初にどんなお酒をつくろうかを考えるそうで、三日月のようなシャープお酒をイメージしたら、ラベルも三日月にして、深海の鯛に合わせるお酒をイメージした場合は、味がふんわりと、風のような余韻を持たせたくなり、お米は500万石、ラベルは風となるそうです。これが社長の流儀だそうです。 

ですから、金賞を取るための酒つくりはしていないそうで、ここ2年連続で金賞を取れたのは、たまたまで、嬉しいけど狙っているわけではないそうです。社長はお姿だけでなく考え方もユニークで、面白い方ですね・・・・・ 

7.月の井酒造  

この蔵は大洗町にある蔵で、創業が慶応元年だそうですから、ちょうど150年になる蔵です。大洗町には酒蔵は1件だけだそうですから、大洗の食材に合わせた酒造りをしているのが特徴のようです。蔵の生産高は500石位だそうです。 

Imgp0362写真の方は製造部長の山田博さんです。持っていただいたのは大吟醸の月の井ですが、酵母はM310だそうで、味が軽めのお酒でした。その味では金賞は無理だなと思ってお聞きしたら、金賞酒は1801系酵母を使ったそうですが、今回は飲めませんでした。過去20年間で6回の金賞受賞です。

この蔵の代表は坂本啓子さんで、御主人ががんでお亡くなりになり後を継いだそうです。その闘病記は「さいごの約束」として出版され、テレビドラマ化もされたそうです。その約束で出来たのが「オーガニックの日本酒」の「和の月」で、有機認定の美山錦80%精米のお酒ですが、この時飲み忘れてしまいました。次回は是非飲んでみたいと思っています。 

8.武勇(株) 

この蔵は紬の里の結城市にある蔵で、創業は江戸末期だそうで、初代の保坂勇吉が「荒武者のような力強い酒を」と造った蔵だそうです。社長は5代目の当主で長男の保坂嘉男さんで、次男の保坂大二郎さんと協力してやっているそうです。 

杜氏は代々越後杜氏でしたが、現在は地元の結城杜氏が酒造りをしているそうです。山田錦は兵庫県産、五百万石は富山県産、雄町は岡山県産とこだわった造りをしていますので、しっかりした蔵だと思いましたが、生産高は1000石だそうです。 

Imgp0363写真の方は蔵人の深谷篤志さんで、純米吟醸の和(和やか)と辛口純米酒を持ってもらいました。今年の金賞は久しぶりの受賞(過去20年間で2回目の受賞)だそうですが、茨城県工業技術センターの先生の指導を受けて、先生の言う通りに造ったら金賞を取れたそうです。取れたのは嬉しいけど、ちょっと悔しい感じもするそうです。 

金賞受賞酒の酵母は1801系を使ったそうです。和はお米は雄町58%精米で、酵母は1801系と9号系のブレンドだそうです。飲んでみましたら、綺麗な香りとベ全体にうまくまとまったお酒でした。この蔵のお酒はあまりインパクトを出さない造りのようで、ちょっと特徴がないような気がしましたが、久振りに金賞を取ったのですから、来年以降が楽しみな蔵です。 

9.宏和商工 日立酒造工場 二人舞台 

この蔵は豊島区の東池袋にあるブライダル関連の商売をしている㈱宏和商工のお酒の製造部門を言います。工場は日立市にありますが、写真を見る限り昔からの造りの蔵のようです。酒造免許を取ったのが2006年10月で、工場開設が2006年11月ですから、どのかの蔵を買収したのではないでしょうか。詳しいことはわかりません。蔵の生産量は2000石位のようです。 

Imgp0364写真の方は酒造り担当の営業マンで、持っていただいたのは今年の金賞受賞酒です。飲んでみましたら、中々品の良いお酒で、味が綺麗でバランスの良いお酒でした。酵母は9号酵母だそうです。金賞を取ったのは去年が初めてで、今年が2回目だそうです。その秘密を聞くのを忘れてしまいました。 

生酛つくりの純米吟醸も飲みましたが、生酛らしい酸味で、味のバランスをうまく造っていますが、僕には何かが足りなく、心に突き刺さらない優等生のお酒のような気がしました。 

杜氏は社内杜氏で、長岡さんと言うようですが、この工場の代表者も長岡さんでしたのでどうなっているのかわかりません。 

10.根本酒造 久慈の山

この蔵は水戸と郡山を結ぶ水郡線で北に1時間ほど行った山方宿の近くの久慈川沿いにある蔵です。創業は慶長8年(1603年)ですから約400年前であり、茨城県では須藤本家、藤田酒造店に次ぐ歴史を持つ蔵だそうです。生産高は800石位だそうです。 

酒造りも昔から技術力があり、35年前に大吟醸の久慈の山を出すなど、吟醸酒を得意としている蔵のようです。全国新酒鑑評会でも過去20年間で11回の金賞を取っている実績があり、茨城県では最も多くの回数受賞している蔵です。 

Imgp0365写真の方は20代目の当主である根本朗裕さんです。凄くお元気な方で、社長ですが午前中は蔵人として造りを手伝っているそうです。 

金賞受賞酒はありませんでしたが、最近出した新しいブランドの上丸(かみまる)の純米大吟醸と純米吟醸を飲みました。純米大吟醸は美山錦40%精米で酵母はM310です。旨味が綺麗でバランスの良い美味しいお酒でした。 

純米吟醸はひたち錦55%精米で、しっかりした旨味があるけど、後味はすっきりしたお酒でした。今までいた南部杜氏に代わって社員杜氏になったばかりですが、金賞を取れたのでほっとしているそうです。 

以上で今年金賞を取った10蔵の紹介を終わります。 

<全体の印象>

全国新酒鑑評会の金賞を去年が11蔵、今年が10蔵とるようになったわけを、調べるためにこの試飲会に来たのですが、その理由を来福の藤村社長に教えていただきました。3年前から、茨城県酒造組合の技術部会が中心になって、蔵元よりも社員の人を対象に、外部から先生をお呼びしたり、他の県の蔵を見学したりする勉強会をしているそうです。武勇の蔵人の深谷さんが言われたように、茨城県の工業技術センターの先生の指導も良かったのだと思います。確か福島県が金賞受賞蔵が多いのも工業技術センターの先生の指導が良いからという話を聞きましたので、そういうことなのでしょう。

それから茨城県は創業の古い蔵が多く、その古さでは日本のトップクラスだということ、過去の金賞を受賞している蔵が多いこと、金賞受賞蔵の大部分が1000石以下の小さな蔵であることを初めて知りました。その割には茨城県の蔵の知名度はあまりないですね。僕が知っていた蔵は、来福、郷の誉、大観ぐらいでしょうか。実力のある蔵が多いので、もっとPRをすべきだと思いました。僕は東京在住なので、関東地方の蔵の味をもっと勉強しようと勉強しなければと心を強くしました・・・・・・・

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京都の出町柳の「やおや」は凄いお店です

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10月半ばのことですが、1年ぶりに京都の出町柳にある高級居酒屋「やおや」でたっぷりと日本酒とお料理をいただきました。「やおや」と言えば日本酒通の人ならだれでも知っているお店で、一度はおじゃましたいお店です。今回は翌日京都で行われるお酒のイベントの前日に、東京から日本酒仲間4人でお邪魔したわけです。 

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僕は今回2回目の訪問でしたが、今回はここにしかないプライベートの日本酒を含めて、貴重なお酒とこれまた珍しいお肴料理を心行くまで楽しめましたので、僕の備忘録としてブログに纏めてみることにしました。場所は出町枡形商店街アーケードをからちょっとわき道に入ったところにありますが、大きな杉玉が目印です。でも下の写真には写っていませんが、この店の右端の上の方にあります。 

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やおやは日本酒漫画家の高瀬斉さんが主宰する呑ムリエ会の京都支部になっている場所だそうです。この店の大将の中山昌士さんは京都支部の会長をされています。お店の調理場から顔を抱いていただきました。写真をクリックすれば大きく見えますよ。 

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今回4人で飲んだお酒は全部で15本で、すべて1合を皆で分けたので、一人4合弱のお酒を飲んだことになりますが、気持ちよく飲んで全く悪酔いはしませんでした。それでは早速お酒とお料理紹介します。 

1.14代純米吟醸 白鶴錦 2.14代純米大吟醸 龍のおとし子 

Dsc_0159白鶴錦白鶴酒造が山田錦の原点に戻り、母系の山田穂と父系の渡船を交配させて高級な山田錦をつくることを試みました。その米の選抜を繰り返して、8年目の2003年にできたのが白鶴錦だそうです。今の山田錦に比べて、心白が大きく味わいも深いそうです。 

右側の緑の瓶が高木酒造が白鶴錦50%精米を使って造った純米吟醸生詰めです。 

龍のおとし子は高木酒造が開発したお米で、父系に山田錦と金門錦をかけあわせた「山酒4号」、母系に美山錦を交配させて造った酒米です。龍のおとし子は高木酒造でしか使用できませんが、父系に美山錦、母系に山酒4号をつかった「酒未来」は他の蔵でも使えるようです。 

左のお酒が龍のおとし子40%精米の純米大吟醸生詰めです。全量龍のおとし子ではなく麹米としては山田錦を20%使っているようです。 

どちらのお酒もうまいけど、白鶴錦の方がちょっとシャープな感じで温度を上げて飲んだ方がふくらみが良くなる感じがしました。龍のおとし子は口に当たる時の甘くてマイルドな感じが良く、余韻がとても良かった気がしました。 

お料理1.お通し 立派なものでした。 

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お料理2.徳島県のまるはぎ 肝が立派でした。まるはぎはカワハギの一種のようで、この店の水槽で泳いでいたものです。 

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 3.百楽門 特別純米 冴 

Dsc_0163このお酒はまるはぎに合わせて出していただいたお酒で、奈良県の葛城酒造の百楽門 特別純米の超辛口です。 

備前雄町100%使用の60%精米で、酵母は協会9号で、日本酒度は+10、酸度は1.4、アミノ酸0.9、アルコール16~17度の特別純米です。 

表示の超辛口と言うほどでなく、飲んだ後に少し辛みを感じる程度で、旨味はやや抑えぎみで、淡白な味のお料理には合うと思いました。 

4.月の桂 純米吟醸 柳   

Dsc_0166_2このお酒は京都の増田徳兵衛商店の月の桂 純米吟醸酒柳の生酒です。このお酒もこの店のプライベートブランドだと思います。 

麹米が山田錦50%精米、掛米が夢錦50%精米で、酵母は9号酵母、日本酒度+4、酸度1.7、アルコール度16度のお酒でした。

落ち着いた香りとやさしく広がる旨み、上品な喉ごしが良いお酒で、やっぱり生は違うなーという感じでした。僕には後味少し違和感があったけど、問題ありません。
 

5.而今 純米吟醸 雄町

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このお酒は三重県の木屋正酒造の而今 純米吟醸無ろ過生酒 全量雄町の酒です。このお酒はプライベートブランドではないと思いますが、中々手にはいらないお酒です。 

酒米:雄町50%精米、酵母:9号酵母、日本酒度:±0、酸度:1.8
アミノ酸度:1.5、アルコール度:16.0です。しかも2014BYです。
 

熟成しているけど、フレッシュで、とろっとした感じで、立ち香は、心地よく、含むと酸のバランスが良く、いろんな味わいを感じます。ひね香は全くなく、後味に伸びがあり、而今ってこんなにおいしかったかなという感じでした。 

料理3.仙鳳趾の牡蠣 北海道釧路町の厚岸湾仙鳳趾の牡蠣はやっぱり牡蠣の王様です。身が大きく、締まっていながらミルキーな甘みあっる牡蠣でした 

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6.不老泉 山廃純米吟醸酒 

Dsc_0171この酒はラベルを見てわかるとおり呑ムリエ会限定のお酒です。滋賀県の上原酒造の山廃純米吟醸酒で、今年の冬に造って、タンクで生で半年貯蔵したものをそのまま瓶詰めしたお酒です。杜氏が山根さんが亡くなり、26BYから横坂さんに代わっていますので、横坂さんのお酒です。

酒母が滋賀県産山田錦(6%)、そのほかのお米は滋賀県産
渡船6号(94%)、精米歩合55%、酵母無添加の本格的山廃つくりで、日本酒度+4、酸度1.7、アミノ酸1.6のお酒です。高瀬先生の絵がラベルになっています。
 

半年熟成した味わいがあり、山廃らしい香りはなく、旨味と酸味のバランスが特徴なお酒でした。 

 

料理4.天然ぶりの刺身 肌がピンク色しているでしょう。これが天然の証拠だそうです。 

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 7.浪の音 純米大吟醸 

Dsc_0175このお酒は滋賀県の浪の音酒造が造っている純米大吟でやおやのPBのお酒です。 

お米は滋賀県産の渡船50%精米、酵母は9号酵母、日本酒度+-0、酸度1.8、アルコール度数18度の斗瓶取り原酒です。ラベルの名前は僕には読めません。インターネットで調べても出てきません。 

口に含むと分厚い旨味がどんと広がり、後味は綺麗に消えていくいわゆる旨い酒に入ると思います。 

8.鍋島 薄にごり花見酒 

Dsc_0178このお酒は佐賀県の富久千代酒造の鍋島の特別純米酒で、うすにごりの花見酒の生酒です。 

お米は不明で、精米度は55%でアルコール度数が16~17%以外はわかりません。花見用に少ししわしわ感のある呑みやすお酒として造ったのではと思われますが、飲んでみると少し熟成がすすんで、後味に普通のお酒とは違った香りがあり、気になってしまいました。 

ラベルを良く見ると2014年3月に出荷されたお酒でしたので、熟成に合わなかったのではと思われます。 

料理5.あじの一夜干し

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9.斗びん 大吟醸 

Dsc_0180_2このお酒はやおやだけの限定酒で、斗瓶取り大吟醸で7BYなので、19年前のお酒です。 

山田錦35%精米の大吟醸で、酵母は9号系で、日本酒度は+4、酸度1.4、アミノ酸度が1.1のお酒で、前杜氏の山根弘さんの造りです。 

呑んでみると熟成の香りはするけど、わりとすっと飲めるお酒でしたが、-5度の冷蔵庫から出したばかりでしたので、後で飲もうと置いていたのですが、いつの間にか飲んでしまってしまいました。

 料理6.鰤のカマの焼き物  

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この辺から食べるのを忘れて日本酒ばかり飲んでいたので、続けてご紹介します。 

10.大治郎 純米生酒      11.酒いちず 生酛生原酒
26BY 畑酒造             福井弥平商店
 

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大治郎はやおやPBの直汲み純米生酒です。お米は吟吹雪60%精米、日本酒度+4、酸度1.9、アルコール度17.5、酵母9号です。飲んでみるととろみ感がある旨味が広がるけど、余韻が綺麗に消えるお酒でした。 

酒いちずは本醸造で、酒質は不明ですが、しっかりした味わいで、旨味の中に酸味を感じてそのバランスがいいお酒でした。これはやられた感じです。 

12.純米大吟醸生原酒23BY  13.純米にごり生原酒 24BY
南部酒造               南部酒造
 

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純米大吟醸と表には書いてありますが、裏のラベルは純米吟醸で表示が違いました。中身は山田錦40%、五百万石50%のおりがらみのようですので、厳密には純米吟醸かな。飲んでみるといろいろな味を感じる味がまじりあっているように思えました。 

純米にごり酒は五百万石と華越前を使ってるにごり酒で酵母は7号酵母です。呑んでみるとヨーグルトのような味わいで、ロックで飲みたい気がしました 

14.活性にごり原酒     15.陽乃鳥(ひのとり)
furousen 上原酒造      貴醸酒 新政酒造
 

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活性にごり酒は山根杜氏が造った最後のお酒のようですが、麹っぽい香りがする普通のお酒とはちょっと違うものでした。 

陽の鳥は新政得意の貴醸酒です。貴醸酒は通常焼酎を使いますが、新政では日本酒を使っていますので、当たりが柔らかい甘さがあり、綺麗な酸がしっかりした食後酒ですね。 

以上でお酒を打ち止め、仕上げのご飯となりましたが、僕はここの得意メニューの卵かけご飯(TKG)をいただきましたが、中々よかったです。カレーも美味しいそうです。 

最後に表で大将と奥様と一緒に写真を取ってお店を後にしました。

大変御馳走様でした。また行くからね・・・・・・・・  

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サケマルシェで見つけた小さな蔵の酒を紹介します

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石川県は能登杜氏の発祥の地で昔から、良いお酒をつくっている蔵が沢山ありますが、なぜだか東京で石川県の蔵の試飲会はほとんど行われていません。石川県の蔵のお酒が飲めるなら、何としてでも飲んでみたいと常々思っていたのですが、今年の10月24日土曜日と25日の日曜日に金沢の迎賓館で石川県の地酒と美食の祭典サケマルシェが開かれることを知り、参加することにしました。 

このサケマルシェの祭典は3年前から始まったようで、当初は10月の末の土曜日1日で行われていたそうです。今年は日本酒で乾杯推進協議会の全国大会が石川県でやることになったので、同時開催で2日間のイベントになったそうです。どんなイベントか全くわからないまま参加することにしました。サケマルシェは石川県酒造組合連合会の中にあるサケマルシェ実行委員会が主催しているようで、前売り参加費が2800円ですが、日本酒で乾杯推進会議の地酒パーティも参加すれば、両方で5000円となるので、日本酒で乾杯推進会議で申し込みましたが、参加してみると、乾杯推進会議の参加はあまり意味がなかったようです。 

当日は金沢に12時ごろに着くように大宮からかがやき507号に乗りましたが、2時間10分で金沢駅についてしまいました。金沢には簡単に行けるようになったのですね。新しい車両は揺れも少なく、各席にコンセントが付いているのは大変便利です。普通車で全部着いたのは初めてではないでしょうか 

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すごくかっこい車両でしょう。この車両のデザインをしたのは日本人で初めてフェラーリーをデザインした奥山清行さんです。さすが奥山さんですね。東海道も早くこの車両を使ってもらいたいけど、JR東海は別会社ですから難しいかもね。 

金沢駅からしいのき迎賓館までは約3kmほどなので歩いていくことにしました。その間に近江町市場があるので、寄ってみましたが、市場がビルの中にあるのですね。隣に本物の市場があるので、築地の場外市場のようなところのようです。 

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東京では見られないのどくろが色々なところで売っていましたが、お店によって価格はだいぶ違うようなので、良く見て選ぶ必要があるようです。 

そこから歩いて30分くらいで目的地に着きます。しいの木迎賓館は金沢城址公園の南、兼六園の西にありますが、サケマルシェは迎賓館の中ではなく、迎賓館の前の広場で行われました。 

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 下の写真の茶色い建物が迎賓館です。ここからではイベント会場は見えませんね。 

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 ここが迎賓館の前から見たイベント会場です。まだどんな風になってるのかわかりません。

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この入り口に受付があり会場の様子が少しわかってきました。下の写真を見てください。青色のブースが地酒ブースで28蔵が出展していました。赤い色のブースが飲食ブースで23店が出店していました。

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受付では当日販売もありますが、前売り券を持っていると20枚綴りの飲食用のチケットと1合が入るグラスが配られます。去年まではワイングラスが配られましたが、倒れてお酒をこぼしたり、わったりする人が多いので、下の写真のような壊れにくいグラスにしたようです。 

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の情景を見て、初めてわかったことがあります。サケマルシェは試飲会を目的をしたものではなく、好きなお酒とお料理を楽しむのが目的のようです。僕のようにいろいろなお酒を飲みたい人だと、この方式はむちゃくちゃ高くなるし酔っぱらってしまい取材どことではありません。たとえば大吟醸だと4~5枚のチケットが必要なので、4~5種類しか飲めないことになります。どうも違反行為のようですが、1チケットで飲める少量をついでもらい呑むことにしました。会の運営の皆さま、来年からはこういう飲み方も許可するルールが必要だと思います。 

サケマルシェの祭典は土日の2日間11時から夕方まで開かれている祭典ですが、初日は現場に2時半ごろ着いたので、とりあえず知っている人にあいさつしながら、持ているチケットの範囲で何も食べずにどんなお酒があるのかを飲んで調べることにしました。 

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天狗舞のテントの前では車多酒造の専務の車多一成さんと名杜氏で、今顧問杜氏をされている中三郎さんにお会いできました。良かった良かった・・・・ 

翌日も天気が良かったので、兼六園を見学した後、11時の開園に間に合うように会場に行きました。最初に開演の乾杯セレモニーが行われました。蔵元の関係者が大勢おられました。 

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乾杯セレモニーは福光屋の専務取締役で、サケマルシェ実行委員専務の福光太一郎さんの音頭でスタートしました。 

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後ろには手取川の次期社長の吉田泰之さんや、長生舞の専務取締役の久世嘉宏さんや竹葉の社長の数馬孝さんがおられます。この会は若手の蔵元が中心になって開催されているのですね。大変良いことだ思います。 

会場は屋外のテントなので、雨が降ったら大変でしょうが、雨天中止はないようです。家族づれや友人と来ている人が多くて、隣の芝生で寝転んでいる人が多かったです 

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ボランティアの楽団らしき人達が演奏をしていました。のんびりした雰囲気で良いですね。 

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次にサケマルシェで見つけた小さい蔵だけど良い酒をつくっている蔵を紹介します。どの蔵も500石以下です。 

1.夢醸 宮本酒造店 

この蔵は石川県の能美市にある蔵で、手取川の南に位置していて、北には車多酒造や吉田酒造店があり、東の山側には菊姫がある造り酒蔵の多い地区にあります。創業は明治9年ですからそんなに古い蔵ではなく、平成10年から夢醸を造り始めています。サンマルシェには蔵元は来ておらず、営業責任者の後藤仁さん夫婦が来られていました。 

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奥様の後藤由梨さんのお兄さんが社長をされているそうで、生産高は100石と非常に小さな蔵です。僕が気に入ったのは夢醸の大吟醸と純米大吟醸です。 

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純米大吟醸は五百万石50%精米で、大吟醸は山田錦40%精米です。どちらも石川県では珍しい18号酵母だそうです。どちらも香りのきれいなさわやかなお酒ですが、大吟醸の方が一層呑みやすいお酒に仕上がっていました。 

10年前に能美市に名前が変更した時に、能美市の特産である丸芋を使った焼をつくる動きがあり、2007年に丸いもの焼酎の免許を取っり、その年にプレミア焼酎「のみよし」を生産したところ、大人気で6日で完売したそうです。

僕がこの蔵を初めて知ったのは新宿花園神社にあった「アー一心」で、そこの店長さんの下山さんが勧めてくれたお酒でした。もうそのお店もなくなり、サンマルシェで久しぶりに飲むことになりましたが、お酒の中身は随分進化していました。でも久しぶりに夢醸を飲めて感激しました。 

2.白菊 白藤酒造 

白藤酒造は奥能登の輪島市にある歴史のある蔵です。創業は1722年廻船問屋として創業し、江戸末期に酒造りを始めたそうです。2007年の能登半島地震で、蔵のほとんどを造り直すほどの災害を受けています。僕が蔵を訪問した時は2008年の3月でしたから、蔵をつくりなおしたばかりで、生産高は100石ぐらいと言われました。その時、白藤喜一さんと奥様とお会いしましたが、今回もお二人にお会いすることができました。 

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お二人は東京農大の同級生で大学で知り合って結婚され、2006年から蔵で一緒に酒つくりをしていますが、奥様は宮城県の浦霞の蔵人でしたので、地震の経験があり蔵の再建にご尽力されたと聞いております。笑顔が素敵なお方ですね。卒業が平成8年のようですから、久慈浩介さんや新藤雅信さんの1年後輩に当たるのですね。 

白菊は僕の行きつけの酒屋さんで扱っているものですから、時々飲むことがありますが、いつものお酒を飲んでみました。 

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白いラベルの白菊は精米度55%の山田錦36%(酒母と初添え)掛米として55%精米の五百万石64%使用した純米吟醸ですが、酵母は協会10号を使用しています。白菊の看板商品で、しっかりとした旨味の中に、滑らかさや優しい上品な甘さも感じるお酒でした。 

黒いラベルの白菊は50%精米の山田錦を使った純米大吟醸で、酵母は金沢酵母です。透明感のある酒質で、純米吟醸より綺麗さがあり、旨味の出方と消え方がゆっくりしていて味わい深いお酒でした。

両方ともとても素晴らしいお酒で生産高をお聞きしたら250石とのことで、きっと丁寧な造りをしているので石数をあまり伸ばさないようにしているかもしれません。 

白菊は問屋を通さないで酒販店に直接販売していますので、ホームページの情報によれば東京でも10店舗以上扱っており、飲んだことのない人は是非飲んでください。 

3.神泉 東酒造 

この蔵は小松市にある蔵で、江戸末期に造られたそうで、酒蔵は昭和24年に改めて立て替えられました。地元の観音下(かながそ)の山から切り出した石で作られた三つの石蔵を中心に構成された貴重な酒蔵だそうです。蔵のホームページからお借りしました写真をお見せします。趣のある造りですね 

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蔵のお隣にはお茶室の「桂松庵」があり、その隣には待合室の緑寿庵があり、その二つとも国登録有形文化財になっているそうです。蔵の生産高は300石と小さいですが、金沢酵母にこだわった特定名称酒だけを造っている蔵だそうです。 

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写真方は社長の東祐輔さん夫妻です。祐輔さんは東京農大の醸造学部を卒業されていますが、何年卒だか覚えていないそうです。現在44歳ですからたぶん平成5年卒ではないかと思います。 

Dsc_0231何気なく置いていた大吟醸の太初(たいしょ)をいただきましたが、一口飲んで驚きました。凄くきれいだけど味わい深い今まで飲んだことがないほどのお酒でした。 

山田錦35%精米の金沢j酵母の大吟醸を蔵の冷蔵庫で熟成したお酒で23BYだそうです。口に含むとゆっくり全体に味わいが広がっていくお酒でした。熟成の良さがうまく引き出されています。 

このお酒はどこで買えるのと聞いたら、地元以外には出しておらず、銀座のアンテナショップにあるかもねといわれました。これだけの味が造れる腕があるのならさぞかし全国新酒鑑評会で金賞を取っているのかと思ったら、取得実績はありませんでした。 

でも最近は金沢造幣局の最高賞の優秀賞を取るなどかなり認められてきているようです。 

最後にこれからどんなお酒造りを目指しますかとお聞きしたら、どっしりした味ですっきりした味わいのお酒だそうです。これからが楽しみな蔵だと思います。 

4.獅子の里 松浦酒造 

この蔵は山中温泉の中心街にある蔵で、創業は古く、1772年だそうです。この蔵の杜氏は代表取締役で杜氏を兼務している松浦文昭さんですが、平成15年より杜氏を務めているそうです。文昭さんには土曜日に会場でお会いしたのですが、翌日には会場におられなかったので、ゆっくりお話しできませんでした。 

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日曜日は営業マンの我戸さんと本田さんが対応してくれましたが、あまり蔵のことやお酒のことに詳しくなかったし、会場のルールがあるということで、ちょっとだけという軽い試飲をさせてもらえず、仕方がなく純米吟醸の旬だけを飲みました。 

Dsc_0238_2この蔵のお酒は色々な種類を飲むことができませんでしたが、純米吟醸の旬を飲むだけでお酒のレベルの高さがわかりました。ラベルには何も書いてありませんが、55%山田錦で金沢酵母を使ったお酒のようです。ある酒屋さんでは雄町も使っていると書いてありましたが、正しいことはわかりません。 

飲んでみるとさわやかな香りでそれほど強くない綺麗な旨味が立ちあがったと思うと、いつの間にか消えていくようなお酒でした。とても温泉の町中で造っているとは思えない上品さがあります。 

残念ながら他のお酒はわかりませんが、造りの良い蔵だと思いました。最近は全国新酒鑑評会で受賞はしていませんが金沢国税局の優秀賞はかなり数取っているようです。純米大吟醸を飲んでみたかったです。 

蔵の生産高はよくわかりませんが、従業員の数から判断すると500石ぐらいではと思います。 

以上で僕が見つけた蔵の紹介は終わりますが、会場で飲んだお酒の一般的な印象は能登流の味わいをベースとしている蔵が多く、僕にはちょっと癖が強いように思えました。僕が選んだ蔵はそれとはかなり味わいの違うお酒のような気がします。

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初めてのウイスキー蒸留所の見学

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11月はじめのことですが、僕の日本酒仲間のUさんのお誘いで、ニッカウイスキーの宮城峡蒸留所を見学するバスツアーに参加しました。僕はウイスキーについては全くの素人なので、どんなバスツアーなのか、全く知らないで参加したのですが、このバスツアーはウイスキー,、特にモルトウイスキーをこよなく愛する仲間たちが企画したもので、普通のバスツアーとは違った専門性の高い異次元のツアーでした。

ウイスキーの話を日本酒ブログに書くのはどうかと思いましたが、日本酒との違いを考えてみるために取りまとめることにしました。 

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日本橋三越の前に6時40分集合で行ってみたら、TMCと楽しい仲間たちと書いてあるベンツ製のかっこいいバスが停まっていました。TMCとは東京モルツクラブのようです。 

バスの中にはトイレもあり、後ろがサロン形式になっており、ここに座ると飲み続けることになりますので、危険地帯です。僕らは中ほどに陣取りましたが、乗ったらすぐモルツで乾杯という状況でした。 

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1時過ぎに仙台の牛タンレストラン「一福」で仙台の牛タンの味を楽しみました。 

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それからニッカウイスキーの宮城峡蒸留所に向かいましたが、この蒸留所は仙台駅から西に25kmほど行った作並温泉の手前にあります。まずこの蒸留所のある地形を見てください。 

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この蒸留所は広瀬川と新川(にいかわ)の合流地点にあります。ニッカウイスキーの創始者の竹鶴正孝さんが北海道余市に最初の蒸留所をつくって約30年後、第2の蒸留所の地を求めて探してこの地を見つけたそうです。竹鶴さんが蒸留所の選定する時の信念があります。それは下記の4つのことです。 

① 冷涼な土地 ② 湿潤な気候 ③ 綺麗な空気 ④ 豊かで美味しい水 

竹鶴さんは新しい蒸留所の選定で、東京に近くて寒い場所として東北地方を探してもなかなか良いところが見つからなかったそうですが、最後にこの地を見つけました。この地は仙台より3℃~5℃寒く、冬は雪が多い場所で空気は綺麗、、新川と広瀬川の合流地点なので靄が立ち込めやすい場所、つまり湿潤な場所だったのです。この新川の清流の水でハイニッカを割って飲んで味わいを確認して、この場所を選んだと言われています。 

日本酒でも水は大切にしますが、湿潤な気候やきれいな空気が必要なのは、樽の中で何年も熟成させるからで、樽は木製ですから外気の影響を受けやすいためだと思います。 

それでは早速宮城峡蒸留所を紹介しますが、初めにこの蒸留所の理解を深めるために、ウィスキーの製造工程について説明します。 

1.製麦:
原料の大麦を水に浸して発芽させる(モルトと呼ぶ)と、デンプンを分解する酵素を生成するので、ある程度酵素が増えてから発芽を止めるために乾燥させます。その時に乾燥にピート(泥炭)を燃やした煙を使うとその煙臭がスコッチウイスキーを特徴づける香りの一つとなるようです。
 

2.仕込み
乾燥した麦芽はごみや小石を除去した後、粉砕されマッシュタンと呼ばれる容器の中で温水と混ぜられます。すると麦芽中のデンプンに酵素が作用し、デンプンが分解して糖分が温水中に溶け出す。この時の温度は63度~64度で、こうして得られた液体を麦汁といいます。
 

3.発酵
仕込みで得られた麦汁を発酵槽に送り、酵母を加えてアルコール発酵させ、7%濃度のエタノールを含むもろみ(ウオッシュ)をつくります。ウイスキー適した酵母は数百種あると言われていますが、発酵の工程は48時間~70時間で、時間が長いほど乳酸菌が多くなり酸味が強くなるそうです。この工程の後半は酵母はほとんど死滅するようですが、この時間が味を変化させるようです。
 

4.蒸留
発酵で出来たもろみをポットスチルと呼ばれている単式蒸留器に送り、スチルの下部から加熱することにより、蒸発しやすいエタノールを優先的に蒸発させ、エタノールの濃度を増やしていきます。その加熱方法には石炭やガスの直火炊きと蒸気をパイプに通して加熱する方法があります。蒸留は通常2回行われ、最初に21%まで濃縮し、2回目に70%まで濃縮するそうです。そのほか連続蒸留でもっと高濃度にする方法もあります。この蒸留によって、エタノール以外の成分をどのくらい製品に含ませるかも味を決めていく大切な部分だそうです。
 

5.熟成
蒸留により出来た無職透明な蒸留液は加水して60%ぐらいしてから樽詰めされて、貯蔵庫で貯蔵ます。この濃度にするのは、樽に含まれる高分子成分を分解するのにそのアルコール濃度が適しているからだそうです。ウイスキー樽は気温の変化により呼吸するようであり、その呼吸により樽の外へ揮発成分が抜けながら熟成が進むようです。
 

それでは蒸留所の紹介をします。 

まずは全体図を見てください。全体に森に囲われた中にあり、自然の傾斜をそのままに森林に溶け込むように設置されています。景観には大変留意されていて、電線はすべて地中埋設、建物はすべてレンガ造りですから、驚きです。この蒸留所が出来たのは昭和44年ですから結構新しいのですね。 

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入口を入るとまず左側に池があります。これは高さ520mの鎌倉山を借景にした日本庭園になっていました。池の奥には芝生が見えます。天気が良かったらもっときれいだと思います。 

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最初の大きな建物がグレーンウイスキー用のグレーン蒸留塔です。この蒸留所の特徴は余市蒸留所と違ってグレーンウイスキーを造っていることです。グレーンウイスキーは大麦の代わりに主原料をトウモロコシを使って連続蒸留器で蒸留したウイスキーのことを言います。グレーンウイスキーは味が軽いこと、生産量が大きいことから、モルトウイスキーとのブレンド用に使われるものです。

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このグレーン蒸留塔はカフェ式連続蒸留器という箱を積み上げた古いタイプの蒸留器で、24個の箱を積み上げた塔と42個の箱を積み上げた塔の2塔からできているそうですが、安全を考え、通常は非公開なので見学できませんでした。 

次に現れたのはキルン塔です。ここは発芽した麦芽を乾燥させるところですが、今は使用していないそうです。でもこの蒸留所ができてからの6年間は使用していたそうです。 

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この工程は日本産の大麦が少ないことから、現在は大量に大麦を使用するビール工場の麦芽製造部門、具体的には関連会社のアサヒビールモルト工場に委託しているそうです。 

次は乾燥した麦芽を奥の建物の地下に貯蔵されコンベア(奥の建物の縦の黒いもの)で白いサイロの上部に送られます。サイロに入った麦芽はごみや鉄分を除去した後、皮と実に分別され、皮は仕込み槽の濾材として使用され、実は適度な粒度になるように粉砕されるそうです。手前の横に走っているラックは麦芽を仕込み槽に送るベルトコンベアです。

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粉砕された麦芽は次の仕込槽に送られます。ここが仕込槽(マッシュタン)です。直径4m高さ5.5mのステンレスタンクです。 

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 この槽で麦芽の糖化と濾過を行い糖度が13%ぐらいの麦汁を造ります。通常は2回の仕込みで1回目の仕込みで糖度5%に、2回目の仕込みで糖度13%にします。 

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次に麦汁は発酵槽に送られます。発酵槽ではニッカウイスキー独自の酵母を投入して約7%のアルコールと香気成分を含んだもろみを造りますが、日本酒の酒母の考え方に近い理屈で、最初に麦汁で酵母を増殖させたものをどんと入れるようです。その時乳酸菌も増殖しています。これによって雑菌の増殖を抑えているようです。この考えは日本酒とおなじですね。発酵過程中に酵母はアルコールにより死滅して底に沈むそうですが、これはろ過しないで、そのまま蒸留器に送るようです。 

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 今回説明をしていただいた岡島さんですが、普段は経理の仕事をしている特別の説明員の方です。

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 発酵槽を出たもろみは固形分を含んだまま次の単式蒸留器(ポットスチル)に送られて蒸留され、アルコール濃度70度まで濃縮されます。この時ポットスチルの形状によってアルコール以外の成分の混じり方が変わるそうです。ここのポットスチルは余市蒸留所と異なり、ポットスチル上部の管(ラインアーム)が上向きで、釜の形状がこぶのようなバジル型になっているので、華やかで柔らかなモルトになるそうです。 

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 ポットスチルは下記の図のように初留釜と再留釜から成り立ち、初留で3倍濃縮し(量は1/3)、再留でさらに3倍濃縮して(量は最初の1/9)70度のアルコールが取れます。このアルコールは無色透明です。加熱方法は余市の石炭炊きと違って、130度の水蒸気を使っています。また初留はもろみ中に固形分を含んでいるために、突沸を起こしやすいので、覗き窓が付いていてそれを見ながら加熱調節をするそうです。

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 ここで得られたアルコールは加水してアルコール度数を約60度にしてから樽に詰めて熟成させます。熟成中に樽の木材に含まれるいろいろな成分が熟成を進めるようですが、樽は気温の変化による呼吸をするので、1年に2~4%樽の外に揮発成分が抜けるようです。この蒸発量を天使の分け前(エンジェルズ・シェア)と呼ぶようです。これは天使に分け前を与える代わりに天使にウイスキーを育ててもらっているという意味だそうです。随分ロマンティックな呼名ですね・・・・・ 

貯蔵樽の見学はしませんでしたが、見学後試飲を兼ねたセミナーが行われましたので、それについては興味深かったところだけ紹介します。 

セミナーの説明をしていただいた三輪さんです。見学の案内をしていただいた岡島さんの同期だそうです。 

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このセミーはウイスキーの試飲をしながら進みました。 

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クリックして拡大してみてください。一番左上が余市のNewfillingでポットスチルを出たばかりにアルコール度数70%のウイスキーの元、次がシングルモルト余市12年、次がシングルモルト宮城峡12年、左下がニッカカフェグレーン、次がシングルモルトとカフェグレーンを調合したザ・ニッカです。 

Newfillingは無色透明でほとんどアルコール臭です。余市モルト12年はピートの香りが強く余韻が長い、宮城峡モルト12年はやや軽めで華やか、カフェグレーンはスーッと消えていく余韻でした。ザ・ニッカは一番バランスがいいように思えました。 

ニッカではブレンドのことを花束に例えるそうです。モルトウイスキーは薔薇、百合などメインになる花で、グレンウイスキーはかすみ草で全体をきれいな花束に仕上げたのがブレンドウイスキーだそうです。 

ウイスキーの香りについて面白いことを聞きました。ウイスキーの香りは強烈で、飲み終わった瓶に付着した香りを嗅ぐとウイスキー本来の香りがわかるそうで、ウイスキー通はに飲み終わったグラスはそばに置いてその香りを楽しむそうです。 

日本酒でやってみましたが、飲み終わったグラスにはほとんど香りは残っていません。日本酒の場合は含み香が強く、酒自身の香りは少ないのかもしれません。香水はアルコールに香料を溶かして作るようで、強い香りはアルコール濃度が高いようです。ですからウイスキーは香りが高いのですね。 

下の写真は創業者の竹鶴さんが香りを嗅いでいる姿ですが、鼻の片方で嗅いでいますね。それはウイスキーはアルコール濃度が高いので、これを強く吸うと鼻の嗅覚が麻痺するので、左右の鼻ので交互に嗅ぐことで、麻痺を抑えているそうです。なるほどね・・・・ 

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以上で宮城譲見学の紹介は終わりますが、最後にニッカの自慢のお酒を見てください。 

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竹鶴12年、17年、21年のピュアモルトウイスキーです。アマゾンで調べたら21年物で15000円程度、17年物で7500円で売っていました。でも普通のお店では売りきれていて買えないようです。

最後に皆と一緒に飲んだウイスキーの中で美味しかったものを上げておきますが、僕にはどんなものかわかりませんので、説明できませんが良いものであることは確かです。参考にしてください。 

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僕の感想ですが、ウイスキーと日本酒は造りが全く違うけど、自然を大切にしているところには共通感があるような気がしました。飲み方としては日本酒は食中酒、ウイスキーは食後酒ですね。ウイスキーは嫌いではないけど、これにはまるとお金がなくなるし、日本酒はやめられないので、結果的に飲む量が増えて体に良くない気がしました。

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菊姫は他の蔵と一線を画した味を貫いています

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11月に白金の八芳園の日本料理店の槐樹で第11回目の蔵元さんと日本酒を愉しむ会が開かれました。今回は石川県の菊姫でした。この蔵は日本酒の世界では超有名な蔵ですし、能登杜氏四天王のひとりである農口尚彦さんが杜氏として活躍していた蔵ですので、蔵の名前は良く知ってはいるのですが、恥ずかしながらどんな味のお酒を造る蔵かはあまり理解していなかったので勉強するつもりで参加しました 

Dsc_0255蔵からは営業の福岡航也さんが来られて説明されましたが、蔵に来て1年くらいの方なので、あまり詳しい情報を得ることはできませんでしたが、お酒を飲んでみるとその味の特徴はいわゆる今はやりのお酒とは全く違うお酒であることは良くわかりました。 

今回飲んだお酒について僕の感想を述べる前に、菊姫はどんな蔵なのかを自分なりにインターネット情報で調べてみたところ、単に昔からの酒の味を守っているだけでなく、最先端の技術と昔ながらの酒つくりの技術を融合させた、新しい形の蔵であり、自分たちの求めている味を明確にした酒造りをしている蔵であることを知りました。 

そんなことは良く知っている方も多いと思いますが、僕なりにインターネット情報からどんな蔵であるかをまとめてみることにしました。 

菊姫は石川県の白山市鶴北町にある蔵で、創業は安土桃山時代だと言われる歴史のある蔵ですが、菊姫という名前になったのは昭和3年のようです。昭和16年には宮内庁御用達の栄誉を受けるなど順調に発展し、昭和36年に農口杜氏が入社したあと、昭和42年には県内で初めて全国新酒鑑評会で金賞を受賞するなどいち早く吟醸酒を製造・発売をしていました。 

現在の社長の柳達さんが蔵に戻ったのが昭和50年でしたが、その頃は大手の酒蔵が量産体制を造って攻勢をかけていたので、小さな蔵元(現在の生産量はは3000石)は大変苦しい時代だったようです。彼は大手蔵ができない品質の高さ、味の良さ、販売単価の高さで日本一になろうと決めたそうです。それに向かって 達司さんが実行した方法をまず紹介します。達司さんは業界の異端児といわれる人で、その想いの強さは凄く、歯に衣着せない物言いで恐れられている方だそうですが、それだけにそのやり方は当時としては画期的だったのではないかと思います。 

1.マイスター制度の導入 

当時は酒つくりは蔵の杜氏が感や経験をもとにすべて決めていたので、蔵元は杜氏に任せるしかなく、杜氏がいなくなったら同じ味を造れなくなる恐れがあったのです。達司さんはそれを解決するために、昭和63年から大学の理工系学部の人を採用し、1年目は酒類総合研究所で研修し、2年目からは酒造りの蔵人として参加するマイスター制度を開始しました。このマイスターが温度センサーやコンピューターを導入して酒つくりのノウハウをデータ化していったのです。その結果、平成12年までの間に金賞を23回受賞する(平成13年からは出品をやめています)ほどになっており、今では杜氏になれる実力を持つ人が10人以上もいるとのことです。農口杜氏が退職されたのが平成9年ですから、現在は昔の杜氏ではないマイスター制度で育った杜氏がお酒造りを管理しているようです。 

ノウハウのデータ化で成功した蔵としては獺祭が有名ですが、菊姫のデータ化は獺祭とは少し違うようです。獺祭はデータをマニュアル化して杜氏がいなくても安定したお酒を造るのを目指したのに対して、菊姫の酒つくりはデータを大切にし自動化を図る一方、洗米や浸漬や製麹は手作業で五感を大切にした造りをしているようです。ですから五感と科学的知識の両方をバランスよく身けることをねらいとし、そのような人材がいることが菊姫の強みになっているそうです。 

2.吉川産の山田錦に特化 

達司さんが高品質で販売単価の高さを狙うためには、原料となる酒造好適米を最も品質の高い山田錦を使うことを考えました。山田錦の中でも品質の高さで有名なのは兵庫県の特A地区の山田錦です。その中でも最高ランクに位置する特AAA地区に指定されている兵庫県三木市吉川(よかわ)町の山田錦を入手することに成功しました。それは簡単なことではありませんでした。菊姫はこの地区に足しげく通いつめて、吉川町の7つの集落と「姫を語る会」を造り、農家と蔵元が一緒になって日本一の山田錦を造る環境を造り上げ、現在では吉川町の全生産量の約1/4に相当する1万俵(600トン)を毎年確保しているそうです。 

全量山田錦を使っている獺祭の新工場の最大可能生産量は5万石で、その時は必要な山田錦は20万俵と言われていますが、現在は8万俵を購入しているようです。でも兵庫県の特Aの山田錦を増量することができないので、他の地の山田錦の生産量を増やして対応しているようです。ですから特Aの山田錦を掛米に使用する量は確保できないはずで、そういう意味では菊姫の山田錦の使い方とは全く違うものと思われます。 

3.貯蔵設備の充実 

菊姫は昔からそれぞれのお酒に合った熟成期間を設定して管理・出荷しています。具体的には吟醸酒のように精米度の高いお酒は3年以上の熟成をし、精米度の低い純米酒や普通酒は1-2年の熟成にしています。それは味が乗るまで熟成させるためですが、そのためには広い貯蔵スペースがいるのと、資金の回収が遅れるので、普通の蔵ではやっていません。 

菊姫では普通の蔵では考えられない広さの貯蔵庫を持っています。平成蔵では1-2階の吹き抜けの部屋や3-4階にも貯蔵庫を持っているだけでなく、平成10年に新設した八幡精米工場には10年後を見越して、1400坪の貯蔵スペースを用意しているそうです。凄いことですね・・・・・下の写真が新精米工場です。 

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4.完全自家精米の実施 

菊姫には昔から「よそに精米を頼むくらいなら酒造りをやめろ」という家訓があるそうです。それは精米は酒つくりの中で大変重要な工程だと認識しているからです。精米するときに米が割れないように丁寧に扱う必要があり、そのためには米の中の水分を10%にする制御した上で精米中の米の温度が上がらないような工夫が必要で、コンピューターで独自の制御をする精米機を使っているそうです。 

さらに精米したお米の温度を下げ、水分を10%から13~14%に戻す「枯らし」作業を重要視しているので、外部に精米を依頼することないそうです。そのために平成10年に蔵から車で5分のところにある八幡に精米用の新工場を設立し、8基の精米機を稼働させています。大したものですね・・・・ 

下の写真が新工場の8基の精米機です 

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5.3蔵体制の充実 

菊姫には明治蔵、昭和蔵、平成蔵の3つの蔵があり、別々の杜氏が管理しています。蔵の名前は造られた時代を反映しているものと思われますが、別々の機能を持っています。純米酒と普通酒は昭和蔵で製造し、醸酒や特約店限定流通酒は明治蔵と平成で製造しています。ですから昭和蔵は大型仕込みの蔵で、3トンタンクが26本あるそうです。明治蔵は平成3年に大改装をし、平成蔵は平成7年に竣工した最新鋭工場です。平成蔵は7階建てで、釜場が最上階にあり、6階が麹室、5階が仕込み部屋(1トン仕込み)と酒母室で、3-4階は貯蔵室、1階に吟醸用の4台の槽が並んでいるそうです。そのほか大手蔵のような研究室も完備していて、-85℃で各種の酵母が保存できるようです。

この写真が本社と平成蔵の写真です。ビルです。 

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 以上が達司さんが行った菊姫の改革の大筋ですが、肝心のお酒の味はどんなものを狙ったのでしょうか。達司さんの言葉によると、菊姫の酒は基本的には労働者の酒で、エネルギー補給のために飲むアテのいらないお酒だそうです。といってもわかりませんよね。やっぱり飲んでみないとわからないということなので、そろそろこの会で飲んだお酒を紹介します。菊姫のお酒はほとんどが7-8℃で1年以上の熟成酒ですから、少し黄色がかったいわゆる黄金色をしています。下の写真でわかるでしょう。また熟成酒はすべて2回火入れしているそうです。 

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飲んだお酒は下記の通りです。 

写真を1本ずつ取るのを忘れたので、菊姫のホームページの商品紹介の写真をお借りしました。また会場ではお酒のスペックのお話はほとんどなかったので、これもホームページからお借りしました。日本酒度や酸度は基本的には公開されていませんが、販売店が公開しているもので、その精度は不明ですので、参考程度に見てください。 

1.大吟醸 菊姫 

G_daiginjou_3原料米:山田錦 吉川町特A 

精米歩合:50% 

酒母:速醸 日本酒度+5 酸度1.2 

熟成年数:5年以上 

アルコール度数:17~18度 

販売価格(税込):1升12528円 

菊姫にはこの上のハイスペックには、吟、黒吟、菊理媛がありますが、このお酒は標準的大吟醸に位置しています。でも精米が50%でこの価格はかなりの高価格です。 

飲んでみると、熟成の香りはしますが、米の旨味がきちっと出ているけどふくらみが綺麗で丸があって品があります。このお酒は温度が上がってくるとずっと広がってくるので、冷たいとその良さがわかりません。 

2.純米酒 菊姫 先一杯 

J_mazuippai_2原料米:山田錦 吉川町特A 

精米歩合:65% 

酒母:速醸 日本酒度0、酸度1.3 

熟成年数:1年程度 

アルコール度数:14~15度 

販売価格(税込):2592円 

このお酒はアルコール度数を下げて、飲みやすくしているお酒です。熟成期間が短いので、熟成香はありますがやや少なくなっています。 

飲んでみますと米のうまみはしっかり感じますが、スウット飲めてしまうお酒でした。僕にはちょっと物足りなかったかな。

 

3.普通酒 菊姫 菊 

F_kiku原料米:麹米が山田錦、掛米が五百万石、 

精米歩合:70% 

酒母:山廃 日本酒度1.0、 酸度1.3 

熟成年数:1-2年(複数年ブレンド) 

アルコール度数:15~16度 

販売価格(税込):2160円 

このお酒は普通酒でですが、それは精米度が70%で醸造用アルコールが添加されているので、普通酒と呼んでいるものと思われます。ですからアルコール添加が10%以上あるわけではなさそうです。 

飲んでみると熟成の香りはありますが、ほんのり甘さを感じてそれほどアルコール感がしないので、優しいお酒のように感じました。お燗に向いているかな。 

4.純米酒 菊姫 ひやおろし 

J_hiyaoroshi原料米:山田錦 吉川町特A 

精米歩合:65% 

酒母:速醸 スペック不明 

熟成年数:半年以上~1年 

アルコール度数:17~18度 

販売価格(税込):4000円程度 

このひやおろしは毎年酒質が違うようで、価格もスペックも年によって違うようです。このことは会の中で説明してもらわなければ、わかりません。 

飲んでみると熟成の香りはしないでソフトな口当たりで、口に含むと初めからまろやかな旨味が、ぱっと広がってくるので、熟成酒とは違った楽しみがあるお酒でした。

 

5.米焼酎 加賀の露

 

S_kaganotsuyu原料米:山田錦 吉川町特A 

熟成年数:3-4年(複数ブレンド) 

アルコール度数:25~26度 

販売価格(税込):2700円 

蒸留法や熟成年数の違う様々な原酒(常圧の濃さ、減圧の素直さ、樽貯蔵の風味)を絶妙なバランスでブレンドし、 米焼酎らしい旨味を最大限に引き出すための「旨さの黄金比」を見つけ出して造った焼酎のようです。 

福岡さんの説明だと、山田錦を精米してできた削りかすの粉を使って造っているとの説明でしたが、麹の造り方は随分違うのでしょうね。 

飲んでみると普通の焼酎とは香りも違うし、黒麹の焼酎は甘みを感じるけど旨味はあまり感じないのに対して、普通の焼酎では感じない旨味を感じます。そして焼酎の持つ辛味も少ないように思えました。 

6.純米酒 菊姫 山廃純米
 

J_yamahaijunmai原料米:山田錦 吉川町特A 

精米歩合:70% 

酒母:山廃 日本酒度+0、酸度2.3 

熟成年数:1-2年(複数年ブレンド) 

アルコール度数:16~17度 

販売価格(税込):3024円 

このお酒はお燗酒として出ましたが、飲んでみるとかなりの酸味を感じます。最初に熟成香を感じるのですが、口に含むとそれほど感じなくなります。旨味が強いわけではないが、優しい旨味を感じたかと思うと、後から柔らかい酸ゆっくりと出てくるお酒で、ちょっとワイン的なバランスのような気がしました。お燗もいいのですが、僕はこのお酒は常温が一番いいように思えました。 

以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、菊姫のお酒は旨味がガツンとくるわけではないが、しっかりした旨味を柔らかく出していて、全体的には品があるように思えました。でも僕にとっては熟成香がどうしても気になります。もう少し熟成温度を下げて、熟成香の少ないお酒にしてもらうと嬉しい気がします。いずれにしても今流行りのバランスのお酒ではありません。うちの酒はこの酒が好きな人に飲んでもらえれば良いので、味を変えるつもりはないと言っているように思えました。でも最近はIWCの初代チャンピョンになった鶴の里もあるようなので、ちょっと飲んでみたかったな

最後に高橋料理長のお料理をお見せします。下の写真が高橋料理長です。菊姫のお酒にどんな料理に合わせるかは、少し悩んだそうですが、菊姫はちょっと軽い感じがしても、しっかりした旨味があるので、意外にどんな料理にも合せやすいと感じたそうです。 

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 以下がお料理の写真です。全部で7品でした。 

前菜:塩鮪、チーズ、堅豆腐    おまかせ寿司
丸干し、蕪寿司 辛子など     昆布締め、あぶり寿司
 

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かぶと鰤                加賀蓮根と磯辺揚げ
                      自家製燻製豆腐
 

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柿の酒粕グラタン         牛タン旨煮、なめこ 

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包み蒸し ねぎま 

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滋賀県の神開というお酒は進化しつつあります

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昨年の12月10日ですが、五反田のおまつり本舗で第78回の蔵元を囲む会が開かれましたので、参加しました。今回は滋賀県の「神開」を醸する藤本酒造の蔵人兼営業マンの清水龍圭さんをお呼びして、開かれたものです。この蔵の社長は蔵元の藤本信行さんですが、今はお酒つくりの真っ最中なので、代わりに清水さんが来られたそうです。 

おまつり本舗の店長の荻野哲夫さんが、たまたま縁があって清水さんにお会いして、この蔵のお酒を飲む機会があって、久々に良いお酒にめぐり合ったので、是非お店で皆さんに紹介したいとお願いしたら、年末なら可能ということで実現したらしいです。

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清水さんはもともと東京で働いていたそうですが、東京に営業で出てきた藤本さん(その頃は専務取締役だとおもいます)と親しくなり、蔵で働かないかということで、蔵に入ったそうです。清水さんはもともと藤本さんと同じ町のお寺の住職さんの息子さんだったようで、地元に戻ることは問題はなかったようです。 

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この方が清水さんです。結構いけめんで、体格もいいでしょう。実は趣味が格闘で、現役の格闘家のようです。でも蔵人としても大活躍していて、造りにもとても詳しい方でした。清水さんのお話を聞きながら、この蔵の造りやお酒についてブログに纏めることにしました。 

まず蔵のことを紹介します。藤本酒造は滋賀県と三重県の県堺にある甲賀市水口町にあります。創業は江戸時代中期の1763年ととても古い老舗の蔵です。創業者がこの地にある山村神社の神託により井戸を掘ったところ、良質の水がわき出たのでこの水を仕込み水としたことから神開という名にしたということです。 

その後どのように蔵が推移したかはよくわかりませんが、地元向けの安価なお酒をく造っていたようです。この蔵が大きく変わったのは蔵元の藤本信行さんが蔵に戻ってからだそうです。信行さんは東京農大醸造学部を卒業した後、梅の宿酒に修業に行って、ハーパーさんと一緒に酒造りを勉強していたそうです。蔵に戻ったのが約7年前だそうで、その後は純米酒を中心に質の高いお酒造りを目指して努力した結果、現在やっと地酒として評価がえられるようになったそうです。 

この蔵には南部杜氏おられ、今は信行さんと杜氏と清水さんの3人で頑張っているようですが、清水さんのお話では正社員は社長と清水さんのお二人だけだそうです。会社のホームページには従業員は10名と書いてありましたので、他の方はパートとして働いているのだと思います。蔵の生産高は次第に増加し、今年は330石になるらしいです。お酒は主に地元だけに売られているようですが、生産量が少ないので、すぐ売り切れてしまうことが多いようで、最近は人気が出てきたようです。 

使用しているお米は、兵庫県産の山田錦、地元の湖南高畠産の山田錦、滋賀県産の玉栄、玉栄と山田錦を交配してつくった滋賀県の吟吹雪、一般米の日本晴のようですが、滋賀県のお米をベースに使っているようです。 

酵母は最初は9号酵母がメインのようでしたが、最近は18号酵母や7号酵にチャレンジしているようですが、今年はまた9号酵母を増やすようで、その年によって変更しているようで、これも進化の途中といえるのかもしれません。 

今までの情報ではどんな酒だかわからないので、それではどんな酒を飲んだかをご紹介することにします。 

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左から説明していきます。今回は14種類のお酒が出てきました。これがこの蔵の扱っているすべてではなく、人気のお酒はすでに蔵にはなくなっているもの多く、残っているお酒から選んで持って来たようです。きちっと全種類酒質が記載されていたので、それも紹介します。 

1.純米大吟醸 みやの四季 

原 料 米:兵庫県産山田錦      
精米歩合:40%                  酵母:18号
AL度数:16 日本酒度:-2  酸度:1.4
 

コメント:18号の割には香りは高くなく、綺麗な造りだけど標準的なお酒でした。 

2.純米大吟醸 湖南高畑山田錦 生原酒 

原 料  米:湖南産山田錦
精米歩合:50%                  酵母:18号
AL度数:17  日本酒度:-8 酸度:1.5
 

コメント:甘めに仕上がっているが、べとついた感じはなく、さわやかさを感じました。 

3.純米 湖南高畑山田錦 生原酒 

原料米:湖南産山田錦
精米歩合:60%                   酵母:7号
AL度数:18  日本酒度:+5     酸度:1.9
 

コメント:後味が辛いけど酸が強いので、すっ切りシャープな感じ 

4.純米f吟醸 玉栄え 生原酒 

原料米:玉栄え
精米歩合:55%                   酵母:18号
AL度数:17   日本酒度:-6    酸度:1.5
 

コメント:適度な甘さと後味の辛みのバランスがいい 

5.純米吟醸 山田錦と吟吹雪 生原酒 

原料米:山田錦・吟吹雪
精米歩合:55~60%        酵母:7号と18号
AL度数:17   日本酒度:-1 酸度:1.7
 

コメント:これは2種類のお酒を混合したものなので、優しい味だけど複雑さがあって、なんでもOKという気も玉母さんのようなおさけでした。.. 

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6.純米 吟吹雪9号 生原酒

原料米:吟吹雪
精米歩合:60%                   酵母:9号
AL度数:18   日本酒度:+3    酸度:1.7

コメント:香りはほどほどだけど、適度な華やかさもあり旨味もあるお酒でした。これは9号酵母の力でしょう。ちょっと華やかになった女性というところでしょうか

7.純米辛口仕様 生原酒

原料米:日本晴
精米歩合:60%                   酵母:7号
AL度数:19   日本酒度:+8     酸度:1.9
 

コメント:日本酒度が+8なので、さすがに辛いお酒で、新酒の時はもっととんがっていたので、それをイメージしたラベル(ドンキホーテ)にしたそうです。1年熟成してこれでも角が取れているけど、切れない刀で突き刺されるように後味がギュッときます

8.純米 山廃仕込 生原酒

原料米:日本晴
精米歩合:60%                    酵母:7号
AL度数:18   日本酒度:+2.5    酸度:2.0

コメント:全体的には綺麗だけど、厚みがあって適度な酸とのバランスがいいお酒で、ちょと太めだけど整っているおばさんイメージかな。僕は好きでした。

9.特別純米 大自然神開

原料米:吟吹雪、玉栄、日本晴
精米歩合:60%                   酵母:7号
AL度数:15   日本酒度:+5    酸度:1.5

コメント:この蔵としてはごく普通のお酒らしいけど、僕には旨味があまりなくて、僕には普通酒のような感じを受けました。これは他のお酒のパワーがありすぎたからかもしれません

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10.純米 吟吹雪 原酒 1回火入れ 2013年

原料米:吟吹雪
精米歩合:60%                   酵母:7号
AL度数:18   日本酒度:+0    酸度:1.6

コメント:2年熟成のお酒ですが熟成の香りはありません。角が取れて丸くなっているけど、後味にじわっと来る辛さが全体を引き立ててくれます。蔵の0℃~2℃の冷蔵庫で熟成したようです。 

11.純米 山廃仕込原酒 1回火入れ 2013年

原料米:日本晴
精米歩合:60%                   酵母:7号
AL度数:18   日本酒度:+3     酸度:1.9

コメント:いかにも熟成の山廃らしい香りがするし、色も少しついていました。パンチも余韻も少なくて、だらだらしたお酒でした。これは熟成の温度が違うのかな?ラベルがなぜ格闘家なのかはわかりません。

12.純米 山廃仕込み 1回火入れ 2014年

原料米:日本晴
精米歩合:60%                    酵母:7号
AL度数:16   日本酒度:+2.5   酸度:2.0

コメント:熟成が1年でアルコール度数が小さいお酒なので、飲みやすいお酒でした。口に含むとぱっと膨らんだと思うと後味が綺麗で中々いいバランスでした。同じ山廃熟成酒でも色々な味があるのですね。

13.山廃吟醸 大古酒 枯艶酒 H14BY

原料米:山田錦
精米歩合:60%                   酵母:9号
AL度数:18   日本酒度:-     酸度:ー

コメント: これは12年熟成古酒の典型のお酒でした

14.にごり酒

このお酒には酒質の説明はありませんでした。70%精米の純米酒のようです。これは販売しているお酒ではないようですが、意外と違和感はありませんでした

以上でこの蔵のお酒の紹介は終わりますが、全体をとして言えることは、毎年主体とする酵母を変えているようで、たとえば18号酵母は今年から19号に変えるそうです。また、山廃熟成酒だってお酒によって全く味が違うのには驚かされました。このように色々試験をしながら方向性を見極めながら造っているように思えました。

清水さんにこの蔵はどんな味のお酒造りを目指しているのですかと聞きましたら、神開のお酒をどのようにな味にしたいかという考えはなく、毎年その瞬間に最もいい酒を造ろうと言う気持ちを大切にしているだけですという答えが戻ってきました。そのために必要な技術はどんどん取り入れるけど、昔の技術は大切にしながらチャレンジしているとのことでした。

僕が受けた印象は飲んでもらう人にどう応えられるかを考えながら、チャレンジしている蔵で、でも自分たちの技術には自信を持っているようで、これから10年後にどんなお酒を造る蔵になるのか注目していきたいと思いました。

滋賀県の蔵は個性の多い蔵が多いのは、大きな蔵がないので各蔵の独自性が出やすいからではないかと思いました。滋賀県のお酒はこれからもっと勉強したいと思っています。

最後にこの会で同席した加賀美幸子さんとのツーショットをお見せします。加賀美さんはお酒の専門家ではないけど、滋賀県のお酒が大好きで、良く勉強されています。これからもいろいろ教えてください

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天の戸の森谷杜氏は五感を大切にする人です

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去年の12月22日に天の戸の森谷杜氏を迎えて、お米は稲の種というお話を中心に飲みながらの講演会があるということを山本洋子さんに教えてもらい、参加したものです。場所は原宿のオンジャパンカフェで行われたのですが、原宿というよりは神宮前の表参道からちょっと中に入ったわかりにくいところで、迷いながらやっと行き着きました。お店はレストランというよりはカフェの感じでしたね。 

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どうしてこの会が開かれたのかの詳細は正確にはわかりませんが、去年の8月に行われた天の戸の蔵(朝舞酒造)から5km四方の酒米の稲の花見をする会に山本洋子さんが酒食ジャーナリストとして参加されてた時に、森谷杜氏に稲の花の説明を受けられたようです。そこでお米の元になる籾は稲の種だったんだというお話に感激して、このお話を東京の皆さんにも知ってもらおうと、この会が開かれることになったようです。

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それがその時の集合写真です。インターネットから拝借しました。山本さんや森谷杜氏や柿崎(常樹)社長もおられるようです。 

会のスタートで山本洋子さんからご挨拶がありました。いつみても明るくてチャーミングなとことが素敵ですよね 

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この会は最初に森谷杜氏から稲の話を中心に酒つくりの話まで、いろいろな話が続いた後、天の戸のお酒を試飲をしながら秋田の地元のお料理を合わせて楽しむというものでした。実際には、絶えず森谷さんがお話をしていたので、話題が飛びすぎてとても整理しにくい点もあったのですが、僕なりの解釈で説明を加えさせていただいて、お話をまとめてみることにしました。 

杜氏のお話に入る前に蔵の紹介をしておきます。浅舞酒造は秋田県の横手市にあり、横手盆地のまん中にあり、豊富な湧水と良質なお米が取れる環境にあります。創業は大正6年ですから、酒蔵としてはそんなに古い蔵ではありません。 

このお蔵の特徴は何と言っても蔵から半径5km以内の田んぼで栽培した酒米だけを使っていることでしょう。それは3年前に急にお亡くなりになった4代目の社長の柿崎秀盛さんが、昭和63年に平鹿町農協(現・JA秋田のふるさと)平鹿町酒米研究会を発足させて、地元の農家と手を組んで酒米を造る環境を造ったことに始まっています。 

スタート当初は研究会の会員数は10名で美山錦作付面積255aでしたが、その後少しずつ増えていき、平成5年に大冷害が起こったことをきっかけに平成6年に平鹿町研究会の酒米は全量浅舞酒造が買い取ることを始めました。その時は未だ、美山錦と吟の精だけで、415aだったそうです。 

平成14年には会員数は19名に、酒米の種類も5種類となり、作付面積も2148aと増えてきたのを機会に減農薬減化学肥料栽培に取り組み、平成17年から全量減農薬減化学肥料の酒米を使った仕込みとなったそうです。 

さらに平成23年には全量平鹿町酒米研究会の酒米による純米酒造りに移行するとともに、今では作付面積も3234aと増えて、お米の種類も7種類になって、日本酒版テロワールが確立しつつあると言えます。杜氏の森谷さんはこの研究会の一人ですから、酒米つくりのプロでもあるのです。 

さて、森谷さんとはどんな人なのでしょうか。お名前は森谷康市(もりやこういち)さんで、平鹿町の農家の生まれです。山形大学農学部を卒業後、実家の後を継いだのですが、前社長の柿崎さんから誘われて蔵に入ったそうです。森谷さんは柿崎さんとは中学校の智だったそうで、森谷さんの才能を見抜いていたのだと思われます。 

森谷さんは昭和59年に蔵に入って、その7年後には杜氏になったのですから凄い人です。下の写真の方が森谷さんです。中々かっこいいですよね。

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森谷さんは杜氏になった時、夏田冬蔵ー新米杜氏の酒造り日記を出版したり、歌わせたらプロ並みという多才な才能をお持ちのようですが、今回は森谷さんのお話を聞きながら、どんな思いでお酒を造っているのか探ってみたいと思います。 

<なんとなくやる中にも理屈がある> 

農業でも酒つくりでいつもと同じ作業であっても、先輩が普段と違う作業をすることがあるので、その時どうしてそうするのですかと聞いてみると何となくそう思ったからとしか応えてくれなかったことがあるけど、自分がそれを問われる立場になったからには、なんとなくではなくて、その理屈を考えるようになったそうです。 

たとえば、麹作りの際に触ってみて表面が堅いのに手にくっつくような感じがすることがあるそうで、それがどうして起きるのかが最近わかったそうです。それは稲が育つ過程にあるのだそうです。それを知ってもらうためにはどうやって稲が育つかを知らなければならないというわけで講義が始まりました。 

<稲は花をつける時期がある> 

稲は夏の日射しを浴びて,茎の根元から次々に新しい茎や葉を伸ばすことが始まりますが、稲の茎の中には,7月になると稲の穂の元になる鞘が形成され始めます。8月上旬になると葉の鞘をわって穂が伸びてくると,穂の先端から稲の花が咲き始めるそうです。天気の良い日の午前中に花を咲かせ、昼ころには閉じるようです。 

昨年の8月8日にこのお稲の花をみるお花見が行われました。まず横手盆地を一目でみえる絶景ポイントの道満峠にって日本酒で乾杯だそうです。その時の様子です。 

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この道満峠から春に水が張ったばかりの水田を見るとこんな風に見えるそうです。 

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稲の花が咲いている様子です。稲の花は雄しべの下の方に雌しべがあり,雄しべの花粉が同じ花の雌しべに付いて受粉する「自家受粉」という形を取っているので、この状態になった時はもう受粉した後だそうです。でもとてもかわいらしいですね。 

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この後、お米の元となる籾が生育してくるのですが、この籾は稲の種だそうです。ですから稲は子孫を増やすためにこの種を数多く大きく育てようとするようです。しかし、天候にようって育ちが違ってくるそうで、その様子を下記の図で示してくれました 

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最初に咲いた花には籾が最初に実るので、これを長男とよび、次に実る籾を次男、最後に実る籾を3男とします。たとえば長男ができてその後天候が悪いと次男ができるのが遅れます。長男のお米は身が付くのが早いので収穫時には堅くなってしまいます。それに対して成長が遅れた3男は水を吸いやいそうです。ですから収穫されたお米にはこれらが混じっているというわけです。これが最初の疑問となった麹が堅い(長男の米)ようだけども手に着くような感触(3男の米)を感じた理由だそうです。 

一般に次男だけが育った時は凶作で、次男が育つと平年作、3男が育つ時は豊作となるようです。稲の育ち方と米の水分の溶け方は強い関連があるので、育ち方を見てどんな酒造りをするかを考える必要があるというわけです。 

秋田県の言い伝えに「けがち(冷害による凶作のこと)に腐造なし」という言葉がありますが、けがちになるとお米は取れなくなるけど、長男の米ばかりなので腐ることはないという意味だそうで、良いこともあるよということらしいです。 

<お米は稲の種であることを知っていますか> 

稲は花が咲いた後、実として籾をつけ、この籾を収穫した後、殻をとると玄米と籾殻になります。玄米は発芽機能を持っていますが、玄米を精米したお米は種にはなりません。しかし、玄米は長く置いておくと発芽機能を失うので、籾を殻の付いた状態で保存し、春になって適切な環境に置くと芽を出す種となります。なるほど、稲は種を育てるために花をつけ、種を造っていたのですね。人間はそのおこぼれをお米として使っていたわけですね。 

良く観察すると、稲は子孫の種を増やす努力を自ら工夫をしているのが良くわかるそうです。たとえば、風の強い芭蕉の稲は倒れないようにしっかり根を張り、茎を太くするそうです。その証拠に田んぼの隣の道が交通量の多い道路の場合は車の影響で絶えず風が強いので、内部の稲より茎が太いのがわかるそうです。 

また、根が張っているかどうかは田んぼに裸足で入るとすぐわかるそうですが、今では健康のために長靴で入るのでわからなくなっているそうです。なるほどね・・・その場合は他の方法で根っこの状態を見るのは大切なことなことなのでしょうね 

以上で森谷さんの農家としてのお話の紹介は終わりますが、稲の状態はその土地の土壌、環境、気象状態と手の入れ方で変わってくるので、稲の気持ちになって一緒に育っていく感性が必要だと言いたいのだと思いますた。ワインで言うテロワールという感性でしょうね。 

次に試飲したお酒に対する森谷さんのお言葉を紹介しながら自分の感想をコメントとして紹介します。この企画がすごいのは関連する資料がしっかりしてされていたことで、用意した人は大変だったろうと思います。 

9種類のお酒を試飲しましたが、下の写真のように全部プラスティックカップにラベルが貼ってあって、各人に配られました。手間がかかり、これはなかなかできないことです。 

Dsc_0304_2

お酒の試飲の前に森谷さんがお米の紹介を人に例えて紹介したいただいたのでそれを御紹介します。 

1.美山錦 気難しい麗人 

 肥料管理をちょっと間違えると倒れてしまう繊細なお米で、搾った時はつんとしてさりげないけどいるけど次第にふくらみをもつお米だそうです 

2.吟の精 田んぼの室伏広治 

 砲丸投げの室伏広治のようにちょっとのことでは倒れなおおこめです。それは丈夫な飼料米を親に持っているからで、茎が太いので穂が出ると茎から栄養分をどっと送り込みので早く育つそうです。 

3.亀の尾 長身の天女 

 長身で倒れやすいけど、得体が知れない謎めいている 付き合い方により味わいが違うお米だそうです

4.星あかり やなぎごき美人 

 柔らかそうな姿をしているのに倒れない。飲んだ時に凄く愛想がいい。 

5.秋田酒こまち ちょっと天然。良妻賢母 

 ふわんとして、かちっとしたところがないけど、酒にすると家のことをしっかりしてくれる良妻賢母型のお米だそうです。

6.美里錦 残念ながら説明はありませんでした。 

飲んだお酒の写真をお見せします 

Dsc_0327_21.参拾磨き5年古酒 

秋田酒こまち 30%精米の純米大吟醸で、5年古酒ですが熟成の香りはあまりしないが、口の中で綺麗な旨味がぱっと広がり後味がゆっくりのびてきて消えていくお酒でした。 

2.天黒 

星あかり 50%精米の純米吟醸で黒麹仕込みで、黒麹独特の甘みがあり、うまみは日本酒とは違うもので、酸味が結構強いお酒でした。  

焼酎蔵の大海酒造の杜氏が浅舞酒造に来て日本酒の造りを勉強に来た時に、一緒に黒麹の日本酒を造ってみよう思って初めて造ったのが2004年だそうです。

 

Dsc_0328_23.夏田冬蔵 星あかり40

星あかり40精米の純米大吟醸で初めに旨味と甘みの小さなピークがきて、そのあとずっと広がってくるお酒で、弱い余韻が残るバランスのお酒でした
 

4.純米大吟45 

吟の精45%精米の純米大吟醸で、綺麗な旨味を感じてあまり辛みは感じない。余韻はあるけど酸のお陰で切れが良いお酒になっていました。飲みごたえがあるけど切れのあるお酒を狙ったものだそうです。 

 

Dsc_0329_25.夏田冬蔵 こま美 

秋田酒こまち45%精米を麹米、美山錦55%精米を掛けまいにした純米吟醸です。バランスは悪くないけど、ちょと複雑な甘みを感じて美山錦らしい若々しさはあるけど後味の余韻にかる渋みを感じましたが、あまり余韻があまりない酒でした。 

6.美稲80 

秋田酒こまち80%精米の純米酒です。軽い旨味で、磨いていない分だけいろいろな味わいを感じますが、雑みはありません。後味に辛味を感じるし、旨味が少ない分酸味を感じるお酒でした。磨かなくてもいい酒けになるものですね 

 

Dsc_03307.夏田冬蔵 亀の尾45 

亀の尾45%精米の純米大吟醸です。角が取れていて優しい適度な旨味を感じ、裏に辛味をちょっと感じるけどバランスの良いお酒でした。亀の尾をこんなにうまく扱えるのはやはり、杜氏の腕なのでしょうね。 

8.夏田冬蔵 美山錦40 

美山錦40%精米の生酛つくりの純米大吟醸です。旨味が少なめの優しい味でややシャープな感じで、生酛つくりのイメージは全くないけど、心地よい酸味を感じますのですっと飲めるお酒でした。ちょっとワイン的な感じです。これは面白い酒です。 

それはそのはずで、小布施ワイナリーのお酒を飲んでこのお酒のイメージをつかんだそうです。 

Dsc_03329.シルキー 

星あかり60%精米の特別純米発泡清酒生酒です。

鹿児島県の大海酒造の杜氏の協力の下、黒麹での醸造を始めた後、白麹を使用して瓶内二次発酵タイプの発泡性のお酒です。


飲んでみると甘みの中に酸が立ちあがるお酒で、瓶内は発酵で出来た炭酸のしわしわ感があります。後味は白麹が生成するクエン酸のすっきりとした後味を感じました。
 

森谷さんのお話では黒麹は青いレモンで渋みがあるので熟成する必要があるけど、白麹は黄色いレモンで最初から飲める酸味だそうです。 

以上でこの会で飲んだお酒の紹介を終わりますが、この会を通して森谷さんに感じたことは、米つくりも、酒つくりも、自分の五感で感じたことを大切にしていることを強く感じました。今の時代は五感よりは数値を大切にする傾向が強い中にあって、、森谷さんは貴重な杜氏なのではないかと思いました。 

最後に森谷さんの唄声で締めになったのは、さすが山本洋子さんのアイデアです。楽しかったですよ。ちなみに唄は夏の草刈唄と冬唄でした。下記のファイルをクリックすると森谷さんの唄が聞けますよ

夏の唄:「natunouta.mp3」をダウンロード 

冬の唄:「huyunouta.mp3」をダウンロード 

<その他> 

実は4年前に蔵に訪問したことがあるのですが、蔵の様子は下記のURLをご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-59e3.html 

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第1回目

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インフィニット酒スクールの代表の菅田さんは一般向けの講演会や個人を対象としたスクールを開いています。僕が始めて菅田さんにお会いしたのは去年の夏、ふくい南青山291で開かれたセミナーです。講演内容は下記のようなものでした。 

1.セミナー「酵母が与える日本酒香味の影響について」 福井県食品加工研究所、地域特産利用研究グループ 主任研究員の久保義人 

2.セミナー「9号酵母、14号酵母、FK-501酵母の比較テイスティングによる評価と表現、特徴の活かし方、お料理との相性について」 菅田ゆう 

この時の講演内容は下記のブログに纏めました。また菅田ゆうさんがどんな人かもこのブログに紹介しています。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-fb73.html 

僕が菅田さんに凄く興味を持ったのは、彼は化学出身の人なのでで、お酒の味わいを凄く理論的に説明していただけることです。お酒の香りから酵母の種類、造り方のイメージ、保管状態まで推測する能力を持っておられるみたいです。日本酒のソムリエは色々な方がおられるけど、これだけ理論の裏付けを持っておられる方はあまりいないのではと思います。 

さらに僕の日本酒の先生の入江亮子さんはインフィニット酒スクールのプロコースの卒業生だと聞きましたので、それでは是非教えを請いたいと中級コースに入門することになりました。先生にはもう一回教わっています。それは新政の領布会で出した6本のお酒をききくらべる会でした。その時の内容は下記のブログに書きましたが、自分は新政のお米違いを利きわける力がないことが身にしみました。このことから、これからは、ただ飲むだけでなく、味わいをもっと深く考えられるようになりたいと思ったわけです。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/cat7895974/index.html 

この中級コースは1月にスタートし月に1回、12回行われるのですが、どのような内容だかは全く分からず、まずは12か月やってみようと、1月6日の第1回目に参加しました。講義時間は2時間半で受講料は5000円です。決して高い授業ではありません。 

毎回の講義の理解を深めるために、僕に備忘録としてポイントだけを整理して纏めることとしました。 

<原料米について> 

日本酒に使われるお米は一般のお米と違う酒米が使われます。この酒米はどんな特徴があるのでしょうか 

① 一般米に比べて大きい
② タンパク質が少なく粘りが少ない
③ 心白がある
 

<心白とは何でしょうか> 

心白とは米の中に空隙がある部分を言い、ガッチリとデンプンが詰まっていない部分なので、見た目には白濁して見えます。そのため、構造上もろい欠点があるが、逆に利点として、麹菌の菌糸が内部にしっかり入りやすい環境を提供するそうです。次の写真を見てください。 

Dsc_01001

左上のお米の写真を良く見ると、心白が不ぞろいで中心にないものもある。これは良くない酒米で、左下のお米は心白が大きく中心にあるのがわかります。中央下の一般米には白い心白がないのが良くわかります。 

心白の外側にある部分は脂質、灰分、ビタミンなどが多く、特に脂質が多いと雑味を造りだすので、この部分を精米して余分なものを取り除き使っているのです。ですから心白は米の中奥にあるのが望ましく、中心部を外れていると、精米時にわれやすく良い酒米とはなりません。 

<酒米の種類によっても特徴があります> 

・ 山田錦は心白は小さめで、心白に筋がはいっているので麹菌の菌糸が入りやすいだけでなく、割れにくいので20%まで精米が可能です。でも普通は35%ぐらいに止めるのが普通ですが、獺祭は23%まで精米していますね。 

・ 五百万石は心白が大きく厚みもあるので、精米すると割れやすいので普通精米度は50%どまりで使うそうです。 

・ 亀の尾はもともと飯米なので、心白がありません。しかも硬いので高精米が可能で、実際10%精米以下のお酒も造られています。 

<酒米中のタンパク質> 

米の中のタンパク質は麹菌が出す酵素によってアミノ酸になり、その後酵母の酵素によりアミノ酸を高級アルコールやイソアミル系の香りのもとに変えてゆきます。アミノ酸には旨味の成分があるけど、多いと嫌みになるのでこの量をどのくらい残すかのコントロールが味を決める一つになります。 

お米にはどのくらいのタンパク質が含まれているのでしょうか。食糧米のタンパク質の量は7-8%ですが、酒米のタンパク質量は5%前後です。酒米の種類とタンパク質量を下記にしめします。 

・ 八反錦   5.2%
・ 五百万石 5.1%
・ 雄町    5.0%
・ 山田錦   4.8%
・ 美山錦   4.7%
 

タンパク質が多いほど味のしっかり酒になりやすいのですが、新潟の淡麗辛口のお米である五百万石が山田錦より多いのはちょっと意外ですね。五百万石は新潟の霧の塔のように分厚いお酒にもなるのはその性なのかもしてませんね。

<麹造り> 

麹造りは製麹(せいぎく)といわれ、まず蒸米を麹室(こうじむろ)に運び込で、床の上に積み上げ布をかけて温度を均一にする「引き込み」から始めます。 

次に床に積み上げた蒸米を床全体に広げ、麹菌の胞子である種麹を振りかけて、揉みながら均一に混ぜたあと、再び床の上に積み上げて、布を掛け温度を31℃から32℃に置くようです。これを床もというようです。 

その後の工程はここでは説明しません。要は、麹菌を増殖させ、お米の全体を糖やアミノ酸などに変える働きをさせるのですが、ポイントは菌糸が米の中まで上手く入り込ませなければいけないのです。そのために蒸米の表面を乾燥させ、水分の多い中心まで菌糸を伸ばし易く必要があります。そのために室の温度を高く保っています。また室の湿度を高め過ぎると表面だけに麹菌が増殖するようになるので、良くないそうです。 

出来た麹は菌の増殖形態で主に2種類に分けられています。 

総破精:米の全表面から内部にまで菌糸が深く食い込んでいる麹を言います。全体が麹菌でおおわれたような表面をしていて、糖化力が強く、濃醇タイプを求めるときに使われるようです。 

突き破精:菌糸の食い込みが所々まばらな状態だけど、菌糸は深く食い込んでいる麹を言います。軽快な淡麗辛口や吟醸酒を目指す時に使われると言われています。 

製麹の最後の工程が出麹ですが、出麹の温度でどんなお酒を造りたいかがわかるそうです。一般論ですが、出麹の温度が高いとアミラーゼ力が強くなり糖が増えるので、アルコールにした時に糖が残り、甘くなる(日本酒度0~-2度)。出麹温度を38℃にするとアミラーゼ力が下がり、プロテアーゼ力が増えるので、アミノ酸の量が増えるので甘みが減って旨味系になるそうです。甘酸っぱいお酒で有名な仙禽の出麹の温度は42度だそうです。 

<糖化発酵とアルコール発酵について> 

次のような図を見せていただきました。 

Dsc_0101

デンプンから麹の酵素によって糖ができますが、その次の糖の代謝ルートを下記にしめします。この図は自作です。

Photo_2

糖(グルコース)がまずピルビン酸に分解され、そのあとアセトアルデヒドになり、アルコールになるのですが、ピルビン酸は活性が高く、色々な成分になります。 

その一つが有機酸です。乳酸はもともと醪環境の中で存在する酸ですが、代謝によっても生産され、その量はもともとの酸の2倍以上といわれています。乳酸はヨーグルトのような香りと穏やかな酸味が特徴です。でも揮発性なので少しずつなくなっていきます。 

リンゴ酸は爽やかな香りで、コハク酸は穏やかな苦みを感じる酸で、クエン酸は酸っぱい酸ですが、これらの酸は非揮発性で蒸発してなくなることはないそうです。 

カプロン酸エチルは脂肪酸でCが8個もある化合物で薄いとリンゴの香り、濃くなるとメロンのような華やかな香りがする成分です。さらに濃くなるとミルキーな香りがするそうです。 

これらの酸やカプロン酸エチルがどのくらいアルコールの中に存在するかは酵母特性と温度で決まるようです。 

もうひとつ注目したい成分はアセトアルデヒドです。この香りは青臭い香りですが、沸点が21℃と低く揮発性のため、出来たてではかなり残っていても、火入れすると消えてしまいます。しかし瓶燗火入れた後急冷すると中の閉じ込められてしまうので、栓を開けた時に強く感じることがあるようです。これは要注意の工程だそうです。火入れの前に少し開放で置いておくと良いのかもしれませんね

その他、注目したいのは酸の効果です。酸度が2度以上になると乳酸の香りが強くなるのと、また、加水すると甘み成分は加水した分だけ少なくなるけど、酸味はあまり変わらないので、相対的に酸っぱくなるそうです。ですから加水する場合はあらかじめ酸の濃度は低めにする必要があるそうです。ですから、美味しい13%日本酒を加水で造るのは大変難しいそうです。 

<香りから見た酵母特性について> 

・ カプロン酸エチルの香りが主体の酵母 

  協会9号、協会18号、高知のSEL酵母などで、その香りの強さは順に1:2:3といわれています。これらの酵母は酢酸イソアミルを造らないわけではないけど、カプロン酸の香りが強いので、マスキングされるようです。 

・ 酢酸イソアミルの香りを主体とている酵母 

  協会6号、協会14号、静岡酵母、福井酵母など酢酸イソアミルのバナナとか洋ナシのような香りをだすものです。酢酸エチルができるとセメダイン臭が出てしまいます。

・ カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが両方でる酵母 

  協会10号、秋田酵母、山形酵母などカプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方の香り成分を出すものです。 

<活性炭ろ過で何が取れるか> 

・ 色の成分はほとんど取れる 

・ 香りの一部は取れるが、カプロン酸エチルや酢酸イソアミルは取れない 

・ 酸味のうち乳酸は取れないが、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸は取れる 

・ 苦味は半分くらい取れると考えてよい 

糖分や旨味はどうなのか説明はありませんでしたので、取れないのかもしれません。でも火入れすると厚みが減るのは確かなので、旨味は減るのではないかな。今度聞いておきます。少なくとも活性炭を通さない限り、無色透明にはならないそうです。 

次に日本酒の味わい方のレッスンが始まりました。 

<試飲したお酒のリスト> 

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・ 羽根屋 純米大吟醸 五百万石 50%精米
  Alc度15、日本酒度+3、酸度1.3、酵母9号か18号
 

・ 黒龍 純吟38号 山田錦 麹米50%、掛米55%精米
  Alc度 16、日本酒度+3.5、酸度1.2、酵母14号
 

・ くどき上手 純吟 美山錦 50%精米
  Alc度 15.5、日本酒度+3、酸度1.2、酵母10号
 

・ 王禄  山田錦55%精米
  Alc度 15.5、日本酒度-、酸度-、酵母9号

<香りを感じる前準備

写真のようにワイグラスで飲むのが良いそうです。ぐい飲みでは香りはあまりわかりません。

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<外観で見ること>

色の付き具合を見て透明なら活性炭が使用されていると考える。瓶に泡が付いているかどうかで炭酸ガスの入り方がわかる。泡があれば、炭酸ガスが多く若いお酒と考えるべきです。

<香りで何を見るか>

まずはカプ系かイソ系かを利きわけます。そのうえで油の香りや熟成香りから熟成度を想像するそうです。

<味わいは何処で見るか>

口に含んだ時に感じる最初のアタック、それから中盤の状況を感じで、飲み終わったアフターがどうかを分けて見るのが大切だそうです。

それでは4種類のお酒を見ていきます。先生のコメントを書いておきます。自分ではまだここまでわかりません。特に油っぽさは未だ感知出来ていません。

<①羽根屋>

カプロン酸の香りが強いので、酵母は9号か18号と推定する。油の香りがしない、初々しい爽やかさを感じるので、若いお酒と読む。

最初に甘さを感じなめらか、中盤から膨らみが増し、吐き出した後、酸をスウット感じ、軽やかでが苦味がなく何も跡形もなく消えていく。

<②黒龍>

イソアミルの香りがします。落ち着いた熟成したバナナの香りがする。活性炭処理していますが、油の香りがするので、熟成している。間違いなく1年半くらい熟成しているとよむ。熟成香がしないのは保管がー5℃だからだそうです。

最初に甘みと旨味を感じるが、中盤に膨らんでくるがアフターに苦みを感じる。アフターにしっかり苦みを感じるのはコハク酸で、カプ系には出てこない味だそうです。この苦みからもイソ系の酵母を確信するそうです。

<③くどき上手> 

カプロン酸とイソアミルの二つの香りがする。油はまだ感じないので1年以内のお酒とみる。

最初に甘みを感じるがアフターは甘ーく伸びて最後に苦みを感じる。これはイソ系の苦味である

<④王禄>

カプロン酸の香りがあるがそれほど強くない。その香りの奥に油ぽい香(酸化のため)を感じるそうで、カプの香りが減って油っぽさを感じれば、熟成は進んでいると読むそうです。

飲んだ時のテクスチャーはなめらかでとろとろ感があるのは生塾のたまものである。甘さを含んだ旨さで、酸は感じるけど旨味のために酸をあまり感じない。アフターはさーっと消えて何も残らない。こんな味にできるのは蔵の腕だそうです。

以上で味わいを表現を終わりますが、香りや味をスペックから想像することが大切だそうです。

本当に卒業できるかどうかが心配ですね。       以上

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屋守・豊島屋酒造の田中さんは楽しい方です

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2月の連休の前に豊島屋酒造の田中孝治部長を訪問しました。今回は今年初めての蔵見学として選んだのが、屋守の豊島屋酒造です。田中部長とは色々なところでお会いしているのですが、4年前の雄町サミットでお会いしたのを思い出します。初めて雄町にチャレンジして意気揚々と雄町サミットに出したら、見事落選。でもどう作ればよいかがわかったので、来年以降に期待してくださいと言われたのが印象的でしたが、その後の話は聞いていませんでした。そこで田中さんと仲の良い升新商店の山崎んに頼んで、蔵見学をお願いして快く受けていただきました。 

豊島屋酒造には2009年の飲み切り一般公開日に訪れたのが初めてですが、蔵を外側から眺めただけで、とても蔵見学といえるものではありませんでしたが、関心のある方は下記のブログを見てください。 
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-6ae1.html 

当日は天気も良く、東村山市から歩いて蔵に向かいましたが、最後に道に迷ってしまいました。蔵の近くのガストのある久米川辻を右に曲がったのは良かったのですが、そこから一筋道を間違えたので、あの大きなケヤキの木が見つからなかったのでおかしいと思い、電話をしてやっと辿り着きました。 

最初に豊島屋酒造がどんな蔵なのかを紹介します。 

<豊島屋酒造の歴史> 

豊島屋酒造がこの地に出来たのは昭和12年のことで新しいのですが、そのもととなる屋号は江戸時代に神田の鎌倉海岸で豊島屋十右衛門が居酒屋を始めたのが始まりだそうです。十右衛門さんは商売上手で次々とヒット商品を開発したそうで、江戸でたちまち有名な居酒屋となったそうです。 

そのアイデアとは酒を売った後に余る空樽の再利用販売、お祝い事で行う鏡開き桃の節句に合わせた白酒などがあるそうで、そのお陰か、明治神宮、神田明神、日枝神社の御神酒として使用されるようになったそうです。このお店が豊島屋本店として今でも千代田区の猿楽町に所在していて、金婚正宗の総販売元として今でも存在しています。 

さて東村山にある豊島屋酒造はいつできたのでしょうか。明治時代に豊島屋本店が扱う酒蔵として、灘に他社との協同で自前の蔵を持ち「金婚」を製造したそうですが、地理的に遠いことから東村山市にあった川島酒造の後地に、昭和12年に豊島屋酒造を設立したそうです。 

豊島屋酒造は金婚正宗を中心に、神社仏閣に収めるお酒つくりや味りんつくりや大手蔵の桶売りなど色々な酒造りをして、一時3000石の生産量を誇ったそうですが、平成に入って普通酒の販売が減少したため、徐々に生産高は減少しあっという間に2000石を割ったそうです。 

<屋守誕生の秘密> 

田中孝治さんは豊島屋酒造の跡取りでしたが、若いことは後を継ぐ気持ちはなく、スーパーの生鮮担当の仕事をしていたそうです。そんなさなかに祖父が入院騒ぎになたのをきっかけに、27歳の時に蔵に戻る決心をしたそうです。 

でもそれまで酒つくりは一切していなかったので、父からの勧めで広島県の西条市にある酒類総合研究所で3カ月住み込みの清酒セミナーを受講したそうです。その時の受講生には天狗舞の細車多一成さんとか永山本家の永山貴博さんや白岳仙の安本岳さんや国権の井信さんなどそうそうたる有名な方ばかりだったそうです。特に同室になったのは宮城県の日高見の平井孝宏さんだったそうで、平井さんには色々なことを教わったそうです。

セミナーの修行の後、吉祥寺で飲んだ地酒の「醸し人九平次」の味に感激し、東京発の地酒があってもいいのではと思って、自分の蔵のお酒を比較して飲んだらこれはだめだ、新しい酒を造らなければと日高見の平井社長に相談したそうす。そしたら、石巻に酒つくりの勉強に来いと言われて、春から夏まで勉強したそうです。その時、造るだけではなく酒屋に自分を売り込むこともしなければだめだと、発破をかけられたそうです。 

そこで、蔵から比較的近い大手の酒屋の小山商店の小山喜さんのところに飛び込んだそうです。この秋からお酒造りをして東京から全国に売り出す地酒を造るので、上手く出来たら売ってくださいと売り込んだそうです。そしたら、できた酒を持ってくるのが普通なのに、酒も持たずに売り込みに来るとは面白いやつだと協力していただけることになったそうです。 

この冬からは造りの間、1カ月に4-5回も喜八さんから電話が入り、造りの状況を聞いてきたそうです。やっとできたのを持って行って喜八さんに飲んでもらったら、一言、「まだ粗削りだなー、でもこれから磨けば光るものもある」ということで、売ってやるとから3月に納品したのが最初のお酒だそうです。現在の屋守の中心となっている八反錦55%磨きのスペッくとおなじものだそうです。 

ところで、銘柄は決まっているのかと言われて、まだ決めていないけど「金婚」ではだめですかと聞いたら、とんでもない、新しい名前を考えろと言われて、これからの豊島屋を守るという意味で「屋守」としたのですが、「やもり」では箔がないので「おくのかみ」としたそうです。最初は皆から「やもり」と言われたけど、今ではやっと「おくのかみ」と言われるようになったとのことで、今は14年目を迎えていることになります。 

<屋守のお酒について> 

総米600kgから1トンの造りで7基しかない少量造りで、お米は八反錦と雄町だけです。しかも精米度は50%の純米吟醸と55%の純米酒しかありません。酵母は協会1601号で昔は香り高い酵母でしたが、今では香りはあまり高くない酵母になってきているそうです。屋守を造り始めてずっとこれを使い続けているそうです。お酒としては生酒と火入れが基本で、製品としてはあらばしり、中どり、責めとか冷おろしはありますが、非常に単純な造りで、できるだけ手を掛けない造をしているそうです。具体的にはもろみは薮田で搾って、そのまま計量タンクに空気に触れないように送って、そのまますぐ瓶詰めしてー5℃の冷蔵庫に貯蔵すそうで、火入れするお酒はそのまま瓶燗火入れするので、貯蔵タンクを必要としないそうです。なるほど、とてもシンプルですね。これなら造ったそのままのお酒を出荷できそうですね。 

雄町は今年で4造り目ですが、1年目は雄町サミットで落選し、2年目は温度計が櫂に当たって壊れておじゃんになってしまい、去年は出来上がっても堅くて渋くて飲めないので、造った3タンクの一タンク分は生のまま出荷したけど、残りの2タンク分は火入れして瓶づめのまま保管しているとのことでした。見学の終わりにちょっと飲ましてもらったら、やっと味に広がりが出てきているので、今年に販売されるのではないかと思っています。 

どうして山田錦をやらないのかと聞いたら、10年たって八反錦の造りが安定したので、初めて雄町をしたけど、まだまだ安定した酒造りができていないので、しばらくはこの2つの米で勝負をするそうです。安定した造りができるまでは浮気をしないで、しっかり地道に酒造りに取り組むそうで、これなら安心して飲めるお酒ができそうな気がします。 

未だ大きな心配があるそうです。13年たってやっと屋守も300石の生産量になったけど、薮田の場所が空調がかかっていないところにあるので、10月から4月までに7基で4回転強しかできないので、早く薮田を空調できる部屋にするよう改善するそうです。 

<造りの体制> 

現在の従業員は11人で、造りはアルバイトを含めて5人で、生産高は約1000石です。屋守が300石、金婚正宗が450石、残りが250石だそうで、水曜と土日を踊りに充てて休みが取れるように回しているそうです。杜氏は別におられるそうですが、屋守は杜氏の意見はいただくけど、ほとんど自分が判断して造りをしているそうです。従業員に中には国立岩手大学の博士課程出身の人もいるようで、中々面白いですね。 

それではいよいよ蔵見学の様子をお見せします。 

<仕込み水> 

このあたりは地下水の豊富なところで、現在は地下150mの井戸を掘って水をくみ上げています。硬度は56度もある硬水です。この蔵のシンボルの大きな欅は樹齢500年と言われていますが、これはこの地に豊かな水脈がある証拠だそうです。なるほどね… 

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井戸は1本では足りないので、裏にもう1本掘ったそうです。その写真が次の写真です。 

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この井戸の水はそのまま仕込み水としては使っておらず、逆浸透膜濾過機を通した水を使っているそうです。その水は硬度が2度しかなく超軟水だそうです。そうか、最初からそう言った方がいいよね。 

<洗米・浸漬> 

普通酒の洗米は大型の連続洗米機を使っていましたが、屋守や金婚の純米酒以上はWOODSONの3点セットを使っていました。これは良いそうですね。でも屋外での作業でしたのは驚きましたね。 

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<甑・放冷器 

この蔵の蒸器は写真のような連続蒸蒸器を使っています。 

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でも隣には和釜がありました。僕は専門家ではないけど、大変だろうけど屋守だけは和釜を使ってもらいたいな。和釜の方がドライな蒸しあがりになると聞いているので。 

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蔵の案内は田中部長にしていただきました。 

<麹室> 

さすがにシーズン中なので室の中には入りませんでしたが、竹で組んだ床が並んでしました。これはちょっと珍しいのでは? 

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<酒母室> 

普通の酒母室で総米7%くらい作っているそうです。麹菌は黒番もやを使っているそうですが、使いやすいそうです。 

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<特別仕込み室> 

冷蔵庫のような扉があり、入口に炭酸ガス発生中、窒息注意と書いてありますが、この中で600kg~750kgの仕込みタンクが6基入っています。金婚正宗の大吟醸や屋守の仕込み用だそうです。 

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 空調が必要なのはわかるけど、部屋にぎっしりと開放タンクが置かれているので、炭酸ガス窒息にならないかどうか心配です。炭酸ガス警報器を置くべきだと思います。事故が起こってからでは遅いですから。 

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<大型仕込みタンク> 

ここは普通酒用仕込みタンクで、QPマヨネーズからの純米酢用の発酵タンクもありました。 

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中央に見える小型サイクロンはエアーシューターで送られた蒸米をタンク内に落とすものです。この蔵は普通酒用で手を掛けなようないろいろな工夫をしているようです。この仕込み蔵の奥にもこっそり屋守用の小型タンクがありました。下の写真です。 

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 この蔵の屋根の構造はちょっと面白いです。木造でなおかつ強度を持たせる三角構造をしています。中々凄いでしょう。 

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<薮田圧搾器> 

この薮田は最近山梨銘醸で余っていた薮田を購入したものだそうです。確かにちょっと新しそうですね。 

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この薮田を導入した時にフィルターも全部新品にしたけど、最近フィルターを変えると袋臭が取れずに悩んでいる蔵が多いと聞き、良い対策はないかと宮城県の産業技術研究所の先生におききしたら、宮城県ではほとんどの蔵が使っている特殊な薬品があるから洗浄に使ってみたらと、言われて使用したら、全く匂いが出なくてうまくいったそうです。これも田中さんのネットワークの力だと思います。 

<タンク貯蔵室> 

普通酒以外には使っていないど、大型のタンクが並んでいました。場所的にはちょっともったいない気がしますね。 

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<瓶貯蔵庫>

火入れ用の3℃の貯蔵庫と、生用のー5℃の貯蔵庫を持っているそうです。表示はー4度となっていました。
火入れは瓶燗火入れをしていますが、お湯の張り方で瓶の中の温度分布が違うので、試行錯誤をして最適なお湯の張り方を見つけたそうです。

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以上で蔵見学の様子の紹介を終わります。最後に田中さんの夢をちょっと語っていただきました。 

・ 東京の都心に近い蔵として、誰でも観光がてらに来れるような蔵にしたいそうです。特に2020年の東京オリンピックに向けて、事務所を改造して、一階をお酒の展示と試飲ができるようにしたいそうです。屋守はここでは販売できないけどPRはしていきたいそうです。 

 ホームページでちゃんと屋守のお酒のPRができていないので、ホームページの全面改定をしたいそうです。 

・ 蒸器と洗浄ができる部屋を改造して、作業のしやすい環境に変えたいそうです。その時は和釜の有効活用も考えてもらいたいな  

・ 薮田の搾り器を空調の出来る部屋に入れて、もっと長い期間、屋守を造れる環境にしたいそうです。 

まだまだいろいろやりたいことはあると思いますが、僕のお願いはあっと驚くような雄町と、洗練されているけど旨い山田錦を早く造ってもらいたい気がします。

Dsc_0126蔵見学が終わって、お土産に十右衛門の純米吟醸をいただきました。

このお酒は酵母を宮城酵母に変えて4年になるそうですが、この宮城酵母も洗浄薬品を紹介してくれた宮城産業技術研究所の先生からいただいたそうです。宮城酵母は原則他県には出さない酵母で、これを手に入れている他県の蔵はごく少数とのことでした。

いずれにしても田中さんは今までお付き合いのあった人のネットワークを上手く使っている方と思いました。これも田中さんの人柄からくる仁徳ではないかなと感じました。これからもがんばってください。

最後に駅まで車で送っていただきました。田中さんの写真を取り忘れたといったら、高笑いをしていただきました

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田中さんお忙しい中、ご案内していただきありがとうございました。

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司牡丹のお酒の味の秘密はどこにあるのでしょうか

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2月5日に八芳園の日本料理店「槐樹」で第12回目の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会に参加して来ました。この会にはできるだけ参加しようと思っていますが、今回で8回目の参加ではないかと思っています。今回の蔵元は高知県の司牡丹酒造の社長の竹村昭彦さんです。 

竹村さんは1962年に司牡丹酒造の跡取り息子として生まれましたが、高知の高校を出た後、東京の学習院大学の経済学に入学されました。寮生活でしたので、高知県の者なら酒は強いだろうと言われて、一気飲みをやらされ、すっかり日本酒が嫌いになたそうです。確かに高知県のつわものは酒が強く、少々やりますと言えば升升という意味で2升は飲む人もいるそうです。竹村さんは下戸で4合ぐらいが限界だそうです。それ、下戸ではないですよね。 

ですから大学を卒業してからは酒造りをするつもりはなく、東京のファッション雑誌やお菓子を扱う会社で5年間営業をしていたそうです。平成2年に蔵に戻ることになるのですが、その理由の説明はありませんでしたが、弟が6歳も離れていて公務員志向でしたので、やもえず、後を継ぐことを決心されたそうです。その時まで日本酒の勉強もしていなかったし、どんなお酒を造りたいかのイメージも無かったそうです。 

司牡丹酒造の歴史のお話は後で触れますが、司牡丹は高知県で一番古い企業で、造り酒屋としてもトップクラスですので、蔵に戻った時は9000石ぐらいの生産量があったものと思われます。この蔵は仁淀川の軟水を仕込み水に使用しているので、軟水のお酒つくり(軟水醸造法)で有名な広島杜氏を昭和6年に受け入れて、独特の酒造りを確立していた蔵でしたから、社長が造りのことを知らなくても全く問題はなかったと思われます。 

でも入社後は普通酒が売れなくなり、特定名称酒の時代に移っていて、それに合わせた色々な改革をされたようで、それについてはもう少し後で詳しく説明いたします。現在の出荷ベースの生産高は5000石だそうで、これまで大変苦労されたものと推察されます。幸いに、竹村さんが入社する2年前に現在の杜氏浅野さんが入社されており、お二人で力を合わせて、改革ができたことは幸運だったのかもしれません。 

僕は竹村さんとは過去に一度お会いしたことはありますが、じっくりお話を聞く機会は今回が初めてです。この会で竹村さんのお話を聞いて、この方は頭の回転が速く、瞬時に状況を判断し行動できる人だなと思いましたので、その証拠となるお話をまず紹介します。 

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この方が社長の竹村さんです。温和な雰囲気でお話もとても上手ですが、僕が感じた事例をお見せします。 

エピソード1: この写真はこの会の中で僕たちと一緒に食事をしながらお酒の説明をしているところです。これはお店にお願いしてこのような形にしたのですが、実は12回の会の中で殆ど初めてのことです。これには裏話があって、それを竹村さんが紹介していただきました。この会を開くにあたって、事前にお店が会で使うお酒を取り寄せて、お料理の内容を決めたのですが、(この会ではいつもそうしています)、竹村さんはもう1000回以上もこのような会を開いていますが、いつもは竹村さんがお料理の内容を聞いて、それに合わせてお酒を選んでいるそうです。その方がお店にとって楽だからということですが、そこまでこだわるこのお店のお料理を一緒に楽しみかったのだと言うのが本音でしょう。このことから想像できるのは、竹村さんは好奇心が旺盛で、すぐ行動する人のような気がします。 

エピソード2: この会の説明の中で、これから結婚する人で八芳園で式を挙げる人には司牡丹で鏡開きを提供しますとか、高知の蔵まで来た人には自分で案内しますと、ぱっと公言されました。これに応える人は殆どいないと思っておられるのと、仮に現れたら、キチット実行することが利益を度外視して、価値があることを瞬間的に判断されたと思います。竹村さんは瞬間の状況判断が早いことが想像されます。 

エピソード: 会の中の自己紹介で、僕は事務屋なので技術的なことは専門ではないけど、お酒のお話を素人に説明するのは得意なのですと言われました。確かに山廃の説明の時に短い言葉で的確に説明されていました。難しいことを簡単に説明することは、その本質をきちっと理解して、聞く側のレベルの合わせた説明ができると言うことですから、理解力が高く柔軟な思考力を持っている表れだと思います。 

エピソード4: お話の中で郷土料理の内容に詳しいし、高知の色々な情報もよく知っているので、高知県の観光案内ならできると言われていましたが、それだけ地域密着の気持ちが強いということでしょう。土佐の上手いもの探しというブログも造っています。http://tosa-no-umaimono.cocolog-nifty.com/ 

エピソード: 平成17年からほぼ毎日ブログを書いているそうで、今回の会のこともブログに書かれていました。http://blog.livedoor.jp/tsukasabotan/archives/2016-02-10.html このブログは2月10日にアップしていますので、しっかり準備されて書かれているようです。土佐弁の独特な言い回しのブログですが、内容はとても面白いので読んでみてください。ユーモアのセンスが溢れています。 

エピソード6: このお話は皆には説明はなかったのですが、僕が個人的に聞いてわかったことです。社長になったのが平成11年で、蔵の全面改造のために平成蔵を造ったのが平成17年ですが、その時に新蔵の内容は杜氏以下に全面的に任せたそうで、きっと大方針は出したけど細かいことには口を出さなかったようです。これは蔵人を信用していることの表れではないかと思います。 

以上今回竹村社長さん個人について感じたことを述べさせてもらいましたが、ユーモアもあるし、声が通るし、場を盛り上げるのがうまいので、お陰さまで楽しい会になりました。ありがとうございました・・・・ 

飲んだお酒の紹介に入る前に、蔵について簡単に説明いたします 

<司牡丹の歴史> 

この蔵の創業は1603年で徳川家康から24万石をもらった山内一豊の家老の深尾和泉守についてきた造り酒屋の御用商人がこの蔵の前身です。屋号は「黒金屋」といい、坂本竜馬の本家の酒屋の「才谷屋」とは関係が深かったようです。司牡丹と名が付いたのは大正7年で、この蔵のお酒を愛した田中光顕元宮内大臣によって「牡丹は百花の王で、その王(司)たれ」という意味で、司牡丹としたそうです。酒つくりのTOPになれという意味だと思います。 

蔵は仁淀川の支流である柳瀬川沿いにある佐川町にあります。仁淀川は日本一清流と呼ばれた四万十川をしのぐ、本当に日本一の清流だそうで、敷地内の井戸からは仁淀川の伏流水が出るそうです。この水は微弱ながらカリウムを含む軟水で、この蔵の命の水となっています。しかもこの土地は夏は盆地独特の熱さがありますが、冬は気温が氷点下まで下がるので、酒造りに最適だそうです。 

昭和6年に軟水醸造で有名な広島杜氏に来てもらいようになって、酒の品質が良くなり、数々の賞を取るようになったそうです。でも社長が蔵に戻った時には、大きな問題があったそうです。それは蔵の敷地は広かったのですが、いくつもの蔵が建っていて、蔵人はその蔵を移動しなければ酒造りができないので、大勢の人が必要だったことです。当時は蔵人が30人くらいいたそうです。 

今までばらばらな処でやっていた作業をまとめて、洗米から蒸米造り、麹造り、酒母造りまで一貫して造れるような新蔵(平成蔵)を平成17年に新築しました。その際フジワラテクノアート社の最新の装置の導入をして、洗米は限定給水が自動で出来る回転式自動洗米浸漬装置を、蒸米は蒸しムラのない横型連続蒸し米機を、製麹はVEX式完全無通風自動製麹を導入して、普通酒から大吟醸まで安定した造りができるようになったそうです。また醪タンクも従来の6トン仕込みから3トン仕込みにしたり、吟醸系では1トン~1.5トン仕込みに小型化したそうです。特に安定した原料処理ができるようになって、普通酒のレベルが格段に向上したそうです。これにより作業の導線が良くなったので、蔵の従業員も季節労働者が10人と社員が3人の体制になったそうで、コストダウンもはかれたのではないでしょうか。 

新蔵ができてから社長のブログ造りが始まったのも、偶然ではなく、安定した造りができるようになって余裕ができたからではないでしょうか。 

<飲んだお酒の紹介> 

僕は今までなんとなく司牡丹は坂本竜馬のような土佐の酒好きが好む男酒のイメージが強かったのですが、広島県の軟水醸造法をベースにしているので、実は女酒の方が近いのかもしれません。でもたくさん飲めるお酒の秘密はどこにあるのでしょうか。今回勉強させていただきました。 

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このお酒がこの会で飲んだお酒ですが、最後に飲んだ古酒が写っていません。それを入れるとなんと、9種類のお酒を飲んだことになります。しかもその中に720mlで1万円もするお酒もありました。 

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この会は日本酒を必ずワイングラスで飲みます。その方が香がわかるので良いと思います。今回は日本酒に合わせて出てきたお料理に対して、竹村さんから丁寧な説明もいただきましたので、これも紹介します。 

<司牡丹・立春朝搾り> 

Dsc_0068このお酒は日本名門酒会に加盟している蔵の38蔵で出しているもので、2月4日の立春の朝に蔵まで酒販店さんが出かけて、朝搾って瓶詰めしたお酒に自らラベルを張って、その後神社で祈願のお祓いを受けたお酒です。事前に注文をいただいたお客様だけに販売しているお酒ですが、今回はその中から2本だけ乾杯酒として会に持ち込まれたようです。 

この日に全国で27万本も出荷されていて、司牡丹だけでも6400本が出たそうです。原料米は松山三井と山田錦で、精米は60%の純米吟醸原酒です。 

飲んでみると炭酸ガスのピリピリ感があり、フレッシュで薄にごりの旨味を感じるけど、全体的にはシャープで後味に少し辛みを感じるお酒でした。  

<かまわぬ・山廃仕込み純米酒> 

Dsc_0074_2平成7年度に40年ぶりに復活させた廃仕込みの純米酒で、原料米は全量高知県産の山田錦65%精米で、酵母は自社培養の9号酵母を使っています。

山廃は速醸のように乳酸を投入しないで、自然に発生する乳酸を利用して発酵させるため、何も「構わぬ」という意味で「鎌、輪、ぬ」と書いて「かまわぬ」と」読ませるようです。 

日本酒度は+6で、酸度は1.6くらいだそうです。飲んでみると山廃独特な酸味があまり強くなく、綺麗な飲みやすい山廃でした。お燗をしてみたら旨味がどんと出ると同時に辛味もしっかり出てきました。 

Dsc_0071_3この二つのお酒に合わせて出てきた料理は次のような前菜でした。この中に高知の山菜のいたどり(虎杖)と舞茸のぴり辛煮も入っています。〆鯖と丸十(高知ではサツマイモのことを丸十という)のぬた和えもありました。 

 

<司牡丹・酒槽搾り純米大吟醸原酒> 

Dsc_0079このお酒はこの蔵の定番の山田錦40%精米の純米大吟醸原酒で、槽(ふな)搾りというタイプの搾り器で無圧で搾ったお酒です。瓶の形が角型になっているので、酒屋で並べやすいと評判のお酒だそうです。 

日本酒度が+4で、酸度が1.3と司牡丹としては辛みと酸味を抑えたお酒で、飲んでみると綺麗な甘みで後味にそれほど辛味を感じないけど、すっきりした後味が良いですね。海外からのソムリエの評判が良いお酒のようです。海外では辛味は嫌がられるでしょうね 

このお酒に合わせたのがウツボの叩き皿鉢盛りでした。このウツボのたたきを食べた後ですとこのお酒の辛味が強調されたのには驚きました。

 

Dsc_0082_2ウツボは高知ではよく食べられるお肴で、骨が多く鱧よりも裁くのが難しいそうですが、鶏のささみのように淡白だけど、コラーゲンが多く、体に良いそうです。ちょっと歯ごたえがあったけど噛むと味わいがありました。  

<秀麗司牡丹・純米吟醸原酒> 

Dsc_0085しっかりとした香りと奥行きのある味わいを持たせるように造った純米吟醸の原酒です。お米は麹米が山田錦60%、掛米が松山三井60%精米です。 

この蔵が使う酵母は9号酵母をベースにしながら色々な香りを持つ高知県の酵母をブレンドして、使用しているようです。 

飲んでみると確かにカプロン酸の香りが立っているけど、旨味もしっかりしていて、口の中で膨らんでスウト消えていくお酒でした。でも後味にはしっかり辛味は感じます。 

瓶のデザインは最近変えたようで、レトロの雰囲気の中に牡丹の花がかわいらしくアレンジされた面白いデザインでした 

このお酒には鰤の燻製が用意されましたが、写真を取り忘れました 

<司牡丹・仁淀ブルー・純米酒> 

Dsc_0089_2仁淀川は日本一綺麗な清流として、最近注目を浴びていますので、仁淀川のイメージを持つお酒を造ってみようと、社長と杜氏が考えたお酒だそうです。 

カプロン酸系の香は清流のイメージがないので、柑橘類系の香を持つ酵母として7号酵母を選択し、ほのかな酸を出すようにしたそうです。 

原料米は山田錦と吟の夢の精米は65%の純米酒で1回火入れだそうです。飲んでみると、明らかにイソアミル系のさわやかな香がしましたので、清涼感は出ていましたし、酸度も1.6位あるのでイメージは出ている思いました。 

このお酒にはウツボの唐揚げがが出ましたが、残念ながらこれも写真を取り忘れました。でも美味しかったです。 

<司牡丹・天香国色> 金賞受賞酒 

Dsc_0090天香国色とは天下一の香と、国一番の色を持つ花という意味で、牡丹のことを意味しています。このお酒は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した金賞受賞酒です。司牡丹は過去に30回も金賞を受賞している蔵ですが、司牡丹の通常のお酒はクルコース濃度が0.8から1.5くらいなので、そのままでは金賞が取れないそうです。 

ですから敢えてグルコース濃度を2.0以にするようにしていますが、それでも日本酒度は+3程度のようです。酵母は9号系を主体として使っているようです。出品酒は香を出すためにアルコール添加をするそうです。 

このお酒はこの蔵としてはトップレベルのお酒なので、価格は1升1万円するそうです。 

飲んでみると確かに少し甘めのお酒で、香りもほどほどにあって、今流行りのお酒にバランスに近づいていました。大手の蔵はその気になれば金賞を取れるお酒造りができることを証明していますね。 

<船中八策・しぼりたて>超辛口純米原酒 

Dsc_0092船中八策は坂本竜馬が後藤象二郎に船の中で8つの提言をしたことを意味しています。坂本竜馬と関係が深かった蔵の代表的お酒としてこの言葉を利用したようです。 

人気の商品なのでラベルの色を変えた5種類の船中八策が出ています。一年中出荷されているオレンジと黒のお酒、冬場限定のピンクの搾りたて生、夏場に出す水色の薄にごり生、秋に出す白色のひやおというわけです。もっとあるのかもしれませんが、わかりませんでした。 

写真ではオレンジに見えますが、実際はピンクです。お米は麹米が山田錦で、掛米は色々なものが使われているようです。日本酒度が+8ですから超辛口ですが、飲んでみるとちょっとイソアミル系のさわやかな香りと、ガツンとした旨味があるので、後味の辛味がそれほど感じません。人気の理由がわかります。 

Dsc_0093これに合わせたお料理が軍鶏鍋です。軍鶏鍋はコクがあってとてもおいしい出汁が出ます。この味なら船中八策のパワーに負けない素晴らしい選択でした。軍鶏鍋がこんなにおいしいとは知りませんでした。 

この後に軍鶏鍋の出汁を使ったラーメンが出たのですが、これが絶品で、八芳園で軍鶏屋台ラーメンをだしたら、必ず食べにくると竹村さんが言われたほどです。 

<司牡丹・山柚子搾り・柚の酒> 

Dsc_0094土佐れいほく産の山柚子をギュッと搾った汁をふんだんに使ったアルコール8%の純米酒と糖類だけで造った酒です。 

山柚子のさわやかな香りとすがすがしい酸味でスウト飲めるお酒でした。海外でも大人気で、フランスの三つ星レストランの巨匠トロワグロ酸も大絶賛だったと聞きました。でも店には出さなくて自分用に買ったらしいそうです。 

今や司牡丹の海外進出のトップのお酒として定着しているそうです。  

<源十・純米大吟醸原酒大古酒> 

Dsc_0097最後に出た酒がとんでもないお酒でした。純米大吟醸の10年以上熟成させた古酒で、先代の名前の源十という名が付いていますが、720mlが1万円もするそうです。 

このお酒の製造年月日を見たら、平成9BYでしたので、16年物です。山田錦45%精米だと思われます。 

色はついていますがそれほど強くありませんし、熟成の香りもそれほど強くありません。飲んでみると優しい味わいで、これなら、古酒が嫌いな人でも飲めそうです。 

15℃クラスの貯蔵庫で16年も熟成させても、こんなにゆっくり熟成するなんて、どうしてなのでしょうね。お酒の熟成は奥が深いですね 

最後にデザートとしてアイスクリンが出ました。 

Dsc_0096アイスクリンは高知県ではどこでも売っているおなじみのものですが、アイスクリームとは違って、ちょっとシャーベットのようなものだそうです。 

今回は高知県産ではなくて、槐樹で造ったオリジナルのアイスクリンだそうです。 

以上でお酒とお料理の紹介を終わりますが、司牡丹のお酒の印象は口あたりは軟水の良さを感じる柔らかい旨味と甘みをかんじる(お酒によってその強さは違います)けど、必ず後味には甘みが残らないで辛味を感じる共通の味わいがありした。簡単に言えば口当たりは女酒で、後味が男酒だから、大酒飲みにも愛されるお酒だということがわかりました。でも金賞を狙えばちゃんと取れる技術力のある蔵だということがわかりました。 

竹村社長 最後まで盛り上げていただいてありがとうございます。12回目の会の中でもこんなに盛り上がったのは初めてではないでしょうか。ありがとうございました。

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第2回目

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コースの第2回目が2月の初めに開かれました。第1回目の中身をより深く勉強する内容になっています。ですから第1回目と重複することが多いのは仕方がありませんが、重複している方が思いだすことができるので助かります。でもこのブログとしては、出来るだけ重複を避けてまとめてみたいと思います。 

<醪の中の酵素反応> 

蒸したお米に麹菌をまいて糖分の多い麹を造るのも麹菌の持つ酵素の力ですし、醪の中で酵母を入れて、糖をアルコールに変えるのも酵母が持つ酵素の力です。それでは酵素ってどんなものなのでしょうか。 

酵素(こうそ)英語でエンザイムと言われ、生体でで起こる化学反応に対して触媒として機能する分子であり、通常タンパク質でできています。これが存在すると、ある条件を与えると勝手に働いて目的の反応が始まります。日常的に知られている酵素の働きは洗濯の場合、しみは石鹸だけでは落ちにくいが、しみの素となっている物質を分解する酵素を入れることですね。 

酵素は生き物ではなく物質なので、死ぬことはないのですがその周りの環境によって、活性(元気な状態)、失活(酵素の構造が何らかの原因ため変化した状態)、休眠の状態(環境が整っていないので眠った状態)になります。酵素の働く条件は、PH(酸性・アルカリ性の強さ)、温度、分解したい物質の濃度、酵素の濃度で決まります。 

それではもろみの中の酵素の働きを考えてみましょう。日本酒では通常3段仕込みという並行複発酵が採用されています。醪の仕込みは麹、蒸米、水の全量を一度に投入しないで、3回に分けて行います。これは発酵を安定的に行い高いアルコール濃度を造ることができる日本酒独特の方法です。 

ですから醪の中では麹の酵素により米が糖化されると同時に生成した糖を酵母の酵素がアルコールに変えるという2段階の反応が同時に起こっています。米を糖化する酵素力も糖をアルコール化する酵素力も温度を上げると活性は上がりますが、その程度が違うようです。ですから醪の温度を上げ過ぎると、糖を造る量より糖を処理する量が増えて発酵が停まるということも起こるようなので、温度管理は大切になります。 


また吟醸酒のように低温長期発酵の場合は、糖を造る量より糖を処理する量が少ないので、グルコース濃度が上がって甘くなっていきます。糖からカプロン酸エチルを造る酵素力はグルコース濃度を2.0以上にしないと働かないそうです。ですからカプロン酸の香がつようお酒は最初のアタックが甘く感じるのです。 

でもこれは一般論で、日本酒度が+10の辛いお酒でもカプロン酸の香を出す蔵(王禄)もあるそうです。これはどうやってるのかわかりませんが、まさに杜氏の腕なのかもしれません。 

<醪の中の酸について> 

まず前回お見せした図を再度示しますが、糖からピルビン酸を経由して下記のような色々な酸を造ります。 

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乳酸は揮発性なので、香を感じますが、リンゴ酸やコハク酸、リンゴ酸は非揮発性なので、香はありません。ですからお酒には乳酸があるので、必ず乳酸の香を感じるそうです。この香りは酸度が高い時には強く感じますが、酸度が薄くても強く感じることがあるそうです。それは加水した時だそうです。加水量が多くなると製品の濃度は低くなり、糖とアミノ酸は薄まってきますが、酸は薄まっても強く感じるので、14%位に薄めると相対的に酸を強く感じて乳酸香が出やすくなるそうです。 

今回はここに示した酸の3%水溶液を試飲してみました。3%はシャブリの白ワインレベルの酸だそうです。 

乳 酸 : もともと醪の中には乳酸が一定量入っていて、代謝過程からの生産量の方が2倍くらい多いので、日本酒には必ず乳酸の香があることになります。ヨーグルトぽい香りですが、それほど強くないので見逃されやすいそうです。乳酸は酸っぱいけれど丸みがあって膨らむ酸味です。 

リンゴ酸: 後口がピリピリするようなシャープな酸味です。温度を上げるとシャープさがぼけてきますので、冷やした方がすっきりした感じが出やすい。 

コハク酸: 酸っぱさはあるけど、後味にあさりのだし汁のような苦み感じるのが特徴です。 

日本酒を味わう場合は、酸の状態を感じ取ることが大切でだそうです。特に乳酸の香りはわかりにくいけれども、これを強く感じるときは発酵の過程に何らかの理由があるので、注意したいところだそうです。 

一般にカプロン酸を造りやすい酵母はコハク酸の量が少ない。それはカプロン酸を出すために酵母の発酵を抑えた低温長期発酵状態にするからです。コハク酸は発酵を旺盛にすると出来やすくので、発酵が少ないとコハク酸が少なくなります。ですから、カプロン酸の香のあるお酒はコハク酸が少ない、つまり後味に苦みがないことになります 

一方イソアミル系の酵母は初期段階の温度を上げるので、コハク酸の量が多くなるそうです。ですから後味に苦みを感じます。これは一般論で、もちろん造り方で出来る量のコントロールできるので、注意してみると面白いそうです。  

<マルロラクティック発酵を知っていますか> 

マルロラクティック発酵とは乳酸菌の働きによってリンゴ酸を乳酸に変える発酵のことを言います。これによりシャープな酸味のリンゴ酸をまろやかな酸味の乳酸に変えることができるそうです。ワインではこの発酵が日常的に使われているそうです。 

天候が不順な年に造られるブドウやシャブリのような北の寒い土地で造られるブドウはリンゴ酸が多く、酸っぱくなります。この場合に、マルロラクティック発酵でリンゴ酸を乳酸に変えることによって、当たりが柔らかくなって飲みやすくなるそうです。フレッシュらしさや、フルーティさを求める白ワインならリンゴ酸が多くても良いのですが、赤ワインの場合はリンゴ酸が多くなるとバランスが悪くなるために、この発酵がよく使われているそうです。またシャブリ地方のシャルドネの白ワインではあまりにも酸っぱくなるので、通常マルロラクティック発酵を使っているそうです。 

唐揚げでレモンをかけて食べる場合はリンゴ酸があるものが合うし、マヨネーズをかけた唐揚げには乳酸が多い方が合うそうですから、試してみてください。 

<アセチルコエを知っていますか> 

アセチルコエとはアセチルCoAと書きます。CoAの意味は補酵素という意味で、酵素の働きを補う成分ということです。この補酵素が働くことによってピルビン酸から脂肪酸を造る働きが起きます。こうしてできた脂肪酸からカプロン酸ができて、カプロン酸エステルができるのです。 

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でもこの補酵素が働くには糖が必要です。ですから糖濃度が低いとカプロン酸ができなくなるそうです。その例を最近群馬の蔵で発見したそうです。この蔵は協会9号酵素を使っているにも関わらず、カプロン酸の香がないのです。これは低温長期発酵したにもかかわらず、グルコース濃度が2%以下だったからだと思われます。確かに口に良い含んだ時に甘さを感じないことでも確認できました。 

<試飲したお酒のリスト> 

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① 栗林酒造 特別純米 美山錦 55%精米 3年熟成
  Alc度16.6、日本酒度+2.5、酸度1.7、酵母 協会6号 
 

② 出羽桜 純米吟醸 雄町 50%精米 熟成度不明
  Alc度16-17、日本酒度+5、酸度1.6、酵母 山形酵母
 

③ 黒龍 垂れ口 本醸造生 五百万石 65%精米
  Alc度18、日本酒度-6、酸度2.1、酵母 自社酵母
 

④ 仙禽 霧降 純米吟醸 生原 原料米不明
  Alc度16、日本酒度-6、酸度2.3、酵母 栃木酵母
 

それぞれの味を皆で試飲した時の先生のコメントを示します。 

① 栗林(りつりん) 色はちょっとついている。イソエチの香が少しあるのと、熟したフルーツのカプロン酸の香がある。熟成が3年あっても香が消えないで残っている。これはー5℃の貯蔵しているからだと推定される。わずかにウエハウスような乳酸香を感じるので、酸が強いかもしれないと想像する。少し油ぽい香りも少しだけある。 

その後味を見てみる。テクスチャーも滑らかで、程よい甘みと旨味のボリュウム感があり、中域からアフターにかけて酸味が出て、同時にアルコール感もしてくる。すこし青臭いアセトアルデヒドが残っているので、1回火入れではないか。中域でのとろみ感があると熟成していることがわかるそうです。 

アフターはそんなに苦さはない。6号酵母でもカプロン酸を頑張って出しているように思えて、イソエチ系の香の強い新政の6号酵母との違いを感じるので、6号をここまで仕上げることに驚きを感じるそうです。 

② 出羽桜 雄町 色はちょっとついている。山形酵母はカプロン酸もイソエチも造る酵母ですが、カプの香りをしっかり感じる。色から熟成してるのかなと思ったけど香がしっかりついているので、貯蔵がー5℃ではなかったのではないかなと思われる。 

味をみると、アミノ酸がそれほどではないけどアミノ酸度は1.2くらいではないか。アッタクの旨味のなめらかさははあるが、中域から酸が出てきてなめらかさが引いてきてさらっとした口当たりがして、後味に多少苦みを感じるので、コハク酸がちょっとだけ出ているのではないかテクスチャーが途中で変わるので、火入れで熟成は1年未満と思われる。 

 

③ 黒龍 垂れ口 薄くにごっているが色はついていない。バナナとかセメダイン系の香で、酢酸イソアミルの香りが強いのは精米度が悪いからだと思う。ちょっと青リンゴの香りがするので、カプロン酸も出せる88号酵母を使っていると思われる。黒龍の中では鑑評会用に使われる酵母です。よく嗅ぐと蝋のような油っぽい香りがする。これは脂肪の香りです。色々な香りがするということで良いと思います。 

味をみると、アタックでは甘みのボリュウム感があり、テクスチャーがなめらかで、徐々に膨らんで来て、ピリピリしたアルコール感が出て、甘さうまさが徐々に優しく細くなっていく。アフターに苦味がほとんど出ていない。アフターにアル添加したアルコールが出て来るはずなのにアルコール添加した片鱗が見当たらないで、綺麗にフェードアウトしてくる。まるで純米酒のようです。しかもコハク酸も出てこないのはどうしてなのか不思議な気がするそうですどうしてこんなお酒が造れるのか知りたいそうです。

④ 仙禽 霧降 色は②と③の間です。色々な香りが重なっているように思えます。乳酸に高さの香とバナナ系の香りが合わさった香りであ。この酵母はカプ系だけどそれほど強くない。乳酸香の香りが重なって、フレッシュな清涼感の印象があるが、ツンとした香でなく生原の特徴が出ている。 

味を見てみると、16%ある割にはアルコール感はあまり強く感じない。甘みのアタックはしっかり感じるけど、酸が強いので軽やかな甘みとなっています。今までの仙禽はこれにアルコールの苦みを感じるのですが、今回は軽やかでふわーと広がって消えていく味わいです。口当たりが優しくて、今までの仙禽にはなかった味わいだそうです。

以上が4種類のお酒の味わいの先生のコメントです。蔵によって独特の味わいがあるので、飲んだだけでどの蔵のお酒かを当てることもできるようになるそうです。化学に基づいた香や味わいを何回も練習で体に覚えさせることが重要だそうです

最後に、一般論ですが、色が付いているのはアミノカルボニル反応が少し起きて、フラノンという成分が出ているからで、時間がたつと必ず出るものである。熟成が進むとカラメルのような香を出すものであるが、現在は少し感じる程度で、この成分は炭素濾過によって完全に取れるそうです。

以上で今回の講義のまとめを終わります。最後に講義中の先生の写真をお見せします。

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春霞のお酒は栗林さんの人柄が出ています

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2月の連休の最初の2日間を使って、秋田の蔵2件、山形の蔵1件の蔵見学をすることを思い立ち、升新商店の山崎さんの伝手で実現することができました。 

最初の蔵は春霞の栗林酒造店です。蔵は秋田県仙北郡美郷町六郷にあります。六郷は名水百選にも選ばれた六郷の湧き水群で有名なところですが、湧き水で名前が付いている場所は栗林酒造店の前の通りより西側ばかりです。ですから栗林酒造より東の山側には湧き水はありません。その理由は聞きませんでしたが、何か理由はあるのでしょう。この地区はお米の産地でもあることから、昔から酒つくりの盛んな処で、江戸時代には20もの蔵があったそうですが、今では3つの蔵がしか残っていません。 

僕たちは大曲まで秋田新幹線を使い、そこからタクシーで蔵に向かいましたが、タクシーの運転手が場所を知らなかったので、迷いましたが30分くらいで到着しました。蔵の入り口の写真です。カメラの絞りを間違えたので、変な写真になりましたが、看板には春霞平和醸造元栗林本店と書いてありました 

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<蔵の歴史> 

創業は明治7年ですが、創業者は5代目の栗林直治さんだそうで、それまでは別の商売をされていたのでしょうね。創業時代は泉川という銘柄だったそうで、春霞になったのは定かでないそうです。春霞という名は謡曲「羽衣」一節にある「春霞たなびき・・・・」から取ったらしいですが、春に現れる霞はもうすぐ春ですよという意味があるそうで、また霞にはお酒という意味もあるので、こにあたりから考えられたのではと思われます、優しい雰囲気のある言葉ですね・・・・ 

蔵は「一本蔵」と呼ばれる仕込み蔵であり、昭和初期に建てられ、トンネルように一直線に続きその全長は100メートルにもなるそうです。入口から「蒸し場」、「麹室」、「仕込み場」、「貯蔵庫」と続き、その配置は酒造りの導線に沿っているので、酒つくりに適していると思われます。昔は生産量は1500石あったそうですが、現在は特定名称酒を主体としたつくりで、600石弱になっているそうです。 

<栗林直章さんについて> 

栗林さんは7代目の蔵元ですが、正確にはわかりませんが、たぶん1970年の生まれで、今年で46歳になるのではと思います。栗林さんのお話では1995年に蔵に入って酒造りを亀山杜氏の仕事を手伝いながらしてきたそうで、もう21年の酒つくりの経験をしておられます。そして、亀山杜氏が辞められた2009年から蔵元杜氏として現在に至っています。 

杜氏になる前から酒米つくりには心を割いておられ、1998年ころから地元の美郷町の農家と契約栽培を始め、2004年には美郷酒米研究会を立ち上げて、美山錦、美郷錦、酒こまちの酒米を契約栽培できるようになったそうです。 

杜氏になってからはNEXT5や秋田にごりの会に参画され、秋田の地酒普及に努力されています。 

<亀山精司杜氏と亀山酵母> 

亀山杜氏は地元の六郷出身で、農業をやりながら、酒の造りの時期だけでなく、夏場も蔵の仕事のお手伝いをするなど、60年近くも栗林酒造一本で勤めてきた方です。昭和41年から杜氏となり、県内では「九号酵母の亀山」とまで言われ、その酵母で仕込んだ大吟醸は全国新酒鑑評会で10度の金賞を受賞した、まさに名杜氏です。 

酒蔵には古くからたくさんの微生物が住みついています。これらの微生物の中からお酒の醸造に適した酵母を見つけよう!というプロジェクトが秋田県で各蔵と秋田醸造試験場との共同で平成22年から行われました。そして平成23年度、プロジェクトの第一号として、春霞の酒蔵から優良な酵母が選ばれ、3年前に実用化されました。それが「亀山酵母」です。 

春霞の土蔵(明治時代に建てられた仕込み蔵)に供えられた相撲勧進札(昭和8年)の周りから見つかったそうです。蔵見学したときにはこのお札は取り去られて無かったですが、屋根下にあるお札は誰も掃除しなかったので、たまたま酵母が残っていたということらしいです。このお札の写真を山本洋子さんのブログのマクロビーノライフから拝借して、色修正しましたら、きれいに見えるようになりましたので、ご覧ください。 

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今回見つかった「亀山酵母」がいつ頃から蔵に棲みついたのかはわかりませんが、60年の酒造りのどこかで、亀山杜氏が残してくれた酵母なのではと想像して、栗林さんが亀山酵母と名付けたそうです。栗林さんの優しさが感じられますね。 

<NEXT5の栗林さん> 

NEXT5が結成されたのは2010年のことです。このチームが結成された切っ掛けは2010年のDancyuの3月号に白瀑の山本さんが紹介された時、記事の後ろの方で広島の「魂志会」という酒蔵の経営者6人が集まる会を見つけて、秋田でこんな会を造れないかなとということで、ゆきの美人の小林さんに相談したそうです。そのタイミングで、一緒にやれそうな人として、新政の佐藤さん、春霞の栗林さん、一白水成の渡邉さんに声をかけて結成されたそうです。 

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ちなみに「魂志会」は、相原酒造、金光酒造、天宝一、今田酒造本店、宝剣酒造、美和桜酒造の蔵元の集まりのようですが、今ではNEXT5の方が知名度が高いですね。
 

NEXT5の凄いのは蔵元杜氏の5人が集まって、毎年新しい企画の酒を皆で協力して、どこかの蔵で実際にお酒を造っていることだと思います。単に新しいお酒を造るという意味だけでなく、お互いの技術を出し合って切磋琢磨する環境ができたことが素晴らしいとおもいます。これにより、各蔵とも何か新しいものを出すかも知れないという予感が生まれてきます。栗林さんもちょうど自分が杜氏として歩き始めたばかりの時でしたから、この出会いがなかったら、全く違う蔵になっていたかもしれないと言われたのが印象的でした。 

この5人は個性が強く、纏まるのは大変なメンバーですが、栗林さんは「NEXT5の良心」と言われるほど人が良くて、はちゃちゃめちゃな他のメンバーのまとめ役として頑張っているそうです。LIKE TIMESに書かれた5人のお人柄を紹介しますね。噂ではもっと過激な表現もあるようです。 

僕がNEXT5をご紹介した記事の時とちょっと表現が変わってきていますが、栗林さんの評価は変わっていません。http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-a162.html 

・ ゆきの美人 小林忠彦 「先導者
・ 白爆 山本友文 「切り込み隊長
・ 新政 佐藤祐輔 「日本酒業界のスチーブ・ジョブス
・ 一白水成 渡邊康衛 「最終兵器
・ 春霞 栗林直章 「良心者
 

誰がこのように評価したかはわかりませんが、栗林さんの良心がNEXT5を支えているのは事実でしょう。

それでは次に蔵見学の紹介をします

<玄関>

ここが母屋と蔵に入る入口です。杉玉が見えます。 

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ここを入ると母屋がありここから蔵に入ります。ここが蔵に入る入口で、栗林社長に案内してもらいましたので、ツーっショットの写真を取りました。 

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では蔵見学した結果を工程の順番で紹介しましょう。 

<原料米について> 

ここでは5種類の原料米を使っているそうです。県外から購入している山田錦と雄町、地元の契約栽培から購入している美郷錦、美山錦、あきた酒こまです。今特に力を入れているのが美郷錦で全体の半分に当たるそうです。美郷錦は秋田県で開発されたお米で山田錦と美山錦を親とする酒造好適米です。美郷錦は血統は良いけど、あきた酒こまちの開発の途中で生まれたお米で、ちょっと扱いにくいところもあって、一時使われなくなったそうです。でもこの蔵ではメインのお米として使用しているそうで、県内では一番使っているからかもしれないとのことでした。 

美郷錦は55%以上精米しないとさばきが悪いそうで、60%以上だとちょっと粘々して団子になりやすい傾向があるそうですが、この蔵では上手く使っているようです。 

<洗米> 

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洗米は今では多くの蔵が使っているバッチ・連続 兼用のウッドソンの洗米機でした。すべてのお米をこれで洗米するそうですが、割れが少なく作業が楽なので、大変重宝しているそうです。麹米は単独の10kg洗米で、掛米は量が多いので2段連続式で使用しているそうです。

ちょっとごちゃごちゃしていますが、床はきれいにしていました。

 <蒸し場>

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蒸器は和釜ではなく普通の甑でした。スチームでお湯を沸かしてそのスチームで蒸していくのですが、上部にはスーパーヒータの蛇管が付いていて、乾燥蒸気にして使用できるそうですが、お米の量が多い時しか使わないようです。最大処理量は800KGだそうです。

<麹室> 

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麹室として独立した部屋ができていました。内部は木造ですが、杉造りでなく合板造りの簡単な部屋で1室だけなので、毎日仕込むのではなく1日おきの仕込で調整しているそうです。出麹の部屋がないので、隣に出麹の部屋を造ったそうです。昔は2階で曝していたのですが、湿気を吸うので、新設したそうです。出麹の温度は42℃から44℃とちょっと高めのようです。色々な事情があるのですね。 

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 <酒母室> 

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酒母室は特に空調はしていないそうで、通常で20℃くらいだそうです。この蔵の酵母は9号酵母と亀山酵母だけを使用しているそうです。一時6号酵母を使ったけど、今後使う予定はないそうです。 

9号酵母といっても熊本酵母のKA-4の泡あり酵母を使っているそうです。泡なし酵母の方が管理しやすいけど、泡あり酵母の方が進み具合を目で確認できるから良いそうです。これも亀山杜氏からの伝統なのでしょう。 

<仕込蔵> 

仕込みタンクのある部屋は完全リノリウム塗装のきれいな部屋にありました。左側に900kg仕込みのサーマルタンクが並んでいました。 

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左側には500kg仕込みの開放タンクが並んでいまして、明日搾る美郷錦35%の純米大吟醸が入っていました。 

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ちょっと舐めさせてもらったけど、とろみ感のある美味しいお酒でした。販売されたらすぐ買わなくては。酵母は亀山酵母ですが、この酵母はカプが3ppm、イソエチが2ppmと両方をバランスよく出す酵母だそうです。

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美郷錦の35%磨きは初めてだそうです。去年新政が美郷錦30%で金賞を取ったので、チャレンジしてみたそうです。金賞が取れると良いですね。 

<搾り> 

搾りは薮田を使用していますが、搾ったお酒を2-3週間貯蔵するためのサーマルタンクが置いてありました。900kg仕込みだと1日で搾り、1500kg仕込みだと2日で搾るそうです。 

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 これが一時貯蔵のサーマルタンクです

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<槽搾り>

 木製の槽もありましたが、今は使用していないそうで処分するそうです。 

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 <冷蔵庫> 

貯蔵庫は一本蔵の奥にあって、32坪の6℃の冷蔵庫と、10℃の冷蔵庫と生酒用のー5℃の冷蔵庫をもっているそうです。 

<検査室> 

ここは製品の検査をする部屋ではなくて、昔は国税局のお役人が検査をする時に使用した部屋だそうです。とても趣がありますね。最近は1年に1回くらいの査察だそうです。 

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 <蔵の飾り> 

蔵の壁に綺麗なものを見つけました。栗の花ではないですかとお聞きしたけど、今まで気にしたこともなかったので、わかりませんとのことでした。

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<栗の木と仕込み水> 

蔵の奥に栗林がありました。右側に3-4本あるそうです。ここの地下30mの井戸を掘って仕込み水にしているそうです。湧水は地表の浅いところを流れているので、水量を確保するために深井戸を掘ったそうです。

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 秋はどんな状態になるかなと思って調べてみたらインターネット上にありました。こんな感じです。きれいですね。 

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以上で蔵見学の紹介を終わります。栗林さんからの説明で感じたことは、酒つくりは決して無理をせず、亀山杜氏の伝統を大切にし、でもその時代を的確につかんで、着実な酒造りをしているように感じました。これが春霞の良心であり、栗林さんの優しさの表れだと思いました。

最後に再び栗林さんとのツーショットをお見せしましょう。 

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福小町・木村酒造は歴史を感じる落ち着いた蔵です

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春霞の蔵見学の後は福小町の木村酒造を訪問するために、JR奥羽線を上って湯沢市に行きました。湯沢町は新潟のイメージがあってなんとなく温泉にある街かなと期待していたのですが、温泉は町から随分離れた山側にあるので、あきらめて町中のホテルの泊まることになりました。 

その日の夜はホテルのすぐそばの居酒屋「酒林さかばやし」に入ったのですが。休日のせいかお客がほとんどないちょっとさびれたお店でしたが、秋田の地酒は結構そろえてありました。 

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焼き鳥が専門のお店でしたが、日本酒はそこそこそろっていて、木村酒造の角右衛門の特別純米と純米吟醸のエキストラエディションを飲みました。(写真を取り忘れました) 

蔵を訪れた3月12日の金曜日でしたので、翌日から湯沢は犬っこ祭ということで、雪で造られた雪像が色々な処に飾られていました。 

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ろうそくが中に飾られる雪で造られた社が通りにはずらりと並べられていました。たまたまその社を造っているところを見ることができました。なるほどこんな風に木枠を使って造るのですね。 

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さて、蔵は駅から歩いて10分くらいのところにありました。 

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角度を変えてみましょう。奥に長く伸びています。入口は現代風の建屋ですが、中は昔からの造りを残しています。 

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 ここは展示室兼団体の見学者に説明するところのようです。

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 これから蔵見学に入りますが、案内は営業部長兼副事業部長の石川亮逸さんにやっていただきました。 

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 蔵見学のご紹介の前に蔵の歴史にふれておきます。 

<木村酒造の歴史> 

この蔵は秋田県で最も古い蔵だそうで、創業は1615年で今から400年も前だそうです。創業者の木村治良左衛門は豊臣家の重臣であった木村重成の一族で、関ヶ原の戦いに敗れて、秋田のこの地に逃げ延びたらしいのですが、この地は南に3km離れた院内銀山の拠点として栄えたところのようです。水も豊富にあったことから、酒造りが盛んとなり、1800年ごろには24の蔵があったと言われています。現在は、両関、蘭漫、銀嶺白山、福小町の4蔵しかないそうですが、大きな蔵があるのは、その名残ではないでしょうか。 

創業当時はここよりもっと北の方にあったそうですが、3代目の時にこの地に来たようです。当時は男山という銘柄だったのですが、明治の時代に明治天皇が東北を巡られた時の宿となって、その時男山を飲まれたら甘口だったので、男山の名はふさわしくない、福娘という名の方が良いということで、福娘と男山の2銘柄で酒を造っていたそうです。 

しかし、戦後の商品登録の時に福娘を取られてしまったので、仕方がなく、福小町という名にしたそうです。その証拠となるものが飾られていました。 

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 <お酒の銘柄と造りの概要>

現在杜氏は普段は農業をやり冬季だけ酒造りをする杜氏(山内杜氏系)が未だおられるそうですが、現在70歳を超えられたので、実際は製造責任者として若い杜氏が育っているそうです。また、造りの担当ごとに責任者がいて分業責任で頑張っているそうで、それが、最近連続して全国新酒鑑評会で金賞ととるようになった理由ではないでしょうか。
 

現在の生産高は600石~700石ぐらいですが、普通酒は造っておらずすべて特定名称酒だけだそうです。そのうち本醸造は15%くらいで、一番多いのが純米酒だそうです。現在の銘柄は福小町と角右衛門です。角右衛門は6年前から出している銘柄で、特定の酒販店に直接納入しているお酒です。全量純米酒で、全量(麹米、掛米)おなじお米を使い、酵母は主に秋田酵母NO12を使っているそうで、イソアミル系の香りの酵母です。主に純米吟醸、特別純米レベルに特定したお酒で、お酒のブレンドはしないでタンク1本で勝負しているお酒で、生産量は200石強のようです。

 それに対して福小町は、大吟醸から本醸造まで幅広いお酒の銘柄となっており、18号系、9号系、10号系など色々な酵母を使っていますし、お酒のブレンドも行うそうです。出品酒はすべて福小町で出しています。 

原料米は美山錦、酒こまち、亀の尾、五百万石、山田錦、雄町だそうで、美郷錦は使っていないそうです。 

それでは蔵見学した内容をご紹介します。まずは事務所から蔵に入る手前に昔の蔵の跡が残されていました。事務所となっていたところが昔は蔵だったそうで、ここに釜があったようです。 

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その隣には趣ある槽がありましたが、今は使われていないで、大吟醸の袋絞りにだけ使っているようです。 

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これから現在の蔵に入りましたが、入口の方に瓶詰めラインがあり、奥の方から上ってくるレイアウトでしたので、造りの流れに従って紹介します。 

<洗米>

ここでもウッドソン洗米機が使われていました。通常は夕方洗米して、翌朝蒸して放冷してから麹室や仕込みに使われるそうです。
 

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 <蒸し場> 

和釜ではなくボイラー蒸気による甑で、スーパー加熱はしていないようです。蒸米量は最大900kgでした。隣にある木桶は大仕込み用の洗米したお米を入れる桶のようです。

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 <麹室> 

麹室は2階にありました。入口にはハングリー製麹法、木谷発酵研究所と書いてありました。この研究所が発展して現在のハクヨーになったいるそうです。ハングリー製麹法とは 突はぜ麹の製造には酸素不足や湿度不足のハングリーな状態にして麹を造る方法のようです。ここでは麹蓋に近づけるための3段式の製麹法ですが、温度管理が難しいとの説明がありました。

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<酒母場>

ここが酒母室というよりは酒母フロアーといったところで、仕込みタンクの上に造られていました。天井に近いので大きな針が見えます。でもきれいになっていますね。この辺がこの蔵の凄いところです。


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ここには大小の酒母用タンクが並んでいました。酒母タンクは木の台の上に置いてありましたが、それはランプを入れて加熱するためのもののようです。

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<仕込み部屋> 

開放タンクが10基並んでいました。すべて開放タンクで、大きいタンクが1700kg仕込みで、小さいタンクが600kg仕込みです。1シーズンで5回転使うようです。説明通り平均1300kg仕込みとすると、650石ぐらいになりますね。

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<搾り>

搾りは薮田と袋絞りだけだそうで、本当は空調した場所に置きたいそうですが、現状は難しいとのことでした。

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 しぼったお酒を一時的に置くタンクのようです。

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<濾過機> 

これが濾過機ですが、瓶貯蔵のお酒は炭ろ過をしないで、汚れだけを取るろ過をし、タンク貯蔵をするものだけ、炭ろ過をするそうです。

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 黒く見えるのが炭ろ過用のフィルターだと思います

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<瓶詰め> 

 びんた君が使われていました。

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 <検品> 

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<減圧蒸留器> 

最後に大吟醸の粕から焼酎を造るマイクロ波を使った最新式減圧蒸留器です。去年の12月に導入した機械で、未だ試験運転の状況のようですが、非常に香の高い焼酎ができるそうです。現在はたった800本しかできないので、市販する計画はないそうですが飲んでみたいですね。

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<貯蔵庫> 

とても広い貯蔵庫で、10℃の温度コントロールをしています。部屋の中にタンクがありましたが、これは本醸造や普通の純米酒を火入れして貯蔵しているところだそうです。これらのお酒はシーズンの最後の方でどんと出てくるので、ここで保存するそうです。生酒や上級酒はー5℃のコンテナ冷蔵庫で保管するそうです。

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以上で蔵見学の紹介を終わります。粕取焼酎用の減圧蒸留機以外は新しい設備はありませんでしたが、古い建て屋が綺麗に保存されている落ち着いた大人の蔵というイメージでした。蔵の雰囲気はとても良かったです。

 <試飲>

福小町の山田錦の大吟醸と純米大吟醸、五百万石の限定純米大吟醸と純米吟醸搾りたて生をいただきました。こんな高級酒ばかり飲ませていただくなんて、幸せですね。

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福も町の全種類が陳列されていました。これから判断すると、本醸造は茶色の瓶に黒文字、純米酒は茶色の瓶に赤文字、純米吟醸は緑の瓶に青文字、大吟醸以上は緑の瓶に黒文字のようです。

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角右衛門はちょっと違っているようです。瓶はすべて茶瓶で、純米酒が黒文字、特別純米が緑文字、純米吟醸が赤文字、純米大吟醸が青文字のようです。

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この陳列棚の中に業400年記念の純米大吟醸がありました。特A山田錦26%精米、400kg仕込み、ラベルの家紋が地元の漆塗り(川連塗)の特別仕様で、価格が720mlで3万2千4百円、1升で5万4千円でした。それなりに売れたそうです。

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以上で蔵見学の紹介を終わりますが、これからどんなお酒を造りたいかとお聞きしましたら、一般ものは食中酒ですが、季節ものは少し特徴を出して、外飲みをする人に途中でこれを飲みないなと思って飲んでもれえるようなおを造っていきたいそうです。

お忙しい中をご案内していただいた石川さんに厚くお礼申しあげます

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出羽桜酒造はさすがに凄い蔵です PART1

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東北蔵めぐり第三弾は出羽桜酒造です。秋田の湯沢市にある福小町を見学した後、奥羽本線の新庄で山形新幹線に乗り換えて天童向かいました。駅には営業部の池田直樹さんが迎えに来ていただき、連れていっていただいたのは本社蔵内にある出羽桜美術館の応接間でした。 

これが出羽桜美術館ですが、もともと仲野社長が住んでいた母屋だったところなので、美術館というより、昔のお屋敷ですよね 

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美術館の入り口には先代の仲野社長の写真と碑がありました。クリックしてよく見てください。

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しばらく歓談した後、後で仲野社長が直々に蔵をご案内するので、まずは美術館を見てくださいということでした。今回は升新商店の山崎さんのお口添えで池田さんに蔵見学をお願いしたので、社長が直接ご案内していただくとは、思いもしなかったのですが、お言葉に甘えることにしました。社長にはお米の精米や管理方法やお酒の貯蔵に関して熱く説明いただきましたので、今回は主に原料米の処理、管理についてご紹介したいと思います。 

その前に出羽桜の歴史について簡単に触れることにします。 

<出羽桜の歴史> 

初代仲野清次郎さんは今はなくなった熊正宗醸造元の次男として生まれ、明治5年に分家独立して創業しました。その結果、分家の蔵が3つになったようです。そこまでしても酒蔵を造りたかった理由はわかりませんが、近江商人の血筋なのでしょうか。その後を継いだ2代目の清次郎さんは東京滝野川の醸造試験所や大手酒蔵で勉強され、蔵に戻って品質志向の酒造りを始めました。とても誠実な方で、人望が厚く山形県の酒造組合の理事長を務めるなど、出羽桜の基礎をつくた人といわれています。 

3代目の清次郎さんは東京農大で醸造学を学んだあと、諏訪の銘醸蔵の「真澄」で修業をされました。その頃の「真澄」は7号酵母の発見をしたり、全国新酒鑑評会で他の有名蔵を抑えて1位から3位までを独占するほどの実力のある蔵でした。生涯「真澄」の技術と酒造りを尊敬していた清次郎さんは4代目となる息子に「益美」の名前をつけたほど、心酔していたそうです。 

清次郎さんは酒つくりだけでなく、芸術の心を持った人で文学界の人とも深くかかわり、山形県の詩人の「真壁仁」とは親交が厚かったようです。また庶民の温もりを感じる李朝の陶磁工芸品に心を揺さぶられ収集をしつけた結果、それを展示する出羽桜美術館を昭和63年に創設しています。 

また常に底辺の人々を描き続けた倉敷市出身の画家の「斉藤真一」をこよなく愛して、彼の晩年のアトリエの一つを提供するほどでした。斉藤真一の心の美術館として、出羽桜美術館分館を平成5年創設しています。 

分館は本館の反対側の奥まったところにあります。下の写真の奥に見えるでしょう。 

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下の写真は斉藤真一のアトリエです。こんな風に絵を描いていたのですね。先代の社長の斉藤真一への愛が感じられる美術館です。

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4代目の仲野益美社長は1961年生まれの現在54歳ですが、先代と同様東京農大を卒業されて、東京の酒類卸会社で勉強された後、1987年に蔵に戻られています。その後父親の急死されたので、2000年(平成12年)に社長に就任し現在に至っています。 

現社長が打ち出した会社の理念は「挑戦と変革」と「不易流行」でり、いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくことであり、現状維持ではなく変えなければいけないことに対する勇気が大切だということを肝に銘じているそうです。

そしてこの考えの底辺には、酒つくりは日本の伝統産業であり、日本文化のシンボルであり、日本酒は製造するものではなくあくまでも慈しみ育てるものであるとの思いがあるようです。ですから、いくら精巧な製造装置を導入して、コンピューターで制御して完璧なお酒を造っても味気のない製品しかならないと考えておられるようです。僕はその考え方に賛同します。

<出羽桜酒造の現状>

出羽桜酒造の生産量は約1万石で、従業員は約70名という蔵に成長しており、山形県で一番大きな蔵となっています。お酒を造っている工場は天童市にある本社工場、山形市にある山形工場と2つありますが、どちらの工場も同じ製品を造っているそうで、工場の味わいの違いを見ながら、ブレンド調整して出荷しているようです。でも本社工場は日仕舞、山形工場は半仕舞だそうで、生産量はだいぶ違うのでしょうね。
 

各工場に杜氏がいますが、本社工場の杜氏は夏場米つくりをしている杜氏の佐藤さんで、山形工場は社員杜氏の井上さんだそうです。でも酒質管理をしているのは杜氏ではなくて、社長、工場長、製造部門の技術者だそうです。杜氏は蔵人のマネージメントをするのがお仕事のようで、でも杜氏と呼ぶのはどうして出ようね。蔵人の親分というイメージなのでしょうか。現在は蔵人が30名、社員39名だそうです。 

原料米は県外のお米としては、山田錦、雄町、愛山で、県内のお米としては出羽燦々、美山錦、出羽の里、つや姫、はえぬきを使っているそうです。酵母は小川酵母が主体で、鑑評会用には山形酵母を使っているそうです。 

お酒の種類としては生酒、長期熟成酒、おり酒、低アルコール酒、発泡性清酒などがあり、その銘柄は100以上あるので、営業の池田さんでもなかなか覚えられないそうです。出羽桜と言えば数々の賞を取っている技術の高い蔵ですが、その裏にはいる色々な苦労があったそうです。 

全国新酒鑑評会では12年連続金賞を取っていたのに、平成20年から3年連続取れなかったことがあったそうですが、それは新しい審査方法への対応が遅れたからだそうです。また雄町を初めて出した時は桜花のタイプで造ったら雄町らしさが出ず、2年かかってやっと今の味になったそうで、色々苦労をされているようです。 

また精米や貯蔵にも大変力を入れており、本社の近くに精米と貯蔵に特化した天空蔵を造っています。今回は社長がそこからご案内していただきましたので、このところに特化して、蔵の紹介をしたいと思います。 

<天空蔵> 

本社から400mしか離れていませんが、とても大きな蔵でした。全体の写真は撮るチャンスがなかったので、グーグルマップから拝借しましたものをご覧ください。 

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凄く大きいでしょう。ここに3台の精米機と大型貯蔵庫があります。誰が天空蔵と名付けたのでしょうね。素晴らしい命名だとおもいます。 

<原料米について> 

原料米には醸造用玄米と水稲うるち米があります。醸造用玄米には5つの等級があって、上から特上、特等、1等、2等、3等に分けられ、水稲うるち米は1等、2等、3頭の3種類の等級があります。 

米袋には生産年度、米の酒類、銘柄、等級、重さ、検査した組合名と日時、検査請求者名(米の生産者)などが書記入されています。 

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この米袋の場合は出羽燦々、1級、金山農協、検査日、平成27年9月27日ということがわります。

醸造用玄米の等級による主な違いは整粒(被害粒、死米、未熟粒、異種穀粒及び異物を除いた粒)の入っている許容重量比率で決められています。
 

  特上 整粒の比率が 90~95%
  特等           80~90%
  1 等           70~85%
  2 等           60~80%
  3 等           45~70%

実際にその場で袋を開けて見せてもらいました。特級か1級かは忘れましたが、確かに未熟なものや青いお米が混じっています。


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出羽桜では購入したお米を精米機にかける前に、選別機にかけて悪いお米を取るそうです。選別して出てきた悪いお米を見せてもらいました。 

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確かにひどいお米ですね。ですから等級の低いお米を買うと良いお米の量が少ないので、購入できるのであれば比較的割安な1等や2等を買っているようです。分別した悪いお米は安く売れるようですがどこに売るのでしょうね。

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選別機は篩式のようで、悪いお米は少し小さいので篩で選別できるそうです。お酒の原価の中でお米の占める割合は60%~70%でとても高いのに、これに手をかけることはコストアップに通じますが、この蔵は良いお酒を造るために手間暇をかけるのを惜しんでいません。これはなかなかできるものではないことです。 

それから社長はお米をどこからかっているかを知るのは興味深ことですよと教えてくれました。お米を扱っているのは農協と全集連があるそうですが、原則としてお米は前払いだそうですが、全集連の水稲うるち米は後払いも可能なので、取扱量が1割しかない全集連のお米を多く扱っている蔵もあるようです。 

<精米機> 

新中野工業製の精米機が3台が設置されていましたが、1台が大型のようなので、通常の能力の精米機が4台あるの精米能力があるそうです。 

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1台の精米にには原料を入れる原料タンクと出来上がった白米を入れるタンクが一つづつ付いているそうですが、作業の効率を上げるために各精米機に2つづ付けているそうです。精米機はロールの回転量、お米の循環量、お米の温度を見て精米速度を制御していますが、精米度はぬかの量と覗き窓からの観察で判断するようで、これで見かけの精米度を決めます。真の精米度は悪いお米を除いた玄米1000粒の重さと出来上がった白米のうち割れていない1000粒の重さから計算しますが、見かけ精米度と真の精米度の差を無効精米歩合というそうです。出羽桜では1000粒取ること(この作業をやる蔵はほとんどない)はしませんが、篩でわれたお米を取り除いて得られた白米の総重量で計算するそうです。 より正しい無効精米歩合になるからです。

出羽桜は無効精米歩合が精米度70%の時は1%以内、60%精米では2%以内、50%精米では3-4%に収まるようにしていますが、委託精米ではもっと広い許容量を取っているようです。これには国の定める基準はないそうです。

<白米の管理について> 

白米を袋に入れるのは手作業です。白米の取り扱いは大切なものですから丁寧に行うそうです。 

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精米機にかけるとお米の温度は必ず上昇しまして、乾燥状態になるので、出来たお米は温度を下げると同時にゆっくり水分を吸わせるための曝し期間が必要だそうです。出羽桜の曝し期間の基準は下記の通りだそうでです 

   35-40%精米のお米 1 カ月放置 
   50%精米のお米     20日間放置
   65%精米のお米     2 週間放置 

この曝し期間は委託精米の場合でも必要なことなので、米を受け取った蔵での曝し期間をどのくらい取っているかで蔵のお米の管理の考えがわかるそうです。下の写真は曝し中の原料米です。綺麗に整頓されています。
 

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<ぬか管理について> 

ぬかはこの装置に送られぬかの袋詰めが行われます。最初の10%は赤ぬか、20-30%が中ぬか、50%以降を白ぬかとして、目的に応じて売っていくそうです。 

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以上で原料関係のご紹介を終わりますが、出羽桜が精米を含めたお米の管理を如何に大切にしているかが良くわかりました。

この後貯蔵庫を含めて蔵見学をいたしましたが、長くなるので、PART2で紹介したいと思います。

最後に仲野社長と営業の池田さんの写真をつけておきます。ありがとうございました

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