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出羽桜酒造はさすがに凄い蔵です PART2

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PART1では天空蔵の精米を中心にご紹介しましたが、PART2では出羽桜の貯蔵設備を中心に蔵見学の様子をご紹介します。下の写真は精米工場の入口が見えますが、その一番奥には100坪の広い低温貯蔵庫があります。 

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低温貯蔵庫の温度はー5℃で、ここは主に出荷前の生のお酒低温での長期貯蔵の酒が入っているそうです。手前が出荷前のお酒で、奥が長期貯蔵用です。 

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生のお酒を出荷する時に箱の上部に蓄冷剤を入れるように工夫した段ボール箱を王子製紙と共同して開発したそうです。瓶の中に蓄冷剤のスペースがあり、蓋ができてテープがなくてもすぐにはあかない工夫がしてありました。手前の一耕がそれで、奥の桜花はテープが張ってある普通のタイプです。 

天空蔵のの貯蔵庫はすべて瓶貯蔵ですが、タンク貯蔵でー5℃で貯蔵しているところもあるそうで次にそれを見せていただきました。この場所は本社蔵の裏の駐車場のところにあります。下の写真で奥の横に長い建物が本社蔵でその右側の建物が貯蔵庫です。手前の左側にはコンテナの貯蔵庫が並んでいます。

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この貯蔵庫には10個の四角いタンクが並んでいました。下の写真は貯蔵庫の2階で、タンクのTOPが見えます。 

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150石の貯蔵タンクが10本、瓶貯蔵が500石、全部で2000石貯蔵できる低温貯蔵庫でした。どうしてタンクで貯蔵するのかとお聞きしたら、1ロットの生産量が多いお酒はタンクの方が設置面積上効率的なのと、アルコール度数の高い生原酒のまま貯蔵する方が安定するからだそうです。ロットが小さいものは全部瓶貯蔵だそうです。 

このタンクは酸素をとる脱気装置で酸素の少ない空気を充填して貯蔵しており、必要な時に瓶詰めして天空蔵の貯蔵に移すそうです。 

この貯蔵蔵には特殊な大吟醸が貯蔵されていました。昭和50年からの出品大吟醸は殆どすべて取ってあるそうです。でもいざという時のためにとってあるので、全部試飲したことはないそうです。下の写真は27BYの出品用のお酒です。本3 A1+2 と書いてありますね。 

これは本社蔵の3番目の仕込みタンクの上層どりの1番目の斗瓶に2番目の斗瓶を加えたものという意味だそうです。Aは上層から汲む、Bは下から汲む、Cはゆっくり撹拌して汲むという意味です。Aは綺麗な酒、Bは味がある酒、Cは中間ですが、どれが良いかは決まっていないので、毎年必ず3種類取るそうです。でも斗瓶の5本目は酸化が進むので、4本しかとらないそうで、5本目で賞を取ったものはないそうです。斗瓶で保存したこともあるのですが、火入れの時に割ってしまったので、それ以来瓶貯蔵をしているそうです。 

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出品用大吟醸を造っている人は社長を含めて6人いるそうで、6人が競い合っているそうで、3月になると試飲をしてどれを出すかを決めるそうです。噂によると、社長の酒は山形蔵のお酒で、その酒がが選ばれたことはないとか・・・・ 

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この貯蔵庫この外には室内温度がわかるようになっていました。僕らが入った後でしたのでー5℃より温度が上がったみたいです。 

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隣の5℃の貯蔵庫も見せてもらいました。火入れしたものやプレート熱交で急冷したものを貯蔵してあるそうです。今はお酒が入っていない、受け入れ間近の空のタンクが並んでいました。タンクに何もないと音の反響がすごくあるのですね。驚きました。 

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100石が8本、70石が2本で約1000石貯蔵できるそうです。

火入れのお酒の貯蔵の考え方は5℃の保管が基本ですが、必ず熟成させてから出荷します。その時お酒の味の軸を調節するために必ずー5℃の低い温度帯のお酒も保管してあり、熟成がの進み方を見て味の軸の調整するそうです。具体的には熟成が進んでいる場合は低い温度で保管したお酒をブレンドして熟成の調整をするそうです。
 

出し入れしないお酒は10台あるコンテナ冷蔵庫に保管するそうです。そのコンテナもずらりと並んでいました。

出羽桜は何しろ貯蔵設備が完備しているので、お金がかかるのではと思いましたが、それよりも味重視ですね。100種類以上のお酒の味を毎年一定にさせるのは並大抵のことではないと思いますね。

いよいよ本社蔵の蔵見学ですが、実はここで録音が切れてしまったので、写真を中心にざっと見てもらいます。

<洗米>

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<浸漬>

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<放冷機>

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<麹室>

造りの最中なのに室の中に入れていただきました。温度が高く湿気があるので、カメラがすぐ曇って写りません

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ここは引き込んだばかりの麹米だと思います

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麹蓋も見えますが、金網張りの箱が並んでいました

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こんな感じの金網でした。どうして金網かどうかは聞き忘れました

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<酒母室>

綺麗に管理されていました。

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<仕込みタンク>

でも櫂を入れる作業台がないですね。形もちょっと変わっていますね

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山廃用はカーテンで仕切られていました

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<搾り>

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<膜脱気装置>

三菱レーヨンエンジニアリング製の膜脱気装置で酸素を膜分離するものだと思います。これで、貯蔵タンク内の酸を脱気するものと思われます。

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<貯蔵タンク>

絞ったお酒を一的に保管するタンクかな。

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<瓶燗火入れ>

あれ、パストライザーは使っていないのかな

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蔵の内部の設備は1万石を造っている蔵の設備とは思えない普通の蔵のレベルとおなじですね、要は機械化ではなくて、造り手の心が大切だということなのでしょう。

以上で本社蔵の紹介を終わりますが、やっぱり録音がないと重要なことが思い出せないですね。73歳の老人だから仕方がないです。でも肝心な精米と貯蔵の部分だけはきちっと説明できたので、良かったと思います。

最後に蔵を案内していただいた仲野社長とのツーショットをお見せします。

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とても丁寧にfご説明いただいた仲野社長にお礼を申し上げたいと思います。

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第3回目

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第3回目が3月初めに行われました。今回のテーマ(特に前もって決まっているわけではない)は熟成ということでまとめてみました。 

お酒を長い時間置いておくと熟成して色が付いてきて、やがて紹興酒のようなお酒となり、古酒と言われるようになることは知っている人が多いと思いますが、お酒の中で何が起こっているのかを知っている人はあまりいないと思います。 

それを化学的にみると、お酒の中のアミノ酸や糖類からフラノンという成分ができることを言うようです。フラノンといっても色々あるようで、代表的なフラノンはヒドロキシ・ジメチル・フラノン(HDMF)とヒドロキシ・エチル・メチル・フラノン(HEMF)の二つで、HDMFはキャラメルのような香りで、HEMFは醤油のような香の成分だそうです。 

フラノンの生成は時間が長いと多くなり、温度が高いと多くなります。当然原料のアミノ酸や糖分が高いと多く生成します。逆に時間が短いときや低温で貯蔵した時には生成量が少なくなるのです。その時の香りはどんな香がするのでしょうか。菅田先生は下記のように表現しています。 

カラメル系HDMFの場合(少ない順) 

コンポート → ザラメ → ウエハース → べっ甲飴 → メープルシロップ → カラメル 

醤油系HEMFの場合(少ない順) 

白米 → 米麹 → 餅 → きなこ → 玄米 → 紹興酒 → 醤油 

フラノンの量が少ない時の香りは表現が難しく、人によって印象が違うのは当然のことですが、お酒の色とか搾ってからの時間を考えて、フラノンがあると思われる場合は、この中の香のどれに近いかを考えて表現すれば、間違いはないそうです。確かにそうかもしれませんね・・・・・ですからこの延長にある綿あめとかカルメ焼きというのは良い表現なのかもしれません。 

それから色は生成量が多くなると黄色になり、やがて褐色に近くなります。フラノンがあるかどうかはまずは色で判断します。味については2つのフラノンとも共通で、苦味を感じるそうです。口に含んだ時に最初は甘さを感じても後味に苦みを感じるのですが、最初の香りのインパクトが強いので気をつけないとわからないかもしれません。 

フラノンの生成以外に褐色の色が付くメイラード反応があります。それは還元糖をアミノ酸やたんぱく質の共存下で加熱するとある種の香気成分とメラノイジンと呼ばれる褐色物質を生成する反応で、お料理ではよく見られる反応です。お肉を焼いた時の表面の色などがそうです。この反応は高温でないと急には進みませんが、お酒の場合には火入れで起きるそうです。その量は微々たるものだと思いますが、ひね香のような香りも出るようです。 

一般に香気成分(カプやイソアミル)は時間がたつとだんだん少なくなってきて、それと同時にフラノンが少しずつ出てくるのが普通です。フルーツの香がまだあって、熟成の時間がまだ短いのにちょっと色が付いてたり、ひね香のような香がある場合は、温度管理が悪いとか、2回火入れとか、ブレンドの可能性があると想像されます。 

<ひね香と熟成香とはどう違うのか> 

ひね香は温度管理が悪いと良く出ますが、熟成香とはどう違うのでしょうか。ひね香の元になる成分には下記のものがあるそうです。 

・ フラノン:熟成で出来るもの 

・ フルフール:長期熟成で出る焦げ臭 

・ イソバレルアルデヒド:高温醸造で出る白菜の漬物臭 

・ イソ吉草:生ひね臭、生熟臭 

これらの成分が必ずあるわけではないけど、フラノンが少ないと他の香りが混ざって、ひね香となるようです。熟成の初期段階でよく見られるそうです。 

<熟成のまとめ> 

・ 色は初めは黄色で次第に褐色になる 

・ 香は初めは優しいビスケットで、次第にカラメルや醤油の香りになる 

・ 味は初めは甘さを感じるが次第に苦みを感じる 

・ アミノ酸は熟成でバリン、ロイシン、フェニルロイシンが増えるのでこれでも苦みが出てくる 

・ 熟成では必ず苦みが出るので、それがどのくらいあるかを頭の中においておくと、熟成の度合いがわかるそうです 

・ 活性炭ろ過をするとフラノンがとれるので、色がなくなり、苦味もなくなり、香も少なくなる。簡単に言えば、熟成の柔らかさを残しながらクリーンにすることになります。これをお酒の造りとして織り込んでいる蔵の代表に大七酒造があるそうです。 

<熟成を確認する試飲 

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 <試飲したお酒のリスト> 

① 大七酒造 生酛 純米 五百万石 69%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+3、酸度1.8、AA度:1.0 酵母 協会7号 
 

② 車多酒造 天狗舞 山廃純米 五百万石 60%精米 
  Alc度15.7、日本酒度+3、酸度1.8、AA度:2.0 酵母 自社酵母(9号系か)
 

③ 黒龍酒造 火いら寿 純米大吟醸生 山田錦 35%精米
  Alc度15、日本酒度+4、酸度1.3、酵母 自社酵母(14号系)
 

④ 王禄酒造 意宇 純米大吟醸 無ろ過生原酒 山田錦 50%精米 24BY
  Alc度17.5、日本酒度+5、酸度2.0、酵母 協会8号
 

<色による比較> 

熟成度を確認するために、まずは色を見てみましょう。 

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左から大七、天狗舞、火いらず、王禄です。一番透明度が高いのが大七で次が火いらず、その次が王禄、一番色が着いているのが天狗舞でした。外観で粘度を見ることを推奨するところがあるようですが、ワインの場合は粘度はある程度エキス分と比例するので意味があるけど、日本酒の場合は粘度は色々な処理の仕方で変化するので、粘度を見ても何もわからないそうです  

この4つのお酒で熟成年数から言えば、王禄、天狗舞、大七、火いらずの順に長いです。具体的にいえば、王禄はー5℃の低温3年熟成、天狗舞常温2年熟成、大七は1年熟成で炭素濾過、火いらずは新酒です。 

大七が透明度が高いのは炭素濾過のせいで、フラノン成分が取り除かれているからです。ですから炭素濾過をしていると色では熟成度は全くわかりません。香も少なくなっているので難しいです。王禄は低温なのでゆっくり熟成が進んでいるので、色だけでは難しく香や味で判断するそうです。 

<大七と天狗舞の香と味の比較> 

今回の大七と天狗舞はアミノ酸度(AA度)が違うだけで、他のスペックがほぼ同お酒でしたので、その二つがどう違うかを調べました。大七の精米度が69%とちょっと天狗舞よりわるいけど、大七は扁平精米なので実質おなじくらいと考えて良いそうです。 

天狗舞は明らかに熟成の香が強いが、香の強さをどのくらいに置くかは僕には難しかったです。香のレベルはべっ甲飴か玄米くらいかもしれません。大七はアルコール臭が少しして、シンプルで透明感のある香りで、熟成の香りは感じませんでした 

味を比較してみると、大七は甘みや旨味もそこそこあり、甘さ旨味のバランスが良く膨らんでいき、後半は酸味を感じ出して、でも酸だけが浮いてくることはなく、軽くて綺麗なのにに伸びていくお酒でした。一方天狗舞は口に含んだ時は甘みと旨味は大七とおなじくらいですが、後半になると同じように酸味を感じ始めるけど、苦味を出てきて余韻に苦みが残る味わいでした。天狗舞は大七よりアミノ酸が多いので、旨味を期待する人が多いかもしれませんが、アミノ酸の大部分は苦みを伴うものが多いので、この天狗舞はアミノ酸から出てくる苦みと思われます。ですから天狗舞を炭素濾過すると大七のようになる可能性があることを示しているそうです。 

<お酒の相性について> 

今回の大七と天狗舞は相性が良いお酒だそうです。まず、大七を飲んですぐ天狗舞を飲んでみると、初めに感じていた酸や苦みが抑えられて、飛び出さなくったのです。逆に天狗舞を飲んですぐ大七を飲むとすこしコクが出るようになりました。これは最初に飲んだお酒の良さが後のお酒を補ってくれたからで、これが相性の良さなのだそうです。 

もうひとつ試飲をする時の最初の一杯は口をゆすぐ程度にして、口の中をお酒になじませてからやるのが良いそうですので、試してみてください。 

<火いらずと王禄の比較 > 

火いらずは山田錦35%精米の純米大吟醸の今年の新酒ですから殆ど熟成はしていません。それに対して王禄は山田錦50%精米の純米吟醸生原酒ですが、-5℃で約3年間熟成したお酒です。 

色に関してはどちらもついていませんが王禄が少しだ着色しています。香を見てみますと、火いらずはほわほわっとした綺麗だけど優しい香りで、爽快感のあるサクイソ系の香りでしたが、少しカプの香りも感じます。王禄はカプの香りがするけど弱くなっていて、熟成の香りも少しますが、フラノンの香というかアンズやドライフルーツの香と言っていい感じでした。 

味をみると、火いらずはソフトで柔らかく程よい甘みと旨味を感じて、全くとげとげ感がないどうして新酒でこんな味になるかがわからないほど旨いお酒でした。アフターも優しくスウット伸びていて、コハク酸の辛味を全く感じないお酒でした。先生もどうしてこんな味を出せるのかわからないと言っていました。 

王禄はテクスチャーが火いらずよりとろっとしていて、柔らかい旨味を感じるお酒で、フラノンと思われる軽い苦みを感じるけど、中々捨てがたい美味しいお酒ということになりました。 

以上で今回の試飲のお酒の紹介は終わりますが、熟成にも色々なタイプがあるので、とても表現が難しいことがわかりました。

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松乃井酒造は地味ですがしっかりした蔵でした

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新潟酒の陣の前に新潟県の十日町にある松乃井酒造を訪問しました。松乃井酒造を訪問したいと思ったのは用賀のなかむらやで東京農大の平成7年卒の同期が6蔵集まるイベントがあって、その時松乃井酒造の杜氏兼常務取締役の古澤裕さんの奥さまである古澤布美子さんにお会いしたのが切っ掛けです。その時初めて松乃井のお酒を飲んだのですが、飲んだお酒はどれもいわゆる淡麗辛口の新潟のお酒とは一味違う味はしっかりあるのに、すいっと飲めてしまうお酒に感心しまして、どんな蔵で造っているのだろうかと思っていました。その時の様子は下記のブログに纏めてありますので、ご覧ください。

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-5daa.html 

今回は新潟酒の陣の準備でお忙しいところを、酒の陣の2日前の日に無理をお願いして訪問したのものです。十日町は新潟県南部にある町で町の中央を信濃川が流れ、雄大な河岸段丘(川の洪水や土地の隆起によって川の流れに並行して出来た階段状の地形)が形成されたところです。この土地は縄文時代以前から人が住みついたところで、昔から交通の要所らしく、今ではほくほく線飯山線が交わる町となっています。ここは魚沼産のコシヒカリの産地として広く稲作がされるだけではなく、京都・西陣と並ぶ紬織りの一大産地だったそうです。 

その日は駅まで布美子さんが車で迎えにしていただき、町並みを車上から見学しながら、蔵に向かいました。蔵は駅から少し北へ信濃川を超えた河岸段丘の上にありました。川からは数十mも上にあるので、とても見晴らしの良いところにありました。 

蔵の方から信濃川の方を見た景色ですが、雪の積もった大地は蔵が所有している田んぼでコシヒカリを造っているそうです。右に見える山が巻機山で左が八海山だと思います。この地は大雪が降る所で今年は平年の1/3だそうです。 

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それでは松乃井酒造の方を見てみましょう。松乃井酒造と書いてあるコンクリート製の大きな煙突が見えますね。 

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青い建物が事務所です。右の古い建物が母屋です。 

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母屋の正面の写真をお見せしましょう。母屋は100年前にこの地に引っ越してきた時に建てられたものですが、平成16年の中越地震に時に大規模半壊で使えない状態になったのですが、平成20年に十日町の文化財相当ということで、県から復旧の補助金4000万円が出ることになり、建物の基礎から変える大工事をしたそうです。具体的には建物を2mもジャッキアップし、基礎を造り直して耐震補強をするとともに、内部の修理を行ったそうです。 

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外観はできるだけ昔のままの残して、中はすっかり綺麗に修理したので、今でも蔵元の住宅として使用しているそうです。下の写真が玄関で帳場や検査室があったところのようです。赤い壁は土壁で東京や名古屋から専門の職人を呼んで再現したもののようです。ピカピカですね。 

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蔵の歴史や今までの経過については社長の古澤実さんにしていただきました。

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<蔵の歴史> 

明治27年(1894年)に初代古澤英保(本家の次男)が本家(酒銘「澤乃井」)から分家して独立し、創業したそうです。酒銘「松乃井(まつのい)」は、赤松林から湧き出る横井戸の軟水を仕込水に使っていることから命名したとのことです。この横井戸のある今の地に来たのは100年前だそうですから、創業後20年以上後のようです。 

その後3代目の当主が若くして亡くなって、その奥様の古澤棟子さんが4代目の当主となり子供が育つまでと安藤杜氏と社員たちとで頑張ってきてきたそうです。現在はその息子の古澤実さんが5代目当主の社長、弟の古澤裕さんが杜氏兼常務取締役をされ、順調に業績を伸ばし、連続して全国新酒鑑評会で金賞を取るほどになっています。 

現在の生産量は約1000石で、普通酒が6割で地元で約7割が消費されるのですから、まさに地元密着な蔵になっています。 

<蔵見学> 

蔵の内部の紹介は常務取締役の裕さんにやっていただきました。酒つくりの工程順にご紹介します 

<精米場> 

千代田醸造精米機が1台設置されていました。十日町付近には5蔵あるそうですが自家精米をしているのはここだけだそうです。化工米以外はすべて自家精米をしているそうです。 

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使っているお米は山田錦、越淡麗、五百万石、たかね錦、越いぶき(化工米)だそうです。特に越淡麗は地元の蔵人が造っている有機米を使っているため、高価だけど品質の良いものが手に入るので、大吟醸用として使っているそうです。 

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ぬかは下の機械で赤ぬか、中ぬか、白ぬかに選別されて袋詰めにされます。白ぬかはお煎餅屋さんに売られます。 

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<洗い場> 

右の奥にあるのが本醸造や普通酒用の洗米機で、それ以外はざるによる手洗いをするそうで、15kgと10kg用のざるを使用するそうです。 

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<蒸し場> 

ここでは和釜が使われていました。大小2つあるのですが、現在は大きいほう(1トン用)だけを使っているそうです。 

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<放冷機> 

黄色い蛇腹のホースは放冷機で冷却用に使った空気を外に送るものです。すべてのお米を放冷するわけではなく、麹米は放冷機は使用しないで麹室で自然放冷するほか、エアシューターで送るものは詰まりを防ぐためにあまり冷やさないそうです。 

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<麹室> 

麹室の中は床がありましたが、ネガティブフレーバーがつかないように去年からステンレス張りにしたそうです。木製だとどうしても香がついてしまうそうです。 

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2階にあった枯らし場を見せてもらいましたが、ちょうど溝を造っている作業を見ました。V字の溝になるような道具を使っていました。自作だそうです。 

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<酒母室> 

酒母室の入口には神棚があり、奥に酒母タンクが見えますね 

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ここで使っている酵母は普通酒は7号酵母、本醸造は14号と9号のブレンドですが、酵母を混ぜて使うのではなく、できたお酒をブレンドするそうです。吟醸酒は新潟県の9号系酵母G-9やG-CRを、大吟醸酒は酵母1901号を使っているそうです。 

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酒母室から下の仕込みタンクには直接落とせるようになっていました。 

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<仕込みタンク> 

仕込みタンクはすべて開放タンクで、普通酒と本醸造と特別純米は1500kg仕込みで、大吟醸は600kg~700kg仕込みだそうです。その中間の大きさのタンクもあるそうです。 

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 仕込みタンクが所狭しとぎっしり並んでいました。仕込みタンクが少ないので、1シーズンで3回転くらい使うそうです。奥のお部屋に小ぶりの仕込みタンクが見えますが、はじめて使用するお米を使う場合は、酵母の種類を変えた試験醸造をするそうです。このような努力が良いお酒を造る秘密なのかもしれません。

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<貯蔵庫> 

貯蔵庫のには小さな開放タンクがありましたが、これは調合用のタンクだそうです。 

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<袋絞り> 

ちょうど純米大吟醸の袋絞りをしている最中でした。袋を釣り下げるところが少ないので、槽搾り機や小型の開放タンクが使われていました。 

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 絞っている途中の越淡麗35%純米大吟醸のお酒を試飲させていただきました。とても香もあり、味わい深いお酒でしたが、炭酸ガスが含まれピリピリ感があるフレッシュなお酒でした。これを半年以上熟成させるとあの英保となるのです。英保には3年熟成もあるのですが、今回のお酒は良いところを選んで、原酒で5年熟成させるつもりだそうです。どんなお酒になるのでしょうか

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<薮田絞り> 

この蔵は吟醸系は槽搾りで、普通酒と本醸造と純米酒は薮田を使っているそうです。 

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 ちょうど酒粕を取っている作業をしていました。

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従業員は活躍盛りの6人が働いており、皆造りの担当が決まっていて、ぴちぴちとたらいていたのが印象的でした。ここで働いている人たちがホームページに載っていますので、ご覧ください。活気のある様子が見取れます。

http://www.matsunoi.net/kura.html 

最後に蔵見学した印象を述べますと、特に新しい設備を導入しているわけではないけど、細かいところに手を抜かない、基本を大切にした造りをしている蔵だなと思いました。またそれを支える従業員とのコミュニケーションが凄く良い蔵だと感じました。この蔵の造りの原点が見えた感じでした。

以上で蔵の内部の様子の紹介を終わります。見学の最後に母屋のお座敷で、お手製のおつまみとお酒をいただきました。 

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 簡単に左からお酒を紹介します。 

・ 英保 純米大吟醸 越淡麗35%精米 1年熟成 

・ 普通酒 五百万石65%精米 

・ 特別純米 たかね錦55%精米 9号酵母 

・ 吟醸酒 越淡麗50%精米 袋絞り生酒 

・ 純米吟醸 山田錦50%精米

どのお酒も味のバランスが良く、テクスチャーは柔らかいのに、ちょっとシャープでキリリとしているけど、すっと飲めるお酒でした。水が軟水なのと、お米にあった酵母を選択しているのが、共通の味わいとバランスを造っているのではないかと思いました 

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大根を乾燥させたものやニシンの山椒漬け(福島の名物のレシピを教わって造ったそうです)などでした。 

本日蔵をご案内いただいた古澤裕・布美子ご夫妻です。布美子さんは麒麟山のある阿賀町育ちで、東京農大を卒業して地元に戻っていた時に清酒研究会で裕さんと知り合ったそうで、この蔵に嫁いできたそうです。今では3児の母として、チームマネージャーとして活躍されています。裕さんは若い時から蔵に入ったそうですが、製品管理の仕事が長く、造りをあまりしていなかったそうですが、杜氏が高齢になったことから杜氏の下で酒造りを勉強して、4年前から杜氏として活躍されています。今では安定した造りをしているのですから、これからが楽しみですね。期待していますよ・・・・・・

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新潟酒の陣の前でとてもお忙しい中にも関わらず、こんなにも御もてなししていただき、大変ありがとうございました。

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君の井酒造は伝統の技を大切にする蔵です

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新潟酒の陣の前の日に新潟県の妙高市にある君の井酒造を訪問して来ました。君の井酒造のお酒は新潟酒の陣では必ず飲んでいるお酒で、こんな素晴らしいお酒を造っている蔵を訪問したいと常々思っていましたが、昨年3月に北陸新幹線が開通したことからこの機会に訪問したいということで計画したものです。新潟のお酒を東京の丸の内で飲める「すいようでい」でお会いした営業の阿部さんにお願いいたしましたら、快く受けていただいて実現したものです。「すいようでい」については下記のブログをご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-0bc4.html 

蔵は北陸新幹線の上越妙高駅から長野の方に5Kmくらい戻った新井駅の近くにあります。この地は佐渡で産出した金を江戸の運ぶ輸送路として使われた北国街道の新井宿にあり、蔵はその北国街道に面したところにありました。まず蔵の入口の母屋をご覧ください。この母屋はとても古い建物のようですが、明治時代にこの地が大火にあって、町中が燃えたと言われていてその後に建てられもののようです。 

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事務所の軒を見ますと、雪国によく見られる雁木構造になっています。現在は、この雁木はこの事務所の前しかないですが、昔は町中が雁木でつながっていたようで、それが町全体を失うほどの大火になった原因となったそうです。 

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出迎えていただいたのは総務担当の木賀誠さんでした。ここは事務所内の展示コーナーです。展示品を良く見ると吉永小百合さんの写真がありました。 

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君の井酒造はJR東日本のコマーシャルの大人の休日倶楽部新潟県「越後杜氏」篇の舞台となったところで、吉永小百合さんが蔵を案内する形式のコマーシャルでした。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。下の写真はその時の記念写真です。 

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最初に木賀さんに蔵の歴史などをお聞きしてから蔵見学をしましたが、まず蔵の歴史を紹介しましょう。 

<君の井酒造の歴史> 

この蔵の創業は1842年とされていますが、上述した町の火災で過去の記録が焼失して残っていなかったのですが、1842年の高田藩の酒つくりの許可証が見つかったたことからこれを創業年としたそうです。 

君の井酒造となったのは昭和26年だそうで、それまでは田中酒舗として屋号は「田中屋」と呼んでいたそうです。君の井という名前は、明治時代に蔵の隣のある「東本願寺別院」に明治天皇が来られ、お酒(金崋山)を献上したことからつけられたようです。君子に献上した君の字と良質な水がわき出る井戸の井の字が由来となっています。 

この蔵の基礎を造ったのは2代目田中大五郎さんだそうです。大五郎さんは先見の目があり、いち早く昭和3年に全国に先駆けて琺瑯タンクの導入をするとともに、お酒の品質を上げるために高精米が必要だと、当時の横型の精米機をやめて縦型の精米機の導入を図かり、昭和4年には当時としては珍しい鉄筋コンクリー製の蔵を建てたそうです。 

それだけでなく、新潟の吟醸酒造りの父と呼ばれる元国税局鑑定官である田中哲郎を若い頃君の井酒造で修業させ、酒造りを教えるなど、人の教育にも熱心だと聞きます。一番功績があったのは日本では新潟しかない県の醸造試験所場の設立に参画し、新潟県の酒の資質の向上に貢献したことです。そして、昭和7年には第13回全国酒類品評会で全国1位の受賞しています。その後数々の賞を取り続けるなど、酒造りの技術は着実に上がったそうです。 

その後も大五郎の遺志を引き継ぎ、昭和42年には篠田次郎設計の新工場を建設し、平成4年にはコンピューター制御の精米機の導入をしています。生産高は一時は12000石ありましたが、現在は5000石だそうです。そのうち特定名称酒は30%で、70%が地元で消費される普通酒のようです。 

<蔵見学の紹介> 

昭和42年に建てらけた工場は事務所の建屋の奥にあります。そこに行く通路は事務所というより昔ながらの蔵の趣がありました。もともとここは蔵として使っていたところで、火災で焼け残ったものを利用しているので、梁が黒くなっていました。 

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この古い蔵は未だ現役として使われていました。それは和釜と貯蔵庫でした。まず和釜をご覧ください。通常のお酒は新工場の連続蒸米機を使っていますが、大吟醸はこの和釜を使うそうです。やっぱり良い蒸し米には和釜が良いのですね。 

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凄かったのは貯蔵庫でした。1タンクが100石(18000L)の四角いタンクがずらりと並んでいました。ここだけで3000石位あるのではないでしょうか。 

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 また大吟醸用の洗米もありました。和釜との関連でここにあるのでしょう。 

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次に訪れたのは平成4年に建設された精米工場ですが、事務所の建物の隣に立っていました。中野式堅型醸造用精米機が3台並んでしました。この蔵で使用しているお米は山田錦、越淡麗、五百万石、越吹雪ですが、一番多いのが五百万石だそうです。 

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隣には枯らし用のタンクが5台並んでいました。 

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またここには糠の分別槽がありました。右の槽から特上糠、上糠、中糠、トラ糠、赤糠、最後は読み取れませんでした。ここで袋詰めされます。 

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それでは新工場へ行ってみましょう。新工場と言っても昭和42年建築ですから、新しいものではなく3階だての鉄筋コンクリートの黄色い建屋です。右上のラックは精米工場から新工場に搬送するラックだと思います。 

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3階に洗米場があり、浸漬タンクがありました。大吟醸以外はこの浸漬タンクを使うそうです。 

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その隣には連続蒸米機と放冷機がありました。 

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<麹室> 

ここまでは木賀さんが案内していただきましたが、ここからは杜氏の早津宏さんにしていただきました。早津さんは昭和32年生まれ現在59歳の杜氏で昭和51年に君の井酒造に入社され、蔵で修業され杜氏になっています。早津さんは自ら田んぼを持ち、夏は米つくり、冬は酒造りをしているそうです。そして、酒造りに適したお米はどう作るべきかを自問自答しながら、米つくりにもこだわっています。 

早津杜氏の酒造りにには次のようなこだわりを持っているそうです。 

1.原料となる米にはこだわり、精米は自社でやること 

2.伝統を守り味わいのある山廃つくりを大切にする 

とても穏やかで謙虚な人で、麹作りはよくわからないのですよと言いながら、しっかり造りをやっておられる方であることが良くわかりました。 

下の写真が麹部屋の種付けをしている床です。部屋の温度は32-3℃だそうです。 

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その隣には天幕式と言われる製麹の床がありました。冷却だけを自動で行いますが作業はすべて手作業です。この金網の上に木綿の天幕を敷いてそのうえで麹の切り返しや揉みほぐし作業を行うそうですが、目的によって麹の厚みを制御すれば、箱などはいらないとのことでした。従来の形にとらわれない考えをお持ちのようでした。部屋の温度は27度だそうです。

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麹は結果的に突き破精になるそうですが、酵素力は総破精より弱いけど、醪の段階で麹が溶けて行きながら中から順次酵素が出てくるので、良い酒ができるそうです。通常出麹の温度は43度だそうですが、お酒によってアミノ酸を増やしたい場合は仕舞仕事の段階で37度~38℃より上げないようにして、蛋白分解酵素を増やして製麹時間を延ばしてやることもあるそうです。麹の造りにはファクターが多すぎて難しいとの話でした。 

<酛つくり> 

酒母室の見学はできませんでしたが、山廃用と速醸用の部屋を持っているそうです。山廃つくりはこの酒母造りがキーになります。特に温度制御に気を使う必要がありますが、そのためには温度制御用の暖気樽を使いますが、この蔵はアルミ製の暖気樽は使わなくて、木製の暖気樽を使うそうです。このほうが温度制御が緩やかになり、山廃つくりに向いているそうです。木に勝るものはないそうです。この辺も実戦で鍛え上げた自信の表れでしょう。山廃つくりには強い信念があり、朝日山酒造の杜氏が山廃造りを教わりに来たことがあると言われていました。 

下の写真の方が杜氏の早津さんです。木製の暖気樽の説明をしていただきました。蒸したお米を入れる時も木製の飯樽を使うそうで、母屋にある和釜の蒸し米を入れた飯樽を担いでここまで走って運ぶそうです。凄い重労働ですね。 

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<生酛系酒母造り> 

酒母を造る目的はアルコール発酵に必要な酵母を大量に培養することです。酒母造りは最初に蒸米と麹と水を入れることから始まります。日本酒つくりは開放の状態で行うので、様々な雑菌が入るので、それが増殖することを抑えなければなりませんが、そのために乳酸を入れて酸性にすることにより雑菌の増殖を防ぐ方法が主流でそれを速醸法と言います。 

それに対して蔵内にある乳酸菌だけを繁殖させて乳酸を造る方法が生酛とか山廃と言われる方法です。まず酒母の原料を入れて発酵させるとまず硝酸還元菌が増殖し、水中の硝酸を亜硝酸に変えます。この状態にすると雑菌が死滅し代わりに乳酸菌が増殖します。すると乳酸菌が乳酸を出して酸性が高まり、硝酸還元菌や野生酵母が死滅します。この乳酸酸性の高い状態で清酒の酵母を入れると目的の酵母だけが増殖するというわけです。 

生酛と呼ばれる方法は最初の蒸米を櫂ですりつぶすことを行う方法で、この作業を山卸と呼びますが、この作業が大変なので櫂でつぶさないで麹の酵素力で溶かす方法を山卸を廃止したということで山廃と呼ぶのです。ですからどちらも酒母を造るのに速醸法に比べて時間がかかるけど、乳酸菌や様々の微生物が生み出す成分が含まれるので、味わい深いお酒になると言われています。ですから山廃や生酛造りと言っても蔵によって全然違うお酒になるのです。 

酒母を造る映像が君の井のホームページにありましたので、ご覧ください。酒母のところをクリックしてください。山廃を造っている動画が現れます。山廃と言っても生酛に近い感じが良くわかります。 

http://www.kiminoi.co.jp/flow.html

<仕込み部屋> 

ここは普通酒や本醸造や大きな純米酒を仕込む部屋のようですが、1万Lのタンクが32本並んでいました。小さな仕込み部屋も3階にあるそうですが、見ませんでした。

この蔵が使っている酵母は基本としては、普通酒と本醸造は7号酵、純米酒は10号酵母、吟醸酒は18号酵母で、9号酵母は使っていないそうです。9号酵母はどうしても最後にアミノ酸の苦みが残ってしまうからだそうです

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ここがそのタンクの下の部分です。タンクの冷却は冷水ではなく2-3℃の冷風を使っているそうです。この部屋全体を7度に空調しているので可能なのでしょうが、経済的には得なのかなと思ってしまいました。 

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<搾り> 

絞りは薮田2台だけだそうです。槽はあるけどほとんど使わないそうです。薮田の部屋は空調ができますが、普段は除湿だけしているそうです。  

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見学の最後に最近導入した新型のボイラーを見ることができました。かっこいいですね。 

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以上で、蔵見学の紹介を終わりますが、最後に試飲をさせていただきました 

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左側から順番に紹介します。

・ 君の井 本醸造 上撰 五百万石
 

味がしっかりしていて後味がスキットして酵母は10号と7号のブレンドだそうです。本醸造はアルコールが入っていて、普通酒より濃くてきれい、純米酒より軽い味わいで、味が引き立つので、杜氏は純米酒より好きだと言われました。 

・ 君の井 純米酒 五百万石 

この蔵の速醸タイプの定番のお酒で、酵母は10号酵母のお酒です。このお酒は活性炭を通しています。このお酒の原酒を特別にいただきましたが、イソアルミの香りがしました。杜氏のお話では10号酵母は新酒のうちはイソアルミの香りが出て、活性炭を使うとそれが消えるようです。 

・ 純米吟醸 山廃造り 蔵秘伝 五百万石 

伝統ある山廃造りの純米吟醸の定番で、五百万石58%精米、酵母10号のお酒です。 

・ 純米大吟醸 山廃造り 越淡麗 

このお酒は越淡麗と山田錦がありますが、ラベルではわかりません。優しさを与える甘みとまろやかな酸味みとバランスし、ふっくらとした旨味を感じるお酒でした。アミノ酸は+6位あるそうです。 

・ 純米酒 山廃仕込み 無ろ過 越淡麗 

この純米酒は18号酵母を使っていて、お米は麹米が越淡、掛米が越吹雪の珍しいお酒でしたる。乳酸の甘い感じの酸味を感じる複雑系の味でした。これは試験的に造られた純米酒のようです。  

以上で試飲の説明を終わりますが、早津さんの気取りのない正直なご説明に心がうたれました。基本は活性炭濾過して、1年くらい熟成して出すようです。でも本当に熟成を楽しみたい場合は無ろ過で2-3年熟成させる方が良いという話にも驚かされました。 

以上で君の井酒造の報告を終わります。数年前から新潟酒の陣の前の日に蔵見学をする企画を続けてきましたが、その日に酒の陣に出展している蔵の商談会が行われるようになったので、前日の蔵見学が難しくなってきたようです。ですから、今年が最後の企画になるかもしれません。

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インフィニット酒スクール日本酒中級コース第4回目

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今回のインフィニット酒スクール・日本酒中級コースも第4回目になりました。今回は今までの復習ということで行なわれましたので、それをまとめてみます。 

お酒の原料となるお米にはデンプンタンパク質脂質が含まれれおり、これを麹のの酵素力によって、デンプンをに、タンパク質をアミノ酸に、脂質を脂肪酸に変えます。その流れをまとめた図を第1回に続きもう一度示します。 

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こうしてできた糖やアミノ酸や脂肪酸を酵母の酵素が色々な成分に変えていきます。糖からはアルコール、有機酸、アセトアルデヒド、カプロン酸エチルなどが造られますが、造られる量は酵母の種類や醪の発酵の条件によって変わってきます。 

まず、酵母の違いを考えてみましょう。今流行りの香であるカプロン酸エチルを造る酵母として代表的なものはCEL酵母、18号酵母、9号酵母などが挙げられます。カプを造る量が一番多いのはCEL酵母で、次が18号酵母、その次が9号酵母との順になりますが、どれも糖が多くないと生成しません。一般に発酵温度を上げると糖の消費スピードが上がり、アルコールや酸が多く生成しますが、糖の濃度が少なくなるためにカプロン酸エチルは生成しなくなるのです。 

それに対して低温長期発酵をさせると糖の消費が遅くなり、糖の濃度を高く維持できるので、カプロン酸エチルが生成されるのです。ですから、カプの香のあるお酒は甘いのです。低温長期発酵をしていなかった昔はあまりカプの香りがしなかったと思われます。あまりカプを生成しないと言われている7号酵母でも低温長期発酵させればカプが出てきます。でも9号酵母の方がカプを造りやすいので、今では7号酵母はお酒を造りやすい短期醸造にすることが多くなったため、カプが出ない酵母と言われるようになっているようです。9号よりもっとカプを出したいときには18号酵母を使う人が多くなっています。CELにするともっとカプが多くなりますが、ちょっとやりすぎになるかもしれません。 

糖からは色々な酸ができます。酸味はお酒のバランスを決める重要な成分です。最近は酸の多いお酒も時々見るようになりましたが、酸の多いお酒は甘みがないと酸味が強く感じすぎてバランスが悪いお酒になります。では酸の多くて甘みのあるお酒はどんな方法でつくるのでしょうか。一つの方法は最初に温度を上げて発酵を進ませ、酸を出した後、低温長期熟成をさせると甘みがでるようです。その代表的な蔵としては仙禽酒造がありますね。でも酸と甘みのバランスは非常に難しくて、甘みを残したお酒は最後に味が崩れることがあるようですが、上手く造るとアルコール濃度が高くても軽く柔らかいお酒ができるようで、仙禽はこんなお酒を狙っているようです。 

一方アミノ酸が多い場合、つまり精米度が70%以上の原料米を使うとタンパク質が多いのでアミノ酸が増えます。それを沢山食わせるような条すれば、アミノ酸濃度は少なくなり、コクが少なくなるけど高級アルコールが増えて、高級アルコールの独特の香りが出るお酒になります。逆にアミノ酸をあまり食わせないようにすると、アミノ酸が増えてボディのあるお酒になることになります。

アミノ酸からは高級アルコールだけでなく香成分の酢酸イソアミルや酢酸エステルを造る酵母があります。その代表的な酵母が6号酵母、14号酵母、福井酵母、静岡酵母などがあります。この酵母は酢酸イソアミルや酢酸エチルを造ると、同時にコハク酸を出しやすい傾向があり、後味に渋みが残るので判るそうです。でも、これを感じさせない造りもあるようです。

酵母の中ではカプとイソエチの両方を造る酵母もあります。その代表的なものが10号酵母、山形酵母、秋田酵母があります。カプとイソエチのバランスは醸造条件を変えることで可能となるのでしょうね。

脂質は各種の脂肪酸エステルになりますが、高分子なので油くさや蝋の香を感じますが、高分子である高級アルコールとの違いがわかりにくいそうです。脂肪は50%まで精米すると殆どなくなるけど、タンパク質は残るので、50%磨きのお酒と65~70%磨きのお酒を比較すると、高級アルコールと脂肪酸エステルの違いがわかるそうです。さらに23%磨きにするとタンパク質も減ってきますので、高級アルコールも殆どなくなり、エチルアルコールと香気成分の香しか感じなくなるようです。たとえば獺祭のお酒がその代表と思われます。 

9番目の成分はフラノンです。これは熟成、加熱、貯蔵、保温温度によってアミノカルボニル反応がおこるので、フラノンができます。フラノンがあると必ず色がつくだけでなく、独特の香と苦味が出てきます。最近はフレッシュ感を求めて生酒が造られることが多いですが、生酒は足がはやいので短期に熟成してフラノンがでます。そのためフレッシュだけど熟成しているちょっと変わったお酒になることが多いようです。この時活性炭を使うとフラノンは除くことができるので、また違ったお酒になるようです。 

もうひとつ0番があります。これは何でしょうか。原料米由来の香で、どのお酒もこの香はありますが、これが良く出る酒は無ろ過生原や澱が入ったお酒です。活性炭ろ過をするとこの香はなくなりますが、そんなことをする人はいないでしょうね。 

まずお酒を飲むときは、お酒の酒質を見て、0番から9番までのどの香がありそうかを予測してから、香を嗅いでいくとお酒の状態が良くわかるそうです。そういう意識を持たないで香を嗅いでも奥に潜む香を見つけることはなかなか難しいようです。 

それでは実際に試飲をしてみしょう。お酒のリストは下記の通り 

1.亀泉 純米吟醸 八反錦50%精米 生酒
  Alc度14、日本酒度-11、酸度1.8、AA度:0.9 酵母 CEL24
 

2.出羽桜 純米吟醸 出羽燦々50%精米 生酒
  Alc度15.8、日本酒度+4、酸度1.4、酵母 山形KA
 

3.黒龍 本醸造 垂れ口 五百万石65%精米 生酒
  Alc度18、日本酒度-6、酸度2.1、酵母 14号系
 

4.早瀬浦 特別純米 五百万石55%精米 生酒
  Alc度17.8、日本酒度+3、酸度1.5、酵母 9号
 

5.影虎 本醸造 超辛口 五百万石55%
  Alc度15-6、日本酒度+13、酸度1.5、酵母 不明
 

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まず、色を見てみます。下の写真を見てください。

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ちょっとわかりにくいですが、拡大してみると少しわかりやすくなります。左から番号順で並んでいますので、それを見てみます。

<色を見てみます>

1.すこし色があるがとても薄いし、表面に泡が付いているので、搾りだてではないか

2.色は少しついているが然な色合なので低温貯蔵ではないか

3.色が少しついているが多少のにごり見える。米の香りがするはず。

4.一番色が付いている。フラノンがあるはづ。香と苦みがあるはず。

5.完全に無色なので活性炭濾過している。香は少ないはず。

1番~4番は生酒だけど色合いはこれだけ違っている

<香を見てみます>

1.カプロン酸はリンゴの香りと言われていますが、すこし牛乳やメロンの香りがしますが、これはカプの量が多い時の香だそうです。

2.KA酵母はカプもイソエチも出すので、弱いカプの香の奥にセメダインのような香を感じると同時に爽やかさを感じる。これは酢酸エチルとアセトアルデヒドの成分のためと思われる

3.うすいマジックインクの香りがする。これが高級アルコールの香だそうです。この香の陰に酢酸エチルの香を感じる

4.香が全体の落ちている感じがする。9号とおもえない軽い香である。これはフラノンが出たために元の香が落ちてきたものと思われる。

5.2回火入れで起こるひね香がする。活性炭濾過をしているので、大部分のフラノンはとられるけど、その残骸がひね香として出ていると思われる

<味を見てみます>

1.まず甘みを感じるけど、酸度が高いので甘みを抑えて飲みやいお酒になっている。アルコール度数を14%にしたのは酸と甘みのバランスを取るためと思われる。アフターまで香が残る感じである。

2.甘みが少なく最初から酸を感じて、後味少し苦みを感じてくるお酒でした。これはコハク酸の苦みと思われます。清涼感を出すためにこんなバランスにしたものと思われる

3.アタックから中盤、アフターの味の変化が少ない。最初から甘さ、旨味、酸、苦味はあるけど、何か飛び出してくる感じがしない。アルコール添加して、アルコール度数が高いけどアルコール感がしない。後味にも甘みを感じるバランスでした。

4.後味にフラノンから出るしっかりとした苦み感じて後に残る。とても搾りだてとは思えないお酒になっている

5.最初に甘みを感じるけど、後から酸が飛び出てくる。全体的に味が薄いお酒のように感じるのはアル添加した上にアルコール度数を下げるために加水して、水の量が増えるために酸味を感じるだけでなく薄さも感じるようである。

<総合的な印象>

1.香は高いが飲みやすいバランスのお酒 

2.清涼感あふれる生酒 

3.アルコール添加を感じさせないコクのあるお酒 

4.搾りたてであるが熟成が進んだお酒 

5.2回火入れの加水したお酒の典型

以上で今回の講義のまとめを終わりますが、外観、香、味を見るだけで色々なことがわかることを初めて知りました。

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新潟のお酒とお料理を楽しむなら土筆です

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新潟酒の陣の訪問した時、必ず寄っているお店があります。それは新潟駅の万代口を出てすぐの通りを左に5分くらい歩いたところのある小さなお店の「新潟土筆」です。 

ここを初めて訪問したのは2009年の新潟酒の陣の後です。酒の陣で鮎正宗の飯吉富彦さんから紹介していただいたのが最初です。それ以来6回訪問し、そのうち4回その訪問記録をブログに残してあります。それをご覧になりたい方は下記のブログをクリックしてください。  

① http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-3e47.html  

② http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/2010-3cd5.html 

③ http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/in-65e3.htmlこのブログでは最後にお店のことが書いてありますので、ご注意ください。

④ http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-f8c1.html 

  このお店の土筆のことを少しご紹介します。店長は板垣幸之(たかゆき)さんは昭和22年生まれで、もともとフレンチが専門だったのを和食に転向し、新潟の駅前で割烹土筆を1983年に立ち上げたそ うです。その時は日本海の幸、新潟の地酒がキャッチフレーズでしたから、日本酒にはこだわりがあり、利き酒師の資格を取っただけでなく、自分の舌で選び抜いたこだわりのお酒を保有しています。現在はイタリアで修業した息子の行彦さんが帰国し、日本酒とワインを提供する和食とイタリアン料理店「新潟土筆」となっています。 

今回も新潟酒の陣の前日に友人5人で訪問しました。今回も発見がありましたが、5回目なのでさらっとご紹介したいと思います。 

<飲んだお酒> 

飲んだお酒は新潟でも中々手に入らないお酒で、板垣さんが入手して保存していたお酒の中から、板垣さんのお任せで出していただいたものです。ですからこのブログを見て買いたいと思っても買えないものが多いので、ご承知おきください。

1.和楽互尊「雪割り草」 吟醸生原酒 

Dsc_0136鶴齢 純米吟醸このお酒は長岡市にある小さな蔵の池浦酒造のお酒で、毎年3月上旬に出荷する季節限定のお酒です。原料米は越淡麗100%使用55%精米のアルコール度数18度の吟醸酒生原酒です。 

ラベルに雪割り草の写真が付いています。雪割り草は雪国の早春にゆきを割って出てくることから付いた名前で、如何にも春らしく店長が最初に選んだお酒です。 

飲んでみると、カプロン酸の綺麗な香りが漂い、ふくよかで後味に余韻が漂うお酒でした。酵母はわかりませんが、9号かな? 

2.鶴齢 純米吟醸 生原酒 27BY  

3.鶴齢 純米吟醸 生原酒 26BY  

Dsc_0138左のお酒が27BYの五百万石50%精米の純米吟醸、右は26BYの山田錦50%精米の純米吟醸で両方とも生原酒です。 

このお酒は毎年飲んでいるお酒ですが、今回は米違いと熟成の違いを見ることを狙ったものと思われます。 

飲んでみると、五百万石はとろみ感があるほど味が良く出ているけど、アルコール感がして、山田錦に比べると綺麗さに欠ける感じがしました。 

山田錦の1年熟成はこの店で去年も飲みましたが、その時は熟成が進んでいました。今年はどうしてか、あまり熟成が進んでおらず、当たりが柔らかく、余韻もきれいでとてもうまく仕上がっていました。綺麗さの違いはお米の違いではと、山田錦は違うと皆で感心しました。 

4.本正 純米吟醸 亀口直どり 

Dsc_0142_2このお酒は長岡市(旧栃尾市)にある越銘醸が造った新しい銘柄のお酒で、栃尾市の五百万石55%精米の純米吟醸の直取りの無ろ過生原酒です。 

ラベルには書いてありませんが、日本酒度は-2、酸度は1.5、アルコール度数は16-17度だそうです。 

口に含むと直ぐみならではのフレッシュ感と旨味と新鮮な香りが広がります。酸味を感じて喉越しも良く、キレがあって飲み飽きしない仕上がりでした。面白かったのは1回目と2回目で当たりが違ってきて、2回目の当たりが一層柔らかくなり、また飲みたくなるようなお酒でした。 

5.至 純米 しぼりたて生 1年熟成酒 

Dsc_0147_3このお酒は佐渡の逸見酒造のお酒で、五百万石60%精米の純米酒のしぼりだて生ですが、原酒ではないと思います。 

至は去年の正月にアイドルグループ嵐が紹介したのもですから、ぱっと売り切れてしまう人気商品になったそうですが、土筆は以前から至を取り扱っていたので、入手にはなんの問題もなかったと思います。今回は牡蠣フライに合わせて出していただきました。 

搾りたてではありますが、熟成のためシュワシュワ感はなくなっていました。でも、とろみ感が凄く、旨味が丸くなってとろっとした感じで広がっていきます。酸がしっかりしているので、後味も良かったです。多少の熟成感はあるけど、牡蠣フライにはぴったりだと思いました。 

いよいよお酒も佳境に入ってきました。 

6.君の井 170年記念大吟醸 

Dsc_0148_2このお酒は特別のお酒です。君の井酒造の170周年の記念に平成24年の10月に1842本だけ4合瓶1700円で売り出されました。そのお酒を3年半お店で熟成したお酒です。 

原料米は山田錦35%精米、18号酵母を使った完全に出品酒狙いのスペックですが、それが破格の値段で販売されたのです。 

飲んでみると確かに熟成香は殆どなく、綺麗で旨い酒ですが、次に飲んだ同じスペックの関東信越国税局酒類鑑評会最優秀賞を取ったお酒と比べると、後味にちょっと引っかかるものを感じました。人間は贅沢なものですね。

7.君の井 関東信越首席の大吟醸 

Dsc_0150_26番のお酒とスペック的には同じですが、このお酒は製造年月日は26年12月で、昨年このお店で飲んで感激したので、今年まで保管してもらったお酒です。 

飲んでみると、しっかりした味わいがあるにに、何の引っかかりもなくスウーット口に中に入って行き、そのまま消えて行きました。こんなお酒があるのだと一同皆感激してしまいました。良いお酒は寝かせてもあまり熟成が進まないようです。どうしてなのでしょうか。 

ちなみに最近5年間で、関東信越国税局酒類鑑評会最優秀賞を取ったお酒を紹介します。 

第82回 新潟県 丸山酒造 雪中梅 

第83回 長野県 田中屋酒造 水尾 

第84回 栃木県 惣誉酒造 惣誉 

第85回 新潟県 君の井酒造 君の井 

第86回 長野県 岡崎酒造 亀齢 

僕の友人の話では関東信越の最優秀賞を取るのは、奇跡だそうで、それと同じレベルのお酒をもう一度造れと言われても出来ないほどのお酒だそうです。もし、そうだとしても一度できたのですから、絶対にもう一度できるはずなので、それができないのは、酒つくりは奥が深くわからないことが多いということですね。 

8.謙信 大吟醸 5年熟成 

Dsc_0152_2このお酒は最後に店長がおまけですよと言って出して蔵たお酒です。 

平成23年度の全国新酒鑑評会の金賞受賞酒をお店で5年熟成したお酒です。山田錦40%精米の大吟醸です。 

飲んでみましたが、5年たっているのに全く熟成香がない。まろやかでありながら、綺麗なお酒でした。君の井の7番に比べたら違うけど、どうしてこうなるのかがわかりません。 

絶対フラノンは出ていると思われますが、ちょっと色を見るのを忘れました。後味の苦みも要チェックでしたが、どうして熟成が遅くなるかをもっと勉強したいですね。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

次に食べたお料理を簡単に紹介します。

 

<お料理編> 

このお店のお料理はどれもおいしいのですが、今回は軽く紹介だけにさせていただきます。

芽カブ 

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 お刺身

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郷土食 のっぺい 

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 栃尾あげ

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 牡蠣フライ

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最後にお店の前で板垣さんと皆で写真です。フラッシュが焚けてないな。知っている人はいるのかな?

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日本酒セミナー要旨 第1段 (水芭蕉と新政)

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今回の日本酒セミナーフルネットの中野社長が企画したセミナーで、日本で注目される5つの蔵の社長が約一人1時間15分で講演するというとてもユニークな企画です。僕はこの企画を聞いた時、2万円という高額な講演でしたが、こんな貴重なセミナーを外すことはできないと、イの一番に申し込みました。貴重な講演なので、内容はまとめて記録に残したいと思っていました。しかし、講演を録音してはいけないと聞き、ちょっとがっかりしたのですが、写真はOKということなので、殆どの写真を取りましたので、それを頼りに要旨をまとめてみることにしました。もちろん講演の要旨を書くことについては中野社長の了解は取ってあります。 

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1.最初の講演は水芭蕉の永井則吉さんです 

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則吉さんは永井酒造の次男坊に生まれ、親の意向で自由に生きてきて良いと言われ、大好きだった建築を勉強するために東海大学の建築学科に入学しました。そして外国の建築を勉強するために大学3年の時2カ月ほど、ヨーロッパ諸国を旅をしたのが酒つくりをやる切っ掛になったようです。酒造りは五感(ART)と技(Technology)であり、建築と相通じるものを感じたそうです。 

ヨーロッパの地方へ行くと必ずワインナリーがあり、ワイナリーが中心に町を形成していることを知って、生まれ故郷の川場村にある自分の蔵もそんな蔵にできるのではないかと思い直したそうです。それから親を説得して卒業したら蔵で働くことを決めたそうです。でも当時は借金だらけの危機的状態だったそうです。 

もうひとつの大きなきっかけは卒業の時(22歳)にロマネコンティのモンラッシュという高級ワインをもらって飲んでその奥深さにショックを受けたことと25歳の時にワイン醸造家のジャンミッシェルにお会いした時にワインつくりのお話を聞いてその姿勢に完全に負けた思いがしたことだそうです。 

その後、世界に通じるいい酒を造ることを会社がつぶれない範囲で努力することを始めたそうですが、29歳の時にある方から酒造りについて3つの質問をされて応えられなかったことでショックを受けました。そこで気付いたのが、酒造りに必要なことは「ビジョンと哲学を持つ」ことだと感じたそうです。そして出した結論は「大自然を愛し、自然美を表現する綺麗な酒を造る」でした。 

その翌年から新しい発泡酒のMIZUBASHO-PUREの開発を開始し、5年後の2008年にその完成を見るのですが、それには大変な苦労があったそうです。その間シャンパニュー地方に研修に行きましたが、そのまま技術導入できないことが多く、様々なトライアンドエラーを繰り返してやっと完成したそうです。 

その開発した技術の主な点を上げると以下のようになります。 

・ 瓶内2次発酵でガスボリュウムを安定させる
・ 
濁り酒とクリアな酒の調合比の決定(味わいを整える)
・ 
澱の量を減らして動瓶しながら澱引きする
・ 発泡酒の火入れのタイミング
と経過温度
 

この中で大変だったのは旨味甘みと酸味の和ランスを探すのに濁り酒とクリアなお酒との調合比率を700通りも試験をしたのと、凍らせない方法で澱引きするところだったらしいです。 

次に力を入れたのがブランドの再構築で、具体的にはお料理とのペアリングを考え、それに合わせたお酒を造るという永井スタイルが2014年に完成したそうです。それを下記に示します。 

・ SPARKLING SAKE (乾杯の酒 MIZUBASYO-PURE)
・ STILL SAKE     (吟醸酒から純米大吟醸)
・ VINTAGE SAKE  (10年以上熟成酒、古酒ではない)
・ DESSERT SAKE  (貴醸酒をベースとした食後酒)
 

今新しく目指しているのは東京オリンピックでのオフィシャル乾杯酒へのチャレンジだそうです。そのために誰でも品質が安定したスパークリング酒を造れるように一般社団法人「AWA酒協会」を今年の4月に設立する予定だそうです。ここではシャンパン協会と同じように協会が認定するスパークリング酒の基準を決めるそうです。この協会に入れば協会蔵元で勉強会を開き、情報を共有していくと共に契約すれば特許の使用を認めていくそうです。(でも5月現在検索してもホームページが見つかりませんので、遅れているのかもしれません)

この認定基準の下記に示します。

・ 米と米麹と水のみを使った清酒である
・ 国産米100%使用で3等級以上である
・ 醸造中の自然発酵による炭酸ガスを保有する
・ 外観は透明であり、容器の注いだ時に一筋泡を生じる
・ アルコール濃度は9度以上である
・ ガス圧は20℃で3.5バール以上である

結構厳しい基準ですが、僕がちょっと驚いたのは品質基準が常温で3カ月以上香味、品質が安定しているこということでした。炭酸が多く、かつ火入れしているからできることなのでしょうね。 

最後に酒蔵の役割は「地域の自然・文化・歴史・人の営みを凝縮させて伝えて行く」ということで、これに携われたことに大変感謝しているとのことでした。 

2.2番目の講演は新政の佐藤祐輔さんです。 

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新政は6号酵母発祥の蔵として有名ですが、昭和の初めは日本でもトップクラスの技術を持った蔵で、全国新酒鑑評会で総合1位を取るほどでした。戦争がはじまると他蔵との合併をさせられ勢いもなくなりましたが、戦後昭和27年に新政が復活したようです。その後、地元のお酒造りを中心に発展し、祐輔さんが子供の頃は蔵のおぼっちゃまと言われるくらい商売が繁盛し安定な酒造りをしていたそうです。 

その後、日本酒の級別制度の廃止や大店法の廃止を機会に、普通酒の安売りが始まると同時に過当競争から質も悪くなり、飲む人の数も減り、蔵の経営は悪くなる一方で、体力のない蔵が次々とつぶれていく時代を迎えることになります。新政酒造の経営も同様に年々6-8%生産高が減少し、平成18年には経常収支はー20%の赤字になったそうです。 

祐輔さんは秋田の高校を卒業された後、明治大学の商学部を経て東京大学の文学部に入学され、1999年に卒業されます。その後ジャーナリストの仕事をした後、2007年に蔵に戻ることになるのですが、経営の立て直しが急務だったそうです。その後次々と蔵の改革を進めていきますが、ざっと彼がやったことをまとめてみなすと次のようになります。 

・ 2007年 季節労働者制度廃止(社員醸造)
・ 2008年 社員杜氏 
・ 2009年 製造部設立 
・ 2010年 6号酵母のみの醸造
・ 2011年 秋田県産のみの醸造 
・ 2012年 純米酒のみの醸造 オール山廃の実施
・ 2013年 木桶の導入 4合瓶主体の販売
・ 2014年 26BYの後半から生酛造り開始
・ 2015年 オール生酛の醸造
 

これを見ると、経営改革というよりは信念を持って何かに舞い進んでいる気がしますね。これは何でしょうね。確かに最初の3年は組織をいじっていますが、うがった見方をすれば、自分の考え方を社員に理解してもらう期間ではなかったかと思われます。その間に自分自身は色々な勉強をし、実験をして新しい進む方向を模索をしていたのではないかと思われます。でもその原点は何だったのでしょうか。それは彼の最後の締めの言葉で判りました。 

それは「自然への回帰」です。自然な原料(無農薬)、自然な製法(限りなく無添加)、自然な環境(手作業尊重、適した自然環境)、自然エネルギー(省エネルギー廃棄物減少)を最初から目指していたものと思われます。蔵に入ってすぐそんなことを言ったら大変なことになったと思いますが、勉強、努力、実践で実績を詰め上げていって達成したことが凄いなと思いました。そう考えれば彼の行動が理解できます。 

この裏付けとして全量生酛に至った流をご紹介します。まず、彼は乳酸を添加する速醸法やアルコール添加は自然な方法ではないと思ったのだと思います。酒の味は大切であることは十分判っているし、アル添の良さはわかっているけど、彼の信念として自然な方法を模索したのだと思います。 

まず昔の酒の醸造法を調べ、それを試すことを行いました。昔からの酒の醸造法の発展は室町時代までは中国の技術の導入でしたが、江戸時代にできた生酛は日本独自の高度な技術であることがわかりこの再現から始めたようです。色々とトライした結果、下記の手順で安定した生酛つくりができるようになったそうです。 

・ 炊きたての米は木桶に入れて一晩水分を保ったまま冷やす
・ 冷やした米と麹と水を入れたものを手で混ぜる
・ これを櫂で米をつぶさないように麹だけをつぶす(難しい)
・ この酛摺り法の代わりに古式生酛タイプを採用する
・ この後暖気だるで温めて乳酸菌をふやす
・ 乳酸菌が増えて酸っぱくなったら酵母を入れる
 

この中で凄いと思ったのは古式生酛法を現代技術で再構築して実現したことです。ポリエチレンの袋に米と麹と水を入れて米を溶かす技です。この方法は江戸時代に酛摺りができる前に行われた方法ですが、当時はこんな良い袋はなかったので、安定性が出なかったものと思われます。 

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こうやって新政流生酛つくりが完成しましたが、その前に色々と新しいことにチャレンジしています。これをちょっと紹介します。 

蔵に戻ってきた当時、乳酸を入れない方法を色々試した結果、酒母は酸っぱくならないと腐ることがわかったけど、安定した造りができなかったそうです。そこで思いついたのが、焼酎の白麹を使えば酸っぱい酒母ができるのではないかとやってみたら上手くいったそうです。

その後すべての造りを山廃にすることをチャレンジしたけど、酸は増えても雑菌が死滅しないことが起こることを経験したそうです。そこで思いついたのが、酸が増えたところで酒母の温度を一的に上げて雑菌を死滅させる2段式山廃法でした。江戸時代に行われた煮酛という方法の現代版だそうです。この方法で安定した山廃ができるようになったので2012年から一時オール山廃にしたそうですが、最近前述した古式生酛法ができたので、今ではすべて生酛にしているそうです。

過去の教えを勉強すると同時に新しいアイデアにもチャレンジしている祐輔さんの姿が読み取れますね。 

古式生酛法の完成はできたものの、祐輔さんの思いはまだ終わっていないそうで、これからチャレンジしていくことについて最後に紹介します。 

・ 無農薬有機栽培の原料米の増加
・ 酵母無添加の生酛つくり(6号酵母を添加しない)
・ 自社田の確保と農業の展開
・ 自社田の近くに本社を移し、農業に活気を与える
 

具体的には蔵の近くの「鵜養地区」に自社田を造り、農業の活性化を図るのが夢だそうです。

彼の心に中に自然回帰という信念と同時に日本の伝統の技を大切にしたオリジナリティのある酒造りをして、世界に誇れる蔵になりたいという気持ちがあることがわかりました。

 以上で2蔵の講演の紹介を終わります。

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日本酒セミナー要旨 第2段 (獺祭、伯楽星、南部美人)

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獺祭・桜井博志さん「酒造経営・最前線」 

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桜井さんの講演はあまりパワーポイントでの説明が少なかったので、詳細は不明になってしまいましたが、いただいた小冊子「逆境が獺祭を生んだ」を参考にしてまとめましたので、講演の正確性についてはご勘弁ください。 

山口県の過疎地にある造り酒屋の長男に生まれ、松山商科大学を出た後大手酒造会社で修業した後、3年後に蔵に戻りますが、父親と意見が合わず飛び出して親戚の会社(御影石の販売)で6年ほど 営業をしたそうです。6年後に父が癌になったので再び蔵に戻って社長になったのが33年前の33歳の時だったそうです。 

その時の蔵の年商は約1億円で最盛期の約1/3で、明らかに斜陽産業になっていたそうです。当時は昔の延長で業績を伸ばそうと紙パック酒の販売でしのいでも利益は出なかったそうです。そんな時(1990年)に東京のお店の要望で純米大吟醸を造ってから少し手ごたえが出てきて、銘柄も「旭富士」から「獺祭」に変えて、少しずつ認められるようになったようです。そして社長になって15年後にやっと年商が2億円になったそうです。 

次なる飛躍として考えたのが、日本酒を造らない時期に売れる地ビール事業だったそうです。あるコンサルタントの意見から地ビールのレストランを開設したが、赤字続きでたった3ヶ月で撤退したそうです。これで1億9千万の損失をしたものの、撤退しなかったら今の会社はなかったかもしれない一大決心だったそうです。 

ちょうどその時今まで13年間も一緒に頑張ってくれた杜氏が退社したのです。それで考えたのが「社員だけで」一切の妥協を排除した理想のお酒を造って勝負をしようと決意したそうです。具体的には原料は最高級の山田錦、精米は50%以上の純米大吟醸、販売拠点は東京ということにシフトしていきます。 

杜氏がいなくても造れるようにA4で20ページのマニュアルを造りましたが、一番効果があったのが経験だったそうです。その当時でも純米大吟醸を年間50~60本を造ることをしていたので、その経験が役に立ったというわけです。一本ずつ仕込みの結果を見て次のタンクに生かしていくことを続け、現在に至り、今では四季醸造で年間生産をしているそうです。これは生産コストダウンに大いに貢献したようです。そして社長になって15年後の2014年には年商40億円になったそうです。 

そして昨年12階建ての新工場を建設しました。その写真を見てください。とても酒つくりの蔵とは思えないですね。 

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工場の内部は少量仕込みの手造りシステムを自動化したもので、手がかかるので、従業員は製造だけで100名いるそうです。この工場の最大生産能力は5万石でその時必要な山田錦は20万俵だそうです。昨年の生産高は1万5千石で必要な山田錦は7万俵となっていますが、これからさらに大量の山田錦が必要となります。

山田錦の調達について 

最初山田錦を山口県の農協から買おうと努力したけど、相手にされなかったので全国から集めることにして、現在は兵庫県から70%購入しているそうですが、他県からも広く購入していて、それでも足りないので、去年から新潟県長岡市で山田錦栽培会を立ち上げ、現在7千俵を購入しもっと増やすそうです。栃木県や茨城県での栽培も始まっています。 

最大の供給地である兵庫県でも一時山田錦の生産が落ちました。平成5年に33万俵あったのが平成21年には16万俵になったそうです。これは全国の山田錦購入者が減ったためです。獺祭の後押しで、現在は兵庫県の山田錦の生産量は38万石にもなっているそうです。その結果、全国の山田錦の生産量は既に62万俵になっているので、日本の農業の発展に貢献していると言えそうです。 

営業活動について 

最初は東京を中心に販売を進め、人気が出たために異常な高値で売る店も出てきているようなので、品薄解消の努力をしていますが、新工場ができたので品薄は解消に向かうと思われます。そして、東京の次は地方ではなく海外を目指しているそうです。海外のために外国人向けの酒造りはせず、あくまでも日本のお酒を売ることを徹底するそうで、当然価格は高くなるので購入者は裕福な人に限られます。これからもあくまでもその人を対象にするそうです。海外向けの売り上げは全売り上げの約1割です。それに必要な山田錦は約1万俵、600トンで、日本の米の輸出量の約1/5になるそうです。 

最後に当社の目的は「社会的ににフィットする中で少しでも美味しいお酒を提供する」ことなので、これからは日本の農業の改善にも貢献していきいと結ばれました。 

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伯楽星 新澤巌夫さん「精米・最前線」 

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伯楽星誕生の道 

まず最初に蔵に戻った当時のことを紹介します。新澤さんは新澤酒造店の御曹司として昭和50年に生まれて、将来蔵を継ぐことを前提に東京農大に入学し、卒業後は東京の酒屋や山形の蔵で修業した後、蔵に戻ることになりますが、当時は経営が悪化していて年商は2000万円、負債が2億円という状態だったそうです。 

蔵に戻ってやったことは、たった6石(1升瓶600本)の製造から始めたそうです。蔵に残っていたお酒も含めて販売に努めたそうですが、なかなか売れなかったそうです。それは当時のお酒の「愛宕の松」は自分が飲んでも美味しくなったせいであることはわかっていたそうです。 

それでも素人集団の男4人(平均年齢20歳以下)で頑張って少しずつ売れるようになってきたけど、「愛宕の松」は不味いというレッテルが張られているので、やむを得ず2003年に新しいブランを「伯楽星」を出すことにしたそうです。伯楽星とは町の伝説で星になった名馬の名前を取ったそうです。この酒は酒販店さんだけに卸すお酒で、究極の食中酒としたそうです。食中酒なので、世の中の売れ筋のお酒のグルコース濃度を測って、そのグルコース濃度の半分くらいを狙って造ったのですが、インパクトがないと最初は売れなかったそうです。でも捨てがたい味として、ちょっとずつ伸びていったそうです。 

この時かなり大胆な戦略を取ったそうです。それを下記に示します 

・ 酒販店が買うお酒は自分で選んで買ってもらう
   (酒の味にばらつきがあるから

・ 余ったお酒はりキュールにして売る
   (もうけのためではない

・ 搾りたてのお酒は蔵で10日たったお酒はすべて廃棄する
    (新鮮さの提供)

・ 日付の古いお酒(4か月)は回収して別のお酒に変え
   (酒質低下防止

・ 回収したお酒は販売しないですべて処分する
   (悪い酒を世に出さない
 

このために全国40か所の酒販店を定期的な巡回したそうですが、この時の生産高は200石程度だったようです。お客様のためとはいえ凄い戦略ですよね。 

東日本大震災の影響 

こんな時に突然の大地震を受け、津波の直接の影響は受けなかったけど、蔵が全壊するほどの被害を受け、立て直すしかないほどだったそうです。すぐ同業の49蔵が応援に来ていただいたそうで、大変感謝しているそうです。幸いに震災の年の5月に「天賞酒造」が廃業することを聞き、すぐに見に行ったそうで、場所は川崎地区にあり天賞さんが最近造ったばかりの新鋭の蔵で、他からも見に来ていた蔵もあったので、その場ですぐ購入することを決めたそうです。今から考えるとこの決断が幸いしたたとのことでした。 

高精米醸造への道 

その後蔵の生産は順調に伸び、精米機の導入をしたそうです。品質向上のため、2台の違うメーカーの精米機を導入したとのことです。 

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食中酒をメインにしていたため、インパクトが少ないとよく言われるので、蔵の特徴を出すために高精米の醸造を始めたそうです。最初は15%磨きをしていたのですが、同じ農大出身の来福さんが9%精米を出したので、来福さんの了承を得て海外向け用として9%精米の酒を出したそうです。720ml3万円で出しましたが、海外では数10万円もするそうです。仲間内では精米競争はやめて8%で止めようと話し合ったのですが、震災の時に応援に来てもらった方に対して感謝のつもりで、世界一の精米度7%精米の酒(Unite311Super)を応援に来た他の蔵人と一緒につくったそうで、これは皆で分けて終わった500本になったそうです。 

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女子社員の増員

蔵を始めた時は若い男性を中心に始めたので、当初はそれを売りにしていたのですが、今では従業員36名の、生産高2000石の会社になったのですが、社員の6割は女性だそうです。それは女子社員向けの寮を造ったのが大きかったそうです。
 

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洗面所、洗濯機、キッチンと至れり尽くせりの設備で、これが功を奏したそうです。さすがですね。 

現在高精米の蔵として名前が知られてきましたが、実は普通のお酒にも力をいてていて、将来さらなる値下げをするつもりであることをおっしゃって講演が終わりました。 

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南部美人 久慈浩介さん「海外輸出・最前線」 

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南部美人は今では28カ国に輸出をしていますが、このきっかけは南部美人の蔵の歴史と関係があったようです。浩介さんは現在5代目の蔵の当主ですが、祖父が二戸の南部美人を岩手全体に広め父が日本中に広めて、次の自分はをしようかとなったのですが、高校時代にアメリカに留学したこともあり、世界に日本酒を広めようと決めたようです。 

たまたま同じような思いを取った他の蔵の人と一緒になって1997年に日本酒輸出協会の設立にかかわったのが始まりだったそうです。そして現在は世界28カ国に販売するまでになっています。

今回は大量のパワーポイントを使い海外の拠点の現状を色々とお話しいただきましたが、プレゼンされた写真をすべて取ったわけでないし、2-30秒に一回画面が出てくるほどの量でしたので、海外への具体的なの展開については省略しますが、ポイントだけご紹介します。
 

2015年の海外輸出の統計から輸出量の順番をみると1位アメリカ、2位香港、3位韓国、4位中国、5位台湾、6位シンガポールで隣国が多く、EUはまだ少ないそうです。それに対して南部美人はアメリカ、カナダ、ブラジル、イギリス、フランス、オランダ、アラブ首長国連邦とちょっと違った攻め方どしています。外国人にはお酒をまず頭で日本酒を理解してもらい、次に試飲して味を確認してもらうやり方でPRしてきたそうです。

・ 二戸市による漆と日本酒のPR(Facebookポイント作成)

・ 日本酒吟醸酒協会による国連のなかでのPR

・ ラスベガスでの2500人対象のレストランショー

・ ラスベガスでは2000ドルの日本酒を提供
   (大吟醸出品酒10年冷凍古酒)

・ ロスアンゼルスでの自動車博物館で日本酒試飲会

・ フランスのレストラン「ISSE」での試飲会

・ ドイツで南部鉄器と日本酒の試飲会

・ イギリスでは大英博物館で試飲会

・ スペインで「ピンチョス」レストランで試飲会

その他、イタリア、ロシア、香港、台湾、ブラジル、ドバイ、カナダ、リトアニア、イスラエルと続きましたが、省略します。カナダでは日本酒の醸造所(ほとんど無ろ過生原酒)があるそうです。

何処行っても日本酒の人気は大したもので、日本酒が凄く求められていることが良くわかったそうです。 

コーシャ認定について 

ユダヤ人はアメリカで重要な地位を占めている人種ですが、世界中でも色々活躍していますが、彼らには旧約聖書の教えに即したカシュールトと呼ばれる厳格な食事規定があり、それを守ることが義務付けられています。そのためユダヤ教徒は教義に従った安全な食品であることを認定したコーシャ認定の食物しか口にしません 

その規定の詳しいことは省略しますが、肉類は草食動物で反芻動物でなくてはいけない等今日から考えると非常識的なものも多いのですが、体に対して安全な食物という基準には入るようなので、最近はユダヤ教徒だけでなくベジタリアンなども好んで食べているようです。ですからアメリカ人の30%の人は安全のためにコーシャ食品を選んでいるという情報もあるようです。 

純米酒以外の日本酒のコーシャ認定が難しいのは醸造用アルコールを使うことにあります。日本で一般に売られているアルコールは認定されていません。でも日本にもコーシャ認定を受けたアルコールを製造販売している会社が静岡にあるそうで、南部美人もそこから手に入れているそうですが、非常に高いそうです。  

コーシャ認定を取ることが、世界への日本酒の輸出にどのくらい効果があるかは不明ですが、コーシャの認定を取っておけば、将来に和食レストランを超えた広がりを見せる可能性があるという観点から取り組んでいるそうです 

海外輸出のまとめ 

日本酒の輸出の大きな障害となったのは国税局だったそうです。海外に販売するお酒は未納税なので、最初は反対していたが、今では一番の応援団になって、昨年、日本のお米と麹で日本で造った清酒は「日本酒」と呼んでいい(地理的表示)と決めていただたそうです。 

次の障害は流通の経路は海外では違うことでした。海外ではレストランも小売店も日本酒販売のライセンスが必要になります。日本のように酒屋さんに売れば日本酒が売れるわけではなく、レストランに直接アタックしているそうです。 

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でも、レストランに売り込みためには自分たちの力だけではプロモーションができないので、下記のようにプロモーションをする会社と契約して販売しているそうです。今後はこの形態が増えるそうです。 

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最後にまだ海外販売をしていない蔵に対する下記のようなアドバイスをしていただきました 

・ 地方の小さな蔵でもオンリーワンの商品なら世界に売れる 

・ お客様本位の商売は日本でも世界でもおなじ 

・ 会社の規模の大小ではなく価値の大小を世界は見ている 

・ 本気に海外に出たいのならまず現地へ行く 

・ 世界を相手にしなければ、狭い日本だけでは生き残れない

南部美人が育てつつある海外での日本酒の製造

・ アメリカのアーカンソー州で造られている酒米で日本酒を造るアメリカの研究生を受け入れて、修業している 

・ 大阪の堂島ビールの創始者の橋本さんの息子がイギリスのケンブリッジに日本酒製造の蔵を造るために南部美人で研修している 

最後のご挨拶

世界は日本酒に「恋」をしているので、私たちはそれに応えるだけでなく、日本人は日本酒を愛し、日本酒を世界一カッコよく飲む姿を見せられるようにしましょうということで結ばれました。 

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第5回目

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これまで4回の講義で日本酒の香が何から生まれてきたかを勉強して来ましたが、それはすべて日本酒が造られる過程において発生する物質が生み出すものであり、どの成分がどのくらいあるかはお酒によって違うけど、色々な香がまじりあって生みだされるものであることは確かです。 

香は一般的に強い香りが弱い香りをマスキングしてしまうので、何気なく香を嗅ぐとその強い香に引っ張られて弱い香りは気がつかないことが多いけれども、注意深く奥にある香を利きわけていくと、いろいろなことが判ってくるようです。そのわずかな香の違いから日本酒の製造工程で何が起きているかも想像できると先生は言われます。でも僕にはそれは大変難しくいつになったらそんなことができるか、全く自信はありません。 

でも、そのわずかな香を利きわけるためには、日本酒の酒質からどんな成分があるだろうということを気にかけてイメージして利きわけていくうちに、これではないかと感じるようになると言われました。そのつもりで努力していますが僕にはなかなか難しいです。 

その僕にも判る香があります。それはオフフレーバーです。オフフレーバーとは食品成分自身の化学変化や,外部からの物質の混入によって食品の品質が劣化して二次的に生じる異臭,変質臭,悪変臭などをいいます。僕もそれを感じた経験があります。それはある蔵で日本酒を搾る時に使う薮田のフィルターから出る薬臭い香に悩まされたことがありました。僕はものすごく強く感じた異臭でしたので、その蔵の人にお聞きしましたが、自分はわかるけど一部の人にはあまり感じないとのことでした。感じるかどうかはその人の能力で違いますが、こんな異臭があるものを世に出すのは良くないので、その原因の特定し改善するする必要があります。でもTOPが理解してくれないとその対策はなかなか難しいと聞いています。 

今回の講義はそのオフフレーバーにはどんなものがあり、どこで生まれるかを勉強するとともに、それが含まれるお酒を試飲して体験することになりました。 

復習になりますが、先ずは正常な日本酒が醸しだす香りから簡単に説明していきます。 

1.原料系の香り:

   米由来の香りで、濁り酒、無ろ過生原酒で澱が残っていると多く感じますが、濾過をすると減少します。硬度の高い水を使った場合は鉱物的香がすることもあるようです。 

2.アルコール:

   アルコール添加したお酒を活性炭濾過をすると香りが消えるので、強く感じるそうです。 

3.乳酸系の香:

   酸度が高くなると乳酸の香りがします。ワインではバターのような香ということもあるそうです。 

4.アセトアルデヒド:

  青臭い香とかスウットした感じの香りとか、木香様臭(杉の木の香り)といわれます。少し枯れた感じなのにツンとする香ともいわれます。お酒を造った後、酸化すると出てくるので、熟成した時に出るフラノンの後ろに感じるそうです。火入れすると消えていくそうです。 

5.カプロン酸エチル:

 リンゴやメロンと言われますが、濃度が高くなるとパイナップル的になり、さらにミルク臭になるそうです。脂肪酸の香に近づくようです。 

6.酢酸エステル:

 酢酸イソアミルはバナナや洋ナシの香り、酢酸エチルはセメダインの香がします。 

7.高級アルコール

  高分子のアルコールなので油性マジックの香だそうですが、濃度が増えると蝋のような香になります。フェニルアラニンが分解すると花の香りが出ることもあるそうです(稀)。 

8.脂肪酸エステル:

  油の香りであり、高級アルコールとの差は見分けにくいそうです。 

9.フラノン:

  熱変化や貯蔵、熟成で出てくる香で濃くなるとカラメルのような香になります。さらに長期熟成すると梅酒にようになることもあるそうです。 

以上に示した香は日本酒ならば出てきても仕方がない香りですが、オフフレーバーは造りの途中で外から入ってきたり、生成して出来る香なので、その香りが心地よい香りならば良いのでしょうが、ほとんどが異臭と言われることが多いようです。 

<オフフレーバー> 

1.4VG 

4ビニルグアヤコールと言われる物質で、グローブ(丁子(チョウジ))とスモーク臭の香が混じった香がします。人によっては甘く、スパイシーな香とか蛸酸ウインナーの香りとも言われます。ビールの世界ではドイツのバイツエンのビールが4VGに由来するスモーキーな香がすることで有名です。泡盛の焼酎では原料中のフェルラ酸が蒸留中に4VGになると言われています。ですから4VGは異臭とはいえないとも考えられますが、ワインの世界や日本酒の世界ではオフフレーバーと認識されています。 

日本酒の場合は自家培養の酵母、特にイソアミル系の香りを出す酵母の中に、4VGを出してしまう酵母があるようです。また、麹から持ち込まれる細菌が4VGを出すという研究もあるようです。4VGの香は必ずしも嫌な香りとは言えないけれども、酸味と苦みが強く出るので、日本酒の本来の味にはないものとしてとらえられており、日本では県の醸造試験所が4VGは出さないように指導しているそうです。 

2.樹脂とロウ 

発酵が終わり切っていない時で、タンパク質が溶けきっていない時に火入れすると蛋白混濁が起こり、白く濁ってしまい、粒子が小さいので全く沈澱しない濁ったお酒になるそうで、ロウ臭がします。これは完全に管理ミスで起こるトラブルです。 

生酒で出てくることがあります。それは高級アルコールが含まれている時に温度を冷やすと、油が固形物になって混濁するそうで、凄いロウがするそうです。出荷した時に香を確認しないする必要があります。 

3.オイル 

ミシン油のような機械油のオイルの香がすることがあります。酸度が2以上で生の場合に出る可能性が多いようです。オフフレーバーかどうかはぎりぎりの香であるが、決して心地いいものではないそうです。 

4.硫黄 

磨きが60%以上で、アミノ酸が多い時に熟成するとチオールを多く造ってしまい硫黄の香がするそうです。酵母の代謝で造られるようです。 

5.TCA 

トリクロロアニソールという物質でカビ臭がします。これは塩素消毒した器具を使用した時に起こるそうです。残留塩素が少しでもある器具を使用するとか、濾過機のフィルターの濾紙に何らかの理由で塩素物質が付いた場合でも起こるそうです。空気中に飛散をした塩素化合物が付着する程度でも起こるようです。 

カビ臭というより湿った押入れの香といった方が良いかもしれません。ワインではコルク臭と言われるもので、コルクが消毒用の塩素物質で汚染された時にワインに移るようです。 

6.ジアセチル 

乳酸の香りとセメダイン臭が重なった香で、僕は一度この香のお酒を飲んだことがありますが、乳酸が腐ったような香のように思えました。 酸度が高くて甘みが多いお酒で、酵母が活性がまだある時に搾るとアセト乳酸ができるが、それがすぐ酸化してジアセチルとなるようです。搾ったお酒をすぐに瓶詰めするとその時にはジアセチルは出来ていないが、しばらく経つと出てくるようなので、要注意の物質です。搾ってすぐ火入れすれば出ないそうです。 

7.ムレ香 

殆どがイソバレルアルデヒドの香です。醪の温度を一気に上げる時に出やすいそうです。また、高温糖化酛でも出る可能性があります。ムレた香と同時にカプロン酸エチルも出ることが多いので、それを良しとしている蔵もあるようですが、基本的にはオフフレーバーとすべき香だそうです。 

以上でオフフレーバーの紹介を終わりますが、次にオフフレーバーがあるお酒の試飲をしました。 

<試飲したお酒>

試飲したお酒は下記の6種類ですが、この中には明らかにオフフレーバーがあるお酒と全くないお酒、オフフレーバーかどうかが難しい中間的なお酒も入っていました。 

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1.仙禽 雄町 純米大吟醸 雄町35、50%精米 生原酒
  Alc度15、日本酒度-2、酸度2.3、AA度:- 酵母 栃木酵母
 

2.仙禽クラシック 純米大吟醸 雄町50%精米 火入れ
  Alc度15、日本酒度-2、酸度2.3、酵母 栃木酵母
 

3.豊の秋 豊秋庵 純米吟醸 山田錦と五百万石55%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+2、酸度1.5、酵母 9号系
 

4.ロ万  純米吟醸 五百万石と夢の香 60%精米 
  Alc度16、日本酒度+0、酸度2.0、酵母 F7-01号
 

5.白岳仙 純米吟醸 五百万石 55-58%
  Alc度15-16、日本酒度+5、酸度1.4、酵母 自社酵母14号系
 

6.吟の里 順子 純米酒 その他詳しいことは不明

以上の6種類のお酒ですが、まず色を見てみましょう。左から番号順に並べてありますが、色を見る限り大きな差はないようです。

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それでは順番に説明します。

1.仙禽 雄町無ろ過生原酒:

  香を嗅ぐと乳酸とセメダインが混じったような軽いジアセチルの香りがしました。生なのでアセトアルデヒドの青臭い香りもしていますが、ジアセチルの香以外は特にいやなものはありません。人によっては問題ないと言う人がいましたが、先生はアウトの判断でした。僕も気になりましたが、オフフレーバーにするかどうか微妙な所です。酸度が高く甘酸っぱいお酒によく起こるようです。今回たまたま出たのではと思われます。

2.仙禽 クラシック 1回火入れ:

  ジアセチルの香りは全くなく、栃木酵母らしいイソエチとカプが混じった綺麗な香りがして、心地よく飲めました。でも味的には1.の生の方がバランスが良いように思えたのは不思議です。スペック的には1とほぼ同じですが、火入れすることによりジアセチルが出なかったようです。

 

3.豊の秋 豊秋庵

  香を嗅ぐとカプの香りが少なく、穀物の香りがします。この香は精米度が65%以上ならよくあることですが、精米度55%で出ているので、何か原因があると考えるそうです。味を味わってみると、前半の9号酵母ではまず出ない後味に苦味を感じるので、先生は醪の段階か後処理の段階で温度が上がったのではないかと想像するそうです。でも後処理ではこんな苦味は出ないので、この苦みから考えると醪の段階で温度が上がったと想定するそうです。オフフレーバーとは言えないぎりぎりの香りのようです。

4.ロ万 純米吟醸:

  酵母はF701で、華やかだけどイソエチ系の酵母の割にはツンとしないで、ふわっと膨らむ香がするけど、良く嗅いでみるとわずかにムレ化のような香りがします。飲んでみるとアタックが甘くてとろっとしているので、後半まで甘みが残り、コハク酸は少なめに感じるのはもち米を使っているせいだと思うそうです。ちょっと変わったバランスのお酒ですが、酒質としてはこの蔵の特徴であり問題ないとのことでした。

5.白岳仙 五百万石:

  香は丁子とかスモーキーな香ですが、人によっては青魚の生臭さと言う人がいるそうです。僕にとっては嫌な香りと言うよりちょっと変わってるなという感じでした。でもこれが4VGの典型の香だそうです。このお酒はダンチュウにも取り上げられていていやなお酒とは言われていないようですが、4VGからくる酸と苦味が特徴のようです。4VGはどうして生まれるかというと、自社酵母からくるようで14号系に多いそうです。4VGを勉強したい人はこのお酒を購入してください。

6.吟の里 順子:

  このお酒は熊本地震を支援する寄付金付きのお酒として造られたお酒のようですが、TCAのオフフレーバーが出たので、販売をやめたお酒です。この香はTCAの典型の香だそうで、カビ臭いというより湿った押入れの香りの方が当たっているような気がしました。どうしてそうなったかは不明ですが、TCAを勉強するには貴重な幻の酒となってしまいました。TCAは昔36人衆で出たことがあったそうですが、滅多にないことのようです。 

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東洋美人のお酒は確実に進化しつつあります

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ちょっと古いお話で恐縮ですが、桜の咲き始めるころに白金の八芳園で第13回蔵元さんと一緒に日本酒を飲む会が開かれましたので、参加して来ました。今回は東洋美人の銘柄で有名な澄川酒造の蔵元兼杜氏の澄川宜史(たかふみ)さんをお招きしての会でした。いつもは八芳園の日本料理の槐樹で15人程度と比較的こじんまりと行われるのですが、今回は八芳園の本館のサクレという会場を使って、約30人規模で行われました。澄川さんのフアンクラブの方のサポートを受けた、拡大イベントのスペシャルバージョンでした。 

結構式披露宴にも使われる広々とした会場にゆったりと着席しての会となりました。 

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お料理は槐樹のお料理だけでなく、本館、壺中庵の料理長と料理人が腕をふるった特別メニューで、値段据え置きというまさに特別イベントでした。 

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用意されたお酒もちょっと見ていただきましょう。詳しくは後で説明しますが、殆ど市販されていない大吟醸クラスが6種類でした。一番左端は仕込み水です。 

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それでは早速澄川さんに登場してもらいましょう。 

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とてもダンディでお洒落な芸能人のような雰囲気を持った方ですが、お酒造りにはとても厳しいそうで、バリバリの杜氏として活躍されている方です。 

今回のイベントを説明する前に澄川酒造と宜史さんの紹介をします。 

<澄川酒造> 

蔵は山口県の萩市中小川にありますが、萩市と言っても観光地として有名な萩市からは30kmほど北東に行った直ぐ島根県の県境に近い田舎にあります。一番近いJR駅は島根県の益田駅のようです。近くに田万川が流れ、裏山から湧きだす石清水が豊富で、米どころですからお酒造りには適したところだと思いますが、出来たお酒は消費地に運ぶのは大変だったのではないでしょうか。 

創業は1921年ですがその後の詳しいことはホームページがないので、良くわかりませんが、東洋美人という銘柄は初代が亡くなった奥さまを偲んで付けられたことのようですが、良い名前ですねと宜史さんにお聞きしたら、本当のことは資料もなくなって良くわかりませんが、この名前は大切にしたいと言われました。この蔵が注目を浴びたのは宜史さんが蔵に戻ってからです。 

<澄川宜史さんについて> 

では宜史さんはどんな人なのでしょうか。宜史さんは1973年に蔵の長男として生まれましたが、蔵を継ぐことはあまり意識していなかったようで、でも蔵を継がなくてはいけないと、2年ほど浪人して東京農大に入ったそうです。まだその時は自分で酒造りをするつもりはなかったそうですが、大学3年生の時に東京農大の5年先輩がいる山形県の高木酒造で研修をしたのが彼を大きく変えた切っ掛けになったようです。 

高木酒造の跡取りであった高木顕統(あきつな)さんは自ら製造責任者として真剣に酒造りをし、日本酒業界の若きスタートして注目を浴びていたのです。その姿を見て自分も自ら酒を造る決心をしたそうです。 

そして、24歳で蔵に戻り、蔵の但馬杜氏の下で2年間みっちり指導を受けた後、1999年には蔵の杜氏となったそうです。当時の蔵の生産高は300石程度であり、細々生活することはできたレベルでしたが、もっと大きくしたいと市場を東京に求めて営業することになります。その後は長谷川酒店など多くの人のお力添えで、15年後には1300石位の生産高までにしたそうです。 

僕は2009年の第1回やまぐち地酒維新の会に参加して、宜史さんに初めてお会いしました。その時に感じた東洋美人のお酒の味は、上品で綺麗なお酒だけど、ちょっと線が細いかなというイメージでした。でも、蔵の近くで栽培した畑違いの山田錦を楽しむために造ったお酒で、田圃の番号の付いた3種類のお酒を飲んだのが印象的でした。ワインのテロワールの日本酒版ですよね。3種類のお酒を飲んだら、味がちょっと違うのでこれ本当に畑違いの差だけですかとこっそり聞いたら、造りが違うと聞いて、ちょっとがっかりした想い出がありますが、僕はそのやり方にはちょっと不満はあるものの、日本酒テロワールにチャレンジする発想が凄いなと感心したことを思い出します。 

その後、2013年7月に大雨で近くを流れる田万川が氾濫し、蔵全体が2m以上の泥水に浸かる大災害を被るのですが、その後宜史さんの対応が凄いと思いました。蔵は泥まみれで、手のつけようもなかったけれども、全国の蔵や酒販店さんの応援で復旧は比較的スムーズにいったそうです。特に同期の伯楽星の新澤さんには蔵の再構築に関する色々なアドバイスをもらったそうです。 

蔵の殆どの設備は使い物にならないので、修理できるものは修理し、壊れたものは新品を購入することにしたけど、どうせやるなら、とことん新しいものを検討し処理量も増量でき、且つ手のかからない設備の導入をすることにしたそうです。そして、5億円の借金をして3階建の新しい建て屋を建設し、2014年12月には一部稼働にこぎつけたそうです。 

水害を受けて全く零からのスタートとなったことをきっかけに、今まで出来なかった蔵の導線の改善、手のかかる設備を思い切って新しいもの(自動洗米浸漬装置やNSK搾り機の導入など)へ切替により、酒質の一層の向上を狙ったのは、彼の酒造りに対する意地とプライドの高さの表れのような気がします。そして去年の生産高は既に2500石になったと聞きましたが、今後少しずつ設備増強をして最終的には5000石を目指すそうです。 

この蔵のお酒つくりは地元産の山田錦をベースとしていますが、2014年には「原点シリーズ」として、酒未来、出羽燦々、雄町、愛山を使った精米50%のお酒を出しました。1年でその生産を完了し、去年からは精米度を40%に上げた新しい「原点からの1歩ippo」シリーズを出しています。災害からの復活で大変な時期に新しいブランドを立ち上げるなんて、とても前向きな気持ちが伝わってきます。 

酒未来については宜史さんの酒造りの思いが伝わるエピソードがあります。酒未来は高木酒造が開発した酒造好適米で、高木酒造がその実力を認めた蔵だけにその使用を認めているお米で、その中で澄川酒造は早くからその使用を認められていました。でも彼は直ぐにはそのお酒を世に出さなかったのです。それは良いお米だけに仕込み具合、酵母の選択など色々試験をして5年間も試行錯誤をして出したのです。まさに宜史さんの酒造りにかける思いをよくあらわしているエピソードだと思います。 

本日の会場の彼の姿はいつ大災害にあったのだろかとおもわせるほど、かっこいい姿になって現れたのに驚かされましたが、お姿だけでなく、お酒の味が単に綺麗場だけでなく、一層深みを増しているのをしり、驚いてしまいました。 

では早速飲んだお酒を紹介しましょう。 

1.純米大吟醸 環起(かんき) 

Dsc_0035水害にあってから初めて酒造りを再開することを決意するきっかけになったお酒だそうです。米は皆様方からいただいた地元の山田錦で、助けていただいた人の思いが込められたお酒だそうです。 

山田錦は無農薬の地元のお米で精米度は40%の純米大吟醸で酵母は9号系と18号酵母のブレンドです。甘みを少し抑えてカプロン酸の香を抑え気味に仕上げていました。旨さがあるのでなかなかいい感じです。 

2.純米大吟醸 直ぐみ 一歩(ippo) 

Dsc_0036昨年から月に2回出荷しているいお酒で、3-4月はおりがらみ、5月が山田錦、6月は酒未来、7月が出羽燦々、8月が雄町、9月が愛山を出す予定のお酒のなかで、麹が山田錦40%、掛米が50%の純米大吟醸です。 

しかも、今回のお酒は全量山田錦の純米大吟醸ですが、社長自らが蔵で直接直汲みして瓶詰めした搾りたての生酒なので市販されていません。 

酵母は14号系ではないが自社培養の酵母だそうですが、イソエチ系の品の良い香りのするお酒でした。 

3.大吟醸 地帆紅(じぱんぐ) 

Dsc_0037_220年前に東京でも勝負できるお酒として20年前に発売したブランドのお酒で、前社長がつけた銘柄だそうです。 

山田錦40%精米のアル添した大吟醸です。飲んでみると少しガス感のあるお酒で、酵母は9号系酵母と18号系の酵母とブレンドですが、1番のお酒とは香がちょっと違いを感じました。もしかしたら9号酵母が強いお酒ではないかなと思いました。 

4.純米大吟醸 壱番纏 

Dsc_0038東洋美人の最高峰のお酒で、その中で、たった1升瓶10本しか取れない出品酒の上を行くお酒で、この銘柄のお酒は市販されているけど、このお酒は市販されていないそうです。 

山田錦40%精米の純米大吟醸、酵母は9号系と18号系の混合ですが、香は抑え気味でし、ふくらみがある感じではなく、ややシャープですが、欠点のないお酒でした。僕にはもう少し熟成して丸みをつけたい気がしました。でもこの蔵は熟成のお酒は出していないそうです。 

5.純米大吟醸 西都のしずく 

Dsc_0039西都のしずくは山口県が開発した酒造好適米で、精米度40%の純米大吟醸です。 

酵母は不明ですが、14号ではない自社酵母だそうです。香としては酸酸エチルの香りは少ないけどバナナの香のイソアミル系の香がして、後味にコハク酸の苦味を少し感じるお酒でした。 

人気のお酒のようで、今年は販売完了したようです。

 

 

6、純米大吟醸 斗瓶取り 

Dsc_0040最後のお酒は山田錦40%精米の純米大吟醸で、中どり斗瓶取りで少し濁っているお酒でした。これは味もしっかりし、厚みもあるし、とろみ感もあるとてもおいしいお酒でした。素晴らしいお酒で、市販されていません。 

どうしてこんな味になるのだろうと思ってお聞きしたら、中どりで火入れしていない生酒でだからだそうです。今まで飲んだお酒は殆ど1回火入れのお酒だそうです。 

山口県の品評会では残念ながら第2位だったそうです。僕はこの味ならトップでも良いなと思ったのですが… 

<最後に宜史さんにどんなお酒をこれから作っていきたいかをお聞きしました> 

僕の造りたいお酒は今僕が造っているお酒そのもので、稲をくぐりぬけたようなお酒ですと言われました。それはどういう意味ですかと聞きしたら、気をてらって受けの狙ったお酒(たとえば酸の強いお酒等)ではなく、王道の手法で欠点のないお酒を造りたいそうです。根っからの酒好きなので、高品質な日本酒らしいお酒を造りたいそうです。顕統さんは尊敬しているけど真似するつもりはないとも言われました。 

そのためには酒質のぶれのないお酒を目指すので、自動化で出来るところは出来るだけ導入するつもりで、今は麹は箱でやっていて手がかかるので、もっと安定した麹ができるものがあるのなら導入するつもりだと言われました。最後に、今日は大吟醸クラスばかりを飲んだけれども、純米酒レベルも飲んでみたいと言ったら、うちの酒は精米度が悪くなってもそんなに味は変わらないと胸を張っていたのが印象的でした。これからもっと完成度の高いお酒となっていく予感がしました。 

以上でお酒の紹介は終わります。 

次にお料理についてご紹介します。お料理の説明は本館の料理長の香山さんが説明していただきました。 

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<料理> 

1.先付け 

Dsc_0054最中の皮の中にイクラと鮟肝と酒粕ディップを入れたもので、皮には槐樹の焼き印が押してあります。 

以前槐樹で同じようなものをいただいたことがあります。最中の感触は酒のあつまみに合いますね

 

2.前采

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萩の名産の焼きかまぼこ(小田原と違って歯ごたえがある)にウニと葉ワサビ、金太郎(魚名)と子ワサビ、カラスミをそえたものと、長萩の黒かしわの炭火焼きです。 

3.造里 

Dsc_0059桜チップでの燻製の桜鯛と桜の葉とと昆布で〆た桜鯛のお造りです。 

リンゴのガリが添えてあります

 

4.揚げ物 

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 岩国レンコンとメバルの天ぷらです。岩国レンコンは穴が9つあるようなので、数えてみてください。 

5.強肴(しいさかな) 

Dsc_0063強肴とは懐石料理に出る肴ですが、今回はお魚ではなく、長州和牛の鉄板焼きです。 

蔵の近くに野生に咲いているクレソンが添えてあります

 

6.握り(剣先いかと初鰹)       7.貝出し汁蕎麦 

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8.水菓子 

環起のお酒を液体窒素でシャーベット化するという前代未聞の造りでした。 

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これでお料理の紹介は終わりますが、まさに特別料理のオンパレードでした。

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長野酒メッセ2016in東京 松本地方の蔵の紹介

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長野酒メッセは昔はグランドプリンスホテル赤坂で行われていましたが、2013年に解体され、去年はグランドプリンスホテル高輪で、今年は品川プリンスホテルで開催されました。去年は佐久地方の蔵を中心に試飲をしてブログに書きましたが、今年は松本地方の蔵のお酒を飲みブログに纏めることとしました。

去年の佐久地方の内容は下記のURLをご覧ください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/2015-7cf9.html 

松本地方の蔵は会場案内の蔵番号の最後の方にありましたので、一番最後の蔵61番から54番まで蔵のお酒を飲むことにしました。結果的には松本地方だけでなくお隣の安曇野や塩尻の蔵も紹介することになりましたので、ご了解ください。 

では早速ご紹介に入りますが、東京の長野メッセは何しろ人が多いので、中々簡単には取材出来ませんので、最初から言い訳ばかりで申し訳ありませんが、お許しください 

1.EH酒造 

EH酒造は安曇野市にある蔵ですが、EH酒造となったのは平成15年(2003年)ですからとても新しい蔵です。それはEH(エクセルヒューマン)株式会社が昔からあった蔵を買収して出来た蔵ですが、従業員も杜氏も変わらない、酒質も昔のままの蔵だそうです。 

昔の蔵の名前は亀屋酒造店といい、江戸時代の後期に生まれたそうですが、昭和36年に3つの蔵が合併して「酔園酒造」となったそうです。どうしてEH酒造に買収されたかはよくわかりませんが、経営が苦しかったのではないでしょうか。EH株式会社はどんな会社なのでしょうか。 

EH株式会社は大阪の本社を持つ「より良い商品のみを製造し、消費者の皆さまに直接販売する製造小売業」をする会社です。創業は昭和39年で、取り扱っている商品は3000種以上あるそうで、その一例に医療機器マットレス、カステラ、お菓子、サプリメント等色々ありすぎて、中心の商品が何なのかわかりません。でも、今まで良いものを造っている会社をM&Aで買収し、それを育てることで、希少価値のある多品種の物を製造販売をしている会社のようです。社長は「世界で通用するような豊かな人間性を持つ人材、エクセルヒューマンを育てる」といっているそうですから、日本の中にある良い製品を選びだして、育てて世に出していくという中々面白い会社のようです。 

EH酒造は買収後、蔵の建て直したり設備の増強をしたりしましたが、その従業員の心を大切にして、完全に手造りで良いお酒を造ることだけをやってきたそうです。現在の生産高は1000石強のようですが、どんなお酒を造っているのでしょうか。 

Dsc_0156_2写真の方は常務取締役の飯田純一さんです。もともと酔園の蔵元の息子さんだそうで、蔵のお酒について教えていただきました。杜氏は75歳を超えるベテラン北條勝一さんがやっておられ、EH酒造になって造る量は増えたけれども、昔からの味を大切にし、味があるけど後口に残らないようなお酒を目指しているそうです。そして、昔からの技術を若い人に伝える努力をしているそうです。いいですね。 

4合瓶12000円の山田錦30%精米純米大吟醸 どん蔵を飲みましたが、これは単に綺麗だけでなく味わいもあり、さすがという感じです。大吟醸鬼かん持ってもらいましたが、これは山田錦39%精米のアル添酒ですが綺麗さがあって飲みやすい酒でした。 

この蔵は18号系の酵母を多く使っていますが、それほど香りを出さないで、旨味と綺麗さを出すのが上手いようで、なかなかの蔵だと思いました。コスパーを狙うのなら、信濃の国酔園 特別純米1升3000円かな。 

2.美寿々(みすず)酒造 

この蔵は塩尻にあるくらですが、JRの塩尻駅と洗馬駅の両方から2kmくらい山の方に行った標高750mのところにある蔵です。創業は明治26年ですが、この蔵のお酒を語るにはこの人を紹介しないといけません。 

Dsc_0158この蔵の4代目の社長兼杜氏の熊谷直二さんです。直二さんは東京農大を卒業され、現在60歳ですから、出羽桜の仲野さんより6つ上のベテラン杜氏です。 

僕が初めてお会いしたのは、第1回の長野メッセだと思いますが、それ以来毎年のようにお会いしています。この蔵は大吟醸以外は美山錦を使っていますが、その美山錦の旨さを引き出す腕は天下一品だと思います。 

でも遊び心も一杯で何か面白そうな造りを毎年楽しんでいます。今年は本醸造生原酒かな。シャープな感じの中にとろっとした味わいもある良いお酒でした。でも何年たっても生産量は300石と一定です。どうしてと聞いたら、一人で造っているのでこれ以上は無理ですと言われました。 

Dsc_0159_2彼の酒はどのお酒を飲んでもおいしいけど、どれか1本を選ぶとしたら純米吟醸無ろ過生かな。美山錦とは思えない旨味甘みが最初に来て、綺麗な酸とともに消えていくバランスです。今年から池袋の升新で扱うようになったそうです。一度飲んでみる価値はあるよ。 

山田錦39%の大吟醸は1升5000円しないけど、凄いうまい酒でした。これ東京で売れるよと言ったら、たった600本しか造っていないので出せないそうです。絶対に売れるのに、欲がない人だな・・・・  

3.笑亀酒造 

この蔵も塩尻市にありますが、塩尻駅から東に2kmほど行った町の中にあります。創業は明治16年ですからそれほど古い蔵ではありません。笑亀と嘉根満というブランドを造っていますが、嘉根満(かねまん)というのは創業の時につけた酒屋の名前のようです。社員4人で生産高300石位の小さな蔵ですが、一昨年秋より中乗さんの杜氏をしていた森川貴之さんが来られてから酒の質が上がったと言われています。 

Dsc_0162この方が森川杜氏です。僕は森川さんとお会いしたのは去年地酒屋「こだま」さんが企画した「長野県9蔵の蔵元の会」に参加した時が初めてですが、今回お会いした時、最初全く森川さんとは気がつかなかったのです。  

その証拠をお見せします。去年の写真はこんな感じでした。メガネをかけているし、髭を伸ばしているので、これ、完全に叔父さんの雰囲気ですよね。今回はずっと若者になっていました。どうしたんでしょうか。 

Dsc_0068どうしてこの蔵に来たのですかときたら、ここが地元だからと応えてくれましたが、こちらに彼女がいるからではないかと聞いたら、笑っていました。でも結婚して高校生の子供がいるなんて見えませんね。 

Dsc_0163今回は貴魂という新しいブランドのお酒を試飲しました。このお酒シリーズは味わいの違う4種類の酸味を持つお酒を造ったそうです。お客様にこの酸を違いを楽しんでもらうつもりで、自分の趣味の感覚で造ったそうです。ですから、酒の銘柄に自分の名前の貴と自分の心の魂をつけているとことに気合いを感じますね。 

皆さんの評判を聞いて発売していくそうです。4種類の貴魂は色によって分けてありました。 

・ 貴魂 赤 純米吟醸 18号酵母
・ 貴魂 白 純米生酛 生酛の酸  
・ 貴魂 黒 純米 コハク酸 長野C酵母
・ 貴魂 青 純米 クエン酸
 

この写真のようにラベルには詳しく酒質が書かれていますが、他のお酒の写真を取るのを忘れてしまいましたので、酒質が良く判らなかったのが残念です。 

 赤は酸味が後ろ隠れているけど、しっかり感じながら、飲みやすいお酒

・ は生酛のしっかりした酸があるけど、味が複雑で食べ物がほしくなるような酸

・ はコハク酸があるので後味に貝の出汁のような苦味があるので、人によっては嫌かな。長野酵母Cは昔のアルプス酵母でイソアミル系なのかもしれません

・ はクエン酸が強いので酸っぱいお酒。白麹を使ったのではないかな。
 

僕は森川さんはチャレンジブルで、腕のあるしっかりした杜氏だと思いました。これからどんな酒を出していくのか楽しみですね。大いに期待しています。 

4.亀田屋酒造 

この蔵は松本駅から上高地線に沿って3kmほど西に行ったところにあります。創業は明治2年で、初代は亀井半十郎さんでしたが、現在は6代目の竹本祐子さんが当主となっています。 

竹本さんは先代の社長の次女で、上智大学を卒業後米国で仕事をするエリート女性でしたが、結婚されたのち28歳の時に蔵の後を継ぐために松本に戻ってきたそうで、38歳の時に社長になられました。その頃は日本酒の消費量が落ちてきて、経営が苦しくなっていたので思い切って蔵の方針を変えたそうです。 

この蔵は長野高速道路の松本インターを降りて上高地に向かう道路の近くにあることから、酒瓶を貯蔵していたプレハブ倉庫を壊して観光バス用の駐車場にし、母屋の見学、酒蔵見学、お酒の試飲販売だけでなく、最近は酒造りの体験講座も始め、いわゆる観光酒蔵として消費者に直接お酒を販売する方向にかじを取ったようです。 

観光酒蔵をすることにより、消費者と直接対話して色々な要望を知り、リキュールや濁り酒、酒粕を使った石鹸、純米酒を使った美容水など新しい商品の製造販売までするようになったそうです。日本酒の生産量は300石くらいだそうですが、日本酒味はどうなのでしょうか 

Dsc_0164この方が杜氏をしている清都幸広さんです。東京の蔵で修業をされて方この蔵に入られたと聞いております。 

持っていただいたのは秀峰アルプス正宗の大吟醸と純米大吟醸です。大吟醸は山田錦39%精米の18号酵母を使ったお酒で、純米大吟醸は美山錦40%精米の9号系酵母のお酒です。 

この二つは味わいがだいぶ違うようで、大吟醸はカプロン酸の綺麗な香りが出ているものの、少しシャープな切れの良いお酒で、純米大吟醸はなめらかですっきりとした味わいでした。 

この蔵のお酒は切れ味を大切にした造りをしているようで、大吟醸レベルの酒の味はよく、観光蔵とは思えない洗練された味わいで、関東信越国税局や全国新酒鑑評会で数々の賞を取っているようです。 

5.大信州酒造 

この蔵の本社は松本市島立にあり、亀田屋酒造店とはとても近いですが、製造蔵は長野市豊野町にあります。ここは長野駅から北しなの線の信濃浅野駅の近くです。随分離れたところにあるのですね。創業は明治21年ですが、今では毎年数々の賞を取っている長野県では有名な蔵の一つとなっています。生産高は1300石位だそうです。 

下の写真は右の方が社長の田中隆一さんで左の方が常務取締役製造部長の田中勝巳さんです。兄弟二人で力を合わせてやっていますが、勝巳さんは豊野蔵で杜氏のお仕事をされています。 

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この蔵には酒造りのこだわりがありますのでちょっと説明します。それは一言で言うと、自然と対話し、酒と対話し、そして人と対話し、決して逆らわず、静かに調和をとることだそうですが、ちょっと抽象的すぎるので、もうちょっと説明すると以下のようになります。 

・ 長野のお米と水と使ってすべての工程を手造りでやること(山田錦は別)

・ 造りの基本は一に蒸し、二に蒸し、三に蒸しで、良い蒸し米から始まる

・ 殆どの酒は無ろ過で低温瓶貯蔵をする

・ 仕込みタンク一本一本の違いを大切に瓶詰するシングルカスクである
 

こうやって生まれてくる酒に悪いものはないはずですが、飲んでみました。どのお酒もいいバランスで仕上がっていますが、気にいったお酒は2つ。一つは純米大吟醸「手いっぱい」。このお酒は原料米の選抜から精米、麹、醸造、貯蔵に至るまで出来る限り力を尽くして仕上げたの言う意味だそうです。この会場で飲んだ時はちょっと膨らみは足りないしちょっと引っかかる感じでしたので、二カ月後に升新商店で買って飲んでみましたら、全く違った印象でした。軽やかな香りと丸みを持った旨味がゆっくり口の中を広がっていき、綺麗に消えていくお酒でした。勝巳さんが造ったばかりですからまだ膨らんでこないのでしょうと言われたことが良くわかりました。 

山田錦35%精米の2年熟成の大吟醸「香月」はとても柔らかく優しい中に綺麗な旨味がゆっくり広がるとてもおいしいお酒でした。4合瓶で5400円しますが、飲んでみたいお酒です。香月にはいろいろな種類があって、価格が大幅に違いますのでご注意を! 

この蔵のお酒は基本的には綺麗なお酒が多いですが、口に含んだ時にぱっと広がるのではなく、ゆっくり広がり、お酒のよってその余韻の感じが違うお酒を造る蔵だと思います。最近こういうお酒が少なくなってきていますね。

6.笹井酒造 

この蔵は松本市内の島内地区にある蔵で,、松本駅から北に3kmほど行った奈良井川のそばにあります。創業は大正12年ですから比較的若い蔵です。北アルプスの伏流水を使って、地元の契約栽培のお米を使って、すべて400kg以下の小仕込みを行い丁寧はお酒つくりをしている小さな蔵(生産高300石)です。 お酒の銘柄は笹の誉です。 

Dsc_0166写真の方は蔵元で杜氏の笹井康夫さんです。笹井さんは蔵元の人ですが、次男だったので蔵を継ぐつもりがなかったので、東京農大を出て、事情があって30歳の時蔵に戻ったそうです。蔵に戻ってから愛知の蓬莱泉や岐阜の女城主で修業をしたそうです。彼が杜氏になってからやや甘めのお酒を仕込むようにしているそうです。 

でも何か新しいことにチャレンジしています。今年から 純米大吟醸も純米吟醸も特別純米もお米はひとごこちで、精米度を50%にしています。価格は大吟醸が4合瓶で1800円、純米吟醸が1600円、特別純米が1500円です。同じお米でも値段の差をつけらる腕があるのだということなのでしょうか。 

もうひとつ面白いお酒を見せてもらいました。同じひとごこちでも農園によって味の違うお酒ができると言うのです。浜農園の純米吟醸と赤羽農園の特別純米では味が違うというのです。この2つのお酒は純米吟醸と特別純米という区別になっていますが、酵母も精米度もおなじなので、同じ味になるはずですが、飲んでみると浜農園の方が旨味を感じ、赤羽農園の方が綺麗でさっぱりした感じでした。 

この差がどうして出るかというと、浜農園田圃は砂利質で養分が砂利にしみこみやすいので、米が一所懸命根を張って養分を取ろうとするのに対して、赤羽農園の田圃は粘土質で下に染み込まないので、米が根をあまり張らないで育っているので、味が薄いと説明でしたが、僕にはちょっと信じられません。でも米の差が判るほど、米の味を引き出せる技術があるということは確かではないでしょうか。今後の新しいチャレンジをまた期待しています・・・ 

7.善哉(よいかな)酒造 

この蔵は松本市内の松本城近くにある蔵です。創業は江戸末期らしいですが、昔はこのあたりに多くの造り酒屋があったそうです。でも今では市街地に残る唯一の蔵になったしまったそうです。敷地内に地下30mから噴き出している湧水を「女鳥羽の泉」と名付けて仕込み水として使っているそうですが、この湧水は誰でも汲んでよいので、地元の人が行列をつくって汲みに来ているそうです。 

Dsc_0167この方が杜氏の根岸則夫さんです。蔵の生産量は200石と非常に小さな蔵ですが、伝統の技をまもって地道に精魂こめて酒造りをしています。昔は社長の穂高さんが杜氏をしていたそうですが、5年ほど前から蔵人であった根岸さんが杜氏をしているそうです。 

ここの酒はどのお酒も優しさを感じます。持っていただいたのは善哉上撰(本醸造)ですが、1升1900円の割にはいいお酒です。もう少し後味の綺麗さがあるともっといいのですが。

以上で松本地区の蔵の紹介を終わりますが、実はもう一つ蔵があったのです。それは岩波酒造です。僕も終盤になって酔っぱらったために、通り過ぎてしまったようです。ごめんなさい。いずれ紹介する機会があればと思っています。

今年グランドプリンスホテル赤坂は今は東京ガーデンテラス紀尾井町として今年竣工しましたので、来年はここに戻ってくれると嬉しいな。無理ですか? 

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小泉酒造(東魁盛)は良い酒を造っています

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先月文京区の湯島にある居酒屋「極楽酒場いざこい」で千葉県の小泉酒造(東魁盛)の蔵元をお呼びしてお酒を飲む会がありましたので参加して来ました。この会は一般社団法人「酒類ビジネス推進協会」が企画した会で、「第1回応援しよう!知られていない蔵のおいしいお酒の会」というものです。 

この社団法人は中小企業診断士の宮坂芳絵さんと酒の行政書士の石井慎太郎さんが代表理事をしている一般社団法人で、昨年立ち上げたばかりの協会のようです。業務内容は酒類業者に対するコンサルティングやマーケティング支援をする事業と酒類の関するセミナーや勉強会を企画する事業を通して酒類文化の伝承と地域活性化を図ろうということのようです。今回はおいしい日本酒を造る蔵の紹介する第1回目の企画でした。 

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右の方が宮坂芳絵さんで、左の方が小泉酒造の専務取締役小泉文章さんです。 

僕が東魁盛のお酒を初めて飲んだのは2009年に千葉の成ホテル・ミラマーレで行われた千葉の酒フェスティバルだったと思います。その会場で専務取締役の小泉文章とお会し、大吟醸の紫紺を飲んだことが思い出されます。紫紺は小泉酒造の社長兼杜氏の小泉平蔵さんが明治大学出身でその応援旗の紫紺から採ったと聞いています。その時の様子は下記のブログを見てください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-8c01.html 

それでは、最初に蔵の紹介をしましょう。蔵は富津市にありますが海辺ではなく、JR内房線の上総湊駅から東へ4kmほど入ったところにあり、山々に囲まれた盆地の入口にあります。そばには湊川が流れていて、田圃がありお米つくりやお酒造りに適したところのように思えます。 

創業は1793年だそうですからもう200年以上経つ老舗の蔵ですが、初代の小泉平蔵が名字帯刀を許された時この地にきたそうで、明治の初期に後を継いだ源蔵が大きく発展させたと聞いています。古くから吟醸酒造りに情熱を上げていて、酒質の向上のために早くから冷蔵庫の導入などをしてきたそうです。このような田舎の蔵でそんなことができたのは多分父の杜氏が先進的な方だったからではないかと思います。

そして今では毎年のように全国新酒鑑評会で金賞を取っていることは意外に知られていません。ここ20年の中で、金賞を取得した回数は千葉県で第2位の実力のある蔵です。 

現在の当主は小泉章さん改め小泉平蔵さんで、13代目にあたり、自ら杜氏として活躍されてきました。酒つくりは米つくりからと自分の田圃で自ら米つくりをするとともに、平成8年から消費者に喜ばれるお酒造りのために、試飲ができてお酒が買える「ソムリエハウス酒匠の館」を造りました。ここでは清酒だけでなく、大吟醸入りのソフトクリームや蔵元特製の甘酒等もいただけるようなので、一度覗いてみたいですね。平蔵さんはまだ67歳とお若いですが、最近足を痛めて蔵の力仕事は息子や蔵人に任せているそうです。 

その息子さんの文章さんは早稲田大学理工学部物理学科卒業で、26歳の時に蔵に戻って、現在33歳ですが、杜氏の父に酒造りを教わっただけで、他に蔵に修業に行ったことはないそうです。でも今では他の蔵人2人と酒造りをしており、今では実質的に杜氏の仕事をされていると言えます。 

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この写真を見てください。とても優しい顔立ちで、酒造りに苦労をしているようには思えませんね。たぶん酒造りを楽しんでおられるのではないかと思います。お話しぶりもちょっとシャイな感じですが、一切張ったり的なことは言いません。とても正直な方だと思います。彼にどうして「東魁盛」と名付けたのですかとお聞きしたら、「東の国の先駆けとして盛んになる」ということで、初代思いが現れた名前のようです。 

それでは早速お酒を飲んで、味わってみましょう。最近東魁盛のお酒を飲んでいなかったので、楽しみにしてきました。

お酒のラベルが文字だけなのですね。よく見るとお酒の酒質が詳しく書かれています。最近酒質を書かない蔵が多い中、こんな表示をするのはとても珍しく、正直者の文章さんらしいなと思いました。 

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 どうしてこのラベルにしたのですかとお聞きしたら、東京で唯一の東魁盛の酒販店である三和酒店(上野)と打ち合わせてこのラベルにしたそうです。まだ出したばかりなので、将来変わるかもしれませんとのことでした。現在のお酒の生産量は300石弱なので、扱っている酒販店は少なく、東京以外には、横浜の一石屋酒店栃木の菊地酒店の2軒だけだそうです。一石屋酒店のHPで確認すると、同じ酒と思われるものが全く違うラベルで販売していました。僕は文字表示は悪くないと思いますが、遠目からでもわかるように、色使い等を工夫すれば特徴があっていいかなと感じました。 

飲んだお酒は下記の通りです。 

1.斗瓶取り 大吟醸 東魁盛 山田錦 35% 火入れ 

2.純米吟醸 東魁盛 五百万石 55% 無ろ過生 

3.純米吟醸 東魁盛 五百万石 55% 火入れ 

4.斗瓶取り 純米大吟醸 東魁盛 山田錦 40% 

5.山廃純米 東魁盛 五百万石60% 火入れ 

6.山廃純米 東魁盛 五百万石80% 火入れ 

7.純米吟醸 夏 東魁盛 山田錦 火入れ 

8.本醸造 東魁盛 千葉ふさおとめ 火入れ 

1本1本解説します 

1.斗瓶取り 大吟醸 東魁盛 山田錦 35% 火入れ 

Dsc_0214アルコール17%、日本酒度+5、酸度1.2、酵母K-1801、火入れです。 

これは出品酒と同等な酒質だそうで、飲んでみるとカプロン酸エチルの香りの立ち方は抑え気味で、甘みも抑え気味だけど口の中で旨味がフラットに広がり、後味に綺麗な余韻が漂います。 

酸が少なめなので、余韻を一層楽しめるようで、アル添しているので、より綺麗さが出ている気がしました。 

これだけのお酒を造れるのは大したものです。 

2.純米吟醸 東魁盛 五百万石 55% 無ろ過生 

Dsc_0215アルコール16%、日本酒度+1、酸度1.3、酵母K-1801、無ろ過生原酒 

この蔵では珍しい生原酒です。口の中に含むと最少に澱からくる甘みとフレッシュさを感じてしまいますが、お米が自社生産米の五百万石のためか旨味が少し少ない気がしました。 

やや甘めに作っているのか、香が口の中の後半まで広がってきます。どちらかというと今はやりのお酒に近い感じがしました。 

3.純米吟醸 東魁盛 五百万石 55% 火入れ 

Dsc_0216アルコール16%、日本酒度+5、酸度1.4、酵母K-1801、瓶燗火入れ 

2番のお酒とは米違いと火入れ違い呑みのお酒です。飲んでみると辛味を感じてしまいました。日本酒度が+5になっているせいだと思い、専務にお聞きしたら搾りのタイミングが違ったためにそうなったそうです。 

僕にとってはもう少し甘めにして、カプの香りを引き出してもいいかなと思いました。 

4.斗瓶取り 純米大吟醸 東魁盛 山田錦 40% 

Dsc_0217アルコール16%、日本酒度-2、酸度1.4、酵母K-1801、瓶燗火入れ 

基本的には1番のお酒とは精米違いとアル添なしの違いだけですが、アルコールを入れる方が香がたってくるようです。 

飲んでみると1番のお酒ほど綺麗さはないけど、旨み成分が増えて飲みごたえがあるように思えました。日本酒度は-2ですが飲んだ後に少し辛みを感じたのはどうしてかな。

でもなかなかいいお酒に仕上がっていると思いました。

5.山廃純米 東魁盛 五百万石60% 火入 

Dsc_0218アルコール18%、日本酒度+1、酸度2.1、酵母K-1401、瓶燗火入れ 

山廃を造りだしてまだ2年くらいしか経験していないそうですが、飲んでみると綺麗さとさわやかな酸味が上手く出ている気がしました。 

酵母は14号系なので、イソアミル系のさわやかな香の中に少しだけ酢酸エチルのセメダインの香を感じますが、いい感じでした。山廃でこれだけのバランスが出せれば大したものだと思いました。 

 6.山廃純米 東魁盛 五百万石80% 火入れ 

Dsc_0219アルコール18%、日本酒度+0、酸度1.9、酵母K-1401、瓶燗火入れ 

6番のお酒とお米の精米違いだけですが、飲んでみると7番とはだいぶ違います。お米の旨みが少なく、飲んだ後にストンと消えてしまうキレのあるお酒でした。 

お米の精米度が悪いものを使っているので、もっとタンパク質からくる高級アルコールやアミノ酸を敢えて増やしてもっと濃厚にした方が面白いように思えました。 

7.純米吟醸 夏 東魁盛 山田錦 火入れ 

Dsc_0220アルコール13%、日本酒度-12、酸度2.1、酵母K-1801、瓶燗火入れ 

このお酒は夏酒用としてつくったお酒で、アルコール度数を抑えて飲みやすくしたおさけですが、飲んでみるとすっと飲めるけれども、味わいもあるお酒でした。加水して薄めるとお酒のバランスが変わって美味しくなくなるので造るのが難しいお酒です。

加水して13%にしたのですかとお聞きしたら、仕上がりを13%強にして、少しだけ加水したお酒だそうです。これはなかなか作れない技術だと思います。

バランスが良いので食事を邪魔しない食中酒としていいお酒だと思いました

8.本醸造 東魁盛 千葉ふさおとめ 火入れ 

Dsc_0221アルコール15%、日本酒度+1、酸度1.6、酵母K-1401、火入れ 

このお酒は本醸造なので、アルコール添加(10%以下)しているお酒で、お米が地元の千葉ふさおとめ(精米度不明)ですが雑味の少ないきれいなお酒に仕上がっていました。 

どうしてそんなお酒を造れるのかお聞きしたら、本醸造でも大吟醸とおなじ手洗い限定吸水をしているからだそうです。小さい蔵だから出来る技なのかもしれません。

1升2000円しないお酒ですから、お買い得です

以上で飲んだお酒の紹介を終わりますが、久しぶりにこの蔵を飲んで、まず出品酒の出来は昔と変わらず、相変わらず旨かったので安心しましたが、まだチャレンジして経験が薄いという山廃の出来が良いのに驚かれました。まだ安定性はかけるのかもしれないけど、将来楽しみです。それからアルコール度数の低いお酒をここまで仕上げたのは技術力を感じます。普通酒にも愛を感じました。

これだけのお酒を造れる技術力を持っている蔵なのに、首都圏であまり知られていないし、売っているところが少ないのは非常に残念です。きっと蔵の人数も少なく、営業に力を入れる余裕がなかったからかもしれませんね。

最後にこの蔵を紹介していただいた宮坂さんにお礼を言いたいと思います。僕はもともと良い蔵だとは思っていたのですが、こんなに幅広いお酒を造れる蔵になっていたとは驚きでした。

是非これからも酒類ビジネス推進協会のお仕事としてこの蔵の発展に貢献していただくことをお願いいたします。もしお力添えできることがあれば、微力ではございますが、ご協力いたします

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インフィニット日本酒中級コース第6回 (酵母)

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この講座もすでに第6回目を迎えることになりました。この講座は似たような内容を繰り返すことにより、体で理解していくやり方なので、毎回内容が重複することがあります。それは講座としては意味のあることですが、このブログのように講座の内容をまとめるときには、できるだけ整理したいと思っています。今回の講義は酵母によるお酒の違をまとめてみました。 

酵母の種類によってお酒の味や香りが変わること、最近の吟醸酒ではカプロン酸エチルの香りが好まれて、その香りを一番出しやすい酵母が協会18号酵母であることはよく耳にしますが、それでは清酒酵母がどのくらい種類があって、どんな働きをするかを知っている人は少ないと思います。 

インターネットで清酒酵母と検索してみると、一番詳しく出ているのがフリー百科事典「ウイキペディア」の清酒酵母のようですが、それを読んでもどんなお酒ができるのかを理解するのはなかなか難しいようです。また、素人の僕などが手に入れやすい日本酒の教科書である、日本酒サービス研究会が出している「日本酒の基」では簡単にわかりやすく記述されているものの、協会14号以降の新しい酵母の紹介がされていないなど、なかなか酵母の情報を集めるのが難しい状況にあります。 

今回菅田先生が日本醸造協会から配布している協会酵母と地方自治体の試験研究機関で開発された各県の酵母をまとめて整理した表を作っていただきました。こんなにきちっと纏まった表は他にないと思います。この表は菅田先生が時間をかけて作った表ですから、この表を皆さんにお見せするわけにはいきませんが、どんな性質の酵母であるかを理解するために、母にどんな働きがあるかという点だけ抜粋して紹介します。この内容は酵母の配布元で発表しているものですので、菅田先生が研究されてまとめたものではありませんので、そのつもりで見てください。 

協会6号:「K6号酵母」、「新政酵母」
 ① 発酵力が強く、香りはやや低く穏やか
 ② 端麗にしてソフトな酒質に適し味は深みが出る
 

協会7号:「K7号酵母」、「真澄酵母」
 ① 発酵力が強く、オレンジのような華やかな香りを出す
 ② 呼吸能が比較的弱く発酵能が強い
 

協会9号:「K9号酵母」、「熊本酵母」、「香露酵母」
 ① 酸は少なく吟醸香が高い
 ② 低温で良く発酵し吟醸酒向き
 

協会10号:「K10号酵母」、「小川酵母」、「明利小川酵母」
 ① 酸が少ない(特にリンゴ酸)
 ② 高い吟醸香をだすこことが特徴
 

協会12号:「K12号酵母」、「浦霞酵母」、「初代宮城酵母」
 ① 山廃にも適し芳香の高い吟醸酒向き
 ② 特有の吟醸香をだすが、極度に水と造りを選ぶ

協会14号:「K14号酵母」、「金沢酵母」
 ① 生産される酸が少ないため綺麗な味の仕上がりとなる
 ② 吟醸酒本来の香りを生むのに適する

協会16号:「K16号酵母」、「小酸性酵母」、「旧No86酵母」
 ① 7号酵母より酸が少ない。
 ② カプロン酸エチル高生産性である

協会18号:「K18号酵母」
 ① 酸が少ない(16号並み)
 ② カプロン酸エチル高生産性(16号の40-50%増)

以上が代表的な協会酵母です。各県の酵母は非常にたくさん出ていますので、代表的なものの一部だけ紹介します

秋田酵母:「AK-1酵母」、「協会15号酵母」 
 ①アルプス応募などと同様に上立香の華やかな酒になる
 ②カプロン酸エチル高生産性で酸の生成が少ない

山形酵母:「山形YK-0107」「山形YK-2911」
 ①YK-0107は高い吟醸香を有する
 ②
YK-2911は酸味が多く香りが高い

福島酵母:「F'7-01酵母」、「うつくしま夢酵母」 
 ①カプロン酸エチル高生産性(協会7号の4倍)
 ②酸の生成が少なく、柔らかな味わい

福井酵母:「FK-501酵母」 
 ①バナナ香など熟したフルーツの香りが特徴
 ②香りは控えめだが味わいは繊細

静岡酵母:「HD-1酵母」
 ①酢酸イソアミル優勢の柔らかな果実香
 ②優しい味と香りで食中酒として最適

高知酵母:「CEL-19」、「CEL-24}
 ①CEL-19はカプロン酸エチルが多く9号酵母の約2倍
 ②CEL-24はカプロン酸エチルが多くCEL-19号酵母の約2倍

以上で代表的な酵母の特徴を示しましたが、これを読んでも、各酵母がどんな香をどのくらい出すかはよくわかりません。この表現は酵母が開発された時点での評価であり、時とともに香りの評価自身が相対的に変わってきているので、比較できるような表現ができていません。また、協会14号酵母は生産される酸が少ないと書いてありますが、実際に作られているお酒には酸度が1.8以上のお酒もあります。それは同じ酵母でも造りによって違ってくるということのようです。

そこで菅田先生は酵母が作り出す香をカプロン酸エチルと酢酸イソアミルだけに注目して、どちらの成分をどのくらい出しているかをイメージ的にまとめると下記のようになると説明されました。これはあくまでもイメージであって、実際には異なることも多くあることを頭においておけば、大変参考になる図だと思います。 これは先生が黒板に書いたものを僕がエクセルで作ったもので、先生のチェックを受けているものではないので、間違っている可能性があるかもしれないことをご承知おきください。

酵母が作り出す香の強さのイメージ図(この図をクリックすると大きくなります)

Photo

この図からわかることはカプロン酸エチルを一番作りやすい酵母は高知酵母のCEL酵母で、次が協会18号酵母、次に協会19号酵母、協会12号酵母、協会10号酵母となり、その下に協会9号酵母が来るようです。一方酢酸イソアミル系の香りを一番出すのが静岡酵母、次に福井酵母、協会14号酵母、協会6号酵母、福島酵母の順になるようです。 

ちょっと注目したいのは協会10号酵母で、造りによってはカプロン酸エチルと酢酸イソアミルの両方を同じくらい出せる能力があるようです。また協会12号酵母や山形酵母もカプロン酸エチルをベースにしながら酢酸イソアミルもある程度出すようです。

こんな表は今まで見たことがありません。これはあくまでも菅田先生の経験からくるイメージであることを頭においてください。 

問題はこれを実際に試飲してみてわかるかどうかです。カプロン酸エチルの香りはリンゴやメロンの香りと言われますが、これは濃度によって変わってきます。濃度が高くなると、パイナップルやミルクの香りのようになるそうです。一方酢酸イソアミルはバナナや洋ナシの香りと言われていますが、濃度が高かくなると桃の香りのようになるそうで、同時に発生する可能性の高い酢酸エチルはセメダインのような香りがします。 

問題は両方の香りが出ている場合で、注意深く嗅がないとよくわかりません。この場合、上記にのべた香りのほかに、もう一つのチェックポイントがあります。それは酢酸イソアミルを作る酵母はコハク酸を作る傾向があります。このコハク酸があるとお酒を飲んだ後の終わり方で貝の出汁のような苦みを感じるそうです。これは僕にとってまだ難しいチェックポイントですが、勉強中で、少し判りかけています。 

最後にお酒に苦みを感じるのは通常アルコール、フラノン、コハク酸の3種類で、飲んだ時に最初に感じる苦みはアルコール、中盤から後半にフラノン、最後のアフターでコハク酸の苦みを感じるようです。それ以外で感じるときによくある苦みは、脂質やアミノ酸が変質した場合に感じるそうです。これは変な苦みなので、わかるそうです。この苦みは精米度が悪い(60%以上)お酒に出る可能性が高いそうですが、高級アルコール等の他の味にマスキングされて見つけるのが難しいそうです。逆に精米度の高い(40%以下)お酒の場合は目立つので見つけ易いそうです。 

それから酵母は増量するためには培養する必要がありますが、酵母が増殖するときに少しずつ変化するようなので、同じ酵母でも全く同じということはないそうです。ですから、大きい蔵では自分で培養した性格のわかった酵母をいくつか持っていて使い分けているそうです。例えば、黒龍酒造では30種類以上の酵母を使い分けているそうです。

それでは早速酵母の違うお酒を試飲してみました。飲んだお酒は以下の4酒類です

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1.福祝 純米吟醸 山田錦50%精米 生原酒
  Alc度17-18、日本酒度-、酸度-、AA度:- 酵母 9号
 

2.スーパーくどき上手 純米大吟醸 改良信交35%精米
  Alc度17-18、日本酒度+1、酸度1.2、酵母 M310
 

3.十九 Trifoglio 五百万石50%精米 無濾過生原酒 
  Alc度16.3、日本酒度+7.5、酸度2.4、酵母 14号
 

4.朝日鷹  特別本醸造 美山錦、たつのおとしご60%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+2、酸度1.4、酵母 山形酵母
 

まず例によって外観を見ます 

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どれも透明度は同じくらいで、フランンがあるようには思えないそうです。ただ3番のグラスには気泡がついていますので、炭酸ガスがあることがわかります。 

それでは飲んだ印象を先生が語ってくれたことを紹介します

1.福祝 純米吟醸 山田錦50%精米 生原酒

口に含むとすぐにカプの香りがぱっと広がります。そして後味に苦みがなく切れていきます。ツンとした香りはありません。このバランスが9号酵母の典型だそうです。その香りの強さで18号かどうかが判断できるそうです。最初の感じる苦みはアルコールの苦みだそうです。このお酒は滑らかさがあって全体のふくらみもあり、アルコール度数の割にはアルコールの辛みが少なく、うまく仕上がっているとのことでした。

2.スーパーくどき上手 純米大吟醸 改良信交30%精米

口に含むとぱっとカプの香りが膨らむけど、奥にツンとするイソアミル系の香りがあり、アフターにじわっと苦みを感じます。このバランスがM310や10号酵母の特徴だそうです。このお酒は適度の甘みもあり綺麗さがあり、余韻が軽やかです。30%磨いてもインパクトが強くあり、なおかつ綺麗さがあるのは酒つくりの技術が高い証拠だそうです。

3.十九 Trifoglio 五百万石50%精米 無濾過生原酒

口に含むと最初にツンとしたイソアミル系の香がきたあと、アフターにじわっと貝の出汁のような苦みを感じます。コップを良く振るとセメダインの香りも少し感じます。これが14号酵母の特徴です。このお酒はフレッシュ感満載ですが、炭酸ガスが残ってアルコールも16.3あるので、ピリピリ感が残ります。これくらいぴりぴり感があり、後味の苦みがある場合は、合わせるお料理が難しいそうです。

4.朝日鷹  特別本醸造 美山錦、たつのおとしご60%精米 

飲んでみると穏やかで薄い感じがするけど厚みを感じながらさらっと飲めます。アルコール添加しているので、エタノールの香りは少しするけど、アルコールの苦みはあまり感じません。このお酒は地元だけしか出していないお酒で食中酒としてうまくバランスさせてるそうです、東京に出ている本丸はうまみが多いけれどももっとアルコールのピリピリ感があるそうです。香りはカプ香りも、ツンとしたイソ系の香りもあるけど、乳酸香も感じます。これは加水したために起きるそうです。鼻にぬける香にモサットとした油ぽい香りがするのは高級アルコールが多いことからくるそうです。でも僕にはわかりませんでした。

以上で飲んだ印象の紹介を終わりますが、飲んだだけで精米度、アルコール度数、加水量、酵母の種類などがわかるようになるそうですが、これは訓練で身につけるしかないそうです。僕にはとてもできるようになるとは思えませんが、とりあえず勉強していくつもりです。

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高温山廃もとの木戸泉酒造はどんな蔵?

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僕たち大学の仲間は毎年5月と11月に大原・御宿ゴルフクラブでプレーをすることにしていますが、今年はゴルフの前日に、大原駅の近くにある木戸泉酒造の蔵見学をしてきました。木戸泉酒造は昔から古酒や高温山廃もと造りで有名な蔵ですが、僕自身はあまり飲んでいないお酒でしたので、楽しみにしてきました。 

蔵はJR外房線の大原駅のすぐそばにあり、海からも約1kmしか離れていない場所にあります。蔵のご案内は5代目蔵元で専務取締役兼杜氏をされている荘司勇人(しょうじ はやと)さんにしていただきました。荘司さんは東京農大を卒業され、現在40歳で伯楽星の新澤さんの同期だそうです。2001年に蔵に戻ってきて、3年前から杜氏として頑張っておられます

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蔵見学のご紹介の前に蔵の歴史をご紹介します。創業は明治12年で酒造業を始める前は、味噌醤油の卸業や漁業をいとなんでいたようです。3代目の昭和14年に、漁業権を大原漁業組合に譲渡して酒造業に専念することになったそうです。 元大

この3代目の荘司勇さんは酒つくりの研究に熱心で、元大蔵省技官の古川薫さんを技術顧問として迎い入れて、その古川さんが中心になって開発した方法が高温山廃酛です。この高温山廃酛とは酒母を作る方法ですが、どんな方法なんでしょうか

酒母とは日本酒のアルコール発酵をスムーズに進めるために最初に作るもので、乳酸の多い環境で大量に酵母を増殖させたものを言います。アルコール濃度はあまり高くないけど、とても甘酸っぱい濃厚なものです。これを作る方法は昔からいろいろな方法が開発されてきているので、まず、それを紹介します。 

室町時代に奈良のお寺で菩提酛が開発されました。これは酒母の仕込みを行う前に生米と蒸米を水に浸け乳酸菌を繁殖させた水「そやし水」を作り、この乳酸を大量に含んだ「そやし水」を仕込水とし、一緒に浸けていた生米を蒸して蒸米にして麹と共に仕込むという方法です。乳酸を大量に含んだみずをつかうということで水酛とも呼ばれています。 

気温の高い時期の向いた菩提酛に対して、冬季に品質の高い酛つくりとして開発されたのが生酛つくりです。酒母の仕込みの段階から、半切り桶で丹念に蒸米と米麹をすりつぶす山卸しや、酛の温度をじんわり高める暖気樽などを使って25日間もの長い時間をかけて酵母を低温からゆっくりと育ててて、乳酸と酵母の豊富な酒母を作る生酛が完成したのは江戸時代です。この方法はその後酒つくりの主流となり明治時代まで広く使われました。 

その後明治42年に、国立醸造試験所が、米の精米度が上がった現代では、麹の中の酵素で米を十分に溶かせるので、生酛つくりの作業の中で重労働となる山卸作業は必要がないことを発表しました。それ以降このやり方の山卸廃止酛を略して山廃酛と呼ぶようになったそうです。 

その後明治43年に国立醸造研究所は自然界の乳酸菌を取り込んでそれを育成する方法ではなく、醸造用の乳酸を添加して、乳酸の多い環境を作る方法が開発されました。乳酸菌を育成しないで良いので、早くしかも安定して酒母を作ることができるので速醸酛と呼ばれています。現在では日本酒醸造の9割が速醸酛を使うようになっています。 

昭和15年ごろ広島で速醸酛の半分の時間で酒母を作る高温糖化酛という方法が開発されました。それは56度前後の高温で酒母の仕込みを開始すると約6時間で糖化が完了するので、その後40度まで急冷した時に乳酸を添加し、さらに冷やして25度近辺で酵母を添加する方法です。この方法は酒母を作る時間が短くなる長所がある反面設備が不十分だと雑菌が淘汰されずに変なお酒ができる恐れもあるので、現在ではあまり使われていないようです。 

それに対して木戸泉酒造では高温糖化酛の工程の中で、乳酸を入れる代わりに乳酸菌を入れる新しい酛つくりを開発し、それを高温山廃酛と呼んでいます。この工程で難しいのは乳酸菌なら何でも良いわけではなく、それに適した乳酸菌の選定にあったようです。この方法が確立したのは昭和31年ごろだったそうで、それ以降この蔵では全量高温山廃酛で酒母をつくっているそうです。この方法は乳酸菌を育てながら乳酸を作るので、生酛系の作りのように、乳酸を添加する方法よりは味の幅や深みがあるお酒になるようです。生酛系は自然界の乳酸を取り込んでいて、乳酸菌を投入しないのではと思ったのですが、調べて見ると、自社で培養した乳酸菌を入れることもあるようです。ですから高温山廃酛といってもまちがいではなさそうです。 

この蔵の歴史を調べてみると昭和31年から高温山廃酛導入した後、そのお酒の特徴を生かして、長期熟成酒の開発に取り組み昭和40年にそれを完させたそうです。ですから蔵には40年以上熟成した古酒もあるようです。また昭和47年には1段仕込みでワインのように酸の多い日本酒の「アフス」を販売しています。また昭和52年には無農薬栽培のコメを利用した自然酒の販売を始めるなど米つくりにも力を入れているようです。 

以上でこの蔵の歴史の紹介を終わります。では早速蔵見学した様子を紹介します。ここが蔵の入り口です。奥の建屋が酒つくりをしている蔵です。

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ここは洗米浸漬をする装置がある場所ですが、これを使うのは掛米だけで、麹米はすべて手洗いだそうです。奥に和釜が見えますね

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 和釜は2つありますが、一つは蒸米用で、もう一つが洗浄用のお湯を作るためのようです。仕込み水は近くの山から流れ出る伏流水を井戸を掘って使っているそうです。今は2か所から取って使っているそうです。硬度7-9の中硬水だそうです。

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 和釜の上に載せる木製の甑です。今でもこの木製の甑を使っているそうで、使っていないときは定期的に水をかけて乾燥しないように管理しているそうです。この大きさで600kgから700kgのお米を蒸すそうです。

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 ここは酒母室です。今の生産高は500石だそうですが、結構広い場所を確保していますね。麹室は見せていただけませんでしたが、2部屋×2の広さがあるそうです。

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 ここは仕込み蔵で、すべて開放タンクでした。タンク数は約30個で年3回転の仕込みをしているそうです。全部のタンクを使っているわけではなく、絞ったお酒を入れるタンクとしても使っているそうです。冬季は冷却用のジャケットを巻いて使っているけど、夏場は取り外しているそうです。

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 絞りは薮田1台だそうです。

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 サーマルタンクがありましたが、これは生酒貯蔵用のタンクだそうです。

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 大型の冷蔵庫がありましたが、これは生酒の便貯蔵用だそうです。

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 最後に7種類のお酒を試飲させていただきました。すべて精米度60%の特別純米で左からAFS,スパークリング、自然栽培の山田錦、普通の山田錦、五百万石、花吹雪、濁り酒です。一つ一つのお酒の味の説明は省略しますが、総じて酸が強く、味わいは濃潤ですが、僕には雑味が多く感じられ、ちょっと苦手かもしれません。酵母は全部7号酵母だそうです。

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 最後に二つのお酒を紹介します。AFSは1段仕込みのお酒で、白ワインのように酸味が強よいお酒で、日本酒度は-30、酸度が10もあります。この開発に携わった3人の名前(A:安達源右衛門、F:古川薫、S:荘司勇)の頭文字をとったものです。

 二つ目は山廃無濾過原酒の白玉香というお酒です。兵庫県産の山田錦を用いた特別純米酒で、このお酒も酸度が2.4もありますが、うまみもあるので比較的良いバランスになっていました。僕はこのお酒を買ってしまいました。

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この蔵のお酒は酸味が特徴で、山廃つくりのためか独特のうまみと香りが特徴のように思えました。でも欲を言うとこの酸味を生かしながら、もう少し綺麗な甘みや旨みを感じるお酒ができたらいいなとも感じました。杜氏の勇人さんはまだ杜氏になって3年だそうで、これからいろいろチャレンジされるそうなので、期待したいと思います。 

最後にみんなで集合写真を撮りました。この日は雨でしたが、翌日のゴルフは天気がよく気持ちよくプレーできました。スコアは滅茶苦茶でしたけど。

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丹後天酒まつり・蔵めぐりツアー PART1

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5月の28日・29日にかけて第3回丹後天酒まつり開かれました。この企画は丹後酒造ツーリズム運営委員会が開催するもので、京都府北部にある9件の蔵が一斉に蔵開きをして、それに合わせて京都丹後鉄道の企画切符を発券したり、もよりの駅からシャトルバスを出して、蔵めぐりをするもので、今年で3回目になるそうです。 

僕は丹波杜氏というのは聞いていましたが、丹後はどこにあってどこに蔵があるのかは全く知りませんでした。そこでインターネットで調べてみましたら、丹波杜氏が出た地域は京都府綾部市から20から30kmほど南の兵庫県篠山市あたりのようで、灘のお酒つくりを支えたところでした。 

では丹後はどこなのでしょうか。丹後といえば舞鶴の西北にある丹後半島ですね。この丹後半島のつけににある丹後一宮 元伊勢籠神社の文献に伊勢に伝えられた神の酒が最初に作られたのが丹後であると書かれていたそうです。そこから、丹後は御神酒のルーといわれるようになったそうです。ですから丹後は今の京丹後市あたりを中心とした広い地域と考えていいようです。

でも、京都酒造組合連合会のHPで調べてみると丹後酒造組合というのはなく、京丹後市の周りにある組合には、峯山酒造組合(京丹後市)に7蔵、宮津酒造組合に5蔵、福知山組合に2蔵あることが判り、その中で9蔵がこのイベントに協力したということのようです。 

今回の企画は御神酒のルーツの蔵を回ろうというのが狙いのようです。このイベントのパンフレットにその9蔵がMAP上に描かれていましたので、ご紹介します。字が小さいですが、クリックすると大きく見ることができます。 

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この9蔵は28日、29日両方ともオープンしているわけではなく白杉酒造以外は片方だけの蔵オープンでした。 

28日:池田酒造(舞鶴)、若宮酒(綾部)、と東和酒造(福知山)、与謝娘酒造(与謝野)、谷口酒造(与謝野)、白杉酒造(京丹後) 

29日:木下酒造(京丹後)、熊野酒造(京丹後)、竹野酒造(京丹後)、白杉酒造(京丹後)

という具合でした。 

このイベントに合わせて、いろいろなバスツアーが企画されていて、東京発の1泊2日ツアーや京都や大阪発の日帰りツアーや観光地見学と組み合せたツアーなどいろいろなツアーが企画されたようです。僕は全く事情が分からない初めての参加でしたので、日本酒友達の入江さんと京都発に日帰りツアーに参加しました。 

このツアーは日本旅行が企画したもので、京都駅に8時15分集合、バスで10時に綾部の若宮酒造見学、舞鶴西のとれとれセンターで昼食、13時に舞鶴の池田酒造見学、15時から与謝野町の谷口酒造と与謝娘酒造を見学して、19時半ごろ京都駅で解散というコースでした。 

それでは早速蔵見学の様子をご紹介します。参加人数が減って、バスは予定していた大型バスが中型バスに変更されましたが、ほぼ計画どおり始まりました。そして、予定よりちょっと早めに若宮酒造に到着しました。 

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ここが蔵表玄関です。まだお客さんはあまりいませんでした。 

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出迎えてくれたのは、社長兼杜氏の木内康雄さんでした。 

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康雄さんはもともと静岡の酒卸問屋に生まれた方で、この蔵を継ぐつもりはなかったそうですが、祖父の時代にこの蔵をの引き受け、静岡の問屋と両方の経営をしてきまして、父の時代に問屋をたたんで、この蔵1本になったものですから、やむを得ずこの蔵を継いだのですと教えてくれました。 

ですから、大学は文学部の教育学部に行ったので、蔵のことは何も知らずに蔵に入ったのが13年前です。その後、最初に酒つくりを丹波杜氏に2年教わって、そのあと但馬杜氏が蔵に来てくれたので、その人の下で勉強し、5年前から杜氏としてやってきたそうです。 

この蔵の歴史を簡単に紹介しますと、創業は大正9年だそうで、市内にあった三丹酒造を若宮酒造として名を改めたのがスタートだそうで、市内にある若宮神社の宮水で仕込みを始めたこともあってその名を付けたようです。これが祖父の時代のことなのでしょうね。 

お酒の銘柄は綾小町と名付けたそうです。この地は養蚕業が盛んで、明治29年の現在のグンゼ㈱がこの町に初めて設立した工場の郡是(ぐんぜ)製絲株式会社がある場所として有名であり、綾部町で機を織る優しい乙女をイメージして綾小町となずけたと聞きました。 

早速蔵の中を簡単に紹介します。 

ここが蔵の入り口です。奥の煙突が見えますね 

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まずは洗い場を見ました、普通酒は機械洗浄をしていますが、ほかのお米はこのような大きなたらいを使って手洗いをしているようです。

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蒸米は和釜でやっていました。奥に甑が見えます。

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 ここは酒母室です

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酒母室の隣が仕込み室で、解放タンクがずらりと並んでいました。生産高は800石だそうです。 

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 櫂入れの道具がずらりと並んでいました。

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簡単な見学でしたのでお見せするものはあまりなかったですが、ひとつ面白いものを見つけました。それはろ過機です。普通の蔵は横型が多いのですが、この蔵では縦形のろ過機を使っていました。 

Dsc_0249_2これは仕込み水のフィルターではなくお酒のろ過に使っているそうです。縦に三つのフィルターが取り付けられ、目的の応じてフィルターを変えて使うようです。 

銘板にはオムにミクロフィルターと書いてありました。 

これで見学は終わりましたが、蔵の出口あたりをを使ってお酒の試飲とおつまみを買える場所があって、そこでのんびりを試飲をすることができました。 

バスツアーの代金の中にここでの有料試飲酒を3種類飲めるチケットがついていたので、そのお酒を試飲いたしました。下の写真をよく見ると有料試飲と無料試飲が見えるでしょう。 

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 椅子はP箱を利用した簡単なものです。

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飲んだお酒は下記の3種類でした。 

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 左から 

① 綾小町 純米大吟醸 綾部産祝50%精米 2700円/720ml 

② 大吟醸 星降る夜の夢 山田錦35%精米 3200円/720ml 

③ 綾小町 純米生原酒 五百万石65%精米 1500円/720ml 

お酒の一つ一つの紹介はしませんが、全体的に仕込み水の性格がよく出た優しい軽めのお酒でした。この中では①の純大が丸みのある甘さときめの細かい酸味がバランスしていてよかったと思いましたが、全体的にはもう少し、個性があってもいいかなと思いましたが、木内さんのお話では僕の性格が出てしまったかなと笑っておりました。 

これで若宮酒造を後にして、西舞鶴にあるとれとれセンターに行きました。

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中には鮮魚の市場と食べもの屋がいっぱい。でもどのお店も高そうでしたので、リーズナブルの価格でしたとれとれ寿司でお寿司を食べました。

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 確か、サバの巻きずしと握りのセットで1200円ではなかったかな。これを2人で食べたので割安だったと思います。

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食事をした後、外をぶらぶらしていたら、九州の波佐見焼の陶芸の御お店が出ていたので、何気なく見ていたら新潟の松の井酒造のお酒を見つけてしまいました。ご主人にどうして松の井のお酒があるか聞きましたら、、松の井の蔵元がここの酒器を気に入ってくれて買ったいただいてから仲良くしているとのことでした。お店の名前は彩雲窯です。 

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松の井酒造のことが知りたかったら、下記のURLをクリックして見てください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-7c16.html 

以上でPART1を終わります。

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丹後天酒まつり・蔵めぐりツアー PART2

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PART1では若宮酒造の紹介をしましたが、次に訪れた蔵は池田酒造でした。この蔵は舞鶴市ではありますが、舞鶴市の西にある宮舞線の東雲駅の近くの由良川沿いにあります。下の写真は由良川の土手から池田酒造を見た風景ですが、右手の川を手前の方に下ったところがもう河口といったところにあります。 

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 左側のテントが見えるところが池田酒造で、その手前に僕たちのバスが止まっているのが見えますね。もっと近づいてみましょう

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蔵の周りにはテントが張られていて、、色々なおつまみが売られていましたが、とても安く提供してしていました。 

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蔵の案内は社長兼杜氏の池田恭司さんにしていただきました。下の写真に写っている子は池田さんのお子さんで、説明中にいろいろ飛び回って怒られていました。家族蔵という雰囲気がよくわかります。 

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蔵を紹介する前に蔵の歴史を簡単に紹介します。創業は明治12年で5代前の当主がこの地に酒蔵を作り、灘の大手の蔵の下請けが主な仕事をしてきました。一時は1000石くらいの生産をしていたようです。その当時は丹波の杜氏が冬場だけ来ていたそうですが、昭和50年ごろ、大手の蔵との契約が切れて、急激に生産が落ちることになり、杜氏も来なくなり、昭和の末に酒つくりを休止したそうです。その後20年間は他の蔵からお酒を買いブレンドしてお酒を販売していたとのことです。 

この蔵の面倒を見ていた池田さんのおばさんが、平成18年に自分で酒つくりをしようと、少量ではあるけど自家醸造を始めたそうです。その後、少しづつ量を増やしてきたころ、10年前に蔵に戻ることを決意しておばさんの手伝いをしながら酒つくりを勉強し、3年前から杜氏として製造責任者となったそうです。 

池田さんは滝野川の酒類研究所で修行しただけで、酒つくりの特別な勉強をしたわけではないそうですが、現在杜氏として3造り目で、去年からやっと100%自家醸造にしたばかりで生産高は100石だそうです。現在勉強中の新しい蔵と言えそうです。それではどんなつくりをされているのかご紹介しましょう。 

ここが洗米と蒸をしている部屋です。結構広いですね。 

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洗米はウッドソン洗米器を使っていました。10kgのお米を1分洗浄し、40秒シャワーをかけた洗浄をし、それを籠に受け水に浸漬させ給水させます。給水時間は6分から30分とお米によって変えるそうです。次に給水した籠の中の余分な水をとるための水切りを行います。 

籠がひもで吊るされていますね。このひもをねじって戻せば籠が回転し水が切れるというわけです。これは自家製ですが、ある蔵のやり方を真似たものですが、了解は取ってあるそうです。遠心脱水機より安くて良いですね。 

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蒸しは小型の甑を使っていました。総米200kgだそうですからかなり小さいです。この大きさの甑は去年東広島の展示場で見たことがあります。 

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甑の中をのぞいてみました。とても単純な構造です。 

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これはおばちゃんが酒つくりを始めるときに購入したそうです。 

次の写真はこれなんだかわかりますか 

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これは自家製の放冷器だそうです。かわいいですね。網の上に載っているのは何でしょうか。 

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今回の見学用に作った精米したお米のサンプルです。これが放冷器とは気が付きませんね。次は麹室ですか中は見学できませんでした。でも外観はきれいです。 

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 ここが仕込み室で、400kg~500kg仕込み用の解放タンクが4本あるだけだそうです。これで年5回転仕込むと1升瓶500本×20=10000本(約100石)というわけです。酒母室は特に設けてないそうです。

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次は搾りです。

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今までは搾りはおばちゃんが買った小型の槽型の搾り機を使っていたそうですが、去年に横型の搾り機を購入したそうです。やっぱりこの装置の方が使いやすいですよね。 

もっと昔は下の写真のような木製槽搾り機があったようです。 

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この場所には昔は大型の仕込みタンクがあったようですが、今では大型タンクを10本も処分して今は貯蔵庫となっていました。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、小さいながらしっかりしたつくりができるような環境を作りつつあるようですので、今後が期待できます。 

試飲したお酒の印象 

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純米大吟醸池雲は兵庫県産山田錦40%精米、協会18号酵母、日本酒度ー4、酸度1.9のお酒でしたが、飲んでみるとカプロン酸エチルの香りが華やかで、ちょっと甘めのお酒で、今はやりの味を狙っていることはわかるけど、後味にもっとすっきりさがほしい気がしました。 

純米吟醸雄町は岡山県産雄町55%米、協会6号酵母、日本酒度+3で、今年初めてチャレンジした野心的なお酒でしたので、大変興味がありましたが、ちょっと6号酵母らしい香りも少なく、雄町らしい余韻も少なかった気がしました。 

この蔵は生産量は小さいけど、非常に前向きに取り組んでいる姿勢はとても評価できるのですが、あまりお酒の種類を広げないで、この蔵の味をもっと磨いてもらいたい気がしました。もう少し努力されると変わってくるのではないかと期待されます。でもこんな小さな蔵が頑張っている姿を見るとうれしくなりますね 

他の蔵の話はPART3にすることとしました。

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検索機能を強化しました

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このブログの左上に新しくこのサイトの検索が自由にできるココログ最強検索を用意しました。知りたいキーワードを書いて検索をクリックしてください。二つ以上のキーワードをスペースで区切って入れるとより絞って検索できますので、試してみてください。

Qchanpapaより

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検索機能をさらに向上させました

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先日ココログの検索機能を向上させたことをお知らせしましたが、実際に使ってみると検索が非常に正確で、大文字と小文字を別物として認識します。そのために酵母14号と酵母14号で検索すると別の記事を拾ってきます。それから入力中にちょっと間違った操作をするとExplorerの異常となり止まってしまうことがありました。 

僕の酒飲み友達の日本酒カレンダーの浜田さんに相談したら、グーグルの検索機能を導入したらもっと曖昧な検索ができるようになると教えていただきました。でもブログに張り付ける方法がわからなかったので、導入をお願いしたら、いとも簡単にやっていただきました。 

Googleカスタム検索を早速使ってみましたら、14号も14号も同じ記事を拾ってきましたし、松乃井酒造を松の井酒造と検索しても拾ってくれました。大感激です。しかも検索時間が速いし、安定しています。AND検索もOR検索もできますので、いろいろな検索をしてみてください。面白いものが見つかるかもしれません。

前のタイプのココログ最高検索もまだ残してありますので、比較してみてください。

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丹後天酒まつり・蔵めぐりツアー PART3

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丹後天酒まつりの蔵めぐりツアーの第3弾は谷口酒造与謝娘酒造です。この二つの蔵はともに与謝野町にあり、歩いて5分くらいの近いところにあります。でも与謝野町は天橋立の近くの町から176号線を中心に南西に10km以上ひろががった広いエリアでありますが、そのエリアの一番奥の山に囲まれた細長い盆地の中に蔵があります。 

まず最初に谷口酒造を訪問しました。京都から車で2時間のところですが、山に囲われた静かな場所でした。ここが蔵の建屋で芝の井と書いてありました。芝の井はこの蔵の普通酒の銘柄です。 

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 この坂道を上がって右に曲がると蔵の入り口になります。 

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ぴー箱で試飲できる場所が確保されていました。蔵の生産高は100石足らすですから、従業員は数人のはずなのに、こんなに大勢の人がいるのは、きっと町中の人が応援しているのだと思います。 

蔵見学は蔵元で杜氏をしている谷口暢(とおる)さんに案内してもらいました。この蔵は明治4年創業の蔵ですが、長年兵庫県の白鹿酒造の下請けをしてきたそうです。今から31年前の27歳の時、急に白鹿酒造との契約が切れて、杜氏を雇う資金もないので、自ら蔵元杜氏として始めることになったそうです。今日では蔵元杜氏の方は大勢いますが、当時は珍しかったそうです。特に酒つくりの修業もしていないので、県の醸造試験所の先生に指導を仰ぎながらなんとかやってきたそうですが、今までやってこられたのは酒つくりが好きだったからだそうです。 

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ここが洗場で、右側のポンプが井戸からくみ上げた仕込み水用だそうです。仕込み水は近くの山からの伏流水で軟水だそうです。洗米は好適酒造米の「祝」は10kgの手洗いをするそうです。 

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普通酒用の洗米は下の写真の洗米器を使うそうです。あまり見たことがない洗米器ですね。 

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現在蒸米は普通の甑を使っているそうですが、ちょっと変わった連続蒸米機もありました。全国でここだけしかない珍しい縦・横タイプの連続蒸米機で、コンパクトなので採用したそうですが、後片付けが大変なので使用していないそうです。 

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この蔵のすごいなと思ったのは仕込み部屋です。2階構造になっていて、1階が仕込みタンク、2階が酒母室と麹室がある構造をしていますが、その作りがとても立派でした。しっかりした木造造り、階段の広さなどはめったにおめにかからないものでした。昔は製材所の仕事をしていたそうなので、お手の物だったのかもしれません。 

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この仕込み室は60年前に建てられたものだそうですが、白鹿の下請けとして栄えたときに作られたものでしょう。でもその時でも600~700石の生産量しかなかったそうです。 

ちょっと驚いたのは仕込みタンクです。1300Lくらいの開放タンクなのは普通ですが、仕込みタンクの温度コントロール用のジャケットがないのです。この地は冬は雪が多く冷やす必要もないし、冷えすぎないので温めることもしないそうです。 

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でも今年は暖冬で仕込み温度が下がらなかったので苦労したそうです。また以前に気温が下がりすぎて温めるのに苦労したこともあったそうです。地球温暖化の中にあってはそろそろ手当てをしないといけないのかもしれませんね。 

最近サーマルタンクを導入したようで、これは大吟醸仕込み用に使っているようです。なら、チラー設備があるのですからジャケットの装備は簡単ですよね。 

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搾りは薮田を使用していました。これで蔵見学の紹介は終わりますが、どんなお酒を造っているのでしょうか。お米は5百万石と祝だけだそうで、普通酒は芝の井(6号酵母)、特定名称酒は丹後王国(9号酵母)という銘柄を作ってきましたが、最近「若冲」という名の純米大吟醸と純米吟醸を出したそうです。とても評判がいいようですが、今回は飲むことができませんでした。生産石数の割には14種類くらいのお酒を造っているのですから、頑張っていますね。 

試飲したお酒の中で2本だけを紹介します 

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左のお酒が丹後王国純米大吟醸55%精米で、祝らしい味が出ていて、柔らかくて良いバランスのお酒でした。右のお酒は丹後王国純米吟醸祝で精米度はわかりませんが、後味が良くてお料理の味を邪魔しないお酒でした。設備が整っていなくてもいい味を出しているのは、杜氏のお酒つくりにに対する愛情の現れかもしれません。設備が充実して来たらこの蔵は面白くなるかもしれません 

蔵の外では地元の人によるお神楽をやっていました。こういうのも地方ならではの演出で面白いと思いました。 

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生産量100石では経営的には難しいと思いますが、蔵の外に出てみますと、蔵の建物の並びにこんなすごい建屋を持っているのに驚かされました。きっと昔からの地元の名士だったのでしょうね。日本の小さな蔵の秘密を見た感じです

 

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よいよ、ここを後にして最後の蔵の与謝娘酒造までは歩いても5分くらいのところですが、車で向かいました。 

ここが与謝娘酒造です。 

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この蔵は明治20年に与謝娘醸造として生まれた蔵で、お酒だけでなく、焼酎や醤油をつくっていたそうです。戦前、戦後の物資のないときは一時つくりをやめていたそうですが、戦後、3つの蔵が一緒になって与謝娘酒造合名会社となったそうです。ですから3家が協力して運営してきたそうですが、西原家以外の人が高齢になって手を引いて現在は西原家の蔵になっているそうです。

現在は西原司朗さんが社長で、生産高は150石と非常に小さな蔵です。昔は最初は能登杜氏が、6年前までは但馬杜氏が来られていましたが、現在は司朗さんが杜をされています。司朗さんは2002年に東京農大を卒業され直ぐ、14年前に蔵に戻って造りをしていたそうですが、お父様がなくなった5年前から社長兼杜氏をされています。

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蔵の案内は西原司朗さんにしていただきました。 

ここが蔵の入り口です。杉玉の下に何やら蛙の絵が書いてあります。これは司朗さんの奥様の遊び心のようです。後でもっと面白いものを見つけました 

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まずは洗い場ですが、右側に仕込み水の貯蔵タンクがありました。後ろの山に横井戸を掘って湧き出た水を仕込み水を使用しています。奥には蒸用のボイラーが見えますね。洗米器や甑は片づけてあるのかありませんでした。 

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 隣に古びた放冷器がありました。掛け米はこの放冷器で冷ますけど、麹のお米は冷えすぎないように、この土間に広げて冷ますそうです。 

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麹室は平成元年に作った杉で作られた立派な部屋でした。杉の木は湿度をうまく調節してくれるので、突き破精の乾燥麹を作るのに適しているそうですが、逆に純米の時は総破精にしたいそうですが、難しいのでカバーをしたり、色々工夫がいるそうです。 

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仕込み蔵は天井が高く2階に酒母室を置く構造をしていました。 

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丹後地方はとても湿気があるので、絹織物の糸が切れにくいということで、丹後ちりめんの一大産地になる反面、カビが出やすい欠点があるそうです。ですから仕込み蔵は土壁にして外気と大きな温度差を作ると同時に、空間を広くすることにより湿気を拡散させてカビが出るのを抑えているそうです。 

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 お酒の搾り機のそばに面白いものを見つけました

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搾り機からお酒を受けるタンクになぜか「ET」がのぞいていました。これも奥様のお遊び感覚なのでしょうか。手作りETでした(入江さんの写真を拝借)。 

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以上で蔵の紹介を終わります。次にお酒の紹介をちょっとしましょう。 

右のお酒は山廃純米 無濾過生原酒 京の輝きで、最近始めた山廃で、昔の山廃と違って飲みやすいけど、甘みがあって酸味もあり、滑らかさもあるいいお酒でした。 

左のお酒みどりの風 純米吟醸無濾過生原酒 五百万石55%で、すきっと切れるお酒でした。 

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右のお酒はは特別純米 無濾過原酒 9号酵母
左のお酒は特別純米 無濾過原酒 6号酵母 

この中では6号酵母のお酒が、うまく6号酵母の味わいを出している気がして、いいなと思いました。新政を真似たのかもしれませんね。

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この蔵のお酒のラベルが日本酒らしくなく、さわやかな雰囲気があるものでしたが、これも奥様の趣味で作ったものだそうです。奥様がいろいろなところで活躍されれいるのが素敵な気がします。この蔵のお酒はどのお酒を飲んでも狙いが判る味わいを醸し出しており、なかなかのものだと感じました。この蔵はここ1,2年で急に伸びた蔵だそうで、今後が楽しみです。 

以上で今回のツアーの4つの蔵の紹介は終わりますが、最後にこのツアーを企画された古田さんを紹介します。

 

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右の方が古田豊弘さんで、左の方が今回のツアーを紹介してくれた入江さんです。古田さんは日本酒ソムリエでSSI研究室の専属テイスターや日本酒と食の演出家として活躍さてている方で、京都の丹後地域にお住まいです。以前より丹後地域の日本酒と食を提案してきた方で、3年前より丹後酒造ツーリズム運営委員会委員長としてこの企画を始めたそうです。3年前の第1回は2蔵と寂しかったそうですが、去年と今年は9蔵、来年は11蔵となるほど、地域に定着してきたそうです。 

僕は今年初めての参加でしたが、地域と一体化したお祭りムードのツアーでしたが、素朴な町の雰囲気とマッチングしたこのイベントは他では感じられない楽しさがあったし、いろいろな発見もありました。来年は違う蔵を訪問してみたいなと思いました。

たった1日の取材で3部に分けて紹介したのは初めてのことです。それだけ充実していたということでしょうね

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インフィニット日本酒中級コース第7回 (香り)

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このスクールも7回目となり、もう一度香りの確認をすることになりました。日本酒の香りには元となる成分があることを勉強してきましたのでそれを再整理します。 

① 原料由来の成分 (蒸米や麹の香り・ミネラルの味わい) 

② エチルアルコールと炭酸ガス (糖の代謝で出来るエチルアルコールと炭酸ガスでアルコールの刺激と香りの元となっている) 

③  有機酸 (糖が代謝する過程で出てくる酸で、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸など、酸味の元となっている) 

④ アセトアルデヒド (糖の代謝過程で出来るピルビン酸から生成され、青々しい香りがするが揮発性が高く、時間とともに減少する) 

⑤ カプロン酸エチル (糖のアルコール分解経路でピルビン酸からアセチルCoAを介してカプロン酸を形成し、その後エステル化してカプロン酸エチルになる。リンゴやメロンの香りと言われている) 

⑥ 高級アルコール (米の中の蛋白質がアミノ酸となり、このアミノ酸がイソアミルアルコールやイソプロピルアルコールやイソブチルアルコールなどの高級アルコールとなる。マジックインクのような香りで、炭素数が多くなると蝋のような香りとなる) 

⑦ 酢酸イソアミル・酢酸エチル (アミノ酸の分解経路でイソアミルアルコールのエステル化により、酢酸と結合して酢酸イソアミルと酢酸エチルを生成する。酢酸イソアミルはバナナや洋ナシの香りで、酢酸エチルはセメダインの香りがする) 

⑧ 各種脂肪酸エステル (米の中の脂質が脂肪酸となり、各種アルコールと結合して脂肪酸エステルを生成する。香りはサラダ油や樹脂のような香りだが、高級アルコールと香りと区別がしにくい) 

⑨ フラノン (温度を上げる火入れや貯蔵、熟成では必ずフラノン類が生成する。フラノンが多くなるとカラメルや醤油の香りがするが、その量が少ないと老香(ひねか)と言われることもある。) 

日本酒の香り成分にはそのほか、オフフレーバーと言われる4ビニルグアヤコール(4VG)やジアセチルイソバレルアルデヒドなどが醸造過程で発生することがあるようですが、菅田先生のお話では、正常な醸造工程で出来る香りは上述した9つの成分だけを考えればいいそうです。 

①や⑥や⑧は原料中に元となる成分がどのくらいあるかによって変わってくる。精米度が高くなれば蛋白質や脂質は減少するので、それに関連した香りも減少してきます。 

③や⑤や⑦は酵母の特質によって出やすい成分が決まってくるので、どんな酵母を使っているかによりその香りが想像できますが、発酵のやり方によっても変化するので注意が必要です。またリンゴ酸やコハク酸、クエン酸も酵母の特性と非常に関係が深いようです。 

④のアセトアルデヒドはお酒ができたての時に多く含まれますので、生酒や搾りだてには多く含まれますが、揮発性が高いので時間の経過や火入れで減少します。1回火入れか2回火入れ化はアセトアルデヒドの量の違いとフラノン類の量の違いで見分けることができるそうです。また熟成するとアセトアルデヒドは減少しフラノンが増大しますが、特に生酒は熟成速度が速いので熟成温度には注意が必要です。生酒の熟成を抑えるためにはー5℃以下で貯蔵する必要があります。 

以上で日本酒の香りの成分の説明を終わりますが、実際にどんな香なのかを嗅いでみないと実感できませんね。日本酒中の香りはいろいろな成分が混じっているので、なかなか特定できません。菅田先生は独自のルートで香り成分のサンプルを集めて持っておられます。今回はそのサンプルを実際に嗅いで見て、本に記述されている香りとの違いを勉強することになりました。 

最初のサンプルを見てください。 

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1.メターノール:ほとんど香りはしません。実際には日本酒の中にはほとんど含まれていません。 

2.エタノール:消毒用のアルコールそのもので、シンプルな清涼感のある香りです。 

3.-プロパノール:ツンとした香りでそんなに油ぽくありません

4.イソアミルアルコール:まさにマジックインクの香りです。

5.n-ヘキサノール:油っぽい重たい香りがしました。炭素数が6のアルコールでこれ以上炭素数が増えると蝋の香りのようになるようです。 

次はいわゆる日本酒の香気成分です 

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1.カプロン酸エチル:メロンやリンゴの香りと言われますが、濃度が高くなるとツンとした香りになります。 

2.酢酸イソアミル:確かにバナナや洋ナシの香りですが、スッとした香りです。日本酒の場合酢酸エチルが同時に出ることが多いので、それで判断するとわかりやすいです 

3.酢酸エチル:まさしくセメダインの香りでした 

次はフラノンと原料由来の香りです 

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1.フラノン類:確かにカラメルの香りや醤油の香りと言えますが、紹興酒や豆の香りとも言えますが。濃度によって違うので、表現が難しいです。 

2.白米:お米の香りとか乾いた粉の香りがします。 

3.麹(酸化):麹の香りですが蝋の香りがしました。麹が酸化すると蝋臭が出るそうです。デンプン、蛋白質、脂質は酸化すると蝋臭が出るからです。 

以上がサンプルの香りですが、医薬品のアセトアルデヒドと乳酸を嗅いでみました。 

アセトアルデヒド:とても強い香りでふたを開けただけで、部屋中に香りが充満するほどです。でもいやな香りでなく清涼感のある青々しい香りでした。アセトアルデヒドはアルコールが酸化した場合も発生するので熟成してもアセトアルデヒドが出るけど、フラノンに邪魔されてあまり感じないそうです。 

乳酸:乳酸の香りは濃い場合はヨーグルトの香りがするそうですが、薄い場合は僕にかあまりはっきりわかりませんでした

イソ吉草酸:少し青臭い熟成の香りであるけどいわゆる老香には感じませんでした。生ひね香だそうです。 

それではいつものように試飲をいたしましたので、紹介します 

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 1.福祝 夏の純吟 山田錦・五百万石50-60%精米 
  Alc度16、日本酒度-、酸度-、AA度- 酵母-
 

2.越乃寒梅 純米大吟醸 山田錦50%精米 火入れ
  Alc度16-17、日本酒度+4、酸度-、酵母-
 

3.悦凱陣 手造り純米酒 オオセト60%精米  
  Alc度15-16、日本酒度+8、酸度1.6、酵母熊本9号
 

4.写楽 純米酒 夢の香60%精米 1回火入れ
  Alc度16、日本酒度+2、酸度1.4、酵母 F7-01
 

まず例によって外観を見てみます

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外観を見ると2番だけが透明なので、活性炭ろ過していると思われます。3番は少し色がついてるので熟成がかかっているようです。2-4-1-3の順番で色が濃くなっていました。

1.福祝 夏の純吟 山田錦・五百万石50-60%精米 

さわやかな香りのアセトアルデヒドがあるので、生ではないかと思われます。カプの香りもイソエチの香りもあって、カプもイソエチも強く出ているのでブレンドと思われます。味わってみると後味にコハク酸の苦みがあるので、イソエチ系の酵母を使ったことが確認されます。アセトアルデヒドと乳酸と高級アルコールを同時に感じる複雑な味があるようなので、夏吟にするなら酵母はシングルにしたほうがいいと先生は言われました。 

2.越乃寒梅 純米大吟醸 山田錦50%精米

アセトアルデヒドの香りがなく、ポテッとした香りがあり、2回火入れであることが判ります。香りがふわーとしていて、ツンとした香りでないので、18号ではなく9号酵母だと思われます。熟成のフラノンが出たので活性炭ろ過していて除去していますが、高級アルコールはとれていないので、その高級アルコールの香りが気になります。味を見ると、アタックは柔らかく良いのですが、中盤からアルコールの辛さと刺激が強く出てくるのが気になります。 

3.悦凱陣 手造り純米酒 オオセト60%精米 

ツンとした香りと穀物的な香りがあるのはお米からくるものと思われます。オオセトは一般米なので蛋白質が多く含まれます。したがって、高級アルコールが多くなるのは仕方がないと思われます。アタックのボリュウム感が少なく、すぐ酸が上がってきて、渋い感じするのは加水量が少ないからと思われます。甘みと旨みをもう少しあったほうがいいように思えました。 

4.写楽 純米酒 夢の香60%精米 1回火入れ 

酢酸エチルの香りが強すぎ感じがします。うまみはよく出しているが、剥ぎだした後アルコール感が強く、口の中でピリピリ感が感じます。そして後味にコハク酸の苦みが残るけどそんなに強くはありません。このピリピリ感を抑えることができれば、もっと素晴らしいお酒になると思われます。

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