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長野県9蔵の蔵元の会に参加して(長野メッセ後夜祭)

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大塚にある地酒屋こだまが取引している長野県の蔵は9蔵あるそうですが、その9蔵の蔵元が一同に会して蔵元と一緒に飲み食いできる会が長野メッセin東京の翌日に行われましたので参加して来ました。

地酒屋こだまの取り扱い量が一番多い県は福島県で、(酒屋を開店する前にやっていたお店が福島県に強い酒屋だったのを引き継いだから)、次に多い県が長野県なのです。 それは児玉さんが若い時に山スキーに夢中になっていて、その時に飲んだのが長野県のお酒だったからのようです。 

店長の児玉さんは基本的に自分の足で、蔵に行ってその蔵の人を知り、酒を味わいその特徴をつかんでから、取引をするタイプなので、他の酒屋さんでは扱わない小さな蔵と取引することが多いようです。 

僕は知らなかったのですが、去年は取り扱いが8蔵だったそうで、去年東京の長野メッセの後に初めて8蔵の会を開催したそうです。僕は今年もこの会があることをインターネットで知り、イの一番で申し込んだというわけです。 

参加され9蔵のご紹介をします。 

 1.丸世酒造店(勢正宗/中野)  

   2.北安醸造(北安大國/大町) 

   3.笹井酒造(笹の譽/松本)   

   4.笑亀酒造(笑亀/塩尻)   

   5.湯川酒造店(十六代九郎右衛門/木曽)  

   6.仙醸(黒松仙醸、黒松仙醸こんな夜に/伊那)   

   7.米澤酒造(今錦/伊那)  

   8.酒ぬのや本金酒造(本金/諏訪)  

   9.和田龍酒造(和田龍登水/上田)

この会のすごいのは9蔵の蔵元や杜氏が参加され、僕たち参加者は全員9つのテーブルの着席で座り、各テーブルに15分だけ蔵の人が来られて、お話を聞きながらお酒を飲み、お食事をするという趣向です。こんな会があるなって知りませんでしたし、これを実現できる居酒屋はそうそうないと思います。 

この会の開催を引き受けてくれたお店は水道橋にある海山和酒「なるたか」です。僕は初めての参加なので、どんなお店か知りませんでしたが、長野県産のお料理と地酒が売りのようです。下記のような特徴のあるお店です。http://r.gnavi.co.jp/g220042/kodawari/#kodawari2

ここがお店の入り口です。

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お店の中の様子はこんな感じで、各テーブルに蔵の方が着てくださいました。

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では、さっそく蔵とお酒を紹介しますが、僕たちのテーブルに来た順番にご紹介します。 

1.米澤酒造(今錦/伊那)

 この蔵は日本で最も美しい村と言われている信州伊奈谷の最南端にある中川村にある蔵です。南アルプスの良質な軟水を生かしたお酒つくりをしていて、全量槽搾りで手間暇かけたつくりをしているそうです。現在は生産高は400石で、平成26年に経営難から伊那食品が親会社となりましたが、昔からの造りは引き継ぎつつ冷蔵設備に投資する一方、中川村の棚田の保全を方針を示しており、児玉さんもこの新しく生まれ変わった蔵を応援することにしたそうです。

写真の方は左から営業の池野篤美さんと蔵人の伊藤淳一さんです。

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お酒は右から中川村のたま子生原酒、純米吟醸生原酒、自然共生「7」蔵内常温熟成酒です。 

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たま子は中川村の棚田でとれた美山錦59%の特別純米酒で、定番のお酒ですが生産量が少ないそうです。飲んでみると最初にどんと味だ来るけど酸味があってさわやかのお酒でした。このお酒のブランド名はおたまじゃくしで、新酒の時は足がなくて、夏になると後ろ足が出て、ひやおろしになると4本足になるそうです。 面白い発想ですね

純米吟醸生原酒は美山錦55%の純米吟醸ですが、酵母は長野D酵母を使っているそうです。力強さがあって、香りがあって軽いかなと思うとどんと来るお酒で、独特の味わいがあるけど、慣れてくるといろいろな味わいを感じるお酒でした。 

蔵内熟成のお酒は美山錦65%の7号酵母のお酒で、熟成した柔らかさと酸味のバランスが良く、お燗して飲みたいお酒でした。 

2.仙醸(黒松仙醸、黒松仙醸こんな夜に/伊那)  

仙醸は天下一の桜の名所として知られている伊那市の高遠にある蔵で、日本酒だけの生産量で1200石もある中堅の会社です。小さな蔵が大好きな児玉さんがこの蔵とお付き合いするようになったのは前杜氏の丸山慎一さんとの出会いがきっかけです。丸山さんは設備のお整った蔵だからできる新しいお酒造りを目指して、生みだした酒が「こんな夜に」なのです。それを児玉さんが気に入ったというわけです。

その丸山さんは平成24年に退職され、湯川酒造店の社長の湯川さんと結婚して、湯川慎一となり、杜氏として活躍されています。その丸山さんの後を継いだのがこの写真の方の安藤宏幸さんです。安藤さんは岐阜の中津川市のある蔵の杜氏をされていましたが、児玉さんやいろいろな人のつながりで、 仙醸に来ることになったそうです。 

児玉さんは丸山さんから安藤さんに代わって、新しくなったお酒に注目しているそうです。安藤さんは趣味が自転車のロードレースで以前は体脂肪率が5%以下だそうですが、去年はあまり走れなかったので、今は7%くらいではとおっしゃっていました。その理由は愛犬の調子が悪いので、家を空けることができなかったからだそうです。そんな優しさがある方なのです。 

安藤さんの詳しい情報がほしい方は僕のブログを見てください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-ce0d.html 

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呑んだお酒は右から、こんな夜に雷鳥奔酒(はしりざけ)、 こんな夜に鹿生、黒松仙醸純米大吟醸プロトタイプです。

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こんな夜には雷鳥、鹿、山女、山椒魚があり、精米度が70%、60%、55%、50%で名前を変えていますが、それに適したお米と酵母を使っているのが特徴です。 

雷鳥奔酒は美山錦70%精米、7号酵母の純米酒の薄にごりです。後味がやや辛口ですが、あたりは柔らかく、70%の割には雑味の少ないお酒でした。 

鹿生はひとごこち60%精米、15号酵母の特別純米です。丸山さんの時代から同じスペックで、15号は扱いが難しい酵母ですが、うまく作ると、華やかな香りがあるし、酸も出やすいし、うまみもよく広がる酵母だそうです。飲んでみると何か心に残るお酒でした。熟成させるとうまくなる酒だそうです。買って自分の家で寝かせたいですね。 

プロトタイプは満月と同じひとごこち40%精米で、18号酵母ですが、超甘口にしたいので造りは大幅に変えて日本酒度がー17で発酵が終わるようにしたお酒だそうです。造りは企業秘密ですが、仙醸でしかできないお酒で甘みがほとんどクルコースだそうです。甘さがあるけど跡に残らない甘さだそうです。このお酒は1升3600円だそうで、お買い得です。

3.湯川酒造店(十六代九郎右衛門/木曽)
 

この蔵は木曽路の十一宿の一つの薮原宿にある蔵で、木曽路の難所の鳥居峠を越えたところにあるので、標高が950mあり、日本で最も標高の高いところにある蔵と言われています。この蔵は360年以上の歴史を持つ伝統ある蔵で、「木曽路」と「16代九郎右衛門」のブランドのお酒を造っています。生産量は1000石と言われています。 

写真の方は16代目の蔵元で社長の湯川尚子さんです。尚子さんは2005年に蔵を継ぐ覚悟で杜氏見習として蔵に入り、修行を続けていましたが、2011年の7月、15代の当主の湯川寛史さんが病気のためなくなられ、急遽後を継がれたのです。その後2012年に仙醸の杜氏であった丸山慎一さんと結婚され、慎一さんが新たに杜氏になることが決まったそうです。杜氏になるのと結婚の決断のどちらが早いかは知りません。 

尚子さんは結婚されて綺麗になられたのではと思います。結婚のいきさつなどは以前ブログに書きましたので、興味があったらごらんください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-5841.html 

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飲んだお酒は左から九郎右衛門の特別純米、金門錦生原酒、山廃純米おりがらみ こだまSPでした。

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特別純米はひとごこち60%精米の酵母9号の火入れのお酒で、結構うまみがしっかりしているお酒でした。この蔵の定番のお酒ですが、年々綺麗さが出てきているようです。 

金門錦は今年初めて扱ったお米で、精米度55%、14号酵母の生酒です。飲んでみると、ちょっとシャープな感じだけど味はあって、酒質は良さそうだけれでも、もう少し寝かせて飲みたい気がしました。秋頃がベストかもしれません。 

山廃は1年に1本しか作らないお酒だそうで、ひとごこち60%精米の生酒で、こだまさんの要望で蔵の2℃~4℃の冷蔵庫で2年熟成したお酒です。蔵としては昔から作っているお酒ですが、飲んでみると複雑なうまみで、いろいろな味を感じるお酒でした。 

4.笑亀酒造(笑亀/塩尻)  

この蔵は塩尻駅から車で5分の位のところにあります。塩尻は中山道から北と南に分かれる交通の要所にあり、明治16年に初代丸山氏が塩尻の陣屋の跡に酒造業「嘉根満本家」を創業したようです。その後笑亀酒造と名前を変えて、現在に至っています。生産高は聞きませんでしたが、300石ぐらいだと思われます。 

現在、丸山大輔さんが社長をされていますが、杜氏も兼務して独特のお酒を造ってきたそうで、児玉さんに言わせると「熟した果実味と踊る酸」の酒だそうです。写真の方は去年の11月から新しく杜氏となった森川貴之さんです。 

森川さんはそれまで岐阜の中乗さんで永年杜氏をしておられた人で、その時から児玉さんとのお付き合いがあったそうです。今回どうして笑亀酒造に来られたかはお聞きしませんでしたが、きっと児玉さんが関係しているのかな・・・・・ 

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 飲んだお酒は 笑亀 純米酒、直汲み生原酒、嘉根満(かねまん)純米吟醸

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笑亀の瓶燗純米酒は森川さんが今年初めて造ったお酒で、美山錦70%精米、9号酵母に火入れのお酒です。この蔵の特徴である甘みと酸味を抑えた酒を目指したものだそうですが、僕には特徴の少ないお酒のように感じました。 

直汲み生原酒は上記のお酒と同じ美山錦70%9号酵母のアルコール添加した普通酒の生原酒です。こちらの方が味があって独特のふくらみがありました。余り酸はないようですが、元気のあるお酒といった感じです。 

嘉根満は美山錦60%精米、長野C酵母の純米吟醸です。長野C酵母は扱いの難しい酵母と言われていますが、あえて使っているようです。この酒こそがこの蔵の定番の味で、果物の香りとパワフルな酸のイメージのもとになっています。僕にとってはパワフルというよりは大人っぽい落ち着きのある味を感じました。森川さんよってきっと少し透明感と安定感が出たものと思われます。 

5.笹井酒造(笹の譽/松本) 

この蔵は松本市内の島内地区にある蔵で、創業は大正12年ですから比較的若い蔵です。北アルプスの伏流水を使って、地元の契約栽培のお米を使って、すべて400kg以下の小仕込みを行い丁寧はお酒つくりをしている小さな蔵(生産高300石)です。 

写真の方は蔵元で杜氏の笹井康夫さんです。笹井さんは蔵元の人ですが、東京農大を出て、事情があって30歳の時蔵に戻ったそうです。次男だったので蔵を継ぐつもりがなかったので、蔵に戻ってから愛知の蓬莱泉や岐阜の女城主で修業をしたそうです。当時は松本のお酒は地元のおそばにあわせたため辛口のお酒が多かったのですが、甘みのあるお酒でも、うまく作れはそばに合わせることができると思って、蔵元と相談して新しいお酒を造りを始めたそうです。 

あまり試飲会には出展していないので児玉さんとはそこでお会いしたのではなく、児玉さんの知り合いからの紹介でお会いして、蔵にも来てもらい、できたお酒を飲んでもらって、扱っていただけるようになったそうです。 児玉さん!いい酒見つけましたね。 

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 飲んだお酒は 純米吟醸浜農園55%、純米吟醸赤羽農園50%、純米吟醸SPEC14です

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純米吟醸は浜農園は北アルプスの水で育ったひとごこち55%、協会14号酵母のお酒で、純米吟醸赤羽農園は美ヶ原の水で育ったひとごこち50%、協会14号酵母のお酒です。飲んでみたら、両方とも優しいうまさが口に広がり、バランスのよい美味しいお酒でした。二つの違いは微妙で、浜農園のほうが甘みが小さな塊りに感じ、赤羽農園のほうがすっと広がる感じがしましたが、うまさが優しいのは共通だと思いました。この酒ならおそばの香りを邪魔しないで飲むことができるとおもいました。 

SPEC14は島内産のひとごこち55%の純米吟醸で、酵母も14号です。ただアルコール度数は14度の低アルコールです。どのようにして作ったかはお聞きしませんでしたが、前のお酒に比べるとちょっと物足りないけど、夏酒にはいいかもと思いました。 

6.北安醸造(北安大國/大町) 

この蔵は大糸線の信濃大町駅と北大町駅間にある蔵で、北アルプスの立山がみわたせる北安曇野地区にある蔵です。創業は大正12年とそれほど古くはないですが、小さな蔵(生産高300石)で、造るお酒は米のうまみと甘さにこだわった酒つくりをしているそうです。 

写真の方は杜氏の山﨑義幸さんです。山崎さんはユニークな経歴をおもちのかたで、愛知県の出身で東京でパソコン関係の仕事をした後、白馬で土木関係の仕事をしたそうです。約15年前に北安醸造に入社し、酒つくりの勉強をして、8年前に杜氏になったそうです。とてもにこやかで人の良さそうな感じがする人ですね。 

児玉さんが酒屋をやる前からの付き合いで、ある酒の会で児玉さんがこの蔵のブースに来て昔飲んだことのある北安大国にやっと会えたと言ったのが始まりだそうです。確かに児玉さんが好きそうなお酒です。きっと児玉さんの原点のお酒ではないでしょうか 

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飲んだお酒は右から、北安大国純米生原酒熟成こだまSP、北安大国 特生原酒、井谷里 山廃純米吟醸 直汲み生です。

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僕にとって一番インパクトがあったのは特生原酒で、ひとごこち70%精米のアルコール添加した生原酒です。口に含むとうまみがどんときて、余韻もしっかりあるけど後味が綺麗です。それは酸味がうまく後押ししてくているからだと思います。 

井谷はひとごこち55%精米の山廃純米吟醸の生原酒です。山廃つくりを初めてまだ2年目なので、勉強中ですが、いい酒ができたので蔵の仕込み水の場所の井谷里という名前をつけたそうです。山廃独特の酸味とのバランスが良く、また1段上の酒になったのではないでしょうか。 

純米熟成こだまSPは完全に生塾しているので、僕にはちょっと合わなかったです。 

7.丸世(まるせ)酒造店(勢正宗/中野)   

この蔵は長野駅から湯田中までいく長野電鉄長野線の途中の中野市のある蔵です。創業は明治3年ですから140年以上続く老舗の蔵です。この創業の関氏が「世の中が丸くなるように」と願いを込めて丸世という名前をつけたと言われています。 

代表銘柄の「勢正宗」は鯉の滝登りのように勢いが良いという意味からつけられたもので、ラベルにも鯉の絵が描かれています。 

この蔵の特徴は何といってももち米4段仕込みにあります。普通は3段仕込みで終わらせる最後に、蒸したもち米を熱いままタンクに放り込むという荒技を使うそうで、そうすることにより、柔らかくて芳醇な甘みが出るそうです。 

蔵元杜氏の関晋司さんです。杜氏は今では社長の関康久さんがやっていましたが、今年から晋司さんが杜氏になったそうです。晋司さんは蔵に入って4年目ですが、ほとんど蔵で勉強したそうです。蔵の生産量は120石ぐらいのとても小さな蔵ですが、この独自の技術を伝承していきたいそうです。 

4段仕込みといえば福島県の花泉酒造も有名ですが、花泉は4段目にもち米を1-2%入れるのに対して、ここでは10%も入れるそうです。これでバランスするのですから、元のお酒の味が違うのでしょうね。 

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飲んだお酒は左から純米もち米熱掛4段生原酒、特別純米酒、長野D酵母純米もち米熱掛4段生原酒です。

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最初に特別純米を飲みました。このお酒は美山錦59%の3段仕込みの通常の特別純米酒です。ドライだけれども辛みを感じないお酒のように思えました。まだちょっと固めかもしれません。夏場すぎると角が取れてくるそうです。 

後の2本は4段仕込みの純米生原酒です。どちらも美山錦70%精米、14号酵母の純米酒ですが、酵母が14号酵母と長野D酵母の酵母違いのお酒です。4段仕込みはどちらも分厚いけど嫌みのない甘みが良く出ていて、後味が綺麗でした。長野酵母はD酵母らしいさわやかさが出ているような気がしました。 

8.和田龍酒造(和田龍登水/上田) 

この蔵は上田市の上田城址跡の北側にあり、、創業は明治20年だそうで、創業者の和田龍太郎の名前を取って和田龍を蔵の名前としたようです。この蔵の生産高は200石以下と大変小さいですが、酒造りに強い信念があるそうです。それはお酒は土地の歴史、気候、風土、食生活と共に育ってきた食文化と考え、それぞれのお酒を目指す酒質に合わせて、柔軟な発想で酒つくりをしていることです 

写真方は4代目蔵元で代表取締役社長の和田澄夫さんです。澄夫さんは明治学院大学を卒業後、醸造試験所などで研修を受けた後、平成3年に蔵に戻ってきました。杜氏は別におられますが、お客様密着型の商売を心がけお酒は対話商品であるという考え方をコンセプトに酒つくりをしてきました。そして平成17年に登水(とすい)というブランドを立ち上げました。 

このお酒は生産量は非常に少ないですが、より拘りのあるお酒を提供したいという思いまら立ち上げたもので限られた酒販店だけに直接販売されているお酒です。こんなに珍しいお酒なのですが、都内でも扱っているお店があるのは澄夫さんの努力と人がらの現れだと思います。登水とは自分の名前の澄の漢字からとった名前なので、きっと澄夫さんの心がびっしり入っているお酒だと思います。 

児玉さんとの出会いは6年前の生のメッセin東京だたそうで、その後少しずつ交流を重ねて、お酒を評価してもらい今年から取引を始めるようになったそうです。児玉さんに言わせると、腰が低いけど、とんでもない苦労人で穏やかな人柄と熱い思いにひかれたそうです。 

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 飲んだお酒は右から山田錦生原酒、ひとごこち生原酒、美山錦山原酒です。

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山田錦は精米59%で美山錦は精米は49%で、酵母は14号です。精米度を同じにしないのはお米を良さを引き出すためなのでしょう。味しっかり出して透明感のあるきれを出すことをねらいとしているようですが、確かに美山錦も山田錦も柔らかな旨味と穏やかな産のバランスが良かったです。でも山田錦はもう少し味が載せられると思いました。

ひとごこちは今年初めて造った9号酵母のお酒でしたが、僕にはまだ9号の良さが出ていない気がしました。 

澄夫さんは良く人の話を聞いてくれて、それを生かした酒造りにチャレンジしているようですので、今後大いに注目していきたい蔵です

9.酒ぬのや本金酒造(本金/諏訪) 

上諏訪には同じ街道に寄せ合った感じに5蔵も並んでいますが、本金酒造はその中でも生産量が100石強の格段に小さな蔵です。5蔵の中で2蔵は経営が不振で経営者が変わるという厳しさの中で、頑張っているのは蔵の中の人達の結束の強さだと思います。 

この蔵で長年杜氏をしていた北原太一さんが辞められて、7年前から蔵元の宮坂恒太朗さんが杜氏を引き継いで酒つくりをしていたのですが、3年前に恒太朗さんがALSという難病を患って、立っていることもしゃべることも年々難しくなる状態になってきました。それを支えたのが奥様のちとせさんです。彼女の明るさが恒太朗さんを支えてくれたことはだれもが知っています。 

もうひとり恒太朗さんの酒造りを支えたのが、写真の方の蔵人の今井範道さんです。去年神田の淳のお店が閉店になる最後の会として、恒太朗さんとちとせさんをお呼びして本金の蔵元を囲む会が開かれ、参加したのですが、その時恒太朗さんの頑張っている姿を見て、これからずっと応援したいと心に決めたことが今でも思い出されます。 

この時のことは下記のブログに書きましたので、ごらんください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-f265.html 

この会で恒太朗さんがお世話になって感謝していると言われた人の中で、はっきりとこの今村さんのことに触れられていました。 

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 飲んだお酒は本醸造からくち太一、純米吟醸ひとごこち 生原酒、純米 雨上がりの空とでした。 

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本醸造からくちの太一はこの蔵のもっとも定番のお酒ですが、前の杜氏の北原太一さんが造った蔵を代表する自信作です。お米は飯米ですが、精米は60%で酵母は7号酵母です。しっかりした味わいの中に、後味がすっきりして飲みあきない本醸造でした。今回飲めなかったですがすっぴん太一は手に入ったらお得な素晴らしいお酒ですよ。 

純米酒「雨上がりと空と」は、しらかば59%精米で、多酸性酵母を使ったお酒で、コハク酸やリンゴ酸を主体とする酸なので、強くても飲みやすい酸が出ることを利用した新しい酒です。飲んでみるとコクがあるけどすっきりしている夏に向いたお酒のように思えました。このラベルの名前は感受性の高くなった恒太朗さんならではのネーミングではないでしょうか。 

純米吟醸酒はひとごこち55%で、長野D酵母と9号酵母のブレンドの酒です。香りが豊かで透明感のあるうまみが広がり、後味を酸味で切ってくれるお酒でした。去年は18酵母と7号酵母でしたが、今年は新しい酵母を使っています。同じ狙いのお酒でも、毎年チャレンジをするのが恒太朗さんの凄いところで、絶えず前向きにチャレンジしています。 

恒太朗さんは不幸にしてALSになってしまいましたが、物理学者のホーキングさんと同じように感性はますます研ぎ澄まされてきているように思えます。大切なの彼を支える周りのサポートです。今村さんは非常に大変でしょうが、恒太朗さんの右腕となってますます良い酒つくりをサポートしていただくことを強く願っています。これから恒太朗さんの造るお酒はどう変化していくのか楽しみです。

以上で9蔵のお酒の紹介を終わりますが、最後にこれを企画された児玉武也さんにありがとうございますと言いたいです。児玉さん自身が蔵を指導して育てるつもりはないでしょうが、蔵に対する熱意が結果的に蔵の酒を進化させて来たのではないでしょうか。これらからも武さんとのコラボがうまく回って、この9蔵がますますいいお酒を造っていけることを期待しています。

最後にお店の前で蔵元さんがお見送りしていただきました。2人ほどいないようですが、きっとお店の中に未だおられるのでしょう

とてもいい会でした・・・・・・ ありがとう・・・・

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