9月18日に諏訪酒造協会の主催で銀座NAGANOにおいて、諏訪の9蔵のお酒の飲み比べながら好きなお酒を購入できる会が開かれまして、その中で現在日本酒造組合中央会の技術顧問をされている須藤茂俊さんが「料理と日本酒の相性はビジネスチャンス」という講演がありましたので参加して来ました。今回は講演の内容についてまとめてみました。というよりは僕の備忘録という意味合いの方が強いかもしれません。
銀座NAGANOは去年の10月に長野県の新しいアンテナショップとして生まれたお店で、長野県を代表する食材や伝統食、WINE、日本酒、ジビエ、果物、野菜をはじめ、信州の暮らしを感じていただけるさまざまな商品を取り揃えている店で、2階には各種のイベントを開催できるスペースを持っています。
また、長野県が推進する信州の味覚が楽しめる「旬の信州味わいコーナー」もあり、買い物の合間、仕事帰りにふらっと気軽に立ち寄ることができます。場所は銀座4丁目の交差点からすぐのすずらん通りを入るとすぐ右側に見えます。
上の写真のハゲ店の先に縦型の旗に銀座NAGANOという字が見えますか。正面の写真をお見せしましょう。アンテナショップの割には意外とわかりにくいでしょう。
会場はそのビルの2階です。ここには観光インフォメーションコーナーが常設されており、奥がイベントスペースになっています。会場の中央が講演会用で20人強のこじんまりとしたものでした。周りに蔵のブースがありました。
早速く講演内容をご紹介します。講演者の須藤茂俊さんは現在61歳で東京農業大学を卒業された後国税局に入省され、酒類総合研究所で品質安全研究部門で永年研究をされ、現在は日本酒造組合中央会の技術顧問をされています。特に日本酒と料理の相性については永年研究をされてきて、2012年に日本醸造協会誌に「食品と清酒の相性評価法」という論文を書かれるなど、この分野での第一人者です。
中央の方が須藤茂俊さんで、右奥に写っておられる方は諏訪酒造協会の理事長で、豊島屋(神渡)の代表取締役の林新一郎さんです。
今まで僕は日本酒の相性は濃い味のお料理には味の濃いお酒を、味の軽いお料理には味の軽いおお酒を合わせて、口の中でお互いが反発しないで、融け合うかどうかで判断していましたが、今回の講演でそんな単純なものではないことを知り、改めて目からうろこという思いでした。
それではどんな講演内容だったか簡単にまとめてみます。
<お料理と日本酒の相性とは何か>
・ 相性とはお料理を食べた後にお飲んだお酒がしっくりくるか、違和感があるかをいい、しっくりすれば相性がいい、違和感があれば相性が悪いということになります。
<相性感性について>
* お料理にもお酒にも独自の風味(香りと味がまじりあって一体化したもの)があるが、お料理を食べた直後にお酒を飲むと、次のような効果でお酒の本来の風味が一時的に変化した風味像ができる。
・ マスク効果 お料理が甘すぎるとお酒の甘みが抑えられる
・ 対比効果 お料理に酸味があると酒の甘みが強調される
・ 相乗効果 お料理に旨味があるとお酒の旨味が強調される
・ 塩分効果 料理の塩分があるとお酒の甘みと旨味をアップ
する
* お料理を食べた時に起こる味覚リクエストがお酒との相性を決めるようである。味覚リクエストとは何か。お料理を食べた時おいしかった時には、その料理の余韻を損なわないでほしいという思いが無意識に出るようであり、また逆に刺激が強すぎた時は口直しがほしいとか、美味しくないお料理の場合は風味を補ってもらいたいという意識が出るようであり、これを味覚リクエストというようです。
お料理を食べた後にお酒を飲んだ時に、その味覚リクエストにうまく応えれば、しっくりして相性がいいということになり、対応できなくて違和感を感じれば相性が悪いことになるようです。ですから相性は個人によって違うし、その時の状況によっても違ってくるので、相性をチェックする場合は、どんな味覚リクエストが生じたかをセットで考えないと判断することはできません。難しいですね・・・・・
<簡易相性テストについて>
相性のテストは非常に難しい。それは人は味は覚えられないようにできているからである。人間は味を忘れることにより、毎日リフレッシュして次の料理を美味しく食べる仕組みになっているからである。ですからテストした時は必ず記録することが重要だそうです。
味覚テストはテストをする人が事前に十分な訓練をする必要があるほど、厳密で難しいものですが、簡単な相性テストのやり方もありますので、そのやり方を紹介してくれました。
1.まず相性の先入観を取り去る(先入観があるとそれだけで
感じ方が変わります)
2.料理を1口良く味わい、その時どんな味覚リクエストを感じた
かを、無理やり意識して確認する
3.料理を飲みこみ5秒以内に、日本酒を一口味わうが、日本酒
を意識しないで、味覚リクエストだけを考て味わう
4.日本酒の味わいから味覚リクエストに応じられたかどうかを
感じて、相性を決定する
<相性の良い料理はどんなものか>
お料理の味の特徴の中でお酒の風味を良くしてくれる味わいは以下の通りです。
・ 強い旨味 → 酸味・苦味・渋みを和らげ、風味を美味しく芳醇
にする
・ 適度な塩味 → 甘みと旨味の感度を上げて、美味しさを増す
・ 強い辛味 → 日本酒の甘みが辛味風味を爽快にし心地よく
する
・ 豊富な脂肪 → 脂肪が舌をコーティングし、刺激味を和らげ
まろやかにする
・ うま臭み → 臭みを軽減し風味を良くする(吟醸酒は合わな
いので注意が必要)
<相性の悪い料理はどんなものか>
お料理の味の特徴の中でお酒の風味を悪くするものは以下の通りです
・ 強い糖の甘み → 甘みに感度が悪くなり甘みを減らして水っ
ぽくし、苦渋みを増して風味を損ねる
・ 豊富なたんぱく質 → アルコールや酸がたんぱく質を変性
してざらざらとした成分となるので苦
渋みがます
・ 日本酒対照香 → 香りを強調するので、臭みを増して
風味を損ねる
<相性の良い具体的なお料理の例>
・ 強い旨味や適度な塩味をがあるもの
魚の塩焼き、ハマグリの吸い物、ナマコのポン酢、
ちゃんこ鍋、金目鯛の刺身など
・ 豊富な脂肪や強い辛み
カワハギの肝、カマンベールチーズ、辛子明太子、
豚肉の味噌漬など
<相性の悪い具体的なお料理の例>
・ 強い糖の甘み
栗きんとん、うの花、牛肉のパイナップルソースがけ、
甘い煮つけなど
。 豊富なたんぱく質
ロース豚カツ、めばちマグロのたたき(たんぱく質がミンチ状
で出やすくなる)、春巻、ヒラメの刺身(筋肉質のタンパク質)
その他にも色々な例がスライドで示されましたので、そのスライドをお見せします。クリックして大きくしてみてください。個人的には本当かなとおもわれるものもありますが、永年の研究で出来たものですから、正しいのでしょう。参考にしてください。
ヒラメの刺身は相性が悪い代表で書いてありますが、これもお料理の仕方で相性が変わるので、そのつもりで見てもらった方がいいと思います。たとえば、ヒラメの場合は昆布〆にするとか煮つけにすれば相性が良くなるし、豚ロースのカツもひれカツにして少し強めに揚げれば良くなるそうです。
<相性の良い日本酒はどんなお酒か>
これは結論から紹介します。
・ 酸味と苦渋味が弱く、糖の甘みが強くなく、アルコールの甘みが強く、吟醸香や芳醇香などの心地よい香りがあるものということのようです。
これを一言で表すと「味がなめらかな」酒質といっていいそうです。
この中でちょっとわかりにくいのは「アルコールの甘み」ではないでしょうか
<アルコールの甘みとは>
日本酒の甘みは糖の甘みとアルコールの甘みが混じったものです。アルコールの甘みはアルコールの濃度が15%の時ブドウ糖の1.5%の甘みに相当するようです。しかもアルコール濃度が増えるほど強くなるようで、アルコール濃度が15%を超えると特に感じやすくなるので、原酒が甘く感じるのはその効果のようです。
アルコールは刺激、苦渋み、辛みを持っていて、通常はこれが甘みと相殺されてあまり感じないことが多いらしいですが、良い水に出会うと左のように、水が苦渋みや辛みと融合して抑えてくれるので、甘みを強く感じるようになるそうです。
良い水とは蔵の仕込み水です。仕込み水は蔵によって違うけど、一般に甘みを引き出せる効果があるようです。
アルコールの甘米は糖の甘みの違いをどのように見極めるのかは説明がありませんでした。
<日本酒の心地よい香りとは>
香りの成分は色々ありますが、良い香りを出す成分はイチゴの香りを出す酢酸エチル(セメダインの香りにもなる)、バナナの香りを出す酢酸イソアミル、リンゴの香りを出すカプロン酸エチルの3種類が有名です。
日本の代表的な銘酒の香りを下記のような表に纏めてみると一つの線になることがわかったそうです。この線に乗っているお酒が心地の良い香りと言えそうです。こんな表は初めて見ました。特に最近に人気の香りは左の方にあるようです。
・ 相性度の高いお料理にはどんな相性度のお酒を合わせても
いい。
・ 相性度の中庸なお料理には相性度の高い日本酒を合わせる
・ 相性度の低いお料理には日本酒は合わせない方がいい。
日本酒の相性度の高いものを選べばよいことになります。
<どのように味つけすれば相性度の高いお料理になるか>
料理の味付けは大変重要で、料理にプラス要素を増やしてマイナス要素を減らす味付けをするのが良い。例を下に示します。
・ 鯛の刺身は皮つきの湯引きにする
・ ヒラメの刺身は昆布〆にする
・ ポン酢の合わせはどれも日本酒に合う
・ 洋風の辛みでなく和風の旨味のある辛味を使う。
山椒、胡椒、ニンニク、ワサビなど
以上で先生の講演の内容の紹介は終わりますが、僕は最初に書いたようにお料理とお酒を同時に口にした時に、お料理とお酒の味わいが口の中でばらばらにならないで、融合すれば、相性がいいと思っていましたので、先生のやり方は実施したことはありません。先生のお話では料理が口の中にあった時に飲んで相性を見るのも間違いではないそうです。
僕には特に味覚リクエストとという感覚がないので、これからはこれに気をつけながら飲んでみることにしましす。今までどんな料理が相性の高いかということもこんなに整理して考えたことはありません。旨味や塩味は大切だと知っていましたが、辛味や脂肪が多いものが合うなんて知りませんでしたので、これについてもためしてみます。
大切なことは自分で体験してみることだと思いますので、皆さんも実験してみてください。
最後に講演会の後で試飲をした諏訪の9蔵を紹介します
御湖鶴 菱友醸造(下諏訪)
本金 酒ぬのや本金酒造(諏訪市)
舞姫 舞姫酒造(諏訪市)
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