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司牡丹のお酒の味の秘密はどこにあるのでしょうか

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2月5日に八芳園の日本料理店「槐樹」で第12回目の蔵元さんと一緒に日本酒を楽しむ会に参加して来ました。この会にはできるだけ参加しようと思っていますが、今回で8回目の参加ではないかと思っています。今回の蔵元は高知県の司牡丹酒造の社長の竹村昭彦さんです。 

竹村さんは1962年に司牡丹酒造の跡取り息子として生まれましたが、高知の高校を出た後、東京の学習院大学の経済学に入学されました。寮生活でしたので、高知県の者なら酒は強いだろうと言われて、一気飲みをやらされ、すっかり日本酒が嫌いになたそうです。確かに高知県のつわものは酒が強く、少々やりますと言えば升升という意味で2升は飲む人もいるそうです。竹村さんは下戸で4合ぐらいが限界だそうです。それ、下戸ではないですよね。 

ですから大学を卒業してからは酒造りをするつもりはなく、東京のファッション雑誌やお菓子を扱う会社で5年間営業をしていたそうです。平成2年に蔵に戻ることになるのですが、その理由の説明はありませんでしたが、弟が6歳も離れていて公務員志向でしたので、やもえず、後を継ぐことを決心されたそうです。その時まで日本酒の勉強もしていなかったし、どんなお酒を造りたいかのイメージも無かったそうです。 

司牡丹酒造の歴史のお話は後で触れますが、司牡丹は高知県で一番古い企業で、造り酒屋としてもトップクラスですので、蔵に戻った時は9000石ぐらいの生産量があったものと思われます。この蔵は仁淀川の軟水を仕込み水に使用しているので、軟水のお酒つくり(軟水醸造法)で有名な広島杜氏を昭和6年に受け入れて、独特の酒造りを確立していた蔵でしたから、社長が造りのことを知らなくても全く問題はなかったと思われます。 

でも入社後は普通酒が売れなくなり、特定名称酒の時代に移っていて、それに合わせた色々な改革をされたようで、それについてはもう少し後で詳しく説明いたします。現在の出荷ベースの生産高は5000石だそうで、これまで大変苦労されたものと推察されます。幸いに、竹村さんが入社する2年前に現在の杜氏浅野さんが入社されており、お二人で力を合わせて、改革ができたことは幸運だったのかもしれません。 

僕は竹村さんとは過去に一度お会いしたことはありますが、じっくりお話を聞く機会は今回が初めてです。この会で竹村さんのお話を聞いて、この方は頭の回転が速く、瞬時に状況を判断し行動できる人だなと思いましたので、その証拠となるお話をまず紹介します。 

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この方が社長の竹村さんです。温和な雰囲気でお話もとても上手ですが、僕が感じた事例をお見せします。 

エピソード1: この写真はこの会の中で僕たちと一緒に食事をしながらお酒の説明をしているところです。これはお店にお願いしてこのような形にしたのですが、実は12回の会の中で殆ど初めてのことです。これには裏話があって、それを竹村さんが紹介していただきました。この会を開くにあたって、事前にお店が会で使うお酒を取り寄せて、お料理の内容を決めたのですが、(この会ではいつもそうしています)、竹村さんはもう1000回以上もこのような会を開いていますが、いつもは竹村さんがお料理の内容を聞いて、それに合わせてお酒を選んでいるそうです。その方がお店にとって楽だからということですが、そこまでこだわるこのお店のお料理を一緒に楽しみかったのだと言うのが本音でしょう。このことから想像できるのは、竹村さんは好奇心が旺盛で、すぐ行動する人のような気がします。 

エピソード2: この会の説明の中で、これから結婚する人で八芳園で式を挙げる人には司牡丹で鏡開きを提供しますとか、高知の蔵まで来た人には自分で案内しますと、ぱっと公言されました。これに応える人は殆どいないと思っておられるのと、仮に現れたら、キチット実行することが利益を度外視して、価値があることを瞬間的に判断されたと思います。竹村さんは瞬間の状況判断が早いことが想像されます。 

エピソード: 会の中の自己紹介で、僕は事務屋なので技術的なことは専門ではないけど、お酒のお話を素人に説明するのは得意なのですと言われました。確かに山廃の説明の時に短い言葉で的確に説明されていました。難しいことを簡単に説明することは、その本質をきちっと理解して、聞く側のレベルの合わせた説明ができると言うことですから、理解力が高く柔軟な思考力を持っている表れだと思います。 

エピソード4: お話の中で郷土料理の内容に詳しいし、高知の色々な情報もよく知っているので、高知県の観光案内ならできると言われていましたが、それだけ地域密着の気持ちが強いということでしょう。土佐の上手いもの探しというブログも造っています。http://tosa-no-umaimono.cocolog-nifty.com/ 

エピソード: 平成17年からほぼ毎日ブログを書いているそうで、今回の会のこともブログに書かれていました。http://blog.livedoor.jp/tsukasabotan/archives/2016-02-10.html このブログは2月10日にアップしていますので、しっかり準備されて書かれているようです。土佐弁の独特な言い回しのブログですが、内容はとても面白いので読んでみてください。ユーモアのセンスが溢れています。 

エピソード6: このお話は皆には説明はなかったのですが、僕が個人的に聞いてわかったことです。社長になったのが平成11年で、蔵の全面改造のために平成蔵を造ったのが平成17年ですが、その時に新蔵の内容は杜氏以下に全面的に任せたそうで、きっと大方針は出したけど細かいことには口を出さなかったようです。これは蔵人を信用していることの表れではないかと思います。 

以上今回竹村社長さん個人について感じたことを述べさせてもらいましたが、ユーモアもあるし、声が通るし、場を盛り上げるのがうまいので、お陰さまで楽しい会になりました。ありがとうございました・・・・ 

飲んだお酒の紹介に入る前に、蔵について簡単に説明いたします 

<司牡丹の歴史> 

この蔵の創業は1603年で徳川家康から24万石をもらった山内一豊の家老の深尾和泉守についてきた造り酒屋の御用商人がこの蔵の前身です。屋号は「黒金屋」といい、坂本竜馬の本家の酒屋の「才谷屋」とは関係が深かったようです。司牡丹と名が付いたのは大正7年で、この蔵のお酒を愛した田中光顕元宮内大臣によって「牡丹は百花の王で、その王(司)たれ」という意味で、司牡丹としたそうです。酒つくりのTOPになれという意味だと思います。 

蔵は仁淀川の支流である柳瀬川沿いにある佐川町にあります。仁淀川は日本一清流と呼ばれた四万十川をしのぐ、本当に日本一の清流だそうで、敷地内の井戸からは仁淀川の伏流水が出るそうです。この水は微弱ながらカリウムを含む軟水で、この蔵の命の水となっています。しかもこの土地は夏は盆地独特の熱さがありますが、冬は気温が氷点下まで下がるので、酒造りに最適だそうです。 

昭和6年に軟水醸造で有名な広島杜氏に来てもらいようになって、酒の品質が良くなり、数々の賞を取るようになったそうです。でも社長が蔵に戻った時には、大きな問題があったそうです。それは蔵の敷地は広かったのですが、いくつもの蔵が建っていて、蔵人はその蔵を移動しなければ酒造りができないので、大勢の人が必要だったことです。当時は蔵人が30人くらいいたそうです。 

今までばらばらな処でやっていた作業をまとめて、洗米から蒸米造り、麹造り、酒母造りまで一貫して造れるような新蔵(平成蔵)を平成17年に新築しました。その際フジワラテクノアート社の最新の装置の導入をして、洗米は限定給水が自動で出来る回転式自動洗米浸漬装置を、蒸米は蒸しムラのない横型連続蒸し米機を、製麹はVEX式完全無通風自動製麹を導入して、普通酒から大吟醸まで安定した造りができるようになったそうです。また醪タンクも従来の6トン仕込みから3トン仕込みにしたり、吟醸系では1トン~1.5トン仕込みに小型化したそうです。特に安定した原料処理ができるようになって、普通酒のレベルが格段に向上したそうです。これにより作業の導線が良くなったので、蔵の従業員も季節労働者が10人と社員が3人の体制になったそうで、コストダウンもはかれたのではないでしょうか。 

新蔵ができてから社長のブログ造りが始まったのも、偶然ではなく、安定した造りができるようになって余裕ができたからではないでしょうか。 

<飲んだお酒の紹介> 

僕は今までなんとなく司牡丹は坂本竜馬のような土佐の酒好きが好む男酒のイメージが強かったのですが、広島県の軟水醸造法をベースにしているので、実は女酒の方が近いのかもしれません。でもたくさん飲めるお酒の秘密はどこにあるのでしょうか。今回勉強させていただきました。 

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このお酒がこの会で飲んだお酒ですが、最後に飲んだ古酒が写っていません。それを入れるとなんと、9種類のお酒を飲んだことになります。しかもその中に720mlで1万円もするお酒もありました。 

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この会は日本酒を必ずワイングラスで飲みます。その方が香がわかるので良いと思います。今回は日本酒に合わせて出てきたお料理に対して、竹村さんから丁寧な説明もいただきましたので、これも紹介します。 

<司牡丹・立春朝搾り> 

Dsc_0068このお酒は日本名門酒会に加盟している蔵の38蔵で出しているもので、2月4日の立春の朝に蔵まで酒販店さんが出かけて、朝搾って瓶詰めしたお酒に自らラベルを張って、その後神社で祈願のお祓いを受けたお酒です。事前に注文をいただいたお客様だけに販売しているお酒ですが、今回はその中から2本だけ乾杯酒として会に持ち込まれたようです。 

この日に全国で27万本も出荷されていて、司牡丹だけでも6400本が出たそうです。原料米は松山三井と山田錦で、精米は60%の純米吟醸原酒です。 

飲んでみると炭酸ガスのピリピリ感があり、フレッシュで薄にごりの旨味を感じるけど、全体的にはシャープで後味に少し辛みを感じるお酒でした。  

<かまわぬ・山廃仕込み純米酒> 

Dsc_0074_2平成7年度に40年ぶりに復活させた廃仕込みの純米酒で、原料米は全量高知県産の山田錦65%精米で、酵母は自社培養の9号酵母を使っています。

山廃は速醸のように乳酸を投入しないで、自然に発生する乳酸を利用して発酵させるため、何も「構わぬ」という意味で「鎌、輪、ぬ」と書いて「かまわぬ」と」読ませるようです。 

日本酒度は+6で、酸度は1.6くらいだそうです。飲んでみると山廃独特な酸味があまり強くなく、綺麗な飲みやすい山廃でした。お燗をしてみたら旨味がどんと出ると同時に辛味もしっかり出てきました。 

Dsc_0071_3この二つのお酒に合わせて出てきた料理は次のような前菜でした。この中に高知の山菜のいたどり(虎杖)と舞茸のぴり辛煮も入っています。〆鯖と丸十(高知ではサツマイモのことを丸十という)のぬた和えもありました。 

 

<司牡丹・酒槽搾り純米大吟醸原酒> 

Dsc_0079このお酒はこの蔵の定番の山田錦40%精米の純米大吟醸原酒で、槽(ふな)搾りというタイプの搾り器で無圧で搾ったお酒です。瓶の形が角型になっているので、酒屋で並べやすいと評判のお酒だそうです。 

日本酒度が+4で、酸度が1.3と司牡丹としては辛みと酸味を抑えたお酒で、飲んでみると綺麗な甘みで後味にそれほど辛味を感じないけど、すっきりした後味が良いですね。海外からのソムリエの評判が良いお酒のようです。海外では辛味は嫌がられるでしょうね 

このお酒に合わせたのがウツボの叩き皿鉢盛りでした。このウツボのたたきを食べた後ですとこのお酒の辛味が強調されたのには驚きました。

 

Dsc_0082_2ウツボは高知ではよく食べられるお肴で、骨が多く鱧よりも裁くのが難しいそうですが、鶏のささみのように淡白だけど、コラーゲンが多く、体に良いそうです。ちょっと歯ごたえがあったけど噛むと味わいがありました。  

<秀麗司牡丹・純米吟醸原酒> 

Dsc_0085しっかりとした香りと奥行きのある味わいを持たせるように造った純米吟醸の原酒です。お米は麹米が山田錦60%、掛米が松山三井60%精米です。 

この蔵が使う酵母は9号酵母をベースにしながら色々な香りを持つ高知県の酵母をブレンドして、使用しているようです。 

飲んでみると確かにカプロン酸の香りが立っているけど、旨味もしっかりしていて、口の中で膨らんでスウト消えていくお酒でした。でも後味にはしっかり辛味は感じます。 

瓶のデザインは最近変えたようで、レトロの雰囲気の中に牡丹の花がかわいらしくアレンジされた面白いデザインでした 

このお酒には鰤の燻製が用意されましたが、写真を取り忘れました 

<司牡丹・仁淀ブルー・純米酒> 

Dsc_0089_2仁淀川は日本一綺麗な清流として、最近注目を浴びていますので、仁淀川のイメージを持つお酒を造ってみようと、社長と杜氏が考えたお酒だそうです。 

カプロン酸系の香は清流のイメージがないので、柑橘類系の香を持つ酵母として7号酵母を選択し、ほのかな酸を出すようにしたそうです。 

原料米は山田錦と吟の夢の精米は65%の純米酒で1回火入れだそうです。飲んでみると、明らかにイソアミル系のさわやかな香がしましたので、清涼感は出ていましたし、酸度も1.6位あるのでイメージは出ている思いました。 

このお酒にはウツボの唐揚げがが出ましたが、残念ながらこれも写真を取り忘れました。でも美味しかったです。 

<司牡丹・天香国色> 金賞受賞酒 

Dsc_0090天香国色とは天下一の香と、国一番の色を持つ花という意味で、牡丹のことを意味しています。このお酒は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した金賞受賞酒です。司牡丹は過去に30回も金賞を受賞している蔵ですが、司牡丹の通常のお酒はクルコース濃度が0.8から1.5くらいなので、そのままでは金賞が取れないそうです。 

ですから敢えてグルコース濃度を2.0以にするようにしていますが、それでも日本酒度は+3程度のようです。酵母は9号系を主体として使っているようです。出品酒は香を出すためにアルコール添加をするそうです。 

このお酒はこの蔵としてはトップレベルのお酒なので、価格は1升1万円するそうです。 

飲んでみると確かに少し甘めのお酒で、香りもほどほどにあって、今流行りのお酒にバランスに近づいていました。大手の蔵はその気になれば金賞を取れるお酒造りができることを証明していますね。 

<船中八策・しぼりたて>超辛口純米原酒 

Dsc_0092船中八策は坂本竜馬が後藤象二郎に船の中で8つの提言をしたことを意味しています。坂本竜馬と関係が深かった蔵の代表的お酒としてこの言葉を利用したようです。 

人気の商品なのでラベルの色を変えた5種類の船中八策が出ています。一年中出荷されているオレンジと黒のお酒、冬場限定のピンクの搾りたて生、夏場に出す水色の薄にごり生、秋に出す白色のひやおというわけです。もっとあるのかもしれませんが、わかりませんでした。 

写真ではオレンジに見えますが、実際はピンクです。お米は麹米が山田錦で、掛米は色々なものが使われているようです。日本酒度が+8ですから超辛口ですが、飲んでみるとちょっとイソアミル系のさわやかな香りと、ガツンとした旨味があるので、後味の辛味がそれほど感じません。人気の理由がわかります。 

Dsc_0093これに合わせたお料理が軍鶏鍋です。軍鶏鍋はコクがあってとてもおいしい出汁が出ます。この味なら船中八策のパワーに負けない素晴らしい選択でした。軍鶏鍋がこんなにおいしいとは知りませんでした。 

この後に軍鶏鍋の出汁を使ったラーメンが出たのですが、これが絶品で、八芳園で軍鶏屋台ラーメンをだしたら、必ず食べにくると竹村さんが言われたほどです。 

<司牡丹・山柚子搾り・柚の酒> 

Dsc_0094土佐れいほく産の山柚子をギュッと搾った汁をふんだんに使ったアルコール8%の純米酒と糖類だけで造った酒です。 

山柚子のさわやかな香りとすがすがしい酸味でスウト飲めるお酒でした。海外でも大人気で、フランスの三つ星レストランの巨匠トロワグロ酸も大絶賛だったと聞きました。でも店には出さなくて自分用に買ったらしいそうです。 

今や司牡丹の海外進出のトップのお酒として定着しているそうです。  

<源十・純米大吟醸原酒大古酒> 

Dsc_0097最後に出た酒がとんでもないお酒でした。純米大吟醸の10年以上熟成させた古酒で、先代の名前の源十という名が付いていますが、720mlが1万円もするそうです。 

このお酒の製造年月日を見たら、平成9BYでしたので、16年物です。山田錦45%精米だと思われます。 

色はついていますがそれほど強くありませんし、熟成の香りもそれほど強くありません。飲んでみると優しい味わいで、これなら、古酒が嫌いな人でも飲めそうです。 

15℃クラスの貯蔵庫で16年も熟成させても、こんなにゆっくり熟成するなんて、どうしてなのでしょうね。お酒の熟成は奥が深いですね 

最後にデザートとしてアイスクリンが出ました。 

Dsc_0096アイスクリンは高知県ではどこでも売っているおなじみのものですが、アイスクリームとは違って、ちょっとシャーベットのようなものだそうです。 

今回は高知県産ではなくて、槐樹で造ったオリジナルのアイスクリンだそうです。 

以上でお酒とお料理の紹介を終わりますが、司牡丹のお酒の印象は口あたりは軟水の良さを感じる柔らかい旨味と甘みをかんじる(お酒によってその強さは違います)けど、必ず後味には甘みが残らないで辛味を感じる共通の味わいがありした。簡単に言えば口当たりは女酒で、後味が男酒だから、大酒飲みにも愛されるお酒だということがわかりました。でも金賞を狙えばちゃんと取れる技術力のある蔵だということがわかりました。 

竹村社長 最後まで盛り上げていただいてありがとうございます。12回目の会の中でもこんなに盛り上がったのは初めてではないでしょうか。ありがとうございました。

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