春霞の蔵見学の後は福小町の木村酒造を訪問するために、JR奥羽線を上って湯沢市に行きました。湯沢町は新潟のイメージがあってなんとなく温泉にある街かなと期待していたのですが、温泉は町から随分離れた山側にあるので、あきらめて町中のホテルの泊まることになりました。
その日の夜はホテルのすぐそばの居酒屋「酒林さかばやし」に入ったのですが。休日のせいかお客がほとんどないちょっとさびれたお店でしたが、秋田の地酒は結構そろえてありました。
焼き鳥が専門のお店でしたが、日本酒はそこそこそろっていて、木村酒造の角右衛門の特別純米と純米吟醸のエキストラエディションを飲みました。(写真を取り忘れました)
蔵を訪れた3月12日の金曜日でしたので、翌日から湯沢は犬っこ祭ということで、雪で造られた雪像が色々な処に飾られていました。
ろうそくが中に飾られる雪で造られた社が通りにはずらりと並べられていました。たまたまその社を造っているところを見ることができました。なるほどこんな風に木枠を使って造るのですね。
角度を変えてみましょう。奥に長く伸びています。入口は現代風の建屋ですが、中は昔からの造りを残しています。
これから蔵見学に入りますが、案内は営業部長兼副事業部長の石川亮逸さんにやっていただきました。
蔵見学のご紹介の前に蔵の歴史にふれておきます。
<木村酒造の歴史>
この蔵は秋田県で最も古い蔵だそうで、創業は1615年で今から400年も前だそうです。創業者の木村治良左衛門は豊臣家の重臣であった木村重成の一族で、関ヶ原の戦いに敗れて、秋田のこの地に逃げ延びたらしいのですが、この地は南に3km離れた院内銀山の拠点として栄えたところのようです。水も豊富にあったことから、酒造りが盛んとなり、1800年ごろには24の蔵があったと言われています。現在は、両関、蘭漫、銀嶺白山、福小町の4蔵しかないそうですが、大きな蔵があるのは、その名残ではないでしょうか。
創業当時はここよりもっと北の方にあったそうですが、3代目の時にこの地に来たようです。当時は男山という銘柄だったのですが、明治の時代に明治天皇が東北を巡られた時の宿となって、その時男山を飲まれたら甘口だったので、男山の名はふさわしくない、福娘という名の方が良いということで、福娘と男山の2銘柄で酒を造っていたそうです。
しかし、戦後の商品登録の時に福娘を取られてしまったので、仕方がなく、福小町という名にしたそうです。その証拠となるものが飾られていました。
<お酒の銘柄と造りの概要>
現在杜氏は普段は農業をやり冬季だけ酒造りをする杜氏(山内杜氏系)が未だおられるそうですが、現在70歳を超えられたので、実際は製造責任者として若い杜氏が育っているそうです。また、造りの担当ごとに責任者がいて分業責任で頑張っているそうで、それが、最近連続して全国新酒鑑評会で金賞ととるようになった理由ではないでしょうか。
現在の生産高は600石~700石ぐらいですが、普通酒は造っておらずすべて特定名称酒だけだそうです。そのうち本醸造は15%くらいで、一番多いのが純米酒だそうです。現在の銘柄は福小町と角右衛門です。角右衛門は6年前から出している銘柄で、特定の酒販店に直接納入しているお酒です。全量純米酒で、全量(麹米、掛米)おなじお米を使い、酵母は主に秋田酵母NO12を使っているそうで、イソアミル系の香りの酵母です。主に純米吟醸、特別純米レベルに特定したお酒で、お酒のブレンドはしないでタンク1本で勝負しているお酒で、生産量は200石強のようです。
それに対して福小町は、大吟醸から本醸造まで幅広いお酒の銘柄となっており、18号系、9号系、10号系など色々な酵母を使っていますし、お酒のブレンドも行うそうです。出品酒はすべて福小町で出しています。
原料米は美山錦、酒こまち、亀の尾、五百万石、山田錦、雄町だそうで、美郷錦は使っていないそうです。
それでは蔵見学した内容をご紹介します。まずは事務所から蔵に入る手前に昔の蔵の跡が残されていました。事務所となっていたところが昔は蔵だったそうで、ここに釜があったようです。
その隣には趣ある槽がありましたが、今は使われていないで、大吟醸の袋絞りにだけ使っているようです。
これから現在の蔵に入りましたが、入口の方に瓶詰めラインがあり、奥の方から上ってくるレイアウトでしたので、造りの流れに従って紹介します。
<洗米>
ここでもウッドソン洗米機が使われていました。通常は夕方洗米して、翌朝蒸して放冷してから麹室や仕込みに使われるそうです。
<蒸し場>
和釜ではなくボイラー蒸気による甑で、スーパー加熱はしていないようです。蒸米量は最大900kgでした。隣にある木桶は大仕込み用の洗米したお米を入れる桶のようです。
<麹室>
麹室は2階にありました。入口にはハングリー製麹法、木谷発酵研究所と書いてありました。この研究所が発展して現在のハクヨーになったいるそうです。ハングリー製麹法とは 突はぜ麹の製造には酸素不足や湿度不足のハングリーな状態にして麹を造る方法のようです。ここでは麹蓋に近づけるための3段式の製麹法ですが、温度管理が難しいとの説明がありました。
<酒母場>
ここが酒母室というよりは酒母フロアーといったところで、仕込みタンクの上に造られていました。天井に近いので大きな針が見えます。でもきれいになっていますね。この辺がこの蔵の凄いところです。
ここには大小の酒母用タンクが並んでいました。酒母タンクは木の台の上に置いてありましたが、それはランプを入れて加熱するためのもののようです。
<仕込み部屋>
開放タンクが10基並んでいました。すべて開放タンクで、大きいタンクが1700kg仕込みで、小さいタンクが600kg仕込みです。1シーズンで5回転使うようです。説明通り平均1300kg仕込みとすると、650石ぐらいになりますね。
<搾り>
搾りは薮田と袋絞りだけだそうで、本当は空調した場所に置きたいそうですが、現状は難しいとのことでした。
<濾過機>
これが濾過機ですが、瓶貯蔵のお酒は炭ろ過をしないで、汚れだけを取るろ過をし、タンク貯蔵をするものだけ、炭ろ過をするそうです。
<瓶詰め>
<検品>
最後に大吟醸の粕から焼酎を造るマイクロ波を使った最新式減圧蒸留器です。去年の12月に導入した機械で、未だ試験運転の状況のようですが、非常に香の高い焼酎ができるそうです。現在はたった800本しかできないので、市販する計画はないそうですが飲んでみたいですね。
<貯蔵庫>
とても広い貯蔵庫で、10℃の温度コントロールをしています。部屋の中にタンクがありましたが、これは本醸造や普通の純米酒を火入れして貯蔵しているところだそうです。これらのお酒はシーズンの最後の方でどんと出てくるので、ここで保存するそうです。生酒や上級酒はー5℃のコンテナ冷蔵庫で保管するそうです。
以上で蔵見学の紹介を終わります。粕取焼酎用の減圧蒸留機以外は新しい設備はありませんでしたが、古い建て屋が綺麗に保存されている落ち着いた大人の蔵というイメージでした。蔵の雰囲気はとても良かったです。
<試飲>
福小町の山田錦の大吟醸と純米大吟醸、五百万石の限定純米大吟醸と純米吟醸搾りたて生をいただきました。こんな高級酒ばかり飲ませていただくなんて、幸せですね。
福も町の全種類が陳列されていました。これから判断すると、本醸造は茶色の瓶に黒文字、純米酒は茶色の瓶に赤文字、純米吟醸は緑の瓶に青文字、大吟醸以上は緑の瓶に黒文字のようです。
角右衛門はちょっと違っているようです。瓶はすべて茶瓶で、純米酒が黒文字、特別純米が緑文字、純米吟醸が赤文字、純米大吟醸が青文字のようです。
この陳列棚の中に創業400年記念の純米大吟醸がありました。特A山田錦26%精米、400kg仕込み、ラベルの家紋が地元の漆塗り(川連塗)の特別仕様で、価格が720mlで3万2千4百円、1升で5万4千円でした。それなりに売れたそうです。
以上で蔵見学の紹介を終わりますが、これからどんなお酒を造りたいかとお聞きしましたら、一般ものは食中酒ですが、季節ものは少し特徴を出して、外飲みをする人に途中でこれを飲みないなと思って飲んでもれえるようなお酒を造っていきたいそうです。
お忙しい中をご案内していただいた石川さんに厚くお礼申しあげます
←ご覧になったら、この日本酒マークをクリックしていただくとブログ村のページに戻ります。これでポイントが増えます。携帯やスマートフォーンでご覧の方はMobileModeではクリックしてもポイントは増えませんので、PC-Modeにしてからクリックしてください。よろしくお願いします。