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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第3回目

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インフィニット酒スクール・日本酒中級コース第3回目が3月初めに行われました。今回のテーマ(特に前もって決まっているわけではない)は熟成ということでまとめてみました。 

お酒を長い時間置いておくと熟成して色が付いてきて、やがて紹興酒のようなお酒となり、古酒と言われるようになることは知っている人が多いと思いますが、お酒の中で何が起こっているのかを知っている人はあまりいないと思います。 

それを化学的にみると、お酒の中のアミノ酸や糖類からフラノンという成分ができることを言うようです。フラノンといっても色々あるようで、代表的なフラノンはヒドロキシ・ジメチル・フラノン(HDMF)とヒドロキシ・エチル・メチル・フラノン(HEMF)の二つで、HDMFはキャラメルのような香りで、HEMFは醤油のような香の成分だそうです。 

フラノンの生成は時間が長いと多くなり、温度が高いと多くなります。当然原料のアミノ酸や糖分が高いと多く生成します。逆に時間が短いときや低温で貯蔵した時には生成量が少なくなるのです。その時の香りはどんな香がするのでしょうか。菅田先生は下記のように表現しています。 

カラメル系HDMFの場合(少ない順) 

コンポート → ザラメ → ウエハース → べっ甲飴 → メープルシロップ → カラメル 

醤油系HEMFの場合(少ない順) 

白米 → 米麹 → 餅 → きなこ → 玄米 → 紹興酒 → 醤油 

フラノンの量が少ない時の香りは表現が難しく、人によって印象が違うのは当然のことですが、お酒の色とか搾ってからの時間を考えて、フラノンがあると思われる場合は、この中の香のどれに近いかを考えて表現すれば、間違いはないそうです。確かにそうかもしれませんね・・・・・ですからこの延長にある綿あめとかカルメ焼きというのは良い表現なのかもしれません。 

それから色は生成量が多くなると黄色になり、やがて褐色に近くなります。フラノンがあるかどうかはまずは色で判断します。味については2つのフラノンとも共通で、苦味を感じるそうです。口に含んだ時に最初は甘さを感じても後味に苦みを感じるのですが、最初の香りのインパクトが強いので気をつけないとわからないかもしれません。 

フラノンの生成以外に褐色の色が付くメイラード反応があります。それは還元糖をアミノ酸やたんぱく質の共存下で加熱するとある種の香気成分とメラノイジンと呼ばれる褐色物質を生成する反応で、お料理ではよく見られる反応です。お肉を焼いた時の表面の色などがそうです。この反応は高温でないと急には進みませんが、お酒の場合には火入れで起きるそうです。その量は微々たるものだと思いますが、ひね香のような香りも出るようです。 

一般に香気成分(カプやイソアミル)は時間がたつとだんだん少なくなってきて、それと同時にフラノンが少しずつ出てくるのが普通です。フルーツの香がまだあって、熟成の時間がまだ短いのにちょっと色が付いてたり、ひね香のような香がある場合は、温度管理が悪いとか、2回火入れとか、ブレンドの可能性があると想像されます。 

<ひね香と熟成香とはどう違うのか> 

ひね香は温度管理が悪いと良く出ますが、熟成香とはどう違うのでしょうか。ひね香の元になる成分には下記のものがあるそうです。 

・ フラノン:熟成で出来るもの 

・ フルフール:長期熟成で出る焦げ臭 

・ イソバレルアルデヒド:高温醸造で出る白菜の漬物臭 

・ イソ吉草:生ひね臭、生熟臭 

これらの成分が必ずあるわけではないけど、フラノンが少ないと他の香りが混ざって、ひね香となるようです。熟成の初期段階でよく見られるそうです。 

<熟成のまとめ> 

・ 色は初めは黄色で次第に褐色になる 

・ 香は初めは優しいビスケットで、次第にカラメルや醤油の香りになる 

・ 味は初めは甘さを感じるが次第に苦みを感じる 

・ アミノ酸は熟成でバリン、ロイシン、フェニルロイシンが増えるのでこれでも苦みが出てくる 

・ 熟成では必ず苦みが出るので、それがどのくらいあるかを頭の中においておくと、熟成の度合いがわかるそうです 

・ 活性炭ろ過をするとフラノンがとれるので、色がなくなり、苦味もなくなり、香も少なくなる。簡単に言えば、熟成の柔らかさを残しながらクリーンにすることになります。これをお酒の造りとして織り込んでいる蔵の代表に大七酒造があるそうです。 

<熟成を確認する試飲 

Imgp0443

 <試飲したお酒のリスト> 

① 大七酒造 生酛 純米 五百万石 69%精米 
  Alc度15-16、日本酒度+3、酸度1.8、AA度:1.0 酵母 協会7号 
 

② 車多酒造 天狗舞 山廃純米 五百万石 60%精米 
  Alc度15.7、日本酒度+3、酸度1.8、AA度:2.0 酵母 自社酵母(9号系か)
 

③ 黒龍酒造 火いら寿 純米大吟醸生 山田錦 35%精米
  Alc度15、日本酒度+4、酸度1.3、酵母 自社酵母(14号系)
 

④ 王禄酒造 意宇 純米大吟醸 無ろ過生原酒 山田錦 50%精米 24BY
  Alc度17.5、日本酒度+5、酸度2.0、酵母 協会8号
 

<色による比較> 

熟成度を確認するために、まずは色を見てみましょう。 

Imgp0441

左から大七、天狗舞、火いらず、王禄です。一番透明度が高いのが大七で次が火いらず、その次が王禄、一番色が着いているのが天狗舞でした。外観で粘度を見ることを推奨するところがあるようですが、ワインの場合は粘度はある程度エキス分と比例するので意味があるけど、日本酒の場合は粘度は色々な処理の仕方で変化するので、粘度を見ても何もわからないそうです  

この4つのお酒で熟成年数から言えば、王禄、天狗舞、大七、火いらずの順に長いです。具体的にいえば、王禄はー5℃の低温3年熟成、天狗舞常温2年熟成、大七は1年熟成で炭素濾過、火いらずは新酒です。 

大七が透明度が高いのは炭素濾過のせいで、フラノン成分が取り除かれているからです。ですから炭素濾過をしていると色では熟成度は全くわかりません。香も少なくなっているので難しいです。王禄は低温なのでゆっくり熟成が進んでいるので、色だけでは難しく香や味で判断するそうです。 

<大七と天狗舞の香と味の比較> 

今回の大七と天狗舞はアミノ酸度(AA度)が違うだけで、他のスペックがほぼ同お酒でしたので、その二つがどう違うかを調べました。大七の精米度が69%とちょっと天狗舞よりわるいけど、大七は扁平精米なので実質おなじくらいと考えて良いそうです。 

天狗舞は明らかに熟成の香が強いが、香の強さをどのくらいに置くかは僕には難しかったです。香のレベルはべっ甲飴か玄米くらいかもしれません。大七はアルコール臭が少しして、シンプルで透明感のある香りで、熟成の香りは感じませんでした 

味を比較してみると、大七は甘みや旨味もそこそこあり、甘さ旨味のバランスが良く膨らんでいき、後半は酸味を感じ出して、でも酸だけが浮いてくることはなく、軽くて綺麗なのにに伸びていくお酒でした。一方天狗舞は口に含んだ時は甘みと旨味は大七とおなじくらいですが、後半になると同じように酸味を感じ始めるけど、苦味を出てきて余韻に苦みが残る味わいでした。天狗舞は大七よりアミノ酸が多いので、旨味を期待する人が多いかもしれませんが、アミノ酸の大部分は苦みを伴うものが多いので、この天狗舞はアミノ酸から出てくる苦みと思われます。ですから天狗舞を炭素濾過すると大七のようになる可能性があることを示しているそうです。 

<お酒の相性について> 

今回の大七と天狗舞は相性が良いお酒だそうです。まず、大七を飲んですぐ天狗舞を飲んでみると、初めに感じていた酸や苦みが抑えられて、飛び出さなくったのです。逆に天狗舞を飲んですぐ大七を飲むとすこしコクが出るようになりました。これは最初に飲んだお酒の良さが後のお酒を補ってくれたからで、これが相性の良さなのだそうです。 

もうひとつ試飲をする時の最初の一杯は口をゆすぐ程度にして、口の中をお酒になじませてからやるのが良いそうですので、試してみてください。 

<火いらずと王禄の比較 > 

火いらずは山田錦35%精米の純米大吟醸の今年の新酒ですから殆ど熟成はしていません。それに対して王禄は山田錦50%精米の純米吟醸生原酒ですが、-5℃で約3年間熟成したお酒です。 

色に関してはどちらもついていませんが王禄が少しだ着色しています。香を見てみますと、火いらずはほわほわっとした綺麗だけど優しい香りで、爽快感のあるサクイソ系の香りでしたが、少しカプの香りも感じます。王禄はカプの香りがするけど弱くなっていて、熟成の香りも少しますが、フラノンの香というかアンズやドライフルーツの香と言っていい感じでした。 

味をみると、火いらずはソフトで柔らかく程よい甘みと旨味を感じて、全くとげとげ感がないどうして新酒でこんな味になるかがわからないほど旨いお酒でした。アフターも優しくスウット伸びていて、コハク酸の辛味を全く感じないお酒でした。先生もどうしてこんな味を出せるのかわからないと言っていました。 

王禄はテクスチャーが火いらずよりとろっとしていて、柔らかい旨味を感じるお酒で、フラノンと思われる軽い苦みを感じるけど、中々捨てがたい美味しいお酒ということになりました。 

以上で今回の試飲のお酒の紹介は終わりますが、熟成にも色々なタイプがあるので、とても表現が難しいことがわかりました。

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