先日、八芳園の日本料理店の槐樹で第14回蔵元さんといっしょに日本酒を愉しむ会に参加してきました。今回は福井県の毛利酒造の社長の毛利徹郎さんをお呼びしての会でした。毛利酒造のお酒は2013年の福井県酒造組合主催の地酒の会として「越前・若狭の地酒と蛍の夕べの会」に参加した時に初めて飲んだのですが、その時はあまり印象が強くなかったように思います。でもこのたび初めてじっくりいろいろなお酒を飲んだのですが、一つ一つが味わい深く、もしかしたら将来面白い蔵になるような予感がしましたので、ご紹介したいと思います。
毛利酒造は創業が昭和13年と若い蔵ですが、蔵ができた経緯が変わっていて、創業者の毛利淳吉さんはもともと税務署の職員をしていたのですが、たまたま宿場町であった東郷の酒蔵が売り出されるのを聞いて酒造の免許を取って買い取ったのが始まりだそうです。その蔵は「天田屋」という蔵で、戦国時代から酒つくりをしていた老舗の蔵だったようです。
初代の当主が詩人の大町桂月が好きだったことから「越の桂月」というブランドを立ち上げたそうです。現在は3代目の毛利徹郎さんが社長で、そのブランドを引き継いでおられますが、「梵」にいた南部杜氏が蔵に来ていただいて、いい酒ができるようになったとのことです。
毛利酒造は福井の九頭竜線の越前東郷駅にある蔵で、この地は白山をルーツとする足羽川の伏流水が豊富なところで、米処でもあります。近くには佐々木小次郎が秘伝の技の「燕返し」を編み出したといわれる一乗の滝もある自然豊かな場所で、海の幸や山の幸が豊富でおいしい食べ物が多い土地です。ですからこの蔵のお酒は食中酒としてお料理を邪魔しない酒、香りは少なめで料理に寄り添うようなお酒を目指しているそうです。
このところ、食事に合うお酒として知名度を上げてきたのですが、平成25年発売した「沙利」がお寿司に合うお酒として評判になり一気に注目されるようになったそうです。沙利という名前はサンスクリット語のお米を意味する「砂利」、お釈迦様の遺骨を意味する「舎利」、お寿司の酢飯を表す「シャリ」などをもじってできた造語だそうですが、面白い名前ですね。
今回はほとんど沙利シリーズのお酒を飲むことが出きました。沙利はどんなお酒なのでしょうか。後でご紹介しますがまず飲んだお酒を見てもらいましょう。
透明な瓶に入っているのが全部沙利シリーズのお酒です。瓶を透明にしたのはお寿司に合わせるお酒というイメージを出すためだそうですが、実は透明な瓶は紫外線を通しやすくお酒の痛みが速くなるので、実際に販売するときには光を通さない遮光フィルムの袋に入れているとのことでした。
それでは今回お酒の紹介をしていただいた毛利酒造の社長の毛利徹郎を紹介します。
徹郎さんはもともと、サラリーマンで婿養子としてこの蔵に入ったそうで、造りのことは詳しくなかったそうですが、酒つくりについては杜氏とよく議論をして進めているそうです。黒龍の水野社長とは同い年で交流も深く、色々ご指導を受けたり、福井県食品加工研究所の久保先生とも懇意で、色々ご相談できるとても良い環境をおつくりになっているようです。また息子さんは24歳でもうすでに蔵に入って修行されているようで、県の醸造研究所に研究に行ったりして腕を磨いているとのことでした。いずれ息子さんが杜氏の後を継ぐことになるのでしょう。
槐樹の日本酒の会は出てくる日本酒に合わせて、お料理を出すという珍しい趣向の会です。それだけに料理長は事前に日本酒を飲んでお料理を決めているようです。料理が出た時にその説明をしていただければ、その内容をこのブログで紹介できるのですが、それがないので、今回も別々に紹介します。
では飲んだお酒の紹介をいたします。飲んだお酒は6種類ですが、8種類のお料理に同じお酒を2回合わせて使いました。お酒は全部の写真を個別に取ることはできませんでしたので、組み合わせで紹介します。
1.越の桂月 純米大吟醸
黒い瓶のお酒が越の桂月の純米大吟醸です。山田錦40%精米の19BYの純米大吟醸で、5℃の冷蔵庫で熟成したものです。5℃で熟成したものとは思えないほど、綺麗な熟成をしていて、香りも穏やかで丸みが出て優しい味わいのお酒でした。このお酒は非売品で、このような会でしか出していないお酒だそうです。2種類の酵母のお酒をブレンドしているお酒だそうですが、熟成しているので酵母の香りはわかりませんでした。
2.沙利 燗左紫 純米酒
このお酒は赤い文字で燗左紫(かんざし)と書いてあります。紫とはお寿司につけるお醤油のことで、その左にお燗をしたお酒を置いて飲んでくださいという意味だそうです。このお酒は山田錦65%精米の純米酒で、酵母は協会9号、日本酒度は+5、酸度1.4、アルコール度数16%でした。飲んでみると少し熟成香があったので、お聞きしたらお燗に合うように1年熟成しているお酒だそうです。後味が綺麗でいて、あたりが柔らかく、ちょっととろみ感があるお酒でした。なかなかいいのではと思いました。
お燗にした燗左紫も飲みましたが、香りを嗅いだだけでは熟成香はあまりしないけど、口に含むとはっきりわかります。確かにお燗をするとまろやかになり、口になかでのふくらみが大きくなる感じです。僕は熟成香がちょっと気になるので、軽く炭素ろ過して香りをとるのも面白いかなと思いました。もちろん味は変化すると思いますが、どのようにするかは蔵の技ではないかな。
3.沙利 5割諸白 純米大吟醸
このお酒は沙利の標準のお酒で、山田錦50%精米の純米大吟醸です。5割諸白とは麹米も掛米も50%精米という意味だそうです。このお酒こそ寿司にあったお酒を狙ったもので、日本酒度は+4、酸度1.7、アルコール度16度で、酸味を利かしたちょっと辛口のきれのあるお酒でした。酵母は9号酵母と10号酵母のブレンドだそうです。このお酒は温度が上がってきて、室温位になると柔らかさが出るようです。寿司に合わせるにはそれの方がいいかもしれません。
4.沙利 風凛 辛口純米大吟醸
左の写真のなかのラベルが青いお酒です。夏限定の辛口に仕上げているお酒で、去年までは山田錦を使っていましたが、今年から五百万石50%精米に変えたそうです。酵母は14号を使っているそうです。日本酒度は書いてありませんが、アルコール度数は15%でした。後味がすっと伸びる感じで綺麗な余韻があり、しかもイソアミル系の酵母独特の後味にシジミのだしのような辛みが残りますが、嫌みがなく上手くまとめていると思いました。とても良い夏酒だと思います
5.沙利 朧月 純米吟醸滓絡み 生酒
右の写真のお酒で、山田錦60%精米の純米吟醸の滓がらみの生酒です。生酒らしい滓の感じが少なく、口に含むとふわっと丸く膨らんでくるので、うまく作っていると思いました。酵母は9号だそうで、後味がすっきりしていているけど、良い余韻が残ります。
6.沙利 時超 Premium
このお酒は左の写真のお酒で、黒い字で大きく沙利と書いてあります。山田錦35%精米の純米大吟醸で。酵母は福井酵母を使った野心的なお酒で、まだ発売していないそうです。日本酒度は±0で、珍しく甘めにつくったお酒でした。時代を超えるお酒という意味の名前を付けたそうですが、まだ試験醸造の段階だそうです。このお酒も1年j熟成でした。、飲んでみると確かに甘さを感じますので、もう少し酸を出してもいいかなと思いました。
以上でお酒の紹介を終わりますが、この蔵のお酒の酒質はすごくいいと思いました。蔵の生産量は300石と非常に小さな蔵ですが、どのお酒を飲んでも狙いがはっきりしているし、その狙い通りの味を出している気がしました。ちょっと辛口なのは問題内ですが、気になるのは熟成をかけて味に丸みを出そうとしていることかな。熟成しなくても同じような丸みが出るようになったら、最高かもしれませんね。頑張ってみてください。
この会のイベントとして毛利社長とジャンケンをして勝った人に漆塗りの酒器がもらえるチャンスがあり、見事とることができました。
1.乾杯の肴 槐樹もなか(焼雲丹、蒸雲丹)
2.酒肴八景 (いろいろなので見てください)
6.強肴 あなご白焼きサラダ仕立て
8.おまけ 大根ライチ
最後にお料理を担当した料理長と副料理長をご紹介します。
料理長 上原賢一 副料理長 安田 至(やっさん)
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