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雄町サミットに参加して感じたこと

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今年の雄町サミットは第9回目ですが、開催場所を例年行われてきた椿山荘から九段下のホテルグランドパレスに変更しただけでなく、第1部では酒類業界関係者限定の唎き酒会と日本酒の専門家による審査講評と受賞酒の発表第2部では受賞蔵の表彰と食事付の懇親会の2部制にして行われました。去年までは懇親会の会場でしか唎き酒ができなかったので、主に唎き酒をしに来た人はほとんど食事ができなかったけれども、今回はすでに唎き酒を終えている人が多かったので、ゆったりと楽しむことができて、大変良かったと思います。 

この会は岡山県酒造組合と岡山県酒造好適米酒造組合とJA全農おかやまが主催する会で岡山県で栽培した雄町の良さを全国に広めるために開始したもので、確かに出品する蔵の数も、お酒の出品数も年々増加の一途で、今年は126蔵、出品点数が194点にもなりました。この会が開催された最初の年は雄町の栽培面積も少なかったけれども、今ではぐんと増えたようで、このあたりの経緯については下記のブログを見てください。一時雄町がなくなってしまう恐れがあった時期もあったなんて知りませんでした。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-eb0a.html 

僕が雄町サミットに初めて参加したのは2009年で、その後毎年のごとく参加してきていますが、昔毎年受賞してきた蔵が最近受賞できなくなっているのを良く見かけるようになりました。そのお酒を飲んでみると、確かに受賞酒に比べると特徴が薄い気がしましたが、どんな基準で選出しているかはとても気になります。落選した蔵元さんに聞いても審査の基準がよくわからないと言われる方が多かったように思えます。今年は審査員の方の報告をよく聞いて、僕なりにどんな基準で審査されているかを考えてみました 

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<審査員の講評の紹介> 

審査員は毎年少し変わるようですが、今年は下記の7人の方で行われました。 

1.日本酒造組合中央会理事 濱田由紀雄
2.日本醸造協会会長  岡崎直人
3.山形県産酒スーパーアドバイザー 小関敏彦
4.日本酒輸出協会会長  松崎晴雄
5.上田酒類総合研究所所長  上田護國
6.酒類総合研究所主任研究員 大江吉彦
7.岡山県工業技術センター所長 産本弘之
 

僕は専門家でないので、この方はどのような人であるかは良くわかりませんが、経歴から見ると松崎さん以外は国税局の鑑定官や、酒類総合研究所や工業技術センターの経験がある方ばかりのようで、お酒の審査の専門家であることは間違いないようです。この7人の方が審査の講評をしていただいたので、まずそれを紹介します。 

.日本酒造組合中央会理事 濱田由紀雄 

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 ・ 審査の基準は雄町らしさがあるかどうかで決めた。
 ・ 具体的には柔らかなふくらみ、繊細な味、切れの良さであ
   る

 ・ 米の品質特性をお酒に引き出すための技術力が年々高まっ
      ているように思える。
 ・ 吟醸の部:香りは派手ではないが雄町らしい繊細な味が出て
      いた。
 ・ 純米の部:味わいが少ないものが多かったが、熟成すれば
   良くなると感じた。

2.日本醸造協会会長  岡崎直人
 

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 ・ 吟醸の部:以前より落ち着いた香りのものが多くなった。
 ・ 具体的にはカプロン酸エチルの香りの出し方が上手くなって

   いるのと、イソアミル系の香りのお酒もあり、雄町に合った
   香
りの研究が進んでいると感じた。
 ・ 純米の部:この分野には80%精米のお酒も含まれて、この
   お酒の味はかなり違っているので、今後は別の審査を考え
   る必要があると思う。
 ・ 出品酒の中に4VGの香りのお酒もあったが、原因はわかっ
   ているので、今後は対応してもらいたい。

3.山形県産酒スーパーアドバイザー 小関敏彦

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 ・ 吟醸酒は123点の出品のうち45点が結審に残ったが、その
   う ち20点は製造過程より貯蔵課程に問題があるように思え
   たので、今後は注意してもらいたい。
 ・ 特に生酒は生熟のものが多く、出品する前に確認してもらい
   たい。
 ・ 火入れの場合でも8月の審査では火入れの遅れが味の変化
   となって出るので注意が必要。
 ・ 純米酒は生酛、山廃、原酒、生酒と色々あったが、そのお酒
   の飲み頃を考えて出品してもらいたい。
 

4.日本酒輸出協会会長  松崎晴雄 

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 ・ 一つの米だけの市販酒の品評会はここだけであり貴重な場
   である
 ・ 多様性のある幅の広いお酒が集まったので、どうやって雄町
   らしさを評価するかは結構難しかった。
 ・ 雄町の特徴は酸味と甘みにあると思うが、今回は米が溶け
   なかったのか全般的に軽めの酒が多かった。
 ・ 雄町の特性を生かすためには香りの高い酵母ではなく、香り
   の少ない酵母でオーソドックスな作りをして、酸と甘みのバラ
   ンスを取った方が良いように感じた。
 ・ 雄町の味には色々なタイプががあるので、雄町の特徴を生
   かした酒器を選ぶなどの工夫をした方が楽しめると思う。

5.上田酒類研究所所長  上田護國
 

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 ・ 雄町のお酒の特徴は独特の旨みがあって後味が軽いことだ
   と思う。
 ・ 吟醸酒は醸造技術が上がって酒質は確かに良くなっている
   が、逆に雄町らしさがなくなってきていると感じた。
 ・ 純米酒には雄町らしさのあるお酒が多かったとおもう。
 ・ 生酛系のお酒を一緒に審査したので審査はなかなか難しか
   った。

6.酒類総合研究所主任研究員 大江吉彦
 

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 ・ 多様性の富んだお酒が多く出品されたと感じた
 ・ 海外でのお酒の飲み方にはいろいろな飲み方があると思う
   が、町のお酒の幅は広いので、それに対応できるお酒だと
   思う

7.岡山県工業技術センター所長 産本弘之
 

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 ・ 岡山県のお酒が多く選出されたことにほっとしている
 ・ 雄町のお酒の特徴は酸が効いていてボディ感のあってふくら
   みのあることだと
教わってきた。
 ・ 吟醸酒はスレンダーの幹事の味でボディ感が少ないお酒が
   多かった。
 ・ 純米酒は色々なタイプのお酒がたくさん出ていたが、飲みご
   たえでさみしいお酒が見られた
 ・ 醸造技術よりは出荷管理の悪いのもが見られたので、改善
   してもらいたい。
 

以上で7人の先生方の講評の紹介を終わりますが、僕が感じたことは以下の点です。 

 ・ 雄町らしさの基準が人によって微妙に違うのが気になりまし
   た
。雄町らしさは膨らみと後味の奇麗さという方もいれば、酸
   味と甘みが特徴でそのバランスに特徴があると言われる方
      もおられ、何を基準するかをもっと明確にして共有した方が
      良いと思いました。
 

 ・ 純米酒には生酛系や古酒なども含まれており、評価するの
   が大変だったということはわかりますが、この場合、それ以
   外のお酒と基準を合わせるのは難しいのではと思いました
 

 ・ 吟醸酒の精米度は35%から60%で、純米酒の精米度が
   50%~80%というのは分け方としてはとても不自然な気が
   するので
、どうしてそうしたのかの説明がほしかったです。 

<僕が考える雄町らしさ> 

僕は雄町のお酒は大好きですが、色々なタイプのお酒があり、今まで飲んだ経験ではなかなか「これだ」と言いにくいです。確かに口に含んだ時のふくらみがしっかりしているものは後味に軽快さがないとバランスが悪くなるし、最初のふくらみをが少なくても、奇麗な余韻が漂えばこれも素敵だと思います。 

懇親会の会場で雄町らしさについて小関先生にお聞きしてみました。先生のお話では、雄町は味が出やすいお米で、味に幅があるので、その幅をうまく出せていて後味の切れとか伸びとか余韻があるのが理想的だが、切れと余韻は相反するもので、両方を出しているお酒は少ないし、この時期の審査ででそれを求めるのは難しいそうです 

結局、雄町が出せる味の幅の広さと後味の奇麗さや余韻があるものが雄町らしさなのかもしれませんが、僕個人は後味の余韻の奇麗さや複雑さが好きなので、大吟醸よりは精米度が50%~60%の純米酒が好みです。 

<優等賞受賞酒の酒質の傾向について> 

この会では出品されたすべてのお酒について酒質についての一覧をいただきましたので自分で優等賞だけのお酒の酒質を調べてみました。 

吟醸酒 

Photo

純米酒 

Photo_2

上記の表はエクエルで作って写真の形で載せましたので、小さくて読みにくい方はクリックすれば拡大できますので、それで見てください。 

この表から判ったことは日本酒度は+1~2で予想通りなのですが、酸度は1.4~1.5があって出品酒にしては酸があること、アミノ酸は蔵によって公開していませんが、アミノ酸値が1.0~1.3というのは結構アミノ酸を出していることが判りました。これが味にどう影響するかは僕は専門家でないので、皆さんで考えてください。 

<僕が気に入ったお酒の紹介> 

懇親会の会場での試飲は優秀賞含めて全種類飲むことができました。試飲場は大きな会場の隅にありましたが、会場に余裕があったのでゆっくり楽しむことができました。 

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会場では関係者の表彰や優秀賞の蔵へのインタビューなどが行われましたが、それについては省略しますので、市田さんのサイトを見てください。
https://writerichida.wordpress.com/2017/08/14/%e7%ac%ac9%e5%9b%9e%e3%80%8c%e9%9b%84%e7%94%ba%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88%e3%80%8d%e3%81%ab%e4%bb%8a%e5%b9%b4%e3%82%82%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%80%82%e3%80%8c%e5%94%8e%e3%81%8d%e9%85%92%e4%bc%9a/ 

最後に僕が気に入ったお酒を紹介をします。僕が勝手に感じたことで聞き流してください。今もう1回やってみれば違うことになるかもしれません。 

<吟醸酒> 

利守酒造 赤磐雄町生     宮下酒造 極聖 純米大吟醸        

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結城酒造 結 純米大吟醸 

Dsc07528_2吟醸酒は雄町らしさというよりはバランスの良さが目立ちましたね。 

赤磐雄町生はさすがに味のふくらみも余韻の良さもあり、さすがに本家本元の強さを感じました。 

吟醸酒では岡山県、と山形県が5蔵受賞しましたが、僕にとっては岡山県の方が少し雄町らしさがあったような気がしました。 

吟醸酒と純米酒の両方を受賞した蔵は、利守酒造、宮下酒造、秀鳳酒造、結城酒造の4蔵でしたが、どの蔵も雄町については自信を持っている蔵と言えます。 

その中で最近安定した力をつけているのは結城酒造ですね。雄町らしさというよりはバランスの良さは秀でていました。杜氏の浦里美智子さんは造りを初めてまだ経験が少ないのに、すごいですね。 

美智子さんおめでとうございます。あれ持っていただいたのは特別純米酒ですね。
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<純米酒> 

純米酒の方が味に幅があって雄町らしく感じる一方、あまりにもタイプの違うお酒があってあまり雄町とはおもえないようなものがあるのを感じました 

結城酒造 結 特別純米酒   宮下酒造 極聖特別純米酒 

Dsc07539Dsc07523_4たまたま吟醸酒と同じ蔵のお酒が選ばれてしまいましたが、どちらも吟醸酒よりは酸度も高く、アミノ酸の量が増えているだけあって、雄町らしくなっていると思いました。どちらも余韻の程度が良かったです。 

その中でもちょっと変わった生酛造りの雄町に面白いお酒を見つけました。 

杉勇蕨岡酒造場 生酛純米原酒 

Dsc07526酸度が1.8もありアミノ酸も1.3もありますが、うま味は少なめで、温度が低いとちょっと辛みを感じますが、温度が上がってくると甘みが増えてきて、バランスが良くなりました 

そしてゆっくりと余韻が伸びていきます。膨らみという意味では雄町らしさはないけど、酸味を感じながらの余韻の良さはもう一つの雄町かもしれません。 

お燗にしたらすごくよくなると感じました。 

以上で雄町サミットで感じた僕の印象を述べさせてただきました。来年も今年と同じように行われるのなら、ぜひ参加したいです。

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