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梅乃宿のお酒には新しさと伝統を感じました

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8月の末の平日の夕方に横浜の居酒屋で梅乃宿の蔵人をお呼びしての試飲会があることを日本酒カレンダーで見つけて、お電話したら10人強の小人数の会ですが、宜しかったら参加くださいと言われたので参加してきました。 

そのお店は横浜駅の東口から歩いて5分くらいの高島2丁目にある「いざか屋若蔵」でした。この辺の地理に疎い僕でしたので、行くのに迷ったのですが、横浜駅東口から万里橋を渡ってすぐの通りの左側にあるのですが、それらしいお店が見つかりません。でもビルの1階に梅乃宿の垂れ幕があったので、そのビルの裏側にまわってみたらありました。 

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とてもこじんまりとした素敵な雰囲気のお店で、ここに開店してまだ2年目だそうで、お店の店長の鈴木良太さんは元々横浜育ちで、京都のお店に修業してから横浜に9年前に帰って最初に井土ガ谷に店を出したそうで、この店が一番新しく3店目だそうです。 

お店はカウンターと10人くらいが座れるテーブルがあるだけのお店で、日本酒は色々置いてありましたが、梅乃宿のお酒は昔から入れているお酒だそうです。下の写真が店長でタンポポ自業株式会社の代表取締役の鈴木さんです。会社の事務所は隣のビルなので、このお店が本命かもしれませんね。なかなかかっこいい人ですね。 

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梅乃宿からが2人の営業マンがこられていて、お酒の説明をしていただきましたが、その説明は主に奈良からこられた横田和士さんです。 

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梅乃宿酒造はどんな蔵なのでしょうか。ちょっと調べてみましたので、まず蔵の紹介からいたします。 

蔵は奈良県葛城市東室にあり、近鉄御所線の近鉄新庄の近くにあります。創業は明治26年で創業者は吉田熊太郎さんです。その後蔵がどのように発展したかはよくわかりませんが、昭和25年に今の蔵の名前の梅乃宿酒造となります。この蔵には樹齢300年の大きな梅の木があって、春になると鶯が良く遊びに来たことから「梅乃宿」という名がついたそうです。 

昭和35年には清酒売上高が3500石にもなったようですが、たぶん大手の桶売りもだいぶあったようで、大手が桶買いをやめ始めて昭和54年には自社ブランド中心に移行し、本格的に吟醸酒の方向にシフトします。当時は吟醸酒がまだ出回っていない時でしたので、大変人気が出たようです。この時に社長になったのが、4代目社長の吉田暁さんです。それが昭和59年のことです。 

暁さんはそこから酒造りを大きく方向転換することになります。この時代はちょうど日本酒離れが多くなり、日本中の蔵がどうやって生きていくか大変苦労していた時代でした。暁さんはもちろん本物の日本酒造りに力を入れる気持ちはありましたが、このままではじり貧になるという思いから、大きな決断をします。自分の蔵が持っている強みは何かと考えて、思い立ったのが自社の得意技術の「伝統ある発酵技術」を活かして清酒以外の色々なものを造ろうということでした 

まず最初に行ったのが、瓶内発酵のの低アルコールの発泡性・純米酒「月うさぎ」の開発でした。この商品は夏場によく売れて、夏場でも製造できる環境になりました。夏場は杜氏がいない期間ですので、若い社員だけで行なわざるを得なくて、これで杜氏がいなくても酒造りをする環境が生まれたそうです。 

次の取り組んだのがリキュールの生産です。それは大量に生産した月うさぎの酒粕は酒粕としての人気がなく、産廃にせざるを得ない状況でしたので、その酒粕から焼酎を造ることを思いつき、平成13年にリキュールと焼酎の製造免許を取り、焼酎の生産を始めました。この焼酎は販売は考えておらず、アルコール添加用の醸造用アルコールとして使うつもりでしたが、南紅梅を焼酎に漬け込んだ梅酒を造ることにしました。それだけでは面白くないので、日本酒につけた梅酒も造りそれをブレンドした梅酒を「蛍梅・おうばい」として平成14年に販売を開始しました。このお酒が大ヒットしたのです。 

その後は、梅酒だけでなくリキュールの製造販売の方向に動き出しました。いちご、ゆず、もも、リンゴ、ミカン、マンゴーなど次々と新しいものを開発していきます。現在の販売量は清酒が1600石、梅酒が1000石、その他が1400石で合計4000石の生産となり、今ではリキュール生産蔵としての方が有名になっています。 

この間日本酒の製造に力を抜いていたわけではありません。吟醸酒にシフトしたことは上で説明しましたが、現在の清酒の平均精米率は55%ですから特に高級酒に力を入れているようです。このような発展をしてきた裏には暁社長の強い思いがあったのです。 

暁さんが社長になった時はこの困難な時代をどう乗り切るかと同時に5代目にどう繋いでいくかの思いがあり、その時に出会った言葉が「1年を計る人は花を育てる、10年を計る人は木を育てる、100年を計る人は人を育てる」という言葉だったそうです。それまでも人を育てることはやってきたつもりでいましたが、一人一人の能力を最大限引き出すまではやっていなかったことに気が付き、組織全体としての理念や文化、雰囲気、人が生き生きとする人事制度の強化などを行うと心に決めたそうです。そして、その土壌がほぼできた平成25年に娘の吉田佳代さんに社長を譲り、会長に退き現在に至っています。 

佳代さんに社長を引き継いだ年は創業120年になる年で、そこで新しい酒文化を造っていく理念を明らかにし、その象徴として新しいブランド山風香を立ち上げました。山風香は蔵が葛城山の麓にあることから、山から吹く新しい風の香りを表現したもので、山香と風香の2種類から成り立っています。山香はどっしりと構えた山のように梅乃宿の伝統を生かしたお酒、、風香は革新と新しい酒文化を表していて、搾りたてのようなフレッシュな味わいを楽しめるお酒です。瓶の色とラベルの色でお酒の酒質が一目で判るように、山香は茶色い瓶、風香は透明瓶、ラベルの文字は大吟醸は金色、純米吟醸は銀色、純米酒は黒色、生酛は緑、山廃は橙したのではないかと思います。これは蔵人から直接聞いたことではないので間違っているかもしれません。 

この会社のホームページみますと、他社にはない雰囲気があります。それは会社としての理念が明確に描かれていることと、従業員一人一人の声が描かれていることです。若い人が多く活気ある気持ちで、前に向いている様子が目に留まります。本当にこのまま素直に発展するのかどうかはわかりませんが、何が生まれるのだろうという期待感はありますね。とても楽しみです。 

以上で蔵の紹介は終わりますが、最後に新社長のプロフィルを紹介しておきます。 

 ・ 1979年生まれ現在38才
 ・ 平成14年 帝塚山大学経営情報学部卒
 ・ 株式会社モリタに入社
 ・ 平成16年 梅乃宿酒造株式会社入社
 ・ 平成25年 同社 代表取締役社長 就任
 ・ コンセプト 新しい酒文化を創造する蔵
          具体的には伝統ある技術を守り研鑽し続け、伝
          統技術をもとに価値ある商品や提案を時代に合
          わせて提供することだそうです。
 

それでは今回飲んだお酒の紹介をします。 

1.ARAGOSHI×MINOH 

Dsc_0054このお酒は日本酒ではありません。乾杯用に飲んだビールです。この蔵ではあらごし梅酒という銘柄の梅酒を造っていますが、これは南紅梅のうめをあらごしした果実をたっぷり使った梅酒で、この梅酒が発売されて10年目の今年に発売10周年記念に作ったビールで、今年限りだそうです。 

大阪のクラフトビールの名門の箕面ビールと梅乃宿酒造がコアラボレーションして作ったビールです。 

飲んでみると梅の酸っぱさはあまりなく、少し甘めのビールでした。麦芽の苦みとマッチした面白い味でした。アルコール度数は5.5%ですから普通のビールと同じです。 

2.UK-02 

Dsc_0057このお酒は梅錦蔵人の酒No.02という名前がついていて、その頭文字をとって、UK-02というラベルになっています。 

杜氏から託された蔵人がタンク1本を自由なコンセプトで造り上げる形で醸造したもので、2年前に初めて作ったお酒をUK-01としたので、今年はその第2弾としてUK-02となったわけです。 

UK-01は甘くて酸で締めるジューシーなお酒で評判が良かったそうで、UK-2は奇麗な酸を出すさわやかなお酒を目指して、リンゴ酸の出る協会77号と6号酵母のブレンドを試みたそうです。 

飲んでみると意外と酸が弱くおとなしめのお酒でした。もう少しリンゴ酸を出したほうがおもしろい気がしました。このバランスだと冷やして飲むほうが向いているようでした。 

3.風香純米吟醸袋搾り生原酒 

Dsc_0060_2このお酒は24BYから定番として造られていて、今年で4年目になるお酒です。岡山県雄高島地区で取れた備前雄町60%精米を使った純米吟醸で袋搾りのあらばしりと中取を詰めた生原酒です。酵母は9号酵母です。ラベルの文字は銀色で、瓶は透明でした。 

ここでは説明がありませんでしたが、ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度、+2.4、酸度2.1でした。 

のんでみますと、香りは抑えめですが、カプロン酸エステルの香りと酢酸イソアミルの両方を感じるさわやかなもので、フレッシュな味わいとドライな口当たりで、最後に雄町らしい余韻を感じる味わいでした。澱の甘さと酸が打ち消しあっていてなかなかいいバランスをしていると思いました。 

4.風香純米無圧搾り生原酒 

Dsc_0064このお酒は山田錦65%精米の純米酒の生原酒です。酵母は6号酵母で、薮田の搾り機でプレスをかけないで、ポンプだけの力で最初に出てきたものを瓶詰めしたお酒です。ラベルの文字は黒で瓶は透明でした。 

このお酒の酒質もホームページで調べたものを紹介すると、ALC17度、日本酒度-4.6、酸度1.7でした。 

香はさわやかな香りですが、あまり強くなく、口に含んだ時に甘さを感じて味がしっかり出ているが、後味は切れを感じました。 

生原酒はすべて-7度の冷蔵庫で保管しているそうで、瓶詰め後の品質管理もしっかりしているようです。 

5.風香 純米吟醸 

Dsc_0066このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の純米酒で1回火入れのお酒です。文字の色は銀色でしたが、瓶の色は茶色でした。風香でも1回火入れのお酒の瓶の色は茶色のようです。一回火入れするとフレッシュ感がなくなるのでそうしたのかもしれません。だったら山香したほうがよかったのではと思いました。 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+1.7、酸度1.6でした。 

飲んでみると熟成の香りがしたので、聞いてみると火入れはパストライザーを使った瓶燗火入れなので、この香りは火入れによるのではなく酒販店で熟成したのではないかとの説明でした。このお酒は窓乃梅の自信作のお酒のようですが、雄町らしい余韻は消えてしまっていて、残念でした。お酒の管理は大切ですね。 

6.山香生酛純米吟醸 

Dsc_0070このお酒は岡山県産の備前雄町60%精米の生酛造りの1回火入れの純米吟醸原酒で、蔵で1年以上熟成させたお酒です。その中でも今回のお酒は2年熟成のお酒でした。 

瓶の色は茶い色で文字は緑でした。ホームページで調べた酒質はALC17度、日本酒度1.5、酸度1.5でした。 

飲んでみると軽い熟成の香りはしますが、角が取れてマイルドで嫌みのない大人のお酒になっていました。口に含んだ時にドンと旨みを感じるわけではないけど、バランスが良く後味に漂いう軽い余韻が素敵で、個人的には僕が最も気に入ったお酒でした。 

山廃も含めて生酛系は全生産の2割くらい作っているそうですが、山廃は主に本醸造の隠し味のブレンドとして使っているそうです。なかなかのテクニックですね。

7.クールゆず 

Dsc_0078この蔵では、梅乃宿ゆずとクールゆずの2種類のゆず酒を造っていて、どちらもアルコール度数は8度と同じで、ゆずの果汁を日本酒とブレンドして作っています。 

最初に開発されたのが梅乃宿のゆずの方で、1升に対して18個のゆずの果汁を低温で調合して作ったものに対して、クールゆずはさらに果汁を増やして、20個分のゆずを、生酒と調合して造ったそうです 

飲んでみるとゆずの香りが口中の広がるフレッシュなお酒でなので、つい飲み過ぎてしまいそうになります。  

8.梅乃宿辛口純米吟醸酒 

Dsc_0068このお酒は限定のお店しか出していない特別の純米酒だそうです。お米は麹米が山田錦55%精米、掛米があけぼの55%精米の純米吟醸です 

ホームページで調べた酒質はALC16度、日本酒度+10.4、酸度1.4でした。 

飲んでみると甘みは抑えられていますが、それほど辛くは感じないで、トロットした感触で口の中に広がりました。なかなかうまく作られていると思いました。晩酌ように色々なお食事と合わせることのできるお酒だとおもいました。 

以上で飲んだお酒の紹介を終わります。 

最後にこの蔵のお酒を飲んで感じたことを纏めてみます。 

5年前に女性社長に代わってから新しい山風香シリーズのお酒が出て、新しい風を出してきてはいますが、伝統ある造りの良さとの調和を図っている感じがして、そのバランスが良いなと思いました。今の若者が好きな流行りの味のお酒を追うだけでなく、さらに先を見た新しいもの目指している予感がしました。この蔵は当面目が離せないと思います。 

それからホームページもしっかりしていて販売しているお酒の酒質をきちっと書いてあるるのは大変珍しくて、それだけ酒造りに自信があるとだとおもいます。僕のようなお酒マニアにとっては大変うれしいことです。

京都の丹後にある木下酒造の杜氏をしているフィリップハーパーさんは1991年から10年間梅乃宿で修業をして、南部杜氏の資格を取ったことは酒通の人には有名な話ですが、ハーパーさんを育てた風土がこの蔵のベースになって息づいていると感じました。

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