佐久の花酒造の蔵元を囲む会が8月末に神楽坂の居酒屋「恒」で開かれましたので、参加してきました。飯田橋の神楽坂通りの坂を上がりきった神楽坂上を右に曲がると直ぐのところにありますが、とても小さな居酒屋です。
そのお店の名前は旬彩料理「恒」と言います。写真が入口で黄色いオートバイは店の御主人が仕入れに使っているもののようです。ご主人のお名前は新海恒雄さんで佐久の出身で、自分が住んでいたところから蔵がみえるほど近くだったそうですが、佐久の花酒造との交流は最近のことだそうです。
僕は日本酒カレンダーの情報で知って初めての参加でしたので、お店が見つからず探しているうちに、恒という看板を見つけました。この店でいいのかなと思いドアを開けてみると、既にかなりのお客さんがおられたものの、随分狭いお店でしたので驚きました。会の開始のころになると、12畳くらいしかない部屋に20人ほどがぎっしり入る寿司詰めの感じでしたが、部屋中に色々な飾り物があり、何か温かい雰囲気を醸し出していました。
入口から奥を撮った写真ですが、狭いので全体は撮れていませんが、お店の雰囲気はわかるでしょう。水色のバンダナをまいているのが御主人で、中央で腕組みをしているのが佐久の花酒造の社長の高橋さんです。何か色々なものが所狭しと飾ってありますし、関係なさそうなものもいっぱいありそうです。これは御主人の感性でしょうね。
まずお店の御主人を紹介しましょう。
カウンター奥でお料理をしている新海さんです。ちょっと太り気味で、貫禄があるのでお料理人には見えないから、シェフといういうよりはマスターと呼んだ方がいいかな。でも出てきたお料理の味はお酒にピッタリで、とても美味しかったです。狭い厨房の中で20人分の料理をするのは大変だと思います。この会があるときは前の日から泊まり込みで準備をするそうで、この会に対する想いが伝わってきます。
次に佐久の花酒造の社長兼杜氏の高橋寿知さんを紹介します。
高橋さんは佐久の花酒造の5代目の蔵元で、最初は蔵を継ぐつもりはなく、東京農大には行かずに、普通の大学を出て会社勤めをしていたそうです。18年前に蔵に戻ってからは、蔵の杜氏から学ぶ一方、長野県の先生に指導を受けて勉強したそうです。その甲斐あってか、3年後には杜氏になっています。
蔵に戻った当時は普通酒が主体だったので、これではだめだと、美味しいお酒を造って新しい販路拡大を目指したそうです。でも最初はなかなか認められず大変苦労したそうですが、次第に評価してくれる酒販店が増えて、今では首都圏で認められるブランドになっています。現在はベテラン杜氏として色々なところで公演されるなど活躍されています。
飲んだお酒を紹介する前に、佐久の花酒造の蔵をご紹介します。蔵は長野県佐久市にあり、軽井沢の南側、八ヶ岳の北側の盆地にあり、千曲川が流れ米どころとして知られており、八ヶ岳の伏流水(やや軟水)が使えるので、酒造りに向いている土地だそうです。近くの駅は小海線の臼田駅から数百mのところだそうですから、蔵の近くに来られたら是非およりくださいとのことでした。
それではこの日にいただいたお酒をご覧ください。一本一本写真を撮ることができませんでしたので、まとめてご覧いただきます。
お酒の種類は下記に示しましたが、ご覧の通り使っているお米は地元産のひとごこちです。ひとごこちは溶けやすくて味の出やすいお米なので、これをうまく使うと良いお酒ができるそうで、ですから経験を積むためにこれにこだわって酒造りをしているそうです。
全部このお米だけでもいいんですが、リスクを考え別のお酒を造る経験を積むために、1シーズンに1回か2回山田錦のお酒も作っているそうです。地産地消のためですかと聞いたら、もともと農家で造ったお米の価値を高めるために始めた酒造りですから、地元のお米にこだわっているだけですとシンプルに答えていただきました。
1.純米吟醸 活性にごり酒 ひとごごち 55% 長野酵母D
このお酒は開栓の時に吹き出すことが多いので、現在は販売を止めているけど、乾杯のために持ってきたそうです。炭酸のピリピリ感の強いそれほど甘くないお酒でした。
2.純米吟醸 無濾過生酒 ひとごこち 55% アルプス酵母
口に含んだときに、ドンと旨みが来るのではなく、奇麗なうまみがすうっと広がって、さわやかな酸を感じるお酒でした。新しい酒造りにチャレンジしていて、最初に東京の酒屋さんが認めてくれたお酒だそうです。この蔵の定番となっています。
3.純米吟醸 無濾過原酒 ひとごこち 55% 長野酵母D
口に含んだときの香りはカプロン酸エチル系だけど、ちょっと独特な香りがたち、旨口のあまり酸を感じないお酒でした。
4.純米吟醸 原酒火入れ ひとごこち 55% 協会7号酵母
香りは少なめで、口に含むと直ぐに膨らまないで、ゆっくり旨みが広がってくる。そして奇麗な酸を感じて消えるので、じっくり飲むには適したお酒かもしれない。香りの種類としては酢酸イソアミル系のバナナ系ですね。
5.辛口吟醸 無ろ過アル添 ひとごこち59% 長野酵母D+901号
アルコール添加してあるので、さわやかで飲みやすいお酒。2つの酵母を混合して発酵させています。酵母が生きている醪にアルコール添加する時に、変な発酵することがあるので、アル添のタイミングが意外と難しいそうです。
6.大吟醸 袋搾り 麹米がひとごこち39%、掛米が美山錦 協会1801号+14号
やはり大吟醸の袋搾りは旨い。きれいさがある旨みが広がってきます。今までは1801系でやってきたけど、今年は14号をブレンドしたそうですが、このブレンドはなかなか難しく、勉強中とのことでした。色々チャレンジしているのですね。
7.純米大吟醸 ひとごこち 45% 長野酵母D+901号
6の大吟醸とは違い、穏やかな旨みを感じるお酒でした。お酒の味としては7号酵母のお酒の味を強めにしたように思えました。長野酵母Dよりは901号の影響が出ているのではないかな。
8.秋の純米吟醸 ひとごこち 55% アルプス酵母+長野酵母D
このお酒だけは後で出てきたので、写真が取れましたので、掲載します。
火入れした後、蔵で半年熟成したもので、旨みの角が取れて柔らかくなっているにもかかわらず、リンゴのようなさわやかな香りが残っていて、あまり酸を感じないお酒でした。きれいさを思い出させるすうっとした香りなので、ひやおろしとは思えないすがすがしさを感じました。
紅葉のラベルが特徴です。飲んだことのない人はぜひ飲んでください。
以上で飲んだお酒の紹介は終わりますが、高橋社長が説明される落ち着いた口調が酒造りに対する想いがとてもよく出ていると思いました。じっくり狙い通りのお酒を造りながら、その中でもチャレンジされている姿勢を感じました。これからもひとごこちのお酒造りを造り続け、ひとごこちのお酒造りを極めてください。 期待しています・・・・・・・
<高橋社長からのプレゼント>
全員に佐久の花の柄ついた盃をいただきました。社長のお話では昔はぐい飲みはなくて、皆盃だった。それには理由があって盃の方が美味しく飲めるということで、飲み比べてみたのですが、確かに盃の方が優しさが出て、粗さがなくなうよな気がしたのは僕だけでしょうか。
インターネットで舌の味覚を調べたのですが、昔は舌の部位により感じる味覚が違って、舌先が甘みで、舌脇が酸味で、舌奥が苦みという説があったようです。今はこの説は完全に否定されていて舌のどこでも5つの味覚を感じる受容体があるそうです。それでは盃とぐい飲みの味の差はどうして起こるのでしょうか。僕の勝手な推測ですが、盃はお酒が幅広に口に注がれるのに対してぐい飲みは中央に集中的に注がれるので、単位面積あたりのお酒の少ない盃の方が優しく感じるのではないかと思いました。 間違っているかな・・・・・
<珍しいお燗器>
これはこのお店で使っていたお燗器です。ガスコンロでお湯をわかして、右の写真のようにチロリを差し込んで、お燗温度を測定しながらお燗します。電気式ができる前の形態だったのでしょう。今でも合羽橋に行けば、売っているようです。いくらするのかな。
<お料理>
お料理は鯉料理のほかにもたくさんでましたが、ここでは鯉料理の写真で紹介します。鯉料理がこんなに食べやすいとは思いませんでした。
鯉の洗い 鯉の旨煮
鯉のうろこせんべい 鯉こく
最後に記念写真をとりました。このお店に来た方は常連ばかりで、一緒に旅行したりして、とてもまとまりのよい心の熱いメンバーばかりでした。初めての参加にもかかわらず、暖かく迎え入れてくれましたので、とても楽しかったです。また参加していいかな?
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