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静岡県の小さな蔵にはこだわりが見えます

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10月1日に静岡県酒造組合主催の静岡県地酒まつりが浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で開かれました。この会は今年で27回目の伝統あるイベントで、今年は静岡県にある30蔵のうち、25蔵が参加しました。 

静岡県の地酒まつりは東京でも神田の如水会館で毎年開かれますが、今年は9月7日の日曜日に開催され、17蔵の参加でした。如水会館のイベントは狭い会場に大勢の人が入るので、ゆっくり試飲するわけにはいかないことが多いことから、今年は東京での参加をあきらめ、浜松市で行われたイベントの方に参加しました。 

浜松までは新幹線の往復で大人の休日割引でも12000円もかかりますが、参加費は2500円ですからトータル約15000円かかるので、決して安いわけではありません。しかし、東京では参加しない小さな蔵のお酒が飲めるので、楽しみも多いことが期待できます。ですから2時間という短い時間を有効に使うために、新幹線の中でしっかりお弁当を食べて、お料理には全く手をつけず、もっぱら試飲をすることにしました。 

折角浜松まで出かけたのですから、何か発見をしないと面白くないので、僕なりの目標を決めました。それは生産高が500石以下の小さな蔵で、うまい酒を醸している蔵を見つけることです。蔵の生産高はあまり公表されていないので、蔵の方に聞いたり、関連資料を見たりして判断しましたが、たった2時間の間に正しい情報を得ることは難しく、間違いがあるかもしれませんが、個人的判断と思って御容赦願います。 

まず静岡酒造組合を代表して、理事長の正雪の望月正隆さんの御挨拶より始まりました。

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では早速僕が選んだ小さな蔵を御紹介しましょう。 

1.森本酒造合資会社 小夜衣

Dsc_0490森本酒造は掛川駅から徒歩5分にある蔵ですが、最近(平成18年)に周辺の区画整理のため、蔵を立て直したばかりだそうです.。しかし、役所のいう通り引っ越したら井戸が使えなくなることがわかって、粘った結果、使えるようになってほっとしたそうです。 

写真の方が社長兼杜氏の森本均さんで、18歳の時から酒造りをしているそうですが、今66歳ですから48年も続けているそうです。造りは一人でやっているそうですから、生産高は小さいけど秘密だそうです。 

ブースには森本工房と書いてありましたので、それが会社の名前かと思ったら、ジョークのようで趣味でお酒造りをしている見たいなので、そのような名前をつけたようです。そして、たまたま出来たものを売っているだけと謙遜していましたが、自分が作りたい酒を作る信念を持っておられます。 

蔵は小さいけど、森本さんを尊敬している蔵人は大勢いるみたいで、森本さんにほめられるとそれは本物ですよと言う方が多くおられました。今は静岡県の酒造組合の副会長をしていますので、この日は乾杯のご発声をしていました。でもこんな仕事は苦手ですと、はずかしそうにお話しされていたのが印象的でした。でも、他の蔵のことをよく知っておられまして、お聞きするとズバッとお話しされますね。この優しいお顔からは想像できません。 

持っていただいたのは小夜衣(さよごころも)古酒浪漫2001です。13年古酒で常温で熟成したものです。飲んでみると、熟成香はあるし、黄色く色づいていますが、香りがそれほど強くなく、甘いけど綺麗なバランスで切れがありました。どうしてこんな風に熟成するのですかと聞いたら、酒の酒質が良いからですよと答えられました。どうやってそれを見極めるのですかと、聞いたらそれはフィーリング、直感でこれは熟成できるとわかるそうです。酒質が悪いと良い熟成はしないようです。やっぱり森本さんは凄い人です。 

森本さんは嫌いなのかもしれないけど、若い人に酒造りの秘伝を伝えてもらいたい気がしました。 

2.杉井酒造 杉錦

Dsc_0492杉井酒造は藤枝市にある蔵で、JR藤枝駅から1kmほどのところにあります。お写真の方が社長兼杜氏の6代目当主の杉井均乃介さんです。 

杉井さんは東京農大を卒業されて、蔵に入りましたが、平成12年度の造りから、自らが杜氏となり、妥協 のない納得のいく真摯な酒造りを行っております。たとえば、本醸造でも10Kgの箱麹、また純米以上は麹蓋で麹を造り、出来上がった製品の管理は全量すべて低温冷蔵庫にて瓶貯蔵という徹底ぶりです。 

杉井さんは自分流の酒造りを目指していますが、その一つが山廃や生酛だと思います。今では常識になっていますが、山廃でも酵母の添加をして、安定した山廃作りをしていますが、生酛でも添加しているそうです。 

持っていただいたお酒は生酛純米酒ですが、スペックは聞き忘れました。飲んでみると優しい味わいの中に味に幅があるし、酸味のバランスが良いお酒でした。流石杉井さんという感じでした。 

ちょっと変わった生酛があるよと出してくれたのが八十八(やそはち)純米酒でした。平均精米度が88%の生酛で、酵母無添加だそうです。お米は麹米がひとめぼれ70%精米、掛米がコシヒカリ92%精米だそうですから凄い酒です。日本酒度+15、酸度2.1ですが、飲んでみるとそんなに辛く感じません。辛みが優しく感じるお酒でした。

杉井さんも自分が造りたいお酒を作っているので、生産高は400石とまだ小さいですが、非常にチャレンジブルな方だと思います。今後の夢としては静岡型吟醸造りで全国新酒鑑評会の金賞を取りたいそうです。大変前向きだけと、時代に迎合しないのが凄いですね。 

3.君盃酒造 君盃(くんぱい)

静岡市駿河区にある生産高100石に満たない小さな蔵です。明治の初めに満寿一酒造から枝分かれした後、昭和の初めにこの地に移転して、駿河正宗という銘柄でお酒を作っていたようです。戦時中は市内の蔵が統合していたのですが、戦災にあわなかったので生き残り、昭和25年に復活して君盃となったようです。

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写真の方は社長の市川誠司さん(75歳)と息子さんの市川英俊さんです。 

昔は南部杜氏がいて酒造りをしていましたが、平成9年から社長自らが杜氏となって、息子さんと二人で酒を作ってきたそうです。酒造りを初めて2年目で全国新酒鑑評会で入賞し、平成16年には金賞を取るまでになったそうです。こんな小さな蔵が金賞を取るなんて凄いことです。 

持っていただいたのは純米吟醸の君盃と秋上がりの君盃です。純米吟醸の君盃は五百万石ですが味がしっかりしていて、甘みの質が良いお酒でした。モミジは半年寝かせているだけに味が膨らんでいます。この二つは元のお酒の酵母が違うようです。 

この蔵は静岡酵母を使っていなくて、M310と9号酵母のブレンドを使っているようです。お酒によってブレンド割合を変えているそうです。だから金賞を取れるのかもしれませんが、今の流行りの味のバランスではありません。小さい蔵は味を毎年一定に保つのが難しいと言われていますが、それができるのは、お酒造りは心ですねというお父さんの言葉が心に響きました。早くもう少し大きくなってもらいたい気がします。

生産量が少ないので、静岡市内でしか買えないようですが、蔵でも小売りをしているようですので、蔵の近くに行ったら買ってみたらどうでしょうか。 

4.國香酒造 國香(こっこう)

この蔵は静岡県袋井市にある生産高200石の小さな蔵です。石数は小さいけど創業200年の歴史のある蔵です。でも良い杜氏に恵まれずになかなか時代に乗れなかったようです。 

この蔵の長男の松尾晃一さんは多く作るよりは旨い酒を作ろうと常々思っていたので、静岡沼津工業センターの研究主幹の河村傳兵衛さん(静岡吟醸酵母の生みの親)の研修を受けるほか、愛知県の蔵の名杜氏の田中誠一の下で修業した後、自らが杜氏となって酒造りを始めたのが1992年です。

色々な経験から美味しいお酒を作るには静岡型吟醸作りが一番という気持ちで、頑固にそれを守り続けているそうです。そして1995年には静岡県新酒鑑評会の吟醸部門で第1位となっただけでなく、その後も静岡県新酒鑑評会で次々と賞を撮っているそうです。 

全国新酒鑑評会では未だ金賞は取っていませんんが、静岡型吟醸造りでは全国の新酒鑑評会の金賞を取るのは難しいようです。でもどんな味のお酒なのでしょうか 

Dsc_0495写真の方は蔵元の息子の松尾まさおさんです。地元の大学4年生なので、名刺がないので漢字はわかりませんが、休暇の時に酒造りのお手伝いだできるように、近くの大学に行っているようです。持っていただいたお酒は特別純米酒 國香(雅の粋)です。

飲んでみましたが、口含むと柔らかな穏やかな香りとともに、旨みが口の中に広がりその味がすぐ切れるのではなく、余韻として広がります。これはうまい。旨いけどこのバランスでは金賞は取れないのかもしれません。 

静岡型吟醸造りは米を7-8時間かけて溶かすとか、搾りカスは70-80%乃残すなど、時間がかかり生産量は少ないので、今では静岡県では10%くらいしか行われていないようです。松尾さんはその中でも搾りのための袋洗いを徹底して行うそうで、このような丁寧な造りから良いお酒が生まれているのを初めて知りました。 

生産量が少ないので東京ではまず手に入らないお酒ですが、早く石数を増やして東京でも飲めるようにしてもらいたいと思います。 

5.根上酒造店 金明

Dsc_0498根上酒造店はJR御殿場駅から西に2-3km行った近くにゴルフ場の多い場所にあります。この地は静岡県の中では高地で気温が低い特徴があります。 

写真の方は社長兼杜氏の根上陽一さんです。陽一さんは東京農卒業で、杉錦の杉井さんの2年先輩の54歳です。この蔵は元来越後杜氏が来ていたのですが、高齢でおやめになった時から自分で造ることを決意し、酒造りを始めたそうです。 

大学を卒業後、蔵の仕事をしていたので、簡単にできるとやったものの、その作業は大変で、一時体調を崩したこともあったようです。 

現在は自分のほか地元の従業員3人と2人のパートでやっていて、一人で目が届く範囲の生産量だそうですから、300~400石ぐらいかもしれません。製造は1年中行う四季醸造のようです。 

持っていただいたのは純米吟醸ひやおろしです。お米は五百万石と地元の若水55%精米だと思います。飲んでみると優しくて、まろやかな味でそれでいて、適当な酸味もあり静岡のお酒の中ではオンリーワン(ナンバーワンではないですよ)のお酒だと思いました

御殿場にこんな蔵があるとは知りませんでした。こういう蔵にはどんどん成長してもらいたいですね。 

6.駿河酒造場 天紅 

この蔵は会の最後の方にまわったので、飲むお酒も少なく、強い印象はなかったので、写真を撮るのを忘れてしまいました。、変わった経歴で生まれた新しい蔵なので、少しご紹介します。

掛川市に曽我鶴・荻の蔵酒造という老舗の蔵があったのですが、1997年に休業していたそうです。大手コンピューターメーカーのエンジニアであった荻原吉宗さんが創業者の意をくみ、蔵のブランドを引き継ぎ2002年に蔵を再開したそうです。その後2010年に静岡市にある「忠正」のブランドをもつ蔵が廃業したのを機会に、蔵ごと譲り受けて設立したのが駿河酒造場です。ですからこの蔵は静岡市にあります。

社長は荻原義満さんですが、会社を登記した時の社長は荻原吉宗でしたので、同じ方かどうかはわかりませんが、たぶん同じ方ではないかと思われます。急に色々なブランドを引きついて立ち上がったばかりの蔵ですが、生産高は350石だそうですが、南部杜氏の小田島さんの弟子である小林和範さんが加わっていますし、今年全国新酒鑑評会の金賞を取っていますので、これからが楽しみな蔵だと思います。 

以上の蔵の紹介は終わりますが、ほかにも小さな蔵はあると思いますが、たった2時間での情報ではこの辺りが限界で、しかも、帰りの新幹線の時間が近づいてきましたので、大急ぎでこの会場を後にしました。(言訳をいうな・・・・ 反省・・・)

<最後の感想>

静岡県は最近は全国新酒鑑評会の金賞取得数が減っていますが、今回参加してわかったことは、今流行りの味のお酒造りをせずに地元に喜ばれる美味しい味のお酒造りをしている蔵が多いことがわかりました。特に500石以下の小さな蔵でも独自性のある酒造りをしていることがわかり、とてもうれしく思いました。いつか全国にもフアンが増えて、大きくなってもらいたいものです。

最後に500石から1000石未満の蔵も色々とお酒も飲ましていただき、ありがとうございました。特に英君さん、志田泉さん、白隠正宗さん、正雪さんにはお世話になりましたが、でもブログに書かなくてすみませんでした。

でも、これらの蔵は東京でも良く知られるようになったし、良いかな・・・・・

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