先日神田の醇さんのところで小江戸鏡山酒造さんを囲む会がありましたので、参加してきました。この会は鏡山酒造を応援している地酒屋こだまさんと醇さんのコラボレーションで生まれた会です。鏡山酒造からは蔵人兼営業部長の五十嵐昭洋さんが参加されました。また、この会にはわっしょいを主催している兵道俊美さんも参加されていました。
この方が五十嵐さんです。後ろに醇さんのお姿も見えますね。五十嵐さんは埼玉県の飯能市にある五十嵐酒造(天嵐山)の蔵元の次男ですが、色々あって新しく生まれた小江戸鏡山の創設に尽力されて、現在鏡山を引っ張る聞企画営業部長として活躍されています。
この会はこの五十嵐さんの熱い語りから始まりましたが、その会を通してわかった小江戸鏡山酒造がどんな蔵であるかをまず整理してご紹介します。
埼玉県川越には昔から鏡山酒造という蔵があり、この蔵のお酒は日本航空のファーストクラスでふるまわれたほどの品質の高いお酒を造っていたのですが、平成12年(2000年)に急遽廃業することになったようです。この蔵の敷地は3000m2もあるので、川越市が中心になってその跡地利用が検討され、川越市産業会館の小江戸蔵里の名前で新しいモールとして利用されているようです。この検討会では酒蔵の再建の考えななかったようです。でも昔の蔵の雰囲気を残している場所なので一見の価値はあります。
下の地図のURLを拡大して航空写真をを見てもらうと蔵のレイアウトがわかりますよ。
http://www.machikawa.co.jp/access/
一方蔵の再建は川越に住む多くの人たちの支援と協力があり、平成19年(2007年)小江戸鏡山酒造が誕生しましたが、再建にはいろいろ苦労があったようです。まずは場所選びです。川越市の地下には秩父からの伏流水が流れているようですが、新たにそれを掘り出すのは資金もいるので、困っていたところ川越市にある松本醤油さんが自分の水と土地の提供をしてくれることになったそうです。
ところが醤油と酒は一緒に作っているところは他にはないそうです。それは醤油と日本酒の麹菌は全く違うので、一緒にすると悪い影響が出るからだそうですが、それを乗り越えてきたのも凄いことですね。
場所は川越の中央通り(蔵の町として有名なところ)を北に進み、仲町の十字路を左折すると右側に松本醤油が見えますので、その敷地の中にあるのだと思います。蔵見学はしていないそうですが、上のURLの地図を動かしてみるとわかりますよ。
次の課題は酒造の免許だったそうです。今の日本はお酒の消費量が減っているので、国税局としては新たな酒造免許は許可しないそうです。そこで、色々検討した結果、群馬県の酒蔵の廃業をする機会を利用し酒造免許を取ることができたようです。
次が従業員の確保です。最初は前の鏡山酒造のの杜氏のお力もお借りしたようですが、色々な経過があって、今では平均年齢30歳の若い4人で造っているようです。4人のそろい踏みの写真を見つけました。
右から蔵人の国分さん、営業の五十嵐さん、杜氏の柿沼(36才)さん、女性蔵人(東京農大出身)の4人のようです。頑張っていますね。この蔵は9月から6月までの三季醸造なので、1年中大変忙しいそうです。
蔵の大きさは普通のコンビニ2件分だそうで、狭いけど生産高は400石あるそうです。そんな狭いところで400石も作れるのか不思議な感じです。酒造設備をどのように調達したかは説明はなかったけど、タンクは最大で600KG仕込みで、搾り機は薮田もなく人力による槽搾りのようです。全てを手作りでやっているようなので、大変つらい作業の連続らしいのですが、ここまで来たのは造り手の心意気なのでしょうね。頭が下がる思いです。
この蔵の酒造りのモットーがホームページに書いてありましたので、まず最初にそれを紹介します。
① 品質第1の少量仕込みに限る
② 麹は丁寧に箱麹・蓋麹に限る
③ 醪はふくろによる上槽に限る
④ 火入れの際には瓶火入れに限る
⑤ 純米酒以上の特定名称酒に限る
このようなモットーを造ることは大変良いことだと思います。個人的な意見ですが、③はこれから作業の効率を考えるとこれにこだわることはないかなと思います。薮田でも無圧でやれば質の高い酒が取れると聞いていますし、直汲みも可能となるので、酒の幅も広がるのではと思います。どうでしょうか・・・・・
この蔵は小さいだけに、他と違った酒質のお酒を造ることにこだわっています。一言でいえばお米の味をしっかり出したお酒、淡麗辛口ではなく味わいのある酒造りをしているとのことでした。どんなお時のお酒なのか飲んだお酒を紹介します。
この蔵はお米の種類と精米度、アルコール度数は表示していますが、日本酒度、酸度、アミノ酸度などの酒質は一切表示していませんし、オープンしないそうです。飲む人が感じとってくださいということのようです。それから原酒が多いそうです。
それでは飲んだお酒をご紹介します。会の運営の都合でお酒を1本一本写真を撮る機会がありませんでしたので、わかりにくいかもしれませんがお許しください。また事前に飲んだお酒のリストがなかったので、間違いがあるかもしれません(ないと思ういけど)。
飲んだお酒の一覧は下記の通りです。
0.鏡山 純米吟醸 おりがらみ
1.鏡山 純米 夏向けの生酒
2.鏡山 純米吟醸 生酒
3.鏡山 生酛造り
4.鏡山 純米大吟醸
5.鏡山 純米原酒 さけ武蔵
6.鏡山 純米原酒 雄町
7.鏡山 純米原酒 秋あがり 1年熟成
8.鏡山 生酛造り 1年熟成
このほかにも特別のお酒が出ましたが、それは別途紹介します。
0.鏡山 純米吟醸 おりがらみ
美山錦50%精米の純米吟醸でアルコール度数17.5%の原酒のお酒です。パワのある旨みと辛みが炭酸によるピリピリ感を伴いながらひろがり、余韻を残しながらゆっくり消えた行きますが、余韻の中には辛みはありません。もしかしてこの蔵の代表的な味のお酒かもしれません。
1.鏡山 純米 夏向けの生酒
鏡山としては珍しい加水してアルコール度数を15%にした夏向けのお酒です。お米は埼玉県の酒造好適米で改良八反の若水を交配して作ったさけ武蔵60%精米の純米酒です。確かの飲みやすいけど、しっかりお酒の旨みは残っています。余韻もしっかりあるお酒でした。香り系の18系の酵母を使っているそうです。
2.鏡山 純米吟醸 生酒
これもさけ武蔵50%精米の純米吟醸です。純米酒に比べて旨みはパット広がりますが、後味はさっと消えていくバランスでした。でも、消えてしまうのではなく、味わいが薄くゆっくり残っているように思えました。でもこれの方が飲みやすいかな。酵母は埼玉F酵母だそうです。
3.鏡山 生酛造り
説明はなかったけど去年はさけ武蔵で造ったのに対して今年は食料米の彩のみのりをつかって、酵母も普通の9号酵母から高酸性の9号酵母に変えたようです。発売は8月の予定だそうです。食料米でも美味しいお酒が作れることにチャレンジしたかったそうです。こんな小さな蔵でも生酛造りができるなって凄いなと思いました。確かに酸味があって旨みの厚みが違うけど、僕にとっては好みが合う酒でした。
4.鏡山 純米大吟醸
山田錦40%精米の純米大吟醸で、酵母は1801酵母でのお酒です。奇麗なうまみがあり、すうっと消えていくけど、後味はしっかり残るようなバランスです。確かに旨くて、奇麗だけど金賞受賞酒狙いのお酒ではないですね。それでいいと思います・・・・
6.鏡山 純米原酒 雄町
5.鏡山 純米原酒 さけ武蔵
右側がさけ武蔵で、左が雄町ですが瓶の違いがわかりますか。ラベルはまったく同じで瓶の色が違います。さけ武蔵が水色で、雄町が緑色です。よく見るとわかるでしょう。こうなったのには理由があったのです。
5番のさけ武蔵の特別純米酒は雄町の入荷が遅れたので臨時に造ったお酒だそうで、来年は製造予定のないお酒です。酵母は同じ18号酵母で、お米の差を楽しむことができそうです。それでは比較して飲んでみましょう。
さけ武蔵は口に含んだときにバナナチョコのような味がしますが、少し酸が強くて辛みのある味でした。一方雄町は他の鏡山に比べると優しい旨みを感じました。後味に雄町らしい余韻の伸びを感じました。僕は今日のお酒の中では一番気に入ったお酒でしたね。
7.鏡山 純米原酒 秋あがり 1年熟成
このお酒はさけ武蔵60%精米の純米原酒の秋あがりをこだま酒店で1年間熟成したお酒です。酵母はさいたまC酵母と9号酵母のブレンドだそうです。熟成して既に黄色に色づいていました。熟成香がプンとするお酒なので、チーズと合わせるのがよさそうです。
8.鏡山 生酛造り 1年熟成
このお酒は3番の生酛を1年熟成したものです。それほど熟成香はせす、丸みが出て旨みが引き出されていた感じでした。これはなかなか行けます。お燗もよさそうです。
以上で9種類のお酒の紹介は終わりますが、このほか2本追加がありましたのでご紹介します。
左のお酒が1段仕込みの特殊なお酒で、右が今年の秋あがりのお酒です。一段仕込みとは通常は3段仕込みでアルコール度数を上げていきますが、1段で終わらせるとアルコール度数が低く、甘さと酸味のある酒になりますが、確かにそんなお酒でした。五十嵐さんのお話では最終的にはもっと違った味を狙うそうです。随分チャレンジ的な試みをしているのですね。
今年の秋あがりはやはりもう少し寝かせたいといった感じでした。そのほか写真はありませんが、貴醸酒もいただきました。一杯に貴醸酒は価格が高いのが普通ですが、1升3000円くらいのお酒を販売したいそうです。素晴らしいことですね・・・・・・・
もう一度五十嵐さんに登場してもらいます
この会では五十嵐さんはいつもこんな感じでにこにこしながら、熱い心でずっとしゃべりぱなしでした。でも見かけによらずにシャイな方だそうで、緊張を解くために、この日も会の始まる前にお酒を飲んで準備したと聞いています。
でもこの熱い心がなければ、今の小江戸鏡山はなかったのでなないかと思われます。この蔵は小さいながら自分の蔵の味をしっかりおさえたうえで、さらに新しいお酒造りにチャレンジしていることが彼の説明でよくわかりました。
そのことをさらに予感することがありました。それがこの写真です。
何だかわかりますか。これは小江戸鏡山の仕込み水です。Well Water と書いてありますからわかるでしょう。このラベルちょっと変わっていますね。HEALTHと書いてあります。これはビートルズのヘルプのパクリのようです。パクリといっても同じデザインではありません。手に酒造りに必要な色々な道具を手に持っていますから。比較のために本物を下に示します。
これなら問題ないでしょう。こんな心を持って、酒造りをしていることに未来を感じますね頑張ってください・・・・・・
<お料理編>
すっぽん煮凝り、さつま芋密煮 かつお醤油麹和え
はつかり醤油糀
かつおの醤油麹和えに使った醤油麹は松本醤油で売っている醤油糀だそうです。
この麹ははつかり松本醤油と小江戸鏡山酒造の米麹方作ったもので、松本醤油のインターネットにはでてきませんが、市販価格は430円のようです。
お醤油の代わりにこれを混ぜるだけでいいそうですから、これならだれでもできそうですね。
和風酸辣湯 鱧と冬瓜の吉野煮
夏野菜のバーニヤカウダ ポークソテーマンゴーソース
冷や汁うどん 川越お菓子
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