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岐阜の林本店のお酒は将来が楽しみです

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岐阜の地酒に酔うの会の翌日の朝、榮一や百十郎のブランドを持つ林本店の蔵見学に行きました。林本店は岐阜県の各務原市にある蔵ですが、1920年(大正9年)創業の比較的新しい蔵です。昔は軍御用達のお酒を作っていたそうですが、先代の社長が特定名称酒の榮一を誕生させ今に至っています。現在の社長はこの蔵元の娘さんの林里榮子さんで5代目になるそうです。

この蔵に見学に行くきっかけを作ってくださったのは、今回の企画をした入江亮子さんです。入江さんと林さんはイギリスで偶然に出会ったのが初めてで、それ以来親しくされているそうです。日本ではなくイギリスと言うのが凄いですね。里榮子さんは日本酒の普及と亮子さんは日本の和食のPRで行かれたものと思いますが、お互いにその才能を認め合って瞬間に心が通じたのではないでしょうか。

お二人がどんな方か知らない方もおられると思いますので、FaceBookから拾ってみますね。詳細はFBをご覧ください。

林里榮子さん(林本家社長)   入江亮子さん(温石会主宰)

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お二人とも素敵な方でしょう。

そんなお二人の仲の良さの表れなのか、今回の蔵見学里榮子さんの対応のされ方にはものすごい心配りを感じました。

まずは岐阜の地酒に酔う会の夜に、岐阜駅の近くの居酒屋喰快をご紹介していただき、ご一緒させていただいた上に、翌日の朝には車でホテルまで迎えに来ていただいたのです。

その上、朝食に美味しいコーヒーとトーストが楽しめるお店にまで連れて行ってくれました。

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店は優香里珈琲店という夫婦でやっている喫茶店で、昔懐かしい雰囲気を持ったお店でした。各務原市にはこのようなお店が色々あるそうですが、優香里珈琲店は里榮子さんのお気に入りのお店だそうです。こんなお店は東京ではすっかり姿を消してしまったのに、良い環境が残っている町ですね。

Dsc01154_14その後、蔵に直ぐ行かずに、車で各務原市内を案内していただきました。各務原市には整備された広い公園が二つもあり、その一つは韓国ドラマの「冬ソナタ」のロケ地である春川市と姉妹都市の関係を持ち、冬ソナストリートも作ったそうです。

町の真ん中を流れる新境川には桜の名所があり、川の両岸にさくら並木がずーっと並んでいます。昭和の初めにここに染井吉野を寄附した歌舞伎役者市川百十郎の名を取って、「百十郎桜」と名付けられたそうです。里榮子さんのお話によるとこの名前はいつかお酒の名前にしたいなと常々思っていたそうです。

桜が咲いた時の様子をご覧ください。水辺に映った桜が素敵ですね。この写真は2009年に撮ったもののようです。

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各務原市を見学しながら、車で走っているうちにいつの間にか蔵についてしまいました。蔵は各務原の住宅街の中にありました。外見は近代的な店構えで、とても蔵には見えません。ここは展示室と事務所があります。

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この建物の奥には昔ながらの建屋がありそこで酒造りが行われています。お店の右側の通路をはいっていきますと中央に大きな木とそれを取り囲むような庭木が見えてきます

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この庭木を囲むように建屋が配列されているのが見えますが、それがお酒をつ造っている蔵です。蔵の中は後藤杜氏に案内してもらいました。

Beart02_2後藤克伸さんの写真は林本店のホームページより拝借しました。なかなかかっこいいですね。後藤杜氏はこの蔵に入社し、新潟杜氏の下で修業した後、2005年に杜氏になったそうですが、自らは杜氏としての流儀はないと言われています。

昔は2000石以上のお酒を造っている時代もあったそうですが、今では400石弱の生産量ですから、蔵の広さは十分にあり、広い蔵の中をゆったりと使っている感じに見えました。

仕込み水は地下70から汲み上げた長良川の伏流水で、硬度3の軟水だそうです。

それでは簡単に蔵の中をご紹介します。

<洗米および浸漬>

固定された洗米機は見ませんでしたが、大吟醸と純米酒以上の麹米は手洗いをしているそうです

<蒸し>

Dsc01172_3総米が600kg以下は小型の甑で、それ以上の量になると連続蒸米機を使うようです。この写真はそれを上から見た写真です。

緑の機械が連続蒸米機で、手前の白い丸いものが甑です。

<麹室>

2階に上がると麹室ありました。左が入口で、右がその中の写真です。

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箱麹と天幕式自動製麹の二つを使っているそうです 。ステンレス製が天幕式自動製麹機です。この麹室の前はとても広いフロアになっていて、今は蒸米の冷却に使っているとのことでした。

<仕込みタンクと貯蔵タンク>

Dsc01183_2仕込みタンクと貯蔵タンクがずらりと並んだ部屋がありました。仕込みタンクが壁際に並び、中央に貯蔵タンクが配置されていました。

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写真のように仕込みタンクには7度の冷水が流れるジャケットがまかれていましたが、貯蔵タンクはなにもされていませんでした。

だから貯蔵タンクの中身が減ってくると、ジャケット付きの小型タンクに移動して温度制御するようです。これは合理的かもしれませんね。

<酒母用タンク>

Dsc01188酒母用タンクは完全空調のできる冷房用の部屋の中に置かれていました。ここでは少量仕込みの吟醸酒も造るようです

この蔵は生酒は寒い時期の特別な時だけで、ほとんど火入れの瓶貯蔵のようです。ですから、瓶保管は冷蔵に力を入れていますが、他のところは、要所抑えた温度管理をしているようの思えました。

<この蔵ならではの面白いものを見つけました>

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七宝焼きのタンクがある部屋です、ここは年に2回蔵開放をやる時に使うイベントの部屋でお客様が使う机や椅子が見えます。

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この部屋の片隅にホワイトオークの樽を見つけました。12年熟成させている純米古酒だそうです。このお酒が試飲できるそうです。楽しみですね。

次に試飲したお酒を紹介する前に林里榮子さんのことをご紹介します。

里榮子さんは1993年に東京農大の醸造学部を卒業された後、キリンビールに5年間勤めてから蔵に戻って酒造りの修業をしていたのですが、2007年に突然この蔵の社長になるように言われたそうです。もともと家を継ぐつもりでいたのですが、事前に話もなかったので、ただびっくりしてしまったそうです。その後は手探りの状態で今までやってきたそうです。

社長になると、お酒造りだけでなく、お酒の販売にも気を使わなくてはなりません。この蔵は蔵元の名前をつけたお酒の榮一は岐阜の地元向けに扱っていたのですが、これをそのまま首都圏の酒屋に出すと、酒屋によっては嫌がることろもあり、首都圏向けに造ったブランドが百十郎のです。このお酒は2年前の春に出したのが初めてだそうですが、歌舞伎役者の顔をイメージしたデザインがユニークで一躍注目されるようになってきたと思います。

その里榮子さんにお酒の紹介をしていただきながら試飲をしました。なんとつまみまで付いていたのには驚きです。素敵な試飲室でしょう。これも里榮子さんのセンスですね。

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<試飲したたお酒はこんなにありました>

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右から
百十郎 純米大吟醸の黒面(秋田酒こまち50精米、日本酒度+3)

百十郎 純米大辛口の赤面(五百万石70%精米、日本酒度+12、酸度1.4)

百十郎 山廃純米酒の紫面(五百万石60%精米、日本酒度+0、酸度1.9)

百十郎 山田錦純米吟醸の茶面(山田錦60%精米、日本酒度+0、酸度1.7)

榮一  純米大吟醸(山田錦40%精米、日本酒度-1、酸度1.7)

榮一  純米酒(五百万石60%精米、日本酒度+2、酸度1.5)

金時  琥珀の熟成酒(日本晴70%精米日本酒度+0、酸度2.2

百十郎は原酒のままで(加水の量は1度以下なら原酒と言えるようです)アルコール度を15~16度に抑えたお酒です。榮一に比べて酸味を強くして切れを良くしたお酒のように思えました。特に説明はなかったのですが、百十郎の黒面でも1升3150円で、価格的にもあまり高くならないように考えられていると思いました。、

僕は百十郎の中では黒面と茶面が好きだったね。茶面は口に含むと奥に広がってくる感じですが、さわやかな酸味ですっきりさせてくれます。黒面はすっきりとした旨みの中で飲み飽きしないお酒でした。

百十郎のデザインは単に色を変えるだけでなく、バックのデザインもお酒にあわせて考えられています。全て里江子さんのインスピレーションで決めているそうです。一度気に入れば、デザインからお酒が連想出来るようになってきますね。たとえば、酒販店で百十郎山田錦と言わないで、茶面をくださいというだけで、通じてしまうのがかっこいいですね。

榮一は昔からのブランドで、百十郎よりアルコール度数が高く、やや甘めで、酸味も少なめですね。純米大吟醸は凄くうまい酒でどっしりした旨みがあるけど、優しさもあり、口の中での消え方がきれいで飲みやすい酒でした。純米酒もしっかりした味が出ていて、柔らかさを感じる酒でした。

榮一の味は地元のお料理に合わせて造られているそうですが、僕個人は榮一の味が好みですね。榮一の味を東京でも楽しめるようになったらうれしいです。この純米酒の価格が1升2835円は仕方がないにしても4合瓶が1733円は高過ぎます。どうしてそんな価格になるのかな・・・・・・・

Dsc01212金時というお酒ですが、日本晴70%精米の純米酒をホワイトオーク樽で12年熟成させたお酒で、紹興酒のような熟成香はなく、ウイスキーのような香りがして、優しい感じの琥珀いろの甘酸っぱいお酒でした。

IWCのSILVER賞を受賞したお酒で、甘いけど酸味が強いので外国人には好まれるのかもしれません。だからラベルに富士山にしたのでしょうね。4合瓶で3800円と高額でしたが、希少価値を考えて購入しました。

Dsc01209_3このお酒はTERAというお酒です。アルコール度数は8%で、日本酒の半分ですが、焼肉に会うお酒として開発したものです。原酒でありながらさわやかな香りと甘みと強い酸味で肉料理の脂身を切ってしまうお酒でした。

その命名も凄いのですが、このデザインもとてもユニークです。鳥獣戯画をモチーフにしたデザインです。これも里榮子さんのアイデアだそうです。

里榮子さんのチャレンジはこれだけではありません。何しろユニークです。

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これは何だかわかりますか。これは日本では売られていないお酒 FeelColor!です。カタログは全て英語です。アルコール度数は5.3度、日本酒度-100、酸度4.9というとんでもないお酒です。ワインのような酸っぱさと、貴醸酒のような甘さを持つお酒のようですが、外国だけでの販売で日本では販売できないそうです。ですからラベルに葛飾北斎の富士山のイメージを使ったのでしょうね。

もっと期待できるお酒も見つけました。名前も中身も決まっていませんが、海をも超える躍動的なイメージでデザインしたお酒の瓶です。確かにウサギが海を飛び越えているように見えます。この瓶がお店に展示されていました。

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お酒を造る前にお酒のデザインを決めるなんて、聞いたことはありません。日本酒の販売ルートは僕には良くわかりませんが、問屋や酒販店の意向が強いので、そのルートに乗っているお酒を、他のルートで売ることはできないようです。だから、販売拡大のためには名前を変えて出す必要があるのでしょうね。このうさぎさんがどこに、どんな味で、いつ現れるかが楽しみです。

新しいデザイン、新しい販売ルートを見つける林里榮子さんと蔵で腕を磨いた熟練の後藤杜氏のコンビが、これからの新しい方向性のお酒造りに発展することを大いに期待しています。

これからも注目していきますので、頑張ってください。

最後にお店の前で全員で写真を撮りました。太陽が燦々と降り注ぐ真夏の暑い日で、汗だくだくでしたが、何かすっきりさわやかな感じがしたのは、里榮子さんのさわやかなおしゃべりのせいだったのでしょうね。

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